滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

５８１：大森林観測所への道、針刺し男と測量技術

「むぅをっふぉぉん♪　ずっがぁぁぁぁん――どごーん――どごすーん♪」
　やい、おっさん。やかまし……い？

　大岩おおいわや大木たいぼくめがけ、烏天狗ぼくが作つくってやった道具どうぐを突き刺していく――
　〝針刺《はりさ》し男おとこ〟。
　ふぉん♪
『＞なるほど、彼のニードラーという異名は、彼考案の測量手順から付けられたようですね』
　測量そくりょう……何なにかを測はかるんなら、お前まえや〝泥音ドローン〟任まかせの方ほうが正確せいかくだろ？。

　ふぉん♪
『ヒント＞測量／土地の形状や位置関係を、詳細に計測すること。２２２２年現在、成層圏を自律航行する航空機体からの測量データを物理検索可能なため、屋外での測量の必要は無い』
　ふーぅん？　そーなのぅ？

　ふぉん♪
『＞現在、ドローンを高空へ飛ばせないため彼の協力が必要です。猪蟹屋の軍事機密独占をことさら喧伝することもはばかられますし、この世界の地図作成方法に触れておきたいと言う理由もあります』
　ふーぅん？　そーなのぅ？
　じゃぁ、御手並拝見おてなみはいけんと行くが。
　本ほんっ当とうっにっ、やかましいがな！

「ぼごずがぁーん――きゅどどどどどどっ――ばちこーん――だらららっらっ――どごずーん♪」
　小ちいさな鋏やっとこが付いた投げ槍やりみたいなのを、次つぎから次つぎへと投げつけては――立ち止まり。
　何なにかを手帳てちょうに書き付けては、また動うごき出す。
　しかし口くちで勢いきおいを付けないと、投げられねぇのかぁ!?
　兎に角かくうるせえし、魔物まものがいたら寄って来ちまう。
　最後尾しんがりにニゲルが付いててくれるから、安全あんぜんだろうが――

　しかし、「走はしれ」と「止まれ」、それと「背伸せのび」に「屈かがめ」。
　そんな命令めいれいだけで上手うまいこと、特撃型とくげきがたを操あやつってるぞ。
　級友きゅうゆうたちは、猫の魔物風シシガニャンどもに抱かかえられてるだけだが――
　おっさんは、『１８』番ばんの特撃型改シシガニャンを使つかいこなしていた。
　これなら着て動うごける２号ごうを、貸してやっても良かったかもしれない。

　ふぉん♪
『＞どうやら地図作成の図法に〝距離関数由来のプロシージャルレンダー技術〟が、取り入れられています』
　わからんことを、言うんじゃぁねぇやい？

　ふぉん♪
『＞シガミーの言葉で言うなら、一音異解。一音が無限に増え』
　ふぉん♪
『シガミー＞わかった。それ以上言うな』
　またミノタウが脳裏のうりを、よぎりそうな話はなしだ。

「つまるところ、おっさんは見た目通めどおりりの阿呆あほう……なんかじゃねぇってことで、良いんだな？」
　ふぉん♪
『＞はい。当世の世情を考えれば、戦略上の価値は計り知れませんし。相当な傑物と言って良いかと』
　侮あなどれねぇなぁ。とてもそうはみえんがぁなぁ。

「ちゅちゅちゅちゅぃーん♪　がりぃん、ごりぃん、ぼりぃん♪　ひゅるるるずごどがばぎゃぁぁーん！」
　大声おおごえを上げるおっさんを抱かかえ、山道やまみちの端々はしばしを縫うように走る・・・・・・・『１８』番ばん。

「「「「「「「「「「「「「「ちゅちゅちゅちゅぃーん♪　がりぃん、ごりぃん、ぼりぃん♪　ひゅるるるずごどがばぎゃぁぁーん！」」」」」」」」」」」」」」
　おっさんの真似まねを始はじめる、級友たちがきども。
　やかましい。耳栓切みみせんきっとけ、迅雷ジンライ！

　耳栓みみせんをしてるのに喧やかましいってのも変へんな話はなしだが。
　この耳栓みみせんは遠とおく離はなれた場所ばしょから小声こごえで話はなした声こえが、耳元みみもとで囁ささやかれたみてぇに聞こえる。
　そういう仕組しくみみが、付いているのだ。

　ぽきゅぽきゅむ♪
　おっさんの〝１８番あし〟が、次第しだいに遅おくれてきた。

「ではそろそろ、おれっちも本気ほんきを出しちゃおっかなぁぁぁぁっ♪」
　そんなもんが有るんなら、最初はなから出せやぁ！
　もう少すこし急いそいでくれると、助たすかるぜ。

　カチャカチャカチャ、ガッシャン♪
　小ちいさな槍やりから縄なわを取り外はずし、その長ながさなんかを――
　支給しきゅうした黒板タブレットに、ざっと書き込んでいくおっさん。
　走はしる猫の魔物風シシガニャンの上うえで、よくもまぁ器用きようなもんだ。

　ヴヴヴヴッ――――ふぉん♪
『＞残念ながら、この世界の地図作成方法の参考にはなりそうもありません』
　そうか？　何なんだか手際てぎわは良さそうに見えるが？
　ふぉん♪
『＞逆です。やはり当世の技術的、科学的水準を逸脱しすぎています。実に興味深い』
　その心こころわぁ？

　ふぉん♪
『＞我々の技術的、科学的水準においてこそ、興味深いと言うことです。実に興味深い』
　ヴヴヴヴヴッ――ルガ蜂はちの動うごきはやめろ。
　でかい女王蜂おやばちが、また姿すがたを現あらわしかねねぇ。
　ふぉん♪
『＞つきましては、ミギアーフ氏追従専用のドローンを飛ばしたいのですが』
　まぁ、好きにやってくれやぁ。

　流ながれる景色けしき――ヴュヴヴッヴー♪
　その端はしに、何なんかの画面がめんが出た。
　何なんだぜ？
　ゆっくりと、描えがかれていくそれは……この山道やまみちかぁ!?
　泥音ドローンにしちゃ、矢鱈やたらと遅おそい。壊こわれてね？

　ふぉん♪
『＞いえこれは、ドローンからの空撮映像ではありません。ミギアーフ氏が測量し筆算した結果を元に、レンダリングしたものです』
　はぁ？　おっさんが作つくってるのは地図ちずだろうが？
　ふぉん♪
『＞はい。〝立体的な地図〟と呼ぶべき物です』
　立体的りったいてきてのは、奥行きのこと・・・・・・だろぅ？
　平ひらたい黒板かみに、どうやって書きとめてるのか。
　興味きょうみは湧かんでも無いが、絵で板エディタを使つかえば奥行きくらい扱える・・・・・・・・・しなぁー。

「きょっほぉー♪　おれっちぃ、調子ちょうしが出てきましたよぉー♪」
　あっ、さっきの本気ほんきを出すってぇのは、〝道行きさき〟を急いそぐんじゃなくて――
　〝奥行きおく〟を描えがく方ほうに、本腰ほんごしを入れるってことかぁ！

「ぐぬぬぅ……どんどん遅おそくなってね？」
「ふんはっぱー、おれっちがぁー♪　どがどきゃばばぎゃりぃん♪」
　喚わめくおっさんと並ならんで進すすむ。
　その速はやさは。ほとんど歩あるいてるようなもんで――

「シガミー、どーしたのぉー？　置いてっちゃうよぉー？」
　生意気な子供レイダが特撃型改シシガニャン『１０』番ばんの肩越かたごしに、こっちを振り返かえる。
　おっさんと違ちがって、特撃型改とっかいの操作そうさに戸惑とまどっている様ようだな。

「みゃむあぎゃ♪」
　猫の魔物ケットーシィのロォグの声こえに、そっちを見たら――ぽっきゅぽぽきゅきゅぽぽぽぽきゅきゅきゅむっ♪
　特撃型改シシガニャン『１５』番ばんが、うしろ走ばしりをしてる。
　ふぉん♪
『ホシガミー＞プークス。生徒の皆さんのことは、お任せ下さい』
　お猫さまロォグを抱かかえた茅野姫かやのひめが猫ロォグの手を持ち、こちらへ振っている。
　ふぉん♪
『リオレイニア＞はい。こちらのことはお任せ下さい』
　こっちも茅野姫程ほしがみほどでは無いが、特撃型改シシガニャン『１７』番ばんの操作あつかいに随分ずいぶんと慣れたな。

　先さきに行ってもらった方ほうが、お互たがいに邪魔じゃまにならなくて良いか。
「先さきに行ってくれやぁー、すぐに追いかけるぅー！」

「シガミー、どうしたんだい？　もう皆みんな、先さきに行っちゃったけど？」
　すぐに青年ニゲルが追いついてきた。

「そりゃ、おっさん……フッカの親父おやじ……父上殿ちちうえどのに聞いてくれ」
「きょほほおおぉー♪　今いましばらく待ってくれるかなぁ、それともくれないのかなぁー？」
　髭ひげを揺らし、まるで鼻はなの頭あたまに止まった虫むしを追い払うかのような――
　自在じざいな表情筋かおつきが、実じつにやかましい。

　うしろにニゲルが居てくれるなら、問題もんだいはなさそうだし。
　級友クラスメートたちも茅野姫カヤノヒメとリオレイニアに、任まかせておける。
　すると気になるのは、女将おかみさんと担任教師ヤーベルトとおにぎり騎馬たち。
　それと先行せんこうする、遊撃班オルタターだな。

　迅雷ジンライ、先さきを行かせた泥音ドローンの映像出えいぞうだせ。
　ヴヴュゥゥン♪
　あれ？　先頭の連中さきがけが止まってやがるぞ？