滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

５９９：悪逆令嬢ロットリンデ、チラシと身の証

『キャンプ設営・運営は
　宿泊とお食事のプロにお・ま・か・せ❤
　宿屋ヴィフテーキ食堂
　後援：コッヘル商会』
　随分と古びた絵草紙チラシ。

　そんな物ものを、差し出された。
　また迅雷ジンライも五百乃大角いおのはらも使つかえん以上いじょう、おれが一人ひとりで相手あいてをするしか有るまい。
　しかし、さっきの山道やまみちで女将おかみさんが話はなしてた『ヴィフテーキ食堂しょくどう』て名が、書いて有りやがるぞ。
　それに女将おかみさんの実家じっかの大商店おおだなの名も、書いて有んじゃねぇーかぁ！

「やっぱり、女将おかみさんの名が書いてあるじゃんかょお！　おれぁ、その人ひとの紹介しょうかいでぇ此処ここに来たんだぜ!?」
　チラシをパンと、叩たたいてみせる。
　おれわぁ、怒おこっているのだぜ。

「名って、コッヘル商会しょうかいのことかい？」
　一番下いちばんしたの列れつを指ゆびさす、若わかくもない衆しゅう。
「そうだぜ！　おれぁさっき〝刀汝とうな・コッヘル〟って名を出したがぁ、梨なしの礫つぶてだったじゃんか！」
　おぅおぅ、どう落とし前まえを付けてくれるんだぁ？

「先さきほど小猿こざるが言っていたのは――たしか、〝トウナコ・バラヘル〟でしてよ？　私わたくしはそんな方かたのことは、存ぞんじ上げませんわ？」
　おれを睨にらみつける、御簾路頭厘手ミスロットリンデ。 
「えーっと、ロットリンデさぁ。それさぁ、どう考かんがえてもさぁ――〝トゥナ〟の事ことだよね？」
　そんな助たすけ船ぶねを出してくれる、えーっと――確たしかか〝銃吼じゅうく〟だ。

「そういえば小猿こざるは、ガムラン町ちょうから来たと、言っていたかしら？」
「小猿こざるじゃねーぞ。シガミー・ガムラ――あっ！」
　此処ここで漸ようやく、思おもい至いたった。
　この話はなしが分かる若わかくもない衆しゅうと、話はなしが通つうじねぇ大申女おおざるおんなに、おれがどういう奴やつかを知ってもらうなら。

　ぱたん――懐ふところから取り出したのは、冒険者ぼうけんしゃカードだ。
　ＬＶレベル１００だと知られるわけには、いかんから――
　ＬＶレベル４６に偽装ぎそうした奴やつだが。

　切れると蘇生薬エリクサーと同おなじ効果こうかがある、魔法具まろうぐの紐ひも。
　それごと首くびから外はずし、金きんぴかの板いたぺらを手渡てわたした。

『シガミー・ガムラン　ＬＶ：４６
　薬草師★★★★★　／状態異常無効／生産数最大／女神に加護／七天抜刀根術免許皆伝
　　　　　追加スキル／遅延回収／自動回収／自動回復／体力増強／上級鑑定
　　　　　　　　　　／自爆耐性／解析指南／超料理術
　――所属：シガミー御一行様』
　誰彼構だれかれかまわず見せて良い物ものではないと、リオから言われているが――
　もう腹はらを割れるわけ割って見せて、信用しんようしてもらうしかねぇ。

「ガムランってことはガムラン町ちょうに、縁えんのある子供こどもなんだね♪」
　〝銃吼じゅうく〟は屈かがんで、おれを見る。

「まぁなぁ。一応いちおう、町まちでは多少知たしょうしられた名だと思おもうぜ」
　本当ほんとうは縁えんも縁ゆかりもねぇーがぁ、こいつぁ方便ほうべんだ。

「金色きんいろってことは小猿こざるは、その歳としで――元宮廷もときゅうてい魔導師まどうしの商会長しょうかいちょうと、同格どうかく!?」
　〝銃吼じゅうく〟から冒険者ぼうけんしゃカードをひったくる〝大申女ミスロット〟。

「まぁなぁ。一応いちおう、変異種バリアントや伝説でんせつの魔物まものみてぇな奴やつを、狩ったこともあるぜ」
　それでもこの細っこい女おまえさまにゃぁ、まるで敵かなわなかったわけだが。

　ありゃ、それおかしくね？
　おれぁ本当ほんとうは、ＬＶレベル１００な訳わけで……それでも勝てん相手あいてってなぁ、どういうことだ？
　うぅーん？

「ほら、トゥナは前まえに帰かえってきたときに、「央都おうとの仕事しごとを引退いんたいして、ガムラン町ちょうに行く」って言ってたじゃないか」
　よくわからんが、やっと女将おかみさんの名が通つうじたらしい。
　若わかくない衆しゅうがおれの首くびに紐ひもを掛け、冒険者ぼうけんしゃカードを返かえしてくれた。

「ふぅ、わかりましたわ。村むらまで連れて行きますが、逃げるんじゃぁありませんわよ、小猿こざる？」
　おれの日本刀かたなと女神御神体いおのはらと、取り上げられた腕時計うでどけいを抱かかえ、満面まんめんの笑えみを浮かべる――大申女ミスロットリンデ。

「わかったぜ！　その代わりそっちも、その御神体ごしんたいさまを、ちゃんと返かえせよ？」
　刀かたなはいくらでも、同おなじ物ものが作つくれる。
　五百乃大角いおのはらが生きていた後のちの世の事ことがわかる、【地球大百科ちきゅうだいひゃっか辞典じてん】スキル。
　アレに載ってる刀かたなの拵こしらえなら、どれでも貼り付けるだけ・・・・・・・で作つくれる。

　けど御神体ごしんたいは、五百乃大角いおのはらの虎とらの子のＭＳＰメガミスキルポイントを使つかわねぇと、作つくれんし――
　その大元もとになる一個いっこを奪うばわれたら、五百乃大角いおのはらが消えちまいかねん。

「こらっ、こどもから玩具おもちゃを取り上げるなんて――僕ぼくは、そんな悪わるい奴やつと寝食しんしょくを共ともにするなんて、ご免めんだからねっ？」
　仁王立におうだちの、若わかくもない衆しゅう。

「んなっ、ち、違ちがいますのよ！　これは私わたくしが、生前せいぜんの記憶きおくを取り戻もどして――――あー、もうっ！」
　抱かかえていた物ものを全部ぜんぶ、突っ返かえしてきたから――
「刀かたなと腕時計うでどけいはくれてやる。この丸まるっこい根菜みたいなのは・・・・・・・・、ウチの店みせの御神体ごしんたいなんだ。これだけは返かえしてくれやぁ」
　ガシリとつかんで、すぽんと引っこ抜いた。

　腕時計うでどけいの中なかには、轟雷ごうらいと強化服きょうかふく１０号改ごうかいが入はいってるから、くれてやる訳わけにはいかんのだが――
　アレはおれの指先ゆびさきを当てなければ取り出せないから、このまま預あずけておく。
　あとで皆みんなと合流出来ごうりゅうできたときに、おにぎりの収納しゅうのう魔法具箱《まほうぐばこ》にでも、回収かいしゅうすれば良い。

　日の本もとに関かんすることを、今いまおおっぴらに言うわけにも行かんし、向こうも言ってこねぇ。
　兎に角かく、先さきに女神御神体いおのはらを確実かくじつに回収かいしゅうする。

「ごめんなぁ。このおばさ……おねぇさんは、少すこしおかし――!?」
　ぼっご、ぼごぉん！
　腕時計うでどけいをはめ、日本刀にほんとうを腰こしの道具どうぐベルトに刺した――おねぇさんとやらの手から。
　ぼぼごごっ、ぼぼぼごごごぉぉん♪
　爆発マナがあふれ出ている。

「お――お菓子作かしづくりが、得意とくいなんだよねぇー♪」
　へらへらと締まらない顔かおで、その場を取り繕つくろう様さまにも――
　やっぱり超ちょう、見覚みおぼえがあった。
　（ニゲル青年せいねんの１０年後ねんごを、見ているようです）
　言ってやるな。

「そ、それで、トゥナ・コッヘルは元気げんきにしてるのかい？」
「おぅよ♪　今朝けさも、魔導騎士団まどうきしだんの連中れんちゅうを、震ふるえ上がらせてたぜ♪」
　せいぜい、面白おもしろい話はなしをしてやるかな。
　震ふるえ上がらせてたのは、本当ほんとうだし。

「ふふふっ、変わりないみたいだよ、ロットリンデ♪」
　ふぅ、場が和なごんでくれるなら――
　舞う大おおきな木さじに翻弄ほんろうされてた連中れんちゅうも、浮かばれるだろう。

「当然とうぜんですわね、この私わたくしに土つちを付けたのは、貴方あなたとトゥナと――あの魔女だけ・・・・・・ですもの！」
　ぼっご、ぼごぉん！
　あれ、火に油あぶらでも注そそいじまったか？

　何なんか手持てもちで使つかえる物ものでも、がさごそ。
　ヴッ、ヴヴッ――――何なにも残のこっちゃいねぇ。
　腕輪うでわの中身なかみは粗方あらかた、ばら撒いちまったからな。

　がさごそ、ぱたぱたたっ――おっ？
　刀かたなを差すために巻いておいた革紐かわひもを探さぐったら――
　小ちいさな収納魔法具しゅうのうまほうぐに、何なにかが入はいってた。

　ぱたん。
　それは何なんかで入れっぱなしにしてた、詠唱魔法具ブロマイドだった。
「こいつぁ、ウチの店みせで作つくった……声こえが出るだけの、板いたぺらだ」
　しかも、リカルル柄・・・・・のやつ。

「それっ!?　ちょっと、お寄越よこしなさいませ！」
　大申女ミスロットに、詠唱魔法具ごみを奪うばわれた。

　手元てもとを叩はたかれたおれは、五百乃大角いおのはらを放ほうり出しちまう。
　御神体ごしんたいは山道やまみちに敷かれた、平石ひらいしに当たり――スコーン♪
　イオノフ教きょうご祭神さいじんは、面白おもしろい程ほどに良く跳ねた。