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5:大森林観測村VSガムラン町
586:大森林観測所への道、メイドさんの姿勢
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「ひらひらの前掛けが、捲れなくなってきたぜ!」
スタッタタトトン、タタタトトォーン♪
真っ直ぐ前に進む分には、床が抜けたり元いた場所に戻されたりもしなかった。
なら進め進め、早いところ何処だかに行き着いて、ソコで待ち構えている奴を叩いて――
元の道に案内でも、させてやらぁ――ふひひ。
「後ろから見たらぁ、まくれ放題だけどねぇん♪ リオレイニャちゃんに見つかったら、間違いなく大目玉わね♪」
くそう、道理でスースーするわけだぜ――「びぃぃぃえっくしょひょほぉーい!」
「うるさい! なんてくしゃみをしてるのっさ! こいつめっ!」
ごちん――「痛ってぇなぁっ!」
ばかやろうめ! 浮かぶ球で、殴りつけるんじゃねぇやぁ!
おれは後ろ頭を押さえた。
姫さんと奥方さまから食らった拳骨が拵えた、たんこぶもまだ痛ぇってぇのによぉぅ!
迅雷、召喚の塔のときのようなことわぁ、二度とご免だからな?
ふぉん♪
『>はい、お任せ下さい。イオノファラーの動向には、細心の注意を払います』
ふぉん♪
『イオノ>あんたたちぃさぁ、ちゃぁんと聞こえてぇーいーまーすーかーらーねーぇ?』
ウケケケケッ――ヴォヴォゥォォゥン♪
唸るアイコンと、浮かぶ球。
そういやリオレイニアが茶を運ぶときは、頭の飾りがまるで揺れなかったな。
抜き身の刀で敵と相対しているときには、そういう「起こり」を隠す体捌きはある。
重心がぶれなければ、ただ歩くだけでも虚を衝くことが出来るからな。
リオや彼女に教えを請うた侍女たち(新米を除く)は――
そう言う意味では、まるで剣豪だ。
あの背筋の正しさは、剣の修行を3年くらいやらんと――
普段から使えるようには、ならない。
頭をよぎるのは、サキラテ家の隠形の技。
あの技の神髄は、姿勢の正しさだけじゃぁねぇのは確かだ。
ビビビーの奴は頭ぐらぐらで、重心なんて足の先まで放り出してるからなぁ。
ふぉん♪
『>まだ侍女としての修行もおぼつかない、〝ヴィヴィエラ・R・サキラテ〟がシガミーの隙を突くというのは、相当な物では?』
そうだな。彼奴らに有って、おれに無ぇものっていやぁ――
女としての、しゃらあしゃらした、体捌きに他ならん。
ビビビーですら、女としてなら遙か高みにいる。
リオレイニア程の所作は、一朝一夕に身につくもんじゃねぇがぁ――
ただ歩くことなら、おれにも出来る。
すっ――腰を落とし、一歩を踏み込む。
「ひとまずその蟹股、止めなさいわよ!」
「なんだと? 草履も下駄も履いてねぇんだから、こうでもしねぇと――地がつかめねぇだろが!?」
「地をつかむって、意味わかんないわよ……重力のことわのぉん?」
ヴォヴォヴォゥン?
「〝地ヲつかむ〟といウ概念ヲ理解出来かねまスが。ギルドノ壁天上ヲ走り回れるナら、機動性ニ劣ル所はナいのでは?」
ヴォヴォゥゥゥン?
「そりゃぁ、迅雷が靴の裏に塗った〝栴檀草の実〟の、お陰だろうが」
ふぉん♪
『イオノ>なんだっけ、ひっつき虫って?』
ふぉん♪
『>量子記述的に再配置された積層構造です。量子スケールにおいて摩擦係数の改ざんを可能にします。レイダ材や各種機能性建材にも応用されています』
「レイダ材ぅふーん? そういえばぁー、たこ焼き入れるぅー船皿にもぉ――似たようなの使ったっけぇ?」
「はイ。焦げた構造色ヲ塗布すル過程ハ――炭素リアレンジメントと同義デす」
わからん話で、盛り上がってやがるが――
ググ、ドタタ、ガガン、ググッ、スタタタァン♪
おれは靴先で、土や平石や木端を踏む。
高く跳べねぇから、低く跳ぶ。
ズザザザザザァァァァッ――――!!
靴を揃えて、横滑りをする。
やっぱり、そう言うこっちゃねぇーぜ。
靴で地をつかむにゃぁ、腰を落として足を少しでも、とおくに置かんと。
ググググッ――――しかし、この姿勢で早く動くと、どうしたって――
裾が捲れ上がるし絶対、リオレイニアに折檻されちまうぜ。
それは逆に言うなら、リオレイニアが蟹股で走り回っていたら――
ソレを見た奴は、どう思うのかって話でもある。
ふぉん♪
『>まず正気を疑われるのでは?』
そりゃ、そうだな。
おれのこの体もいつかは、あれくらいの娘の体になっていくわけで――
そうしたら――
ふぉん♪
『>まず正気を疑われるのでは?』
「そうわね。年貢の納め時わよ♪ それに普段の歩き方だけの話じゃなくてさっ、そのメイド服でも戦えた方が、絶対に良いわょねぇーん♪」
一理ある。今日の五百乃大角は、至って正気だぜ。
おれは股を閉じ、くねくねと身を揺らした。
「プヒャパヒャッ――――♪」
てめぇ、笑ってんじゃねぇーやい!
そのまま走ろうとして――つるん、ゴガガァァン!!
盛大に素っ転んだ。
「こらぁ、駄目だぜ。せめて鉄下駄じゃ無くてもいいから――普通の下駄を履かせてくれやぁ!!」
まずは下駄から、修行しねぇと。
ふぉん♪
『>流石にそろそろ、この迷路構造を抜けだし、ミギアーフ・モソモソ氏やナーフ・アリゲッタ嬢を探しに行』
ふぉん♪
『シガミー>良いから下駄を、寄越せ!』
§
ガラランッ、コロンッ♪
迅雷が取り出した下駄を、履いてみる。
普通の下駄だが、相当良いもんじゃね?
「これひょっとして……巨木をくり抜いた奴か?」
「ハい、以前作成シた下駄ト同ジ寸法で、材質ヲ堅木ヤ電解鉄でナく巨木に変更シました」
どががぁん――山道に埋め込まれてる平石を、力一杯踏んでやる。
ゴバキャッ――石の方が割れちまった。
堅さは申し分ねぇな。
がんがらん、ゴガガガゴゴゴォン!
地を踏んでみた。
「良いじゃねぇーか♪」
「ばかねぇー、歩く度にがらんがらん音を立ててたら、それだけで大目玉食らうわよぉん?」
もっともだぜ。まずリオにどやされる。
けど仕方ねぇ。物事には順序《じゅんじょ》ってもんがあらぁ。
お山じゃ、大抵これだった。
「デは、草履とイうのがベストナのデは?」
ヴッ――――ばさばさっ!
取り出されたのは妙にしんなりとした、バカ長ぇ足袋か!?
そしてたぶん、迅雷式隠れ蓑で編まれた――草履だった。
スタッタタトトン、タタタトトォーン♪
真っ直ぐ前に進む分には、床が抜けたり元いた場所に戻されたりもしなかった。
なら進め進め、早いところ何処だかに行き着いて、ソコで待ち構えている奴を叩いて――
元の道に案内でも、させてやらぁ――ふひひ。
「後ろから見たらぁ、まくれ放題だけどねぇん♪ リオレイニャちゃんに見つかったら、間違いなく大目玉わね♪」
くそう、道理でスースーするわけだぜ――「びぃぃぃえっくしょひょほぉーい!」
「うるさい! なんてくしゃみをしてるのっさ! こいつめっ!」
ごちん――「痛ってぇなぁっ!」
ばかやろうめ! 浮かぶ球で、殴りつけるんじゃねぇやぁ!
おれは後ろ頭を押さえた。
姫さんと奥方さまから食らった拳骨が拵えた、たんこぶもまだ痛ぇってぇのによぉぅ!
迅雷、召喚の塔のときのようなことわぁ、二度とご免だからな?
ふぉん♪
『>はい、お任せ下さい。イオノファラーの動向には、細心の注意を払います』
ふぉん♪
『イオノ>あんたたちぃさぁ、ちゃぁんと聞こえてぇーいーまーすーかーらーねーぇ?』
ウケケケケッ――ヴォヴォゥォォゥン♪
唸るアイコンと、浮かぶ球。
そういやリオレイニアが茶を運ぶときは、頭の飾りがまるで揺れなかったな。
抜き身の刀で敵と相対しているときには、そういう「起こり」を隠す体捌きはある。
重心がぶれなければ、ただ歩くだけでも虚を衝くことが出来るからな。
リオや彼女に教えを請うた侍女たち(新米を除く)は――
そう言う意味では、まるで剣豪だ。
あの背筋の正しさは、剣の修行を3年くらいやらんと――
普段から使えるようには、ならない。
頭をよぎるのは、サキラテ家の隠形の技。
あの技の神髄は、姿勢の正しさだけじゃぁねぇのは確かだ。
ビビビーの奴は頭ぐらぐらで、重心なんて足の先まで放り出してるからなぁ。
ふぉん♪
『>まだ侍女としての修行もおぼつかない、〝ヴィヴィエラ・R・サキラテ〟がシガミーの隙を突くというのは、相当な物では?』
そうだな。彼奴らに有って、おれに無ぇものっていやぁ――
女としての、しゃらあしゃらした、体捌きに他ならん。
ビビビーですら、女としてなら遙か高みにいる。
リオレイニア程の所作は、一朝一夕に身につくもんじゃねぇがぁ――
ただ歩くことなら、おれにも出来る。
すっ――腰を落とし、一歩を踏み込む。
「ひとまずその蟹股、止めなさいわよ!」
「なんだと? 草履も下駄も履いてねぇんだから、こうでもしねぇと――地がつかめねぇだろが!?」
「地をつかむって、意味わかんないわよ……重力のことわのぉん?」
ヴォヴォヴォゥン?
「〝地ヲつかむ〟といウ概念ヲ理解出来かねまスが。ギルドノ壁天上ヲ走り回れるナら、機動性ニ劣ル所はナいのでは?」
ヴォヴォゥゥゥン?
「そりゃぁ、迅雷が靴の裏に塗った〝栴檀草の実〟の、お陰だろうが」
ふぉん♪
『イオノ>なんだっけ、ひっつき虫って?』
ふぉん♪
『>量子記述的に再配置された積層構造です。量子スケールにおいて摩擦係数の改ざんを可能にします。レイダ材や各種機能性建材にも応用されています』
「レイダ材ぅふーん? そういえばぁー、たこ焼き入れるぅー船皿にもぉ――似たようなの使ったっけぇ?」
「はイ。焦げた構造色ヲ塗布すル過程ハ――炭素リアレンジメントと同義デす」
わからん話で、盛り上がってやがるが――
ググ、ドタタ、ガガン、ググッ、スタタタァン♪
おれは靴先で、土や平石や木端を踏む。
高く跳べねぇから、低く跳ぶ。
ズザザザザザァァァァッ――――!!
靴を揃えて、横滑りをする。
やっぱり、そう言うこっちゃねぇーぜ。
靴で地をつかむにゃぁ、腰を落として足を少しでも、とおくに置かんと。
ググググッ――――しかし、この姿勢で早く動くと、どうしたって――
裾が捲れ上がるし絶対、リオレイニアに折檻されちまうぜ。
それは逆に言うなら、リオレイニアが蟹股で走り回っていたら――
ソレを見た奴は、どう思うのかって話でもある。
ふぉん♪
『>まず正気を疑われるのでは?』
そりゃ、そうだな。
おれのこの体もいつかは、あれくらいの娘の体になっていくわけで――
そうしたら――
ふぉん♪
『>まず正気を疑われるのでは?』
「そうわね。年貢の納め時わよ♪ それに普段の歩き方だけの話じゃなくてさっ、そのメイド服でも戦えた方が、絶対に良いわょねぇーん♪」
一理ある。今日の五百乃大角は、至って正気だぜ。
おれは股を閉じ、くねくねと身を揺らした。
「プヒャパヒャッ――――♪」
てめぇ、笑ってんじゃねぇーやい!
そのまま走ろうとして――つるん、ゴガガァァン!!
盛大に素っ転んだ。
「こらぁ、駄目だぜ。せめて鉄下駄じゃ無くてもいいから――普通の下駄を履かせてくれやぁ!!」
まずは下駄から、修行しねぇと。
ふぉん♪
『>流石にそろそろ、この迷路構造を抜けだし、ミギアーフ・モソモソ氏やナーフ・アリゲッタ嬢を探しに行』
ふぉん♪
『シガミー>良いから下駄を、寄越せ!』
§
ガラランッ、コロンッ♪
迅雷が取り出した下駄を、履いてみる。
普通の下駄だが、相当良いもんじゃね?
「これひょっとして……巨木をくり抜いた奴か?」
「ハい、以前作成シた下駄ト同ジ寸法で、材質ヲ堅木ヤ電解鉄でナく巨木に変更シました」
どががぁん――山道に埋め込まれてる平石を、力一杯踏んでやる。
ゴバキャッ――石の方が割れちまった。
堅さは申し分ねぇな。
がんがらん、ゴガガガゴゴゴォン!
地を踏んでみた。
「良いじゃねぇーか♪」
「ばかねぇー、歩く度にがらんがらん音を立ててたら、それだけで大目玉食らうわよぉん?」
もっともだぜ。まずリオにどやされる。
けど仕方ねぇ。物事には順序《じゅんじょ》ってもんがあらぁ。
お山じゃ、大抵これだった。
「デは、草履とイうのがベストナのデは?」
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