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6:拡張DLCと、栽培バグ
741:叱られるレイダと、女神■■ット■ー■■■■
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ふぉん♪
『>>レイダはニャミカに連れられて、どこかへ行きました』
んだとぉ?
『▼』――大女神像の間がある、大神殿の中には居るようだが。
「(姿が見えんぞ?)」
画面端の小地図へ、目を凝らすと――『凹』。
壁の向こうに居やがる――と思ったら、近づいてきてるな?
シガミー御一行様を表すこの特別な位置情報は、『凹』がレイダで――
直ぐ近くの『冠』は、リオレイニアを表している。
火山ダンジョンでも見た、この字自体に意味はない。
おれは立ち上がり、大女神像の尻の向こうへ回り込んだ。
ひょいと顔を出すと、人混みの向こうに巨大な壁が見える。
じっと見ていたら音も無く、壁に穴が開いた。
「うわぁぁぁんっ――!!」
「ぎゃにゃにゃにゃぁ――!?」
小脇に抱えられた生意気な子供と、猫耳娘が出てきた。
二人を抱えているのは、長髪の男性。
背格好は、我らが1年A組担任ヤーベルトに似たような、細身の長身。
「ありゃぁ、ギルド長……ウチのギルド長じゃんか」
そう、彼はガムラン町ギルド支部のギルド長だ。
そして小脇に抱えた、生意気な子供レイダの――父上殿である。
ニャミカや隣町の連中と、一緒に来てたらしいぜ。
ふぉん♪
『シガミー>>おいありゃ、どんな状況だ?』
ふぉん♪
『>>わかりかねますが、レイダの様子から類推するなら、叱られているように見受けられます』
だよなぁ。
人目も憚らずジタバタする――娘たち。
「ごっ、ごめ゛んな゛ざいー――!!」
ありゃぁ、どんなに生意気だろうが、まだまだ子供。
ふぉん♪
『>>恐らくは定期的な報告義務を怠ったか、もしくは初等魔導学院での成績評価に不手際があったのではないかと』
うむ、ソレくらいしか思いつかん。
ああして親に叱られる様は、ガムラン町では馴染の光景だが――
「ふっぎゃぁににゃぁ――あっ!?」
何でか一緒に取っ捕まってる猫耳娘と――目が合った。
「あっ、アイツニャッ――アーティファクトに関する話ならっ、シガミーに聞くのが一番ニャァ!」
涙目の猫耳娘ニャミカが、こちらを指さし絶叫した。
手には、さっきチラリと見たチラシが握られている。
ふぉん♪
『>>類推するまでもなく何かしらの儲け話を持ちかけ、返り討ちにあったようです』
うむ、ソレくらいしか思いつかん。
ああして守銭奴じみた真似をしては毎度、泣きを見ているのだが――
性分というものは……そうそう変えられん。
ニャァニャァニャァニャァァ――――♪
大森林の間に轟く残響が消えたとき、彼の魔法具蒐集狂が――懐かしい騒々しさで躙り寄ってきた。
§
「祭りの開催地の本家本元の妹姫さまが、此処に居るだろうがぁ?」
矛先を逸らすため、おれは詰め寄る眼鏡男と猫耳娘に、巻き毛の娘を差し出した。
「なるほど、でわぁビステッカ嬢――この催し物におけるアーティファクトとの関連性はどのよぅな――」
「ニャフフのフ。ソコのところは私も詳しく、聞きたいニャァーン♪」
おれは妹姫さまの背に隠れ、座布団ごと其方へ押しやる。
「きゃっ――そ、それでしたら本年度の『ポテフィール・カーニバル開催要項』が――こちらに、ございます、わ――」
愚図っていた辺境伯家御令嬢が、懐から分厚い冊子を取り出した。
ぃよぉぅしっ――此処だ!
迅雷お前はコレ持って、大食らいの娘に付いててやれ。
ふぉん♪
『>>了解しました』
すぽん♪
ちゃぶ台の上に散蒔かれていた、革財布と金貨と揚げ芋。
そして取って置きの菓子たち。
それら全てが、指輪型の収納魔法具に仕舞われ――カチャキャチャキャチャリ♪
迅雷の機械の細腕に、つまみ上げられた。
「こっちにも開催要項、下さーい!」
「おれも」「私にも」「わいわい」「がややや」
女神像の中身である小さい奴を、とおくから眺めていた学者方たち。
其奴らの興味も惹いたようで、人が集まってきやがった。
「こちらにも一部、下さいニャー♪」
「では此処は狭いので、大女神像倉庫を解放します」
ガムラン町ギルド支部長の後に続いて、壁の扉から出てきたギ術部顧問と顧問秘書。
彼らが揃って見つめたのは、大女神像背後の壁だ。
ガガン、キュリキュリキュリキュリ――ゴンゴンゴンゴゴゴォン♪
ゆっくりと開いていく、かなり巨大な扉。
なんだぜその跳ね上げ扉ぁ、今まで見たこと無かったぞ!?
扉の向こうには此方と同じ様な大広間が広がっていて、壁近くには巨大木箱が山積みにされてる。
大女神像の間は、相当に広い。
そこが手狭になるほどの、人の波。
モサモサ神官たちが捌いてくれてはいたが、流石に限界だったから助かった。
『ポテフィール・カーニバル』なる祭りに、興味津々な連中が――
先導する顧問氏に連れられ、移動していく。
学者方たちにまじり――「お父さんっ! 趣味の話わぁ、やーめーてぇ――」なんて生意気な声も聞こえてくる。
まあ、迅雷が付いてるから大丈夫だろう。
ギュギュギュィィィィィィィィィンッ――――――――!
ギルド長レムゾーが掛けた眼鏡は、発掘魔法具だ。
彼が何かを調べようとすればするほど、眼鏡に付いた小さな摘みが勢いよく動く。
ギュギュィィィン――!
うるせぇ眼鏡音が、とおざかっていく。
ふぅぅぅぃっ――――儘と発掘魔法具研究家を押しつけてやったぞ!
大食らい娘の気持ちを、心配事から逸らすことまで出来て――ウカカッ♪
正に一石二鳥だぜ。
さて、大女神像の周りから人が消えた。
まだ大女神像への参拝客が居るが、モサモサ神官たちが立てた柵からこっちに来る奴が、居なくなった。
コントゥル辺境伯の私兵たちも壁際に移動して、陣屋を敷き始めた。
「ふぅ――ぃ」
おれは、ちゃぶ台に突っ伏した。
ちゃぶ台を取り囲んでいた冒険者たちも、半数がミャッドたちの方へ分かれた。
まぁ冒険者は間違っても、発掘魔法具なんかに興味は無い。
大方、初めて見た大女神像の間の奥座敷を、見物しに行ったんだろう。
そして残った奴らも――がやがや、わいわいわい。
「「「「「「「「「「リオレイニアさんっ、何かお手伝いすることはありませんかっ♪」」」」」」」」」」
仕事を始めたリオレイニアに、群がっている。
「ではこちらの収納魔法具を配るのを、手伝って頂けますか? 中には一週間分の行軍に必要な食料と――」
隠れモテ女である猪蟹屋番頭リオレイニアの周りに群がるのは、野郎どもばかりではない。
ウチの女神すら虜にする美貌は、老若男女に関わらず人を引きつける。
美しさの発露である〝魅了の神眼〟スキルを阻害するはずの――
強力な魔眼殺しである眼鏡、〝ルガーサイト改【金剛相】〟。
おれが作った、そんな新造魔法具を装備していても――だ。
「「「「「了解しましたっ!」」」」」
群がる連中の中でも、オルァグラム支部のギルド職員たちは――
リオレイニアの本質を知っているのか、背筋をピシリと伸ばしていたが。
彼女の気品や、能力による好意や尊敬なんかは――
〝魅了の神眼〟とは関係なく、人目を引くから――
本来衆目に晒すことは、控えるべきなんだろうが――
彼女を害せる者は、人の身では数えるくらいしか居ない。
特に〝眼鏡〟を冥く染めた、本気の彼女は――
おれでも止められるかどうかは、怪しい。
シャギャヴォヴォヴォ――――ゴツン!
「痛ってぇっ!」
猪蟹屋の番頭さまに気を取られていたら、何かが臑にぶつかった。
シャギャヴォヴォヴォ――ヒュゥーン♪
旋回し、なおもおれの臑を狙う――青板をつかまえた。
「此奴めっ! 危ねぇだろぅがぁ?」
まるで痛くはねぇがぁ――何てことをしやがるんだぜ?
つかんだ青板を持ち上げる。
すると、小さい強化服自律型みたいな奴が――『(  ̄^ ̄)=3』
何だ、何を怒ってるんだぜ?
首を傾げる、おれの視界に――
ふぉふュザザッ――♪
『人物DB/リオレ■ア・サキラテ
サキラテ家37代目■■従■
初等魔導学院1年A組見習い講師
冒険者パー■ィー:シガ■■■一行様』
揺らめくのは、何かの画面。
「んぅ――?」
おい迅雷、こいつぁ――如何したことだぜっ!?
おれが見つめていた彼女の事を、映し出してるってのわぁわかるがぁ?
リオの人物DBは、切ってあるはずだろぉ!?
ふぉふュザザッ――♪
『リオレ■ニア・サキラテ(■9)/生活■法師/高位の■■師/コントゥ■■元給仕長/コントゥル家■侍女■/堅物モテ女■/白い悪魔/魔神の再来/岩壁姫/魔神の再■■再来/ルガ蜂の女王』
こりゃ……何だぜ?
所々、文字が潰れて読めんしよぉ。
ふぉん♪
『>>以前イオノファラーの要請により、私が作成した立て札とフォーマッ■が同じです』
おれわぁ見たことがねぇ、知らんぞぉ?
ふぉふぉザザザッ――♪
『人■DB/天ぷら号
中央都市ラスクトール自治領第一王女
ラプトル・ラス■■■ルの手による、
自■型四足歩行駄馬』
む、今度は天ぷら号かぁ――!?
何でまた、そんなもんが急に?
辺りを見回すも、黄緑色のは――
ビステッカたちに付いていった、おにぎりしか居らんぞ?
ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ――ヒュババババババババッ!
無数の画像が折り重なり、視界に飛び込んでくる。
その中の一枚。矢鱈と文字が小さくなっちまってるのが、目に付いた。
こいつぁ、まるでおれの――ふぉふぉふぉふぉヒュババザザザザッ♪
『シガ■ー L■:100 ☆:■■■
薬草師■■★★★ /状態異■無効/生産数最大/女神■加護/七天抜刀根術免許皆伝/星間陸路■拓者
追加ス■ル /遅延回■/自動回収/即死回避/自動回復/体力増強/上級鑑定/自爆耐性/上級解体/スキ■■蔽/LV詐称
/人名詐称/石窟加工/炸薬生成/初級造形/木工彫刻/石礫破砕/防具修復/高速修復/上■修復/頭部防具強化
/防具筋力強化付与/防具体力強化付与/防具攻撃力強化付与/防具知■■■付与/防具■御力付与/幸運効果付与/幸運効果永続/幸運効果増大/幸運倍化/幸運リ■■トブレイク
/強運行使/防具幸運強化付与/耐性強化付与/耐性強■永続/耐性強化/■性倍化/伝説■職人/不壊■与/不壊永続/植物■鑑
/武器■復/研ぎ師/切れ味持続/自動修復■■■付与/収穫■倍化/基礎工学/基礎光■/金属■工/■金錬成/天衣■縫
/初級位相■何学/女神像■能解放/女神■■■呼出/■端工学概論/先端■学概■/撮像■写制限■除/システ■■■/投■縄/ロー■■ーク/■■術――――――――――――』
つぅかマジで、おれの〝スキル一覧〟じゃんか!
やべぇ!
コイツを誰かに見られたら、一悶着も二悶着もあるぜっ!
場合によっちゃぁ人の世を、追われることにもなりかねねぇ!!!!!
シャギャヴォヴォヴォ――――ザザザザッツヒュふぉふぉん♪
『■■■達/体■■■/■■術/■■■■昇/潜■■/■■■化/分■■■/急■■成/■■出/■■調■
/さ■■■/■■■■/■■■■/■■■■/か■■■■/■■の知■/■■■合/■■■/■■■南/■■■
/■■■■■LV3/■■■■上昇/■■■/■■■/■■■■■/■■■■■■■/■■■/■■■■■■■/■■■■■■■■ォ■■■■/■■■Pフ■■■』
ヴヴヴヴッ――震える薄板!
さてわぁ、中身さまめっ――お前の仕業かぁ!
『シガミー>>やい貴様!』
やい貴様、中身さまめ!
今すぐコイツぉ、止めんかぁ!
ふぉヒュザザッ――――♪
『(■■■)』
こいつぁ、駄目だぜっ!
薄板にしがみ付く、おにぎり(小《しょう》)。
その顔までもが――文字化けしてやがるっ!!!!
ーーー
陣屋/領主の居城以外に設けられた拠点の■と。この場合は私設軍の隊列を、合戦時の軍営に■■らえ、そう呼んだ。
文■化け/コンピュータ上で文字が正しく表示されないこと。主に文字コードという手続きが不一致の場合に発生■る。
『>>レイダはニャミカに連れられて、どこかへ行きました』
んだとぉ?
『▼』――大女神像の間がある、大神殿の中には居るようだが。
「(姿が見えんぞ?)」
画面端の小地図へ、目を凝らすと――『凹』。
壁の向こうに居やがる――と思ったら、近づいてきてるな?
シガミー御一行様を表すこの特別な位置情報は、『凹』がレイダで――
直ぐ近くの『冠』は、リオレイニアを表している。
火山ダンジョンでも見た、この字自体に意味はない。
おれは立ち上がり、大女神像の尻の向こうへ回り込んだ。
ひょいと顔を出すと、人混みの向こうに巨大な壁が見える。
じっと見ていたら音も無く、壁に穴が開いた。
「うわぁぁぁんっ――!!」
「ぎゃにゃにゃにゃぁ――!?」
小脇に抱えられた生意気な子供と、猫耳娘が出てきた。
二人を抱えているのは、長髪の男性。
背格好は、我らが1年A組担任ヤーベルトに似たような、細身の長身。
「ありゃぁ、ギルド長……ウチのギルド長じゃんか」
そう、彼はガムラン町ギルド支部のギルド長だ。
そして小脇に抱えた、生意気な子供レイダの――父上殿である。
ニャミカや隣町の連中と、一緒に来てたらしいぜ。
ふぉん♪
『シガミー>>おいありゃ、どんな状況だ?』
ふぉん♪
『>>わかりかねますが、レイダの様子から類推するなら、叱られているように見受けられます』
だよなぁ。
人目も憚らずジタバタする――娘たち。
「ごっ、ごめ゛んな゛ざいー――!!」
ありゃぁ、どんなに生意気だろうが、まだまだ子供。
ふぉん♪
『>>恐らくは定期的な報告義務を怠ったか、もしくは初等魔導学院での成績評価に不手際があったのではないかと』
うむ、ソレくらいしか思いつかん。
ああして親に叱られる様は、ガムラン町では馴染の光景だが――
「ふっぎゃぁににゃぁ――あっ!?」
何でか一緒に取っ捕まってる猫耳娘と――目が合った。
「あっ、アイツニャッ――アーティファクトに関する話ならっ、シガミーに聞くのが一番ニャァ!」
涙目の猫耳娘ニャミカが、こちらを指さし絶叫した。
手には、さっきチラリと見たチラシが握られている。
ふぉん♪
『>>類推するまでもなく何かしらの儲け話を持ちかけ、返り討ちにあったようです』
うむ、ソレくらいしか思いつかん。
ああして守銭奴じみた真似をしては毎度、泣きを見ているのだが――
性分というものは……そうそう変えられん。
ニャァニャァニャァニャァァ――――♪
大森林の間に轟く残響が消えたとき、彼の魔法具蒐集狂が――懐かしい騒々しさで躙り寄ってきた。
§
「祭りの開催地の本家本元の妹姫さまが、此処に居るだろうがぁ?」
矛先を逸らすため、おれは詰め寄る眼鏡男と猫耳娘に、巻き毛の娘を差し出した。
「なるほど、でわぁビステッカ嬢――この催し物におけるアーティファクトとの関連性はどのよぅな――」
「ニャフフのフ。ソコのところは私も詳しく、聞きたいニャァーン♪」
おれは妹姫さまの背に隠れ、座布団ごと其方へ押しやる。
「きゃっ――そ、それでしたら本年度の『ポテフィール・カーニバル開催要項』が――こちらに、ございます、わ――」
愚図っていた辺境伯家御令嬢が、懐から分厚い冊子を取り出した。
ぃよぉぅしっ――此処だ!
迅雷お前はコレ持って、大食らいの娘に付いててやれ。
ふぉん♪
『>>了解しました』
すぽん♪
ちゃぶ台の上に散蒔かれていた、革財布と金貨と揚げ芋。
そして取って置きの菓子たち。
それら全てが、指輪型の収納魔法具に仕舞われ――カチャキャチャキャチャリ♪
迅雷の機械の細腕に、つまみ上げられた。
「こっちにも開催要項、下さーい!」
「おれも」「私にも」「わいわい」「がややや」
女神像の中身である小さい奴を、とおくから眺めていた学者方たち。
其奴らの興味も惹いたようで、人が集まってきやがった。
「こちらにも一部、下さいニャー♪」
「では此処は狭いので、大女神像倉庫を解放します」
ガムラン町ギルド支部長の後に続いて、壁の扉から出てきたギ術部顧問と顧問秘書。
彼らが揃って見つめたのは、大女神像背後の壁だ。
ガガン、キュリキュリキュリキュリ――ゴンゴンゴンゴゴゴォン♪
ゆっくりと開いていく、かなり巨大な扉。
なんだぜその跳ね上げ扉ぁ、今まで見たこと無かったぞ!?
扉の向こうには此方と同じ様な大広間が広がっていて、壁近くには巨大木箱が山積みにされてる。
大女神像の間は、相当に広い。
そこが手狭になるほどの、人の波。
モサモサ神官たちが捌いてくれてはいたが、流石に限界だったから助かった。
『ポテフィール・カーニバル』なる祭りに、興味津々な連中が――
先導する顧問氏に連れられ、移動していく。
学者方たちにまじり――「お父さんっ! 趣味の話わぁ、やーめーてぇ――」なんて生意気な声も聞こえてくる。
まあ、迅雷が付いてるから大丈夫だろう。
ギュギュギュィィィィィィィィィンッ――――――――!
ギルド長レムゾーが掛けた眼鏡は、発掘魔法具だ。
彼が何かを調べようとすればするほど、眼鏡に付いた小さな摘みが勢いよく動く。
ギュギュィィィン――!
うるせぇ眼鏡音が、とおざかっていく。
ふぅぅぅぃっ――――儘と発掘魔法具研究家を押しつけてやったぞ!
大食らい娘の気持ちを、心配事から逸らすことまで出来て――ウカカッ♪
正に一石二鳥だぜ。
さて、大女神像の周りから人が消えた。
まだ大女神像への参拝客が居るが、モサモサ神官たちが立てた柵からこっちに来る奴が、居なくなった。
コントゥル辺境伯の私兵たちも壁際に移動して、陣屋を敷き始めた。
「ふぅ――ぃ」
おれは、ちゃぶ台に突っ伏した。
ちゃぶ台を取り囲んでいた冒険者たちも、半数がミャッドたちの方へ分かれた。
まぁ冒険者は間違っても、発掘魔法具なんかに興味は無い。
大方、初めて見た大女神像の間の奥座敷を、見物しに行ったんだろう。
そして残った奴らも――がやがや、わいわいわい。
「「「「「「「「「「リオレイニアさんっ、何かお手伝いすることはありませんかっ♪」」」」」」」」」」
仕事を始めたリオレイニアに、群がっている。
「ではこちらの収納魔法具を配るのを、手伝って頂けますか? 中には一週間分の行軍に必要な食料と――」
隠れモテ女である猪蟹屋番頭リオレイニアの周りに群がるのは、野郎どもばかりではない。
ウチの女神すら虜にする美貌は、老若男女に関わらず人を引きつける。
美しさの発露である〝魅了の神眼〟スキルを阻害するはずの――
強力な魔眼殺しである眼鏡、〝ルガーサイト改【金剛相】〟。
おれが作った、そんな新造魔法具を装備していても――だ。
「「「「「了解しましたっ!」」」」」
群がる連中の中でも、オルァグラム支部のギルド職員たちは――
リオレイニアの本質を知っているのか、背筋をピシリと伸ばしていたが。
彼女の気品や、能力による好意や尊敬なんかは――
〝魅了の神眼〟とは関係なく、人目を引くから――
本来衆目に晒すことは、控えるべきなんだろうが――
彼女を害せる者は、人の身では数えるくらいしか居ない。
特に〝眼鏡〟を冥く染めた、本気の彼女は――
おれでも止められるかどうかは、怪しい。
シャギャヴォヴォヴォ――――ゴツン!
「痛ってぇっ!」
猪蟹屋の番頭さまに気を取られていたら、何かが臑にぶつかった。
シャギャヴォヴォヴォ――ヒュゥーン♪
旋回し、なおもおれの臑を狙う――青板をつかまえた。
「此奴めっ! 危ねぇだろぅがぁ?」
まるで痛くはねぇがぁ――何てことをしやがるんだぜ?
つかんだ青板を持ち上げる。
すると、小さい強化服自律型みたいな奴が――『(  ̄^ ̄)=3』
何だ、何を怒ってるんだぜ?
首を傾げる、おれの視界に――
ふぉふュザザッ――♪
『人物DB/リオレ■ア・サキラテ
サキラテ家37代目■■従■
初等魔導学院1年A組見習い講師
冒険者パー■ィー:シガ■■■一行様』
揺らめくのは、何かの画面。
「んぅ――?」
おい迅雷、こいつぁ――如何したことだぜっ!?
おれが見つめていた彼女の事を、映し出してるってのわぁわかるがぁ?
リオの人物DBは、切ってあるはずだろぉ!?
ふぉふュザザッ――♪
『リオレ■ニア・サキラテ(■9)/生活■法師/高位の■■師/コントゥ■■元給仕長/コントゥル家■侍女■/堅物モテ女■/白い悪魔/魔神の再来/岩壁姫/魔神の再■■再来/ルガ蜂の女王』
こりゃ……何だぜ?
所々、文字が潰れて読めんしよぉ。
ふぉん♪
『>>以前イオノファラーの要請により、私が作成した立て札とフォーマッ■が同じです』
おれわぁ見たことがねぇ、知らんぞぉ?
ふぉふぉザザザッ――♪
『人■DB/天ぷら号
中央都市ラスクトール自治領第一王女
ラプトル・ラス■■■ルの手による、
自■型四足歩行駄馬』
む、今度は天ぷら号かぁ――!?
何でまた、そんなもんが急に?
辺りを見回すも、黄緑色のは――
ビステッカたちに付いていった、おにぎりしか居らんぞ?
ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ――ヒュババババババババッ!
無数の画像が折り重なり、視界に飛び込んでくる。
その中の一枚。矢鱈と文字が小さくなっちまってるのが、目に付いた。
こいつぁ、まるでおれの――ふぉふぉふぉふぉヒュババザザザザッ♪
『シガ■ー L■:100 ☆:■■■
薬草師■■★★★ /状態異■無効/生産数最大/女神■加護/七天抜刀根術免許皆伝/星間陸路■拓者
追加ス■ル /遅延回■/自動回収/即死回避/自動回復/体力増強/上級鑑定/自爆耐性/上級解体/スキ■■蔽/LV詐称
/人名詐称/石窟加工/炸薬生成/初級造形/木工彫刻/石礫破砕/防具修復/高速修復/上■修復/頭部防具強化
/防具筋力強化付与/防具体力強化付与/防具攻撃力強化付与/防具知■■■付与/防具■御力付与/幸運効果付与/幸運効果永続/幸運効果増大/幸運倍化/幸運リ■■トブレイク
/強運行使/防具幸運強化付与/耐性強化付与/耐性強■永続/耐性強化/■性倍化/伝説■職人/不壊■与/不壊永続/植物■鑑
/武器■復/研ぎ師/切れ味持続/自動修復■■■付与/収穫■倍化/基礎工学/基礎光■/金属■工/■金錬成/天衣■縫
/初級位相■何学/女神像■能解放/女神■■■呼出/■端工学概論/先端■学概■/撮像■写制限■除/システ■■■/投■縄/ロー■■ーク/■■術――――――――――――』
つぅかマジで、おれの〝スキル一覧〟じゃんか!
やべぇ!
コイツを誰かに見られたら、一悶着も二悶着もあるぜっ!
場合によっちゃぁ人の世を、追われることにもなりかねねぇ!!!!!
シャギャヴォヴォヴォ――――ザザザザッツヒュふぉふぉん♪
『■■■達/体■■■/■■術/■■■■昇/潜■■/■■■化/分■■■/急■■成/■■出/■■調■
/さ■■■/■■■■/■■■■/■■■■/か■■■■/■■の知■/■■■合/■■■/■■■南/■■■
/■■■■■LV3/■■■■上昇/■■■/■■■/■■■■■/■■■■■■■/■■■/■■■■■■■/■■■■■■■■ォ■■■■/■■■Pフ■■■』
ヴヴヴヴッ――震える薄板!
さてわぁ、中身さまめっ――お前の仕業かぁ!
『シガミー>>やい貴様!』
やい貴様、中身さまめ!
今すぐコイツぉ、止めんかぁ!
ふぉヒュザザッ――――♪
『(■■■)』
こいつぁ、駄目だぜっ!
薄板にしがみ付く、おにぎり(小《しょう》)。
その顔までもが――文字化けしてやがるっ!!!!
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陣屋/領主の居城以外に設けられた拠点の■と。この場合は私設軍の隊列を、合戦時の軍営に■■らえ、そう呼んだ。
文■化け/コンピュータ上で文字が正しく表示されないこと。主に文字コードという手続きが不一致の場合に発生■る。
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50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
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「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
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「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
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※表紙のイラストはAIによるイメージです
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
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剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
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