滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ

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5:大森林観測村VSガムラン町

678:芋の町にて、続々々・おにぎりの休日

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『ポテフィール町野菜専売所』
 自警団詰じけいだんつしょとは名ばかりの、だだっぴろ倉庫そうこである。

「ナーフさんから聞いてなかったら、大変たいへんなことになるところでしたわ」
 受付嬢うけつけじょうが、となりに立つ黄緑色きみどりいろこしに巻いた――
 目立めだいろ太縄たづなを、ぎゅっとにぎりしめる。

 木箱きばこが、うずたかく積まれた野菜直売所倉庫じけいだんつめしょ
 しばられよこたわるは、不届ふとどものたち。
 ほぼ満杯まんぱいになった、倉庫つめしょ見渡みわたしてから――
 内股男性うちまただんせいが、生きかえった副団長てしただいひょう目配めくばせした。

はたけを荒らしていた魔物まものが、46ぴきです!」
 とりうさぎいのししなかにはバリアントのおそれすら有るような、大型おおがた魔物まものも混じっている。
 総数そうすう報告ほうこくした副団長ふくだんちょうが、ややはなれたところ待機たいきする団員だんいんへ、あごを向けた。

たちわる偽芋にせいも販売業者はんばいぎょうしゃが、28めいです!」
 よこたわるものたちは、みな一様いちようなわで、しばり付けられている。

「酔っぱらいが4めいに、暴走馬車ぼうそうばしゃ御者ぎょしゃが1めいです!」
 よこたわるものたちは、みな一様いちようなわで、しばり付けられている。

魔物まものおそわれていた冒険者ぼうけんしゃが、6めいです!」
 よこたわるものたちは、みな一様いちようなわで、しばり付けられている。

おなじく魔物まものおそわれていた旅人たびびとが、4めいです!」
 よこたわるものたちは、みな一様いちようなわで、しばり付けられている。

なかには、御使みつかいさまにすくわれたものたちも、混じっているようですが?」
 受付嬢うけつけじょう黄緑色きみどりいろ顔色を・・・、そっとうかがう。

「みゃんぎゃーや
 小首こくびかしげるねこ魔物まものとの、意思いし疎通そつうかなわない。
 その寸胴ずんどうこしに巻かれた太紐ふとひもは、言う事を聞かない魔物みつかいさまとの――
 熾烈しれつ折衝せっしょう結果あかしなのだろう。
 そして太紐それにあしらわれた、きん刺繍ししゅうはいったかざひもは――
 御使みつかいさまへの、せめてもの敬意けいいひょうした結果けっか――
 なのかも知れない。

「しかしよくもまぁ、こんなに取っつかまえたもんですね、兄貴あにき!」
 ボゴゴン――副団長ふくだんちょうを、どついた団長だんちょうが――
「ぅちらの一年分いちねんぶん検挙数けんきょすうと、おなじじゃなぁなぁいのぉよぉぅぅ!」
 とくずれ落ちた。

   §

御使みつかいさまが駆けつけてくださらなかったら、〝ポテフィール・カーニバル〟が惨劇さんげき見舞みまわれるところでしたわ」

 死屍累累ししるいるい倉庫そうこ。そのかべに打ちつけられた――
 『ポテフィール・カーニバル開催まで、あと06日』という、たのしげな看板かんばん
 それによるなら、催し物イベント6日後むいかごひかえた、この田舎町いなかまちを――
 御使みつかいさまは、完膚無きまでに・・・・・・・すくったことになる。

「しかしねえさぁん。こちらの顔色かおいろのぉわるっいひとたちわぁ、どぉうぅいうぅひとたちなのかしらぁん?」
 ぐねる団長だんちょうに、あねと呼ばれた受付嬢うけつけじょうが――

「まったくもう、折角せっかくこんなにかおが良く生まれてきたのに、どうしてこんな――ふぅぅぅ」
 苦渋くじゅうに満ちたかおを、なが溜息ためいきともに取りつくろ受付嬢かのじょ
 「ひかりのたま」をともし、それを地面じめんちかづけた。

 ぶすぶすぶすぶすっ――もくもくもくもくっ♪
 くずぶる、顔色かおいろわるひと
 かれ暴走馬車ぼうそうばしゃの、御者ぎょしゃだ。

「うわっ、あぁぁぁ――!?」
 普通ふつうの〝明かりの生活魔法ひかりのたま〟に、いぶされた御者ぎょしゃは、とてもくるしんでいる。
 ひかりのたまに、ひかりのたてほど活力マナ密度みつどはないということのようだ。

姉上あねうえ? あの、気のどくなので、そのへんでぇやめてたぁげてぇぇっ――!?」
 地団駄じだんだを踏み、内股うちまたで跳びはねる――
 やたらと、かおの良い男性だんせい

 自警団団長じけいだんだんちょうが、聖なる光せいかつまほうかみを焦がされる御者ぎょしゃを、あんじる様子ようすに――
 いろんな溜飲りゅういんを下げたのか、受付嬢ポテリュチカが――「ひかりのたてよ!」
 ひかりたて出現しゅつげんさせた。

『<MAGIC・SHIELD>――ピッ♪』
 せいなる曼荼羅もんようは――ヴァチヴァチヴァチヴァチィ――――――――ッ!
 強火つよびで、こんがりと――ぼっごおぉぉぉぉぉっぅわわぁっ!
 やはり、とても良く燃え上がる――御者ぎょしゃ男性だんせい
 ほのおは、すぐ消え――ぷすぷすん♪

「コレできみたちにも、わかったかしら?」
 こしに手。肩越かたごしに親指おやゆびしめした、背後はいごかべには――

『注意!
 魔物化した野菜・根類・果物を口にすると、
 軽度の魔神と化す症例が、確認されています。
 芽ではなくが出た食材には近寄らずに、
 お近くのギルド出張所か自警団詰め所に、
 連絡して下さい。
 アリゲッタ辺境伯領当主/ポテリュチカ・アリゲッタ」

 そんな、啓蒙けいもうのチラシが張られていた。
 添えられた、〝魔物化まものかした作物さくもつおどろく、野良着のらぎ女性じょせい〟の絵は――
 こころなしかとても、ふっくらとしていた。

「「「「「「「「「「まさかっ、イモモモモドキ・・・・・・・!?」」」」」」」」」」
 団員だんいんたちには、こと次第しだい理解りかいできたようだ。

「そー言うことです。事態じたい一刻いっこくあらそうのでくわしいことは、あと説明せつめいしますが――ひかりのたてよ!」
 次々つぢつぢと、顔色かおいろわるものたちを――ぼっごおぉぉぉぉぉっぅわわぁっ!
 燃やしていく、受付嬢うけつけじょう
 男女問だんじょとわず、かれかのじょ女らは良ーく燃えた。

「ぁんたたちぃぃぃっ! いまぁすぐぅーっ、倉庫そうこ全部ぜんぶお芋・・にぃ、眼が出てないか・・・・・・・確認かくにんしてちょぉうぅだぁぁいぃぃっ!」
 われかえ自警団団長じけいだんだんちょう、駆け出す団員だんいんたち。

 のちに受付嬢かのじょが、かたったところによると――
 ひと魔神化まじんかする経緯プロセスはいまだ、確証かくしょうをつかめていない。

 明り取りの生活魔法ひかりのたまで、ひとが燃えること。
 それはとても奇妙きみょうである。
 事態じたい把握はあくしてもらうために「ひかりのたま」をもちいて――
 魔神化・・・という症例しょうれい確認かくにんをすること。
 それは半端はんぱ延焼えんしょう長引ながびくため――
 本来ほんらいやってはいけないことらしかった。
 
 いぶされほほかみを焦がした、顔色かおいろわるかった人々ひとびとが――ぷすぷすん♪
「ありゃ? おれなにをしてたんだぁ?」
「あれれ? あたいは、なにをしていたのかしら?」
 きゅうひとが変わったように、なわをほどけと懇願こんがんし出した。

「みゃぎゃにゃやー♪」
 すると猫の魔物みつかいさまは、なわほどいてしまう。

御使みつかいさま、逃がしてしまってよろしかったのですか?」
 こくりとうなづ御使いさまきみどりいろ
 はじめてまともな意思疎通いしそつうに、成功せいこうした受付嬢ポテリュチカは――
 かおをほころばせた。

本当ほんとうに解いちまって、良いんですかい?」
 手の空いた団員だんいんが、顔色かおいろが良くなった――
 〝たちわる偽芋にせいも販売業者はんばいぎょうしゃ〟のひとりを、解放かいほうしようと近づく。

 すると猫の魔物風みつかいさまが飛んできて、ぽっきゅごんと団員だんいんはたいた。
 ひるんだ団員かれは――ヴッ♪
 取り出されたなわで、すかさずしばり上げられてしまった。

「えーっと、つまり……芋桃擬きイモモモモドキを売っていた偽芋業者にせいもぎょうしゃは、解放かいほうするなと?」
 聡明そうめい受付嬢うけつけじょう黄緑色きみどりいろかれ、もしくは彼女かのじょ意思いし代弁だいべんした。
「みゃぎゃにゃぁー
 ふたたび、こくりとうなづく、ねこ魔物風まものふう
 ふたたび、まともな意思疎通いしそつうに、成功せいこうした受付嬢ポテリュチカは――
 さらにかおを、ほころばせた。

「あんたたちぃー、なわほどくのはぁー、御使みつかいさまにぃおーまーかーせーすーるーんーだぁーよぉーぉぅ!」
 そう団長だんちょう号令ごうれいをかけると、顔色かおいろが良くなったものたちは――
 黄緑色きみどりいろねこ魔物風まものふうのふざけた足音あしおとに、ただただおそれるのであった。


 のちに――
 〝芽〟ではなく〝眼〟が出た根菜いも
 ソレを食したことによる魔神化・・・の、発現要因はつげんよういん判明はんめいする。

 それは美の女神イオノファラー信仰しんこうしない、魔王まおう信仰しんこうする勢力せいりょく
 つまり魔神まじんと呼ばれる、ひとかたちをした魔物まものたち。
 そのとお末裔まつえいである、かれ彼女かのじょらが――
 いもなどに出た〝眼〟のつよ毒素どくそに当てられたことによる――
 正常せいじょう免疫機能めんえききのうはたらきであったのだ。

 それが判明はんめいするには、やく100ねん歳月さいげつなければならない。
 それは、この田舎町いなかまちで起きた奇跡きせきとは、またべつはなしである。


「にゃぎゃにゃぁー♪」
 一通ひととおりの仕事しごとを終えた、ねこ魔物風まものふうが――
 不意ふいだれもいない、鳥一匹飛とりいっぴきとんでない――
 澄みわたったそらへ向かって、鳴きごえを上げた。

 それはまるで、天上てんじょうに住む女神めかみへ――
 奉告ほうこくをするかのよう、だったという。

ーーー
奉告/神仏や貴人に、謹んで伝えること。――祭など。
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