滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６００：悪逆令嬢ロットリンデ、収納魔法破られる

「危あぶない――！　気をつけてよ、ロットリンデ！　これ相当高価そうとうこうかな置物おきものだよ！」
　若わかくもない衆しゅうが、女神御神体めがみごしんたいさまをキャッチ！

　いや、それ絶対ぜったいに壊こわれんし、取り憑いてる惡神わるがみを考かんえりゃ価値かちなんざ有るのかねぇのか、わからん。
　ただ同おなじ形かたちの置物おきものを作つくるだけなら……ニゲルの安物やすものの聖剣せいけんよか、安やすく作つくれるぜ。

「これっ！　私わたくしが持っていたプレイヤーに、似ていますわぁっ♪」
　即座そくざに押される『►ボタン』。

「〽魔物まものと見れば、追いかけろ！
　　地割じわれれに大雨おおあめ、逃げかえろ！
　　ヴァリィアァントなにそれ、うまいのかぁ？
　　おれたちゃガムラン！
　　おれたちがガムランランララン！」

「一体いったいなんですのこの……勇いさましい曲きょくはっ!?」
「何なんだろうね？」
　困惑こんわくに顔かおを、歪ゆがませる二人ふたり。

「冒険者ぼうけんしゃギルドガムラン支部しぶの歌うただぜ」
　辺境伯とのさんからは禁止きんしされてるが、ご令嬢むすめが率先そっせんして広ひろめてやがる――
　超曰ちょういわく付きの歌うただ。

「〽大おおきな魔物まものは、取り囲かこめ！
　　火山かざんに毒沼どくぬま、近寄ちかよらぬ！
　　ヴァリィヴァヴァーリ、バリバリリィィィッ？
　　おれたちゃガムラン！
　　おれたちがガムランランララン！」

「カ、カスですわね。一体いったいどういうおつもりで、こんな曲きょくを作つくられましたのかしら？」
「けど、命いのちを粗末そまつにしない、良い歌詞かしだよ？」
　物議ぶつぎを醸かもしてやがるぜ。
「あー、作つくった本人ほんにんが、そう言ってやがったな」
　姫さんリカルルは、アレはアレで一応いちおぷ……ガムランの町民みんなを、大事だいじに思おもってるのだ。

「〽今日きょうは朝あさから、出くわした！
　　森もりの主ぬし、山やまの主ぬし、空そらの主ぬし！
　　エマージェンンシィ、ヌシジェンシィー！
　　おれたちゃヴォッヘッヘェッ！
　　ウホウホホホォヴォヘェヘェェェェッ――――♪」

「うぐぷひっ――――!?」
　くの字に折れ曲がる、若わかくもない衆しゅう・銃吼じゅうく。
　そうだろう、「ぼへへぇ」はねぇぜ。

「〽大おおきな魔物まものは、取り囲かこめ！
　　火山かざんに毒沼どくぬま、近寄ちかよ――ブッツ！」
　もう一度いちど、『►ボタン』を押して止める――同おなじく若わかくもない、ご令嬢れいじょう・御簾路頭厘手ミスロット・リンデ。
　使つかい方かたを知ってるようだな。
　てぇなるとぉ、ニゲルと同おなじくらいの後の世から来た・・・・・・・と考かんがえておくか。

　おれや妖弧ルリーロばけぎつねさまは、もっと古ふるい戦国せんごくの生まれだ。
　神々かみがみの世界せかい……神々かみがみの船ふねで五百乃大角いおのはらが帰る世界は・・・・・――一番いちばんとおい時代じだい。
　たぶん本当ほんとうの、日の本もとの時間じかん……現代げんだい――２２２２年ねんとやらの日の本もとだ。

「とんでもないカス曲きょくですけれど、このプレイヤー自体じたいは、とても気に入りましたわ♪」
　リカルルの絵が描えがかれた詠唱魔法具ブロマイドを、嬉うれしそうに懐ふところにしまうご令嬢ミスロット。
「こらっ、また！」
　若わかくもない衆しゅうは、本当ほんとうに人間にんげんが良く出来できてる。
　ニゲル同様どうよう、報むくわれてなさそうだが――
　こうして高貴こうきな身分みぶんの気の強つよい女おんなに進言しんげんする、その男気おとこぎには痛いたみ入るぜ。

「いや、そいつぁ売り物ものだし高たかいもんじゃねぇし、いくらでもくれてやるでますわぜ」
　前掛けエプロンを軽かるくつまみ、片足かたあしを引いて腰こしを落とした。

「良いでしょう、トゥナの紹介しょうかいというのは、本当ほんとうのようですし――我が国くにへ招待致しょうたいいたしますわ♪　ジューク！」
　パチリと指ゆびを鳴らす、ご令嬢れいじょう・ミスロット。

「わかったよ。封鎖空間ふうさくうかんを開けるから、巻き込む風かぜに気をつけてね」
　ヴッ――パタパタガシャガシャ。

「うぎゃ――ぁ!?」
　神々かみがみの色いろんな、とんでもねぇ魔法具まほうぐに慣れたおれでも――
　此これには、度肝どぎもを抜かれた。
　
　景色けしきが板いたに描えがかれた、〝絵〟になり――
　辺りが・・・雪崩なだれ、折りたたまれていく・・・・・・・・・。

「ぅわっ、狭せめぇ！　押しつぶされちまわぁ！」
　ヴッ――すかっ!?
　腰こしの日本刀かたなを抜くより早《はや》いと、思おもったんだが――
　どこかに落としたのか、錫杖しゃくじょうは出なかった！

　ゴッファァ――――！
　風かぜに舞う、木の葉や木くず。

「迅雷ジンライ迅雷ジンライ五百乃大角いおのはらぁ――――ぁ!?」
　ヴッ――この感覚かんかくは!?
　収納魔法具しゅうのうまほうぐに仕舞しまうとき、掌てのひらに伝つたわる感触かんじ。
　そんなので、全身ぜんしんが覆おおわれていく。

　パタタタッ、パタタタタタン――――♪
「うわっひゃい！」
　足下あしもとを見れば、おれの酒瓶さかびんくらいの大おおきさの箱はこが――
　おれたちを避けて・・・、転がり集まりガガガッガガッチャン♪
　男性ジュークの手に収おさまった。

「まさかそれっ!?　収納魔法具しゅうのうまほうぐかぁ!?」
　しかも景色けしきが、丸ごと・・・入はいるような奴やつ。
　おにぎりが背負せおう収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこも、辺あたり一面いちめんの土塊つちくれを格納出来かくのうできるがぁ――
　収納魔法しゅうのうまほうの中なかに人ひとっていうか生き物・・・は、入はいれねぇ筈はずだろぉ！

　どうなってやがる!?
　今いままでおれが居た、偽の道・・・てぇのわぁ――どうやらあの、収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこだったらしいぜ!?
　迅雷ジンライ迅雷ジンライ五百乃大角いおのはらぁ――今いますぐ出てきて、おれにもわかるように説明せつめいしろやぁ！

　チチチピッ――小鳥ことりが鳴いた。
　気づけば派手はでな作つくりの門構もんがまえ、その真ん前まえに居た。

『おいでませ大森林観測村
　ファンキー・フカフ村へようこそ』
　なんて書いて有りやがる。

　大森林だいしんりん観測村かんそくむらだぁ？
　フカフ村むらとも、書いて有りやがるし！
　そしてどっちにしろ、〝国くに〟じゃなくて〝村むら〟じゃねーか！

「ぬっっひょろぉぉぉぉぉぉぉおぉっぉっ!?」
「きゃひゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぅっ!?」
　うるせぇ声こえに振り向けば――ぽきゅぽきゅむん♪
　『１８』番ばんと『１９』番ばんの特撃型改とくげきがたに抱かかえられた、おっさんと神官女性うるさいのが目を見開みひらいてやがる。
　なんで背を向けて、坂を上って・・・・・やがるんだぜ？

「（あーっ!?　シガミーたち居たぁー!!!）」
　うるせぇ。とおくから生意気な子供レイダの声こえが、聞こえて来やがる。
　おっさんたちの背後はいご。
　えらく長ながい坂道さかみちを上のぼってくる、シシガニャンたちの群れが見えた。