滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６３２：グランジ・ロコロ村、森域結界の恐怖

「ちっ、こんなことならぁ真っ先さきにレイド村むらに戻もどって、五百乃大角いおのはらたちを直なおしとくんだったぜ！」
　面倒めんどうなことになった。

「にゃみゃぎゃにゃぁぁぁぁぁっ――――にゃおぉぉぉぅん♪・」
　大森林開拓村②ロコロむらの入り口ぐち、蔓つるで編んだ坂道さかみちから飛び出していく――
　強化服自律型シシガニャンおにぎり一号いちごう。

　黄緑色きみどりいろで目鼻口めはなくちが無い顔かお。
　それが前後逆向まえうしろぎゃくむきに、外そとから戻もどるものだから。
　後うしろ頭あたまに鼻先はなさきの顔つき・・・が現あらわれる。
　それはまるで寄せては返かえす、さざ波なみのように見えて――
　気持きもち悪わるくも、面白おもしれぇことになった。

　早はやい話はなしが、おれたちは――ロコロ村ここから出られねぇらしい。

「おにぎりちゃん！　気持きもち悪わるい！」
　物怖ものおじしない子供ビビビーが、そう言うと――
　おにぎりが村むらと森もりの境目さかいめに立ち止まった。
　ひょっとしたら猫の魔物風おにぎりなりに、心こころを痛いためたのかも知れない。

　すると、村と森の境目なみうちぎわのぶれ・・が、かみ合った・・・・・のか――
　その胴体どうたいが、ぐにゃりと伸びた。
　無数むすうの頭あたまと足あしと腕うで。そして背せなか中に背負せおった、収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこが――
　荒縄あらなわの如ごとく連つらなり、ひょろ長くなった・・・・・・・・体からだのあちこちから突き出て、蠢うごめく。

「「「「「ぎゃーっ!?」」」」」
　こりゃ、村長そんちょうの魔法具箱まほうぐばこの中なかで出合であった、あの狂った強化服たち・・・・・・・・・・より、質たちが悪わりぃ！
　まるで蛸之助おおだこの腕うでか足あしのようになった、おにぎりの姿すがたを目の当たりにした――
　子供こどもと大人おとなの何人なんにんかが、卒倒そっとうした。

「化け猫ねこめぇ――っ!!!　怨霊退散あくりょうたいさん、仏敵必滅ぶってきひつめつ！」
　ヴッ――――スッパァァンッ！
　あまりの気持きもち悪わるさに、張り扇ハリセンで叩たたいたら――
「みゃぎゃにゃやぁー！・」
　ヴッ――――スッパァァッ、パパパパパパッパパパパパパパパパァァッンッ！
　返かえす紙扇かたなで、引っぱたき返かえされた！

「痛っでだたたたただっだだだだだだだぁぁぁぁっ――――!?!?!?!?」
　村むらと森もりの境目さかいめを蠢うごめいていた、無数むすうの強化服おにぎりの体からだが――
　無数むすうの張り扇ハリセンで、おれの頭あたまを打ち下ろした。

　実相しきは最初あたまの一匹いっぴきだけ、残のこりは殆ほとんどが仮相くう。
　本当ほんとうに微かすかな当たり・・・だが、これだけ連つらなられりゃぁ――
　痛いてえし、うぜぇし――この野郎やろう！

「――滅めっせよ！」
　おれが刀印いんを結むすぶと、目鼻口めはなくちのない面つらが――スッパッコォォォォゥン♪
　凹へこんで、火縄ひなわの残響ざんきょうを奏かなでた！

「ウカカッ――ざまあねぇぜ！」
　ぽっきゅむりんと、村むらの境目さかいめから弾はじかれ――
　勢いきおいよく村むらの中なかへ――舞い戻って来やがったごろごろごろろぉん♪

「あっ、ばか――――来んな！」
　ぽきゅむごろどたん♪
　一匹分いっぴきぶんの長ながさに戻もどった、黄緑色の猫の魔物風おにぎりのやろう――
　それに伸し掛かられ、おれは押しつぶされた。

「あはっはははっ♪　あー、気持きもち悪わるかった♪」
「ふぅーっ、かわいいいつもの、おにぎりに戻もどった♪」
　駆け寄る子供こどもたち。

「重おもくはねぇがぁ、邪魔じゃまだっぜっ！」
　藻掻もがくおれに、集あつまる人々ひとびと。
　わいわいわいわい、がやがやがやがや――――!?
　騒然そうぜんのグランジ・ロコロ村むら、入り口ぐち。

　はぁはぁはぁ――！
　必死ひっしに黄緑色きみどりいろから、這い出ると――ふぉん♪
『ホシガミー＞おにぎりさんに先行して頂いて、事なきを得ましたね』
　ふぅぃ、確たしかにな。
　生身なまみで人ひとが、あんな身の毛もよだつような姿すがたを晒さらした日にゃ――
　正気しょうきで居られる筈はずがねぇ。

　森もりの主ぬしが使つかった〝森域結界しんいきけっかい〟とやらは、村長そんちょうの魔法具箱まほうぐばこの――
　何なんだっけか……「えーっと、村長そんちょうさまよぉ？」

「なんだぁい？　ひょっとして――呼・ん・だ・かぁい？」
　切り株壇上かぶだんじょうから、そんな声こえが飛んで来たから見たら――
「「「「こんにちわ、村長そんちょうズです！」」」」
　ドガダァン――♪
　また長髪ながかみの男女だんじょが、姿すがたを現あらわした。

「やかましぃ！　話はなしがあるのは、銃吼村長ジュークそんちょうだぜ！」
　怒鳴どなりつけてやったら、此方こっちの村むらの村長そんちょうたちは――
　大人おとなしく山積やまづみの石ころＳＤＫを、片付かたづけ始はじめた。
　さっき女将おかみさんに、叱しかり飛ばされてたからなぁー。

「何なんだい、シガミーちゃ……シガミー殿どの、ふぉっふぉっふぉ♪」
　また村長訛そんちょうなまりに興きょうじる、ジューク村長そんちょう。
「ふぅ――その爺じいさまめいた話はなしぶりは、しねぇといかんのか？」
　いい加減かげん、煩わずらわしくなってきた。

「うむ、そうじゃよ。前任ぜんにんのフカフ村村長むらそんちょうから――」
　腰こしを曲げる村長ジューク。

　「――儂わしのように、威厳いげんを持って村人むらびとたちを導みちびくのじゃ。決けっして謀略ぼうりゃくや暴力ぼうりょく、ましてや魔導まどうアーツを村政そんせいに持ち込むことのないように精進しょうじんするのじゃぞ、ふぉっふぉっふぉっふぉっ♪」
　生えてない髭ひげを、撫でる村長ジューク。

「――って言って村むらを任まかされたときから、威厳いげんを持って人ひとと接せっしないといけなくなっちゃったからのじゃわい……ふぉっふぉっふぉっふぉ――けっほけほ!?」
　若わかくはねぇが、老人ろうじんと呼ぶには大分だいぶ、早はやすぎるフカフ村村長むらそんちょうが――
　慣れない爺じいさま笑わらいで、咽むせた。

「長なげぇ。威厳いげんてぇのわぁ、他人たにんさまを律りっするための方便ほうべんで……暴力ぼうりょくに他ひかならねぇもんだがぁ――志こころざしは前任共々ぜんにんともども、立派りっぱだぁなぁ」
　魔物境界線まものきょうかいせんであるガムラン町ちょうなら冒険者たちあらくれどもを律りっする、代表さまリカルルが目を光ひからせてる。

「えっ、そうかい？　村長そんちょうとして立派だなんて言われた・・・・・・・・・・のは、初はじめてだよ、うへっへ♪」
　頭あたまを掻き身をよじる、まだ新任しんにんらしいフカフ村村長むらそんちょう。
　威厳いげんはねぇし、口調くちょうも忘わすれてる。

「まあ、頑張がんばってくれや。ソレで聞きてぇことだがよ。森もりの主ぬしがこの村むらに掛けたのは〝封印結界ふういんけっかい〟とかいう、お前まえさまの魔法具箱まほうぐばこと似たような物もんか？」
　やっと本題ほんだいを、切り出せた。

「そうだね。規模きぼが違ちがうだけで、大体同だいたいおなじだよ。けど僕ぼく……儂わしの魔法自販機まほうじはんきが作つくり出すのは、〝封印結界ふういんけっかい〟じゃなくて〝封鎖空間ふうさくうかん〟だ……じゃよ」
　〝封鎖空間ふうさくうかん〟か。偽の山道・・・・の中なかは、何処どこまでも繰り返されて・・・・・・いて――
　近ちかくを彷徨うろつく者ものの姿すがたを――化け物・・・のように変えて、見せやがった。

　村長ジュークの魔法具箱まほうぐばこなら、〝特撃型改シシガニャンと子供こどもらの合わさった、奇っ怪かいでおぞましい姿すがた〟に。
　いまロコロ村むらを覆おおってる奴やつなら、その境目さかいめに立った強化服自律型おにぎりを、〝千切れた・・・・蛸足たこあしみたい〟に。

　手応てごたえはなく、引っ叩ぱたきゃ消える――幻術まやかしの類たぐい。
　日の本生もとうまれなら、狐きつねか狸たぬきに化かされたと思おもう程度ていどのことだが――

「「「「ぅうぅぅーん」」」」
　大だいの大人おとなが見ても倒たおれる程ほどの、質たちの悪わるさ。
　五百乃大角いおのはらが直なおり次第しだい、対策てだてを考かんがえておきたい。

「あなたたちっ、ちょっとお待ちなさいなっ！」
　何なんだっ、うるせぇ!?
　大申女おおざるおんなゲスロットが、喚わめいてやがる！

「――いま、村むらに入はいってこられると――」
　見れば悪逆令嬢ゲスロットさまが、村むらの外そとへ向かって――大おおきく手を振っていた。
　ヴォゥッ――ぶるるるわわわわぁぁん♪
　ウゥォッ、ウゥッォォォゥン――――ぶるぶるぶるるるぶるるるわわわっわぁぁん♪

　大おおきく震ふるえる――モサモサ頭むらびとたち。
　大森林ファンキー観測村①・フカフむらからの来訪者きゃくは何事なにごともなく、大森林観測村②グランジ・ロコロむらへ入はいってきた。
　その大おおきな頭あたまを、面白く揺らして・・・・・・・。

「なぁんでぇい、外そとから入って来られる・・・・・・・分ぶんには――化かされ具合・・・・・・わぁ、大たいしたことねぇじゃんかぉよぉ」
　ふぅ、脅おどかすなってんだぜ。

「何なにを悠長ゆうちょうに構かまえていますの!?」
　大口おおぐちを開ひらき、なおも喚わめく悪逆令嬢ゲスロット。

「――ぷひゅぎゅひ♪」
　そのときリオレイニアが、地に伏した。
　忘わすれてたぜ、彼女リオは何なんでもこなす出来できた女おんあだが――
　面白おもしれぇ物ものに対たいして、滅法弱めっぽうよえぇってことをよぉ。

「なるほどだぜ……こう面白おもしれぇと、うちの番頭株リオレイニアが使つかい物ものにならん！」
　そう一人ひとりで、納得なっとくしてたら――
「何なにを仰おっしゃっていますの、小猿こざる!?　このままではロコロ村むらが、満員まんいんになってしまいますわっ！」
　凄すごい剣幕けんまくの、大申女おおざるおんなに怒おこられた！