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5:大森林観測村VSガムラン町
594:悪逆令嬢ロットリンデ、僧草と高級菓子店のおかしと御神体
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「――それは、私たちの恋心~~♪」
後頭部が柔らけぇ?
それに何処までも透き通る、天上の調べが実に心地良いぜ。
何だか、良いにおいもするし――
「あら、起きましたのね? 小猿♪」
ふわぁーんと漂う甘い香りに誘われ、目を開けると――
おれはとんでもなく綺麗な大申女に、ひざ枕をされていた。
「誰が小猿か、おれぁシガミーだっぜ!」
おれは飛び起き、傍らに落ちてた錫杖に飛びついた!
そのまま腕の力で、だぁぁんと蜻蛉を切る。
くるるん――じゃっりぃぃん♪
「そんな名でしたわね、小猿♪」
ゆっくりと起き上がる、ご令嬢……いや、御簾路頭・厘手。
それにしてもさっきのは、とても大申女から出て良い歌声じゃなかった。
こういうのを、詠唱魔法具にした方が良いよなぁ。
少なくとも、〝ガムラン支部のうた〟よりゃぁよぉ。
ちなみに体つきは……リオレイニアと、ほとんど同じだった。
大申なのは、あの怪力と、爆発する高等魔術と、横柄で凶暴な性格だけだ。
こぽぽん♪
見れば茶の用意――火に掛けた茶瓶と、菓子が机に置かれてる。
優雅なもんだと思ったが――
壊れた机を、地面に刺した鉄棒で支えてるから、ちと斜めになってた。
茶瓶を乗せた鍋敷きには、細かな模様の〝魔術の神髄〟が描かれている。
間違いなく古代魔術だ。
けど大道芸をするわけでもねぇんだし……生活魔法を使った方が――
便利じゃね?
「これ斜めになってるじゃねぇーか。手持ちのと取り替えるぞ?」
じりじりと近づき、斜めになった側を持ち上げ――ヴッ♪
ゴドンガトン、ガタガタタッ♪
腰の収納魔法具板から、新しい机と椅子を取り出した。
修繕のスキルを使うにも、偽のシシガニャンや大申女に吹っ飛ばされて――
ほとんど跡形も残ってねぇんだから、仕方あるまい。
それと相手の思惑も気になるから、此方のスキルは極力隠しておく。
ガチャガチャン♪
湯気を立てる茶瓶と取っ手が付いた湯飲みは、無事新しい机に乗った。
「しゅ、収納魔法!? きゅ、宮廷魔導師――!?」
机を取り替えると、ガラァーンと鉄の魔法杖が倒れた。
駆け寄り、手を延ばすミスロット。
ガッシャリィィン――――くるる、ぱしん♪
おれは錫杖の鉄輪で、ソレを回収した。
「――じゃねーぞ。おれぁ、料理人で商人で薬草師だ」
今は、給仕の格好をしてるから、丁度良いやな。
どうせなら猪蟹屋の法被と、前掛けでも欲しいところだが。
こぽぽぽごぽぽぽっ、ごっぼわっ♪
「こりゃいかん、火を止めてくれやぁ!」
湯が沸きやがった。
§
「私は、この先の土地を開拓して、生計を立てていますわ」
カチャ――すぅ♪
リオレイニアの、ぴんと伸びた姿勢。そして所作。
令嬢というのは、本当らしいぜ。
「ふぅ、女将さんを知らねぇとなると、話が始まらんのだが――おれはあんたらと商売の話をしに来たんだで、ごぜぇますわぜ」
ガチャン――ずずずずずぅぅっ♪
こりゃ旨ぇ茶だな。リオが旨い菓子があるときにだけ、入れてくれる奴だ。
「まったく、本当に行儀がなってませんわね。それで小猿は、どちらからいらしたんですの?」
「央都だ。店はガムラン町……魔物境界線にある」
「魔物境界線ってたしか、大陸の外れだったかしら? そんな遠くからの方陣結界を描ける人が、まだ居たのねー」
カチャッ――すすすぅー♪
「秘苦徒瓦無……てのわ知らんがぁ、央都からだからぁ――近くのレイド村まで女神像で飛んで、山道を歩いて――すぐだぜ」
盗賊や大申に、襲われたのわぁよぉ?
「女神像? ふむぅーふぅん……随分と昔に聞いたような気もしますけれど……何だったかしら?」
「へぇー、美の女神を祭神とする〝イオノフ教〟に、入信してねぇ奴に会ったのは初めてだぜ♪」
大申女と侮れんかもしれん。中々どうして、見所がありやがる♪
「まぁ何にしても、こんな最果ての隠れ里に、ご入り用のお品が有るだなんて、とても信じられませんわあ?」
カチャ――コトン♪
空になった、取っ手の付いた湯飲みを置き――
茶瓶へ手を延ばす、御簾路頭。
「子細まるでかみ合ってねぇ気もするがぁ、〝僧草〟とかいう茶葉を買い付けに来たのは本当だぜ?」
おれにもおかわりをくれやぁ――ガチャン♪
「ソッ草? ソレでしたら――」
茶瓶の中身を、道ばたに投げ捨て――
茂みまで歩いて行き――ぶちぶちりっ!
無造作に毟られる、下草。
それを軽く揉みほぐし、茶瓶へ――ぽいと投げ入れる。
ガシャン♪
次に取り出した四角い……魔法具か?
おれの酒瓶くらいの大きさの、それに銅貨を――カチャリン♪
「何だぜそいつわぁ……魔法具かぁ?」
金を取る魔法具ってこたぁ、ルコルの〝上級《じょうきゅう》鑑定箱〟と同じ類いか。
「あら、良くわかったわね。さあ箱――お湯を、お出しなさいな♪」
ぐつぐつぐつ――――ピヒィィィィィィィィッ♪
「うるせぇ!」
耳を劈く怪音、けたたましい鳥の鳴き声。
耳を押さえて、箱を睨みつけてやる。
すると大申……いや、御簾路頭が、箱を傾けると――
こぽぽぽぽぽぽぽん♪
沸き立つ湯から、湯気が立ち上った。
そう、魔法具箱から出てきたのは――ただの、お湯らしい?
つまり――生活魔法具ってことか?
カチャリと差し出される、おれの湯飲み。
たしかに、大講堂で嗅いだ香りは、こんなだった気がする。
「こちらもどうぞ、小猿」
だから小猿じゃねぇ。
差し出された茶菓子は、随分と凝ったもので――
リカルルが執心の、高級菓子店のに似てた。
「うめぇ♪ やっぱり流石は央都のお貴族さまが、取り合いをするだけのことわぁあらぁな♪」
「あー、何だか持て囃されているようですけれど……村ではスープの出汁くらいにしか、使っていませんわねー」
「もったいねぇなぁ、是非売ってくれ!」
ガチャン――ずずずずずぅぅっ♪
これで十分だろうがよぉ――――ばりばり、もぐもぐ♪
菓子も、超旨ぇ!
「そう言われましてもねぇ。央都のお歴々が欲しがる最高級品質を、選り分けられる目利きは――一人しか居ないんですもの。流通させる量には、限界があると思わなくて?」
カチャッ――すすすすすぅー♪
「あーぁ? ぅうぅーむ?」
ガチャン――ずずずずずぅぅっ♪
下手なことを言って、女将さんや央都のお歴々や――
五百乃大角の思惑を、外しちまったら――目も当てられん。
ばりばり、もぐもぐ♪
まったく、こんな時に五百乃大角の野郎さまわぁ――
何をやってやがるのか――ごそり。
懐から御神体さまを、取り出した。
女神像の台座に置かれてるわけじゃねぇのに――『(ㅍ_ㅍ)』
まだ白目を剥いたままだ。
おれは茶瓶の横に、御神体像を並べて置いた。
香りに釣られて、目を覚ますかもしれんしな。
「これってまさかっ、何だったかしらえっと、そうでしたわ――――女神粘土ぉっ!?」
美の女神御神体に飛びつく、悪逆非道と噂されてる御簾路頭。
迅雷が起きねぇーと名が表示されんから、いちいち覚えておかねぇといかん。
「よく知ってや――あっ、じゃぁやっぱり! お前さまわぁ、神々の世界の生まれ――後の世の、日の本生まれだなぁ!?」
〝ねがみめんど〟てのわぁ、この来世には無ぇ物だぜ!
後頭部が柔らけぇ?
それに何処までも透き通る、天上の調べが実に心地良いぜ。
何だか、良いにおいもするし――
「あら、起きましたのね? 小猿♪」
ふわぁーんと漂う甘い香りに誘われ、目を開けると――
おれはとんでもなく綺麗な大申女に、ひざ枕をされていた。
「誰が小猿か、おれぁシガミーだっぜ!」
おれは飛び起き、傍らに落ちてた錫杖に飛びついた!
そのまま腕の力で、だぁぁんと蜻蛉を切る。
くるるん――じゃっりぃぃん♪
「そんな名でしたわね、小猿♪」
ゆっくりと起き上がる、ご令嬢……いや、御簾路頭・厘手。
それにしてもさっきのは、とても大申女から出て良い歌声じゃなかった。
こういうのを、詠唱魔法具にした方が良いよなぁ。
少なくとも、〝ガムラン支部のうた〟よりゃぁよぉ。
ちなみに体つきは……リオレイニアと、ほとんど同じだった。
大申なのは、あの怪力と、爆発する高等魔術と、横柄で凶暴な性格だけだ。
こぽぽん♪
見れば茶の用意――火に掛けた茶瓶と、菓子が机に置かれてる。
優雅なもんだと思ったが――
壊れた机を、地面に刺した鉄棒で支えてるから、ちと斜めになってた。
茶瓶を乗せた鍋敷きには、細かな模様の〝魔術の神髄〟が描かれている。
間違いなく古代魔術だ。
けど大道芸をするわけでもねぇんだし……生活魔法を使った方が――
便利じゃね?
「これ斜めになってるじゃねぇーか。手持ちのと取り替えるぞ?」
じりじりと近づき、斜めになった側を持ち上げ――ヴッ♪
ゴドンガトン、ガタガタタッ♪
腰の収納魔法具板から、新しい机と椅子を取り出した。
修繕のスキルを使うにも、偽のシシガニャンや大申女に吹っ飛ばされて――
ほとんど跡形も残ってねぇんだから、仕方あるまい。
それと相手の思惑も気になるから、此方のスキルは極力隠しておく。
ガチャガチャン♪
湯気を立てる茶瓶と取っ手が付いた湯飲みは、無事新しい机に乗った。
「しゅ、収納魔法!? きゅ、宮廷魔導師――!?」
机を取り替えると、ガラァーンと鉄の魔法杖が倒れた。
駆け寄り、手を延ばすミスロット。
ガッシャリィィン――――くるる、ぱしん♪
おれは錫杖の鉄輪で、ソレを回収した。
「――じゃねーぞ。おれぁ、料理人で商人で薬草師だ」
今は、給仕の格好をしてるから、丁度良いやな。
どうせなら猪蟹屋の法被と、前掛けでも欲しいところだが。
こぽぽぽごぽぽぽっ、ごっぼわっ♪
「こりゃいかん、火を止めてくれやぁ!」
湯が沸きやがった。
§
「私は、この先の土地を開拓して、生計を立てていますわ」
カチャ――すぅ♪
リオレイニアの、ぴんと伸びた姿勢。そして所作。
令嬢というのは、本当らしいぜ。
「ふぅ、女将さんを知らねぇとなると、話が始まらんのだが――おれはあんたらと商売の話をしに来たんだで、ごぜぇますわぜ」
ガチャン――ずずずずずぅぅっ♪
こりゃ旨ぇ茶だな。リオが旨い菓子があるときにだけ、入れてくれる奴だ。
「まったく、本当に行儀がなってませんわね。それで小猿は、どちらからいらしたんですの?」
「央都だ。店はガムラン町……魔物境界線にある」
「魔物境界線ってたしか、大陸の外れだったかしら? そんな遠くからの方陣結界を描ける人が、まだ居たのねー」
カチャッ――すすすぅー♪
「秘苦徒瓦無……てのわ知らんがぁ、央都からだからぁ――近くのレイド村まで女神像で飛んで、山道を歩いて――すぐだぜ」
盗賊や大申に、襲われたのわぁよぉ?
「女神像? ふむぅーふぅん……随分と昔に聞いたような気もしますけれど……何だったかしら?」
「へぇー、美の女神を祭神とする〝イオノフ教〟に、入信してねぇ奴に会ったのは初めてだぜ♪」
大申女と侮れんかもしれん。中々どうして、見所がありやがる♪
「まぁ何にしても、こんな最果ての隠れ里に、ご入り用のお品が有るだなんて、とても信じられませんわあ?」
カチャ――コトン♪
空になった、取っ手の付いた湯飲みを置き――
茶瓶へ手を延ばす、御簾路頭。
「子細まるでかみ合ってねぇ気もするがぁ、〝僧草〟とかいう茶葉を買い付けに来たのは本当だぜ?」
おれにもおかわりをくれやぁ――ガチャン♪
「ソッ草? ソレでしたら――」
茶瓶の中身を、道ばたに投げ捨て――
茂みまで歩いて行き――ぶちぶちりっ!
無造作に毟られる、下草。
それを軽く揉みほぐし、茶瓶へ――ぽいと投げ入れる。
ガシャン♪
次に取り出した四角い……魔法具か?
おれの酒瓶くらいの大きさの、それに銅貨を――カチャリン♪
「何だぜそいつわぁ……魔法具かぁ?」
金を取る魔法具ってこたぁ、ルコルの〝上級《じょうきゅう》鑑定箱〟と同じ類いか。
「あら、良くわかったわね。さあ箱――お湯を、お出しなさいな♪」
ぐつぐつぐつ――――ピヒィィィィィィィィッ♪
「うるせぇ!」
耳を劈く怪音、けたたましい鳥の鳴き声。
耳を押さえて、箱を睨みつけてやる。
すると大申……いや、御簾路頭が、箱を傾けると――
こぽぽぽぽぽぽぽん♪
沸き立つ湯から、湯気が立ち上った。
そう、魔法具箱から出てきたのは――ただの、お湯らしい?
つまり――生活魔法具ってことか?
カチャリと差し出される、おれの湯飲み。
たしかに、大講堂で嗅いだ香りは、こんなだった気がする。
「こちらもどうぞ、小猿」
だから小猿じゃねぇ。
差し出された茶菓子は、随分と凝ったもので――
リカルルが執心の、高級菓子店のに似てた。
「うめぇ♪ やっぱり流石は央都のお貴族さまが、取り合いをするだけのことわぁあらぁな♪」
「あー、何だか持て囃されているようですけれど……村ではスープの出汁くらいにしか、使っていませんわねー」
「もったいねぇなぁ、是非売ってくれ!」
ガチャン――ずずずずずぅぅっ♪
これで十分だろうがよぉ――――ばりばり、もぐもぐ♪
菓子も、超旨ぇ!
「そう言われましてもねぇ。央都のお歴々が欲しがる最高級品質を、選り分けられる目利きは――一人しか居ないんですもの。流通させる量には、限界があると思わなくて?」
カチャッ――すすすすすぅー♪
「あーぁ? ぅうぅーむ?」
ガチャン――ずずずずずぅぅっ♪
下手なことを言って、女将さんや央都のお歴々や――
五百乃大角の思惑を、外しちまったら――目も当てられん。
ばりばり、もぐもぐ♪
まったく、こんな時に五百乃大角の野郎さまわぁ――
何をやってやがるのか――ごそり。
懐から御神体さまを、取り出した。
女神像の台座に置かれてるわけじゃねぇのに――『(ㅍ_ㅍ)』
まだ白目を剥いたままだ。
おれは茶瓶の横に、御神体像を並べて置いた。
香りに釣られて、目を覚ますかもしれんしな。
「これってまさかっ、何だったかしらえっと、そうでしたわ――――女神粘土ぉっ!?」
美の女神御神体に飛びつく、悪逆非道と噂されてる御簾路頭。
迅雷が起きねぇーと名が表示されんから、いちいち覚えておかねぇといかん。
「よく知ってや――あっ、じゃぁやっぱり! お前さまわぁ、神々の世界の生まれ――後の世の、日の本生まれだなぁ!?」
〝ねがみめんど〟てのわぁ、この来世には無ぇ物だぜ!
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