滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６２６：大森林探索行、成体ファローモの生態その２

「だから、おれぁ虫むしじゃねぇ――ずずずぞぞぉー♪」
　仕方しかたがねぇから、茶ちゃを啜すする――頭あたまの中なかで。

「い＠いえ、あなたは――紛まぎれもなく、樹界虫きかいちゅうですよ」
　すすすぅー、ぷはぁ♪
　おれが頭あたまの中なかで入れた茶ちゃを、飲んでくれてる気がする――頭あたまの中なかで。

　実際じっさいには、そんな気がしているだけで、本当ほんとうに誰だれかと顔かおをつきあわせて――
　茶ちゃを啜すすっているわけじゃない。

「じゃぁ、おれがその虫むしってことで良いや――」
　歩く森もりのぬしから見たらおれなんざ、虫螻むしけらには違ちがいねぇ。

「――お前まえさんの娘むすめわぁ、フカフ村むらの村長そんちょうに言えば、すぐにでも外そとに出して貰もらえるから――」
　あの若わかくもねぇが年寄としよりでもねぇ村長ジュークは、二股角娘ファロコのことを大事だいじにしていたと思おもう。

「い＠えもう娘むすめは森もりへ、戻もどってきました。安心あんしんですね」
　ほぅと息いきを吐く、森の主おとこのこえのおんな。

「そーなの？　あ、これどうぞ、ウチで作つくってる饅頭まんじゅう……菓子かしだ」
　目のまえに置かれた紙箱かみばこを開けて、そっと差し出す――頭あたまの中なかで。

「菓子かし？　菓子かしというのは確たしか、名店めいてんロットリンテールの――甘あまい゛物ものでば？」
　ぅぞっぞぞぞっわっ――――辺あたりに生い茂しげる木の根や蔦つたが、騒ざわめいた。
「ぅぎゃっ――!?」
　また頭痛ずつうが――――！

「が、がなるな！　な、何なんだぜ!?　そんなに高級こうきゅうな菓子かしがぁ、食いてぇのかぁ!?」
　あの店みせの菓子かしは、土地神とちがみだか森の主エリアボスだかにまで、知れ渡わたってやがるのか？
　うちの饅頭まんじゅうも、それくらいにしてぇもんだぜぇーはぁー！

「失礼＠つれいしました。以前いぜん、供そなえられた、味あじを懐なつかしく思おもいました」
　紙箱はこの中なかを覗のぞき込み、中なかの一ひとつを手に取る――頭あたまの中なかで。
　ちなみに手の先さきは、普通ふつうに人ひとの手のような気がするし――
　額ひたいから生えた小枝こえだには、小ちいさな葉が一枚いちまい生えているような――気がする。

「悪わりぃが、今いまはこれしかねぇ。今日きょうの所ところは此奴こいつで、勘弁かんべんしてくれやぁ」
　おにぎりでも側そばにいりゃぁ、収納魔法具しゅうのうまほぷぐ箱ばこの中なかから、五百乃大角いおのはら用ように確保かくほしておいた奴やつを出してやれたが。

「あ＠ら、おいしい♡」
　饅頭まんじゅうを千切ちぎり口くちへ運はこぶ、土地神エリアボス森の主ファローモ。

　ヴッ――念ねんのため、手持てもちの収納魔法具しゅうのうまほうぐの中なかを探さぐって見るも――
　出てきたのは――収納魔法具しゅうのうまほうぐ｜（小しょう）？

「あれ？　こんなのいつ、入れたっけ？」
　その中身なかみを机つくえの上うえに出してみると、それは猪蟹屋ししがにやの大人気商品だいにんきしょうひん。
　レイダ考案こうあんの、〝兵糧丸ひょうろうがんセット〟だ。

「そ＠れも、菓子かしなのですか？　興味きょうみは尽きませんね？」
　じっと見てやがるから、器うつわの蓋ふたを開けてみせた。
　中なかには握にぎり飯めしみたいな、カラカラに乾かわいた芋粥いもがゆが入はいっている。

　中なかへお湯を注そそぎ――蓋ふたをした。
　本当ほんようは騒々そうぞうしい作つくり方かたも出来できるが、脅おどかさねぇよう――静しずかに作つくる。
　おれは、ありふれた便利粥べんりがゆを、そっと差し出した。

　頭あたまの中なかだから、生活魔法せいかつまほうも普通ふつうに使つかえるが――
　なんでも自在じざいには、出来できねぇ？

　五百乃大角いおのはら、出てこいと思おもっても――
　高級菓子店こうきゅうかしてんの菓子かし、出てこいと思おもっても――
　錫杖しゃくじょうや小太刀こだち、出てこいと思おもっても――
　まるで思おもった通とおりの物ものが、出てきやがらねぇ。

　突然とつぜん、なだれ込む大瀑布だいばくふ――
　流ながされ滝たきから飛び出せば――
　待ち受けるは大蛸おおだこ――
　迅雷ジンライを片手かたてにおれは――
　どう切り込むかを、考かんがえても――

　目のまえの、小枝こえだを生やした女おんなは目を丸くして――
　何事なにごともなく――便利粥べんりがゆを食い始はじめた。

　頭の中かんがえが自在じざいじゃねぇってこたぁ――
　ここは〝おれの頭の中・・・・・・〟なんかじゃぁ――ねぇってことだ。

　便利粥べんりがゆ一人前いちにんまえをペロリと平たいらげた、頭あたまの中なかの女おんなが――

「こ＠の腕前うでまえ。やはりあなたは、とてつもなく樹界虫きかいちゅうのようですね」
　ことりと置かれる、木さじ。

「だから、おれぁ虫むしじゃねぇ――ずずずぞぞぉー♪」
　話はなしは振り出しに戻もどり、おれは又また、茶ちゃを啜すする――頭あたまの中なかで。

　どうにも話はなしが、進すすまなくなった。

「うぅーむ。じゃぁおれが、その虫むしだとして――何なんの用ようだぜ？」
　はぁー、まるでわからんぞ。

「用＠うがあるのは私わたしではありません、樹界虫きかいちゅうです。この森もりの命運めいうんを、担になって下ください」
　ふらふらと揺れていた小枝が・・・、ピタリと止まった。

「はぁ？　どうしておれが森もりの命運めいうんを、担になわなきゃならねぇんだ？」
　仮かりにも前世ぜんせで坊主ぼうずを生業なりわい……というか帰依きえしていた身だぞ。
　こと〝話はなし〟で困る・・たぁ、夢ゆめにも思おもわなかったぜ。

　五百乃大角いおのはらや迅雷ジンライ、ラプトル姫ひめやミャッドにロォグ。
　彼奴あいつらが言うことも殆ほとんどわからんが、よくよく話はなしを聞けば――
　わからないことが、ちゃんとわかる。

　だが森の主こいつぁ――

「シガミー、何言なにいってるのか――さっぱりわからないんだけど？」
　そうだな。
　生意気なまいきな子供こどもが、良いことを言ったぜ。

「安心あんしんしろやぁ。おれにもさっぱりわからん」