燕の軌跡

猫絵師

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死が二人を分かつまで

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「奥様をオークランドから取り戻せ!」

前方に伸びた敵の最後尾に、ケッテラーの部隊が襲いかかった。

急襲を受けた殿の騎士たちは、あっという間に食い破られて退場した。

「敵襲!」と呼ばわる声に、銀の鎧の騎士たちが反応し、敵が入れ替わる。

明らかに装いの違う、聖職の騎士たちは、自らの馬を返して襲撃者を迎え撃った。

剣や鎚矛メイスが入り乱れての混戦になる。

仰々しい騎士の鎧が、刀を弾いた。

やはり硬い…傭兵の装備とは段違いだ…

手甲から棒手裏剣を抜いて鎧の隙間を狙った。

凶器が目の隙間に吸い込まれて、悲鳴を上げた騎士は落馬して馬に踏まれた。

自慢の鎧も、さすがに馬の体重には耐え切れなかったようだ。鉄板は曲がり、骨の折れる音が足元から聞こえた。

道幅が狭かったのが幸いして、ケッテラー率いる騎士たちは善戦していた。彼らも屈強な南部の騎士たちだ。

暗く狭い道に血の匂いが立ち込め、阿鼻叫喚の地獄と化した。

あの竜のような生き物に乗った騎士の言った通り、壊れて横倒しになった馬車が道を塞いでいた。

随分荒っぽいやり方をする…テレーゼは無事か?

「夫人を連れて先に行け!」とよく通る声が下知を飛ばした。

白馬に乗った大将らしい男が指示を出している。

辺りを見渡して、銀の鎧とは別に、黒い装いの騎士の姿を見つけた。男の抱えた黒い荷物から白い女の足首から先がはみ出していた。

きっとあれだ…

「奥様!」

倒れた馬車を越えようと、ケッテラーの部下たちが前に出る。彼らの行く手を銀色に磨かれた甲冑の騎士らが阻んだ。

「押し返せ!数でも質でも劣っていると教えてやれ!」

「か弱い婦女を攫っておいて偉そうに!聖騎士が聞いて呆れる!」

両者の間で言葉戦が交わされ、火花が散るほどの剣の応酬が続いた。皆が善戦しているが、数で劣る俺たちの方が不利だ。

黒い騎士は馬を操ると、手勢を数騎率いて駆け出した。

逃げられる!

焦りが滲んだ。

この先、ケッテラーの話では、オークランドとの国境を担う大河 《カナル運河》が待っているのみだ。

そこを超えればテレーゼは敵国に渡ってしまう…

迷うわずかな時間も惜しかった。

やむを得ん…

頬あてに隠していた、苦い丸薬を噛み砕いて飲み込んだ。

鬼神になる薬だ…

使えばただでは済まないが、迷う余裕などなかった。

効果はすぐに現れた。

五感が鋭くなる。心臓が熱くなって早鐘を打った。自分の周りの景色がゆっくりに見える。

視界は冴え渡り、昼間のように遠くまではっきり見て取れる。

呼吸を深く吸い込んで馬の背から《縮地》の歩法で飛んだ。

騎士たちの頭や肩を踏んで人の上を渡り、テレーゼを抱えた黒い騎士を目指した。

「悪魔だ!」と声が上がる。なるほどな…そう見えるか…

「フェルトン卿!」

黒い騎士の取り巻きが声を上げた。全てが遅い…

《時止め》の居合を放った。

黒い騎士を守る騎士のうなじにくい込んだ刃が、抜刀の速度をそのままにかぶとを被った首ごと魂を刈り取った。

赤く染まった刃は即座に鞘に戻った。

渾身の一撃は黒い騎士には届かなかった。

跳躍して二撃目を放った。刃は確実に彼を捉えていた。

「《拒絶》」

黒い騎士は俺の刃を避けようともせずに小さく呟いた。

これはどういうことだ?

黒い甲冑の隙間に滑り込んだはずの刃は、振るった時以上の力で弾き返された。

均衡を失った身体は軽く吹っ飛ばされた。

今、何が起きた?!相手は何もしていなかった。

この男も《祝福》を持っているのか?!まさか、シュミットが勝てなかった副団長とはこの男か?

黒い騎士の馬がゆっくりと向きを変えた。

青い双眸が俺を睨んだ。

「彼女に何かあったらどうする気だ…?」と怒る姿は本当に彼女を案じているようだった。

男の抱いた黒い布から、疲れた顔の女が顔を出した。

「…ソーリュー様」痛々しい泣き顔は、ワルターには見せられないものだった。

元が美しいだけに、彼女の悲壮感はさらに際立った。

その姿に怒りを覚え、刀を握って騎士を睨んだ。

「女を置いていけ…それはワルターの妻だ」

まだ動ける…ならばすることは一つだ…

黒い騎士との間に入って、俺に向かってくる騎士を馬ごと切り捨てた。

返り血を受けながら前に出た。

テレーゼを連れて帰る…

ケヴィン…

お前がこの先自分を責めないでいいように、俺が代わりに戦ってやる…

ワルター、今度こそ彼女を抱けよ…絶対だ!馬鹿な事を吐かしてたら俺も怒るからな!

黒い騎士に向かって居合いを放った。

スーとの稽古で初心に帰り、居合の速さと鋭さはさらに上がっていた。

《万力丹》を使ったから、俺に時間の猶予はない。

それは相手とて同じ事だ。

時間をかければかけるほど、敵に囲まれるリスクが高くなるのだ。モタモタしていられないだろう。

俺の放った渾身の一撃を、男は腕一本で受け止めた。

「なっ…」

《祝福》とはよく言ったものだ…人の限界を超えた程度では、この男には勝てないのか?

相手に剣を抜かせることすら出来ない。舌打ちをして距離を取った。

「何度やろうと同じだぜ。俺の《拒絶》の内側に入り込めるものなんてありはしねぇのさ…

あんたは強いが、残念だったな…俺は神様って奴に愛されてるのさ」

嘲笑するような皮肉っぽい笑みを口元に浮かべて、男は馬の向きを変えると腹を蹴って駆け出した。

「ソーリュー様!」白い手が一瞬視界に映って消える。

「テレーゼ!クソッ!」逃げられる!

すぐ目の前にいるはずの女も助けられない。

任務を遂行するために、残った騎士たちが目の前を阻んだ。

すまん、ワルター…

足止めも叶わず、味方が倒れていく。残りの兵もわずかだ…

離脱すべきだ…そう頭の中では分かっていた。

それでも、と刀を握り直した。

一人でも多く道連れにして、俺はワルターに道を残さなければケジメがつかなかった。

スー…すまんな…

お前だけにあとを任せるのは少々荷が重いだろう。

それでも、ワルターを支えてやってくれ…

誰にも残せぬ辞世を心の中で呟いて、目の前の敵を屠った。

赤だけが鮮明になる世界で、俺の視界がだんだん霞んでゆく。

薬のせいだ…やはり反動が大きい…

足元も覚束無い。手が痺れて刀を取り落とした。

その姿に騎士たちが歓喜の声を上げた。

まだ、そんなに残ってるのか…

味方は…ケッテラーらはもう…

鬼になる死ぬ》覚悟をした…毒のような薬を追加で口に含んだ。

『一度に一つだ。一度服用したら十日は間を空けよ。禁を破れば命はないぞ』

すまん爺様…言いつけを守らなんだ…

それでもこれに頼るしかないのだ…

謝罪は腹の中で済ませ、薬を飲み込んだ。

脳髄が焼けるような熱に意識を手放しそうになる。

必死に呼吸を整え、気を練って掌底を構えた。

俺は祝師衆はふりしゅうの中で一番強い男だ…

自分を奮って、最後の戦いに身を投じた。

✩.*˚

馬の背が激しく揺れる。不安定な体勢でも落ちないのは、強い腕に支えられているからだ…

彼は馬の背で消えそうな声で「すまん」と一言呟いていた。それでもその言葉の説明も、続く言葉もなく、誰への謝罪かも分からない。

返事などできない。

私への謝罪としても、到底受け入れる事など出来なかった…

多くを失った…

ギート、フーゴ…

貴方方を無駄に死なせました…

ケッテラー様…ソーリュー様…

なぜ来たのですか?私を見捨てて、ワルター様のために残って下されば良かったのに…

私は…ロンメルに生まれただけの無力な人間です。

私の為に、命を賭ける価値などないのに…

嘆くことしかできない私の耳に、聞こえるはずのない私を憐れむ女性の声が聞こえた。

「可哀想なテレーゼ…」

両手で覆っていた視界が変わる。

いつの間に…

私は浅く広がる水の上にしゃがんでいた。

目の前には、白い衣装とレースのヴェールを目深に被った聖母が立っていた。その視線は憐れみの眼差しで私を見下ろしている。

「貴女の願いは届きました。ヴォルガ様は《冬の王》の怒りを鎮めるために、貴女を《祝福》せよとの仰せですよ」と彼女は告げた。

私が《祝福してください》と願ったから?

「ヴォルガ様の娘である《白い手のフリューリング》が貴女を《祝福》します。

白鳥の姫、我がつまである《冬の王》は貴女を見捨てたりしません…

《冬の王》の通り道を癒しながら帰りなさい」

《白い手のフリューリング》と春の女神を名乗った彼女は、私の前に膝を着いて手を取った。

彼女の白く輝く手が私の手を握った。

彼女の光が手に宿る。

彼女は満足そうに微笑んで、優しく抱き締めてくれた。

「傲慢な兄、ルフトゥの思い通りにさせてはなりません。

夫婦は死ぬまで添い遂げるもの…貴女の帰るべき場所に戻りなさい、テレーゼ」

彼女のその言葉を最後に、瞬きする間に、また視界が変わった。

世界は黒ばかりの視界に変わった。

馬の背が揺れる。私を抱く腕は男性の大きな腕だ。

でもこの腕は私の求めているものとは違う。

帰らなければ…

彼女の言う通りだ…

《死が二人を分かつまで》、私はワルター様の妻だ…

✩.*˚

得体の知れない恐怖を覚えた…

「…何だ?」

まだ季節は秋だ。麦の収穫だって終わっていない。

それなのに…

「雪だと?!」肌を刺すような寒波の後に、空から白い雪がチラつき始めた。

冷たい空気に混ざって、嫌な気配が近づいてくるのを感じた…

「団長…これは…」

「撤退しろ!すぐにだ!追いかけて来る敵も全て捨ておけ!」

「お待ちを!負傷した者はどうされます?」

「やむを得ん、見捨てよ」と答えて、冷たい風に怯える馬の手綱を操った。

暗い道の向こうに、白く光る何かが跳ねながら近付いてくる。

あれに追いつかれる訳には…

人外だ。相手にしてはならないと、本能が警鐘を鳴らした。

「あっ」と声が上がり、馬の悲鳴を残して後ろを走っていた部下が脱落した。

確認すらできない。

パキパキと枝を折るような不気味な音が追いかけて来る。

「クソッ!」道から逸れて茂みに逃げ込んだ。まだ無事な騎士たちもそれに続いた。

譲った道を振り返ると、白い大きな雄鹿が一頭駆け抜けて行った。

違う…鹿の姿をしてるが、あれは鹿なんかじゃない…

不思議な魔法を帯びた模様が浮かび、強烈な冷気を帯びて駆け抜けた鹿の足元には氷の道が残された。

冷気に触れて死んだ緑に、涙を流すように氷柱が垂れ下がっている。

あの道をそのまま逃げていたらと思うとゾッとする…

あの中で死なないのはおそらくアーサーくらいのものだ…

鹿が通り過ぎてから雪と寒さが緩んだ。

「団長…」

青い顔をした騎士たちが、怯えた視線を私に向けている。

後を追わねばならない…

あの鹿は意志を持って、我々を無視してその先に向かった。

この道の先にあるのは、カナル運河で、その先はオークランドだ…

「…アーサー」

先を行かせた友人の名前を口にした。

彼は《拒絶》という絶対的な防御の《祝福》を有しているが、それでもあの獣を止められるものでは無いだろう。

「…後を追う」

嫌がる馬を街道に戻し、首から提げたルフトゥの丸十字を握って祈りを捧げた。

気休めとしても、私にはこれしかないのだ…

✩.*˚

身体が軽い…

視界も広く遠くまでよく見える。

『この先、真っ直ぐに駆けよ』と言葉を残して《冬の王》は消えた。

滑るように流れる視界は自分のものでは無いみたいだ…

あいつらを置いてきちまった…

またスーに叱られるだろう…

責任を放棄したことに、多少なりと罪悪感はあったが、足は止められない。

テレーゼ…

お前は意外と酷いやつだな…

おっさんの貴重な二年をどうしてくれるんだよ?

お前を忘れたら、この幸せだった時間が嘘になる…

忘れろとはそういう事だ…

お前はそんなつもりで言ってないだろうがよ!俺にとってはそういう事だ!

受け入れる事など出来るわけないだろう?

愛してるんだ!自分でも驚くくらいマジのやつだ!

お前が居なくなったら、俺はロンメルじゃない。

ブルームバルトの領主でも、男爵でも騎士でも無くなる。

俺をただの惨めなおっさんにする気か?!

そんなの御免だ!お前をオークランドには渡さない!

真っ直ぐ走った先で道が途切れた。

目の前には大きな河が行く手を阻むように流れている。

こんなでかい河、見たことがない…遠く見える対岸はオークランドの土地だ…

見渡した先、視界に捉えた簡素な船着き場の桟橋に、船が並んでいる。

そのうちの一隻が岸を離れた。

船の上で動く小さな姿が目に留まった。

「…テレーゼ」黒い布を目深に被っていて顔までは分からないが、きっと彼女だ。

「行くな!テレーゼ!」

滑るように離れて行く船に向かって叫んだ。

船に向かって一直線に駆ける俺の姿に、気が付いた奴らが声を上げたが、誰も俺を止められなかった。

足を踏み入れた河の水面が凍って足場を作った。

メキメキと音を立てて河に氷の道が開いた。

「何だあれは!」「精霊だ!」「夫人を抑えてろ!」

慌てふためく男たちの声の中に、一際鮮明に聞こえる女の声に顔を上げた。

そうだよ、俺だ…迎えに来たんだ…

岸から続く氷に絡め取られて船は足を止めた。

凍った水面を蹴って船の甲板に上がった。

俺の姿を見て、「…なんの冗談だ…」と黒い鎧の騎士が呻いた。彼の背後には、黒い喪服のような布に包まれた女が立っていた。

「テレーゼ!」彼女を取り戻そうと前に出た。

黒い騎士がそれを邪魔した。

「《拒絶》!」

壁にぶつかったような衝撃に、吹っ飛ばされる。船体から投げ出されて氷の張った河に落ちた。

「ワルター様!」

「あれはあんたの旦那じゃないだろう?荒ぶる精霊だ」

テレーゼの悲鳴と、俺の存在を否定する声が耳に届く。

やっと自分が人の姿を捨てていたことに気がついた…

これ、元に…人間に戻れんのか?

蹄の足で氷の上に立ち上がった。

こんなに《祝福》を使ったのに、寒さは感じなかった。これが《神紋の英雄》か…

確かに恐ろしい力だ。

こんな奴がポンポンいたらと思うと空恐ろしい…

足元を氷で盛り上げて再び船に戻った。

見える所に、届く所に彼女がいる。

もう失ってなるものか!

《死が二人を分かつまで》、俺はお前の夫だ!

✩.*˚

ワルターの消えた方向に馬を走らせた。

全く!君って奴は!

「スペース!」馬を並べたトゥルンバルトが声を上げた。彼も訳が分からないと言った様子だが、俺だって同じだ。

「あの走り去った白い鹿が閣下だと言うのか?!」

「そうだよ!」苛立たしく返事を返して、暗闇を睨んだ。

暗い道の先には、ワルターが残して行った氷の足跡と残雪が道を装飾していた。

君がテレーゼを思う気持ちは分かる。でもそんな姿になって、後はどうするんだよ!俺は責任持てないからな!

しばらく馬で走った先で、血腥い光景が道に広がっていた。

急いでいたが、馬を降りて彼らを確認した。

「ケッテラー殿…」老騎士の亡骸を見つけたトゥルンバルトは、力なくその場に膝を着いた。

「…ソーリュー」彼と一緒にテレーゼを助けに出たはずだ。彼はどこだ?既にこの先に向かったのか?

「まだ息のあるものは救護しろ!誰か残ってないのか?!」

皆で死体を掻き分け、まだ息のある仲間を助けるように指示した。

「スペース殿!ハフリ殿が!」と生存者を探していた仲間が声を上げた。

「ソーリュー!」つま転びそうになりながら彼に駆け寄った。

彼の信じられない姿に目を疑った。

立ったまま気を失っている。激しい戦いの痕が身体中に残されていた。

黒かった彼の髪は所々白く変わり、うっすらと開いたままの目は白目が赤く染まっていた。

浅い呼吸を繰り返すだけで意識もない。

「ソーリュー!俺だ!スーだ!」

触れた身体から魂が消えるように力が抜けた。

もう良いか、とでも言うように…

慌てて指輪を使って彼に治癒魔法を施したが、体の傷痕はあらかた塞がったのに意識だけが戻らない。君がこんなに無茶をするなんて…

「嫌だ…君まで…」何で君まで失わなきゃいけないんだ?!悲しみと同時に怒りが込み上げた。

「…オークランド」怒りの矛先は当然のように彼らに向かった。

テレーゼが何をした!ワルターが!俺たちが!

俺たちは普通に暮らしていただけだ。

奪われるようなことは何もしていない!

「ソーリュー、ごめん…待っててくれ…」

俺はワルターを助けに行かなきゃならない…

「彼を頼む」

仲間に彼を預けて馬の背に乗った。

「ワルターを追う。何人か来てくれ。トゥルンバルト、ここを任せていいか?」

「私も…」若い騎士は名乗りあげたが、ケッテラーが討死した今となっては彼まで失う訳にはいかない。

「君はワルターに必要だ。悪いが、今回は《冬の王》が絡んでいるから俺に譲ってくれ」

「…ご武運を」

「ありがとう」

愛馬ユッタに合図してまた暗闇に向かって走り出した。

俺の後ろの闇に数騎の騎士が続いた。

✩.*˚

あの冬を纏った獣を追ってカナル運河に出た。

オークランドは目と鼻の先だ。

「団長、あれでは?!」

部下の指した先には凍った河と、船を襲う白い雄鹿の姿があった。

雄鹿は、アーサーの《拒絶》を食らって船から追い出されては戻って彼と対峙した。

氷で攻撃して船を沈めた方が早いのに、そうしないのはあの船を沈めたら不都合なものがあるからだ。

あの鹿はただの精霊ではない…

「あれが…ロンメル男爵か…」と呟いて全てを理解した。

《神紋の英雄》とは人間を辞めているのか…

天候すら左右するほどの強力な《祝福》を有し、氷を自在に操る《英雄》が、一人の女のために苦戦している。

なんとも馬鹿な男だ…

氷の上でまた立ち上がる鹿は船を見上げて鳴いた。悲しげな鹿の呼ぶ声は連れ合いを呼んでいる。

それを船から見下ろすあの男もまた大馬鹿者だ…

なぜ剣を抜かない?

アーサーの《祝福》は戦うには向かないが、それでも戦えないわけではない。《拒絶》の剣を振るえば精霊も両断出来るはずだ。

お前にその気がないのか?

その二人に自分を重ねたところで、お前が救われるわけでもあるまい?愚か者め!

桟橋に向かおうとした。

このままでは彼らは決着がつかない。あの二人ではただの意地の張り合いになってしまう。任務は失敗する…

「うわッ!」部下が悲鳴を上げた。

白い矢を受けて部下が落馬した。

次から次に…

飛んできた矢を避けて暗い道を睨んだ。

騎士を一矢で葬った矢には魔法が乗っていた。

魔法使いか…

愛馬を返して剣を抜いた。

雷光が刀身に煌めいた。

「《雷刃》」剣を振り下ろすと雷光を含んだ光る刃が放たれる。

「《大楯》!」魔法使いが指輪を嵌めた手を前に突き出し、防御魔法で飛来する白刃を防いだ。

彼は馬の勢いそのままに、騎士に肉薄した。

まだ若い魔法使いは腰に帯びた剣を抜いた。

射手、魔法使い、剣士と随分多彩な若者だ。まだ年齢は20歳前後だろう。天才と呼んで差し支えない。

彼の率いる数騎の騎士らと部下たちがぶつかった。

数こそ少ないが、こちらも損耗が激しい。

彼らと対峙した前線は一瞬で打ち負かされた。

《祝福》を出し惜しみする余裕などない。

「さっさと失せろ、オークランド!」

青年が馬上で剣を振るって私に襲いかかった。無礼な物言いは幼さが滲んでいた。

「《白蘭の聖騎士団》団長のウェルシュだ」

名乗った私に、彼は「スペースだ」と名乗ってまた剣を繰り出した。

彼は私の《雷光》を帯びた剣を正面から受け止めた。

「あんたは最低だ」と青年は私を罵った。

「ワルターもテレーゼも、今日が特別な日になるはずだったんだ!お前らが無茶苦茶にした!」

彼の剣が重さと鋭さを増した。

「クソッタレのオークランドが!ふざけるなよ!

どれだけの不幸をばらまいたら気が済む!この疫病神が!」

罵詈雑言を投げかけるこの青年は、オークランドに恨みが有るのだろうか?

敵国の人間だ。そうであっても何も驚くことではなかった。

憎悪に染まった菫色の瞳は、私が今まで見てきた中で一番強い光を宿していた。

この青年に負けるわけにはいかない。後ろの敵を葬って、早くアーサーを援護しなければ…

迫る剣を受け止めて《祝福》を放った。

「《雷光》!」

目の前で雷が爆ぜた。相手の馬が悲鳴をあげて前脚を折った。

「ユッタ!クソッ!」青年は悪態を吐いて、潰される前に馬を乗り捨てた。

主の代わりに雷に撃たれた馬はもんどりうって地面に倒れ動かなくなる。

馬から降りた青年に、また《雷光》を放った。

「《楯》!」指輪が光り、また魔法で出来た楯が顕現して《祝福》を防いだ。

強力な魔法の楯を作る指輪はかなり高価な品だ。この青年は何者だ?

この若さでこの優秀さはオークランドにとって脅威だ。是が非でも倒さなくてはなるまい。

剣の応酬の最中でも、青年は《祝福》の気配に反応して雷を防いで見せた。

単純な魔法しか操れない、《祝福》も無さそうな若者に苦戦している自分がいた。

信じられない!

こんなことがあって良いはずがない!

私は大神ルフトゥの剣、聖騎士団長だぞ!

こんな若者に敗北など有り得ない!

神よ!私の信仰が足りないというのですか?!

貴方に全てを捧げ、敬い、尊び、常に祈りを捧げてきたというのに!私の信仰がこの青年に劣っているのですか?!

そんなはずがない!

違う!これは私への試練だ!そうでなければ納得出来などしない!

どうか《祝福》を…神の御業を私めに御与え下さい!

「神様に縋るのか?」

首から提げた十字架に伸びた手を見咎めて、青年は馬鹿にしたように笑った。

「あんたみたいな心の弱い奴、神様だって期待外れだろうよ!

あんたはワルターの足元にも及ばない!彼は諦めて神様に縋ったりしない!必ず自分の足で立つ!だから《冬の王》も彼を愛したんだ!ワルターは特別だ!」

青年は誇らしげにそう言って剣を振るった。

手綱を断たれる。それに驚いて竿立ちになった馬から落馬した。

暗闇に鈍色の軌跡が閃いた。

赤と断ち切られた十字架が宙に舞う。

私は…間違っていたのだろうか…?

その問いの答えは出ないまま、世界は途切れた…

✩.*˚

もう諦めてくれ…

俺の方が心折れそうだ…

何度追い返しても、白い鹿は甲板に戻ってきた。そんなに粘られたら、俺の方が心折れちまう…

「フェルトン卿!もうやめてください!」夫人の悲痛な声がさらに俺を苦しめた。

俺は今、過去に自分が受けた苦しみを他人に与えている。あの最低な父親と同じ事をしているのだ…

それだけで胸が苦しいと言うのに、この二人は、俺が出来なかった我儘を通そうと必死にもがいている。

俺も…そうするべきだったのか…?

どこか遠くで、彼女と一緒になれば良かったのか?

《拒絶》して追い返した鹿は船の外で悲しげに鳴いた。

その声に夫人も泣いていた。夫の名を呼ぶ姿に、ついに俺の心が折れた…

もう限界だ。自分の良心を押し殺すのに疲れた。

俺だって、こんな仕事したい訳じゃない…

ロバート…すまん、許してくれ…

生真面目な友人に心の中で謝って、《拒絶》を繰り返した手を下ろした。

「夫人…俺の負けだ…」敗北を認めた俺の元に、あの白い鹿が再び戻ってきた。

「あんた…彼女が大事か?」と白い鹿の姿をした彼女の夫に訊ねた。鹿は驚いたように瞬きをして「妻だ」とライン語で答えた。

「返してくれ。愛してるんだ…」と彼は懇願した。

そうだろうな…

「…フェルトン卿…」夫人の涙に濡れた瞳が俺の顔を見上げている。

分かったから、もうそんな顔するなよ。

「マントはやるよ」と言って、彼女の背を押して夫の前に送り出した。

白い鹿の姿をした夫が彼女を迎えるように前に出た。

彼女の手が触れた瞬間、呪いが解けるように鹿の姿が消え、代わりに銀髪の背の高い男が彼女を腕の中に招いた。

だいぶ年上だが、まあまあいい男じゃないか?

夫人は夫の元に帰った。それで良かったんだ…

罪悪感で重かった心が、少しだけ楽になった。

それと引き換えに、俺は帰る場所を全て失った…

もう帰る必要も無いか…

ケジメはつけるつもりだった。腰のダガーに触れた…

あんたらを見送ったら、俺のこのつまらん人生ともお別れするさ…

最後に良いもん見させてもらったよ。

俺もそうすりゃ良かったんだ…

そうしたら、もう少しマシな人生を送れたんだろうよ…

夫人が俺に振り返った。彼女は悪党の身を案じていた。お人好しにも程がある。その姿に苦笑いが洩れた。

「…フェルトン卿」

「気にするな。元々乗り気じゃなかったんだ」と彼女に強がって見せた。

「こんな…馬鹿な!なりません!」

この美しい光景を受け入れられない奴が叫び声を上げた。同じ船に居合わせたアビー男爵だった。

部下やほかの騎士たちも逃げ出した中、逃げ遅れたのだろう。

彼は自分の欲深い計画の破綻に、地団駄踏んで悔しがっていた。

「なりませんぞ!テレーゼ様!貴女はオークランド王のお妃になるのです!」

「…まだ言ってんのか?」なんて無粋で卑しい男か…

この美しい光景にケチをつけるなんて、許せるものでは無い。

愛する妻を抱いた男は、醜く肥えた、自らの欲に忠実な男を睨めつけた。

「妃だと?」怒る双眸は、肥えた悪の元凶を捉えていた。

「王だろうと、誰にだろうと譲るものか!彼女は俺のものだ!

オークランドが俺から彼女を奪うってんなら、俺はオークランドを死ぬまで荒らしてやる!

オークランドの人も土地も、全てを呪ってやる!」

「なんと恐ろしい本性か!

テレーゼ様!これがこの男の本性ですぞ!お考え直されよ!」

「もう止めろ、見苦しい」見ていられなかった。

間に割って入った俺を、アビー男爵は忌々しげに睨んだ。

「貴殿もだ、フェルトン卿!

ルフトゥの聖騎士が聞いて呆れる!神への信仰と、国への忠誠心は如何なされた?!」

相手がロバートなら多少なりにその言葉も響いたのかもしれんが、相手が俺では不愉快な響きが俺のうなじを固くするだけの話だ。

彼は俺を煽ったが、もう俺の闘志は消えちまった後だ。煽るもんなんて何も無い。

「帰りな」と二人に告げた。

「迷惑をかけた詫びに、後始末くらいはしておいてやる」と告げて、ダガーを手にアビー男爵に歩み寄った。

逃げようとした男を捕まえて、屠殺するようにダガーで首筋を切り裂いた。喉から溢れる血と、跳ねる身体は正に屠殺された動物だ。

こんな豚に振り回されて、情けねえな…

「あんたどうするつもりだ?」とロンメル男爵が訊ねた。傭兵上がりの男爵は不慣れなパテル語を使っていた。

「そんなことしたら国には帰れないだろう?」

その言葉にまた苦笑いした。

あんたも相当お人好しだな…さっきまでの気迫はどうしたよ?

「好きにするさ」とロンメル男爵にライン語で応えた。

その時、フィーア側の岸から声が上がった。鬨の声だ。

ロバート…お前も負けたのか…

東の空が暁を迎えようとしていた。

ダガーを握り直し、喉を貫いた。

アイリーン…

俺の作った下手な花束を抱く女の顔が、記憶の向こうで笑った。

俺が悪かったんだ…俺が弱かったんだ…

「フェルトン卿!」手放した意識の向こう側でロンメル夫人の悲しそうな声がした。

自分が手に入れられなかった幸せを、諦めずに取り戻した二人を祝福して、俺は最後まで臆病なまま、自ら命を絶って逃げ出した。

✩.*˚

テレーゼが泣きながらフェルトンというオークランドの騎士に駆け寄った。被っていた黒い布が落ちたので、慌てて拾ってテレーゼに駆け寄った。

何だよ!そのドレス!いや、それどころじゃないがさ!

あと、旦那の前で他の男に走るなよ。傷付くだろうが…

「死なないで…」と倒れた騎士に伸びた彼女の手は白く輝いていた。

血の溢れる彼の喉元に触れ、傷口を押さえると、噴水のように溢れていた血が止まった。

深く穿たれた傷が最初からなかったもののように塞がった。

「…テレーゼ?」そんな能力あったのか?魔法なんて使えなかったはずだ…

でも、魔法と言うよりそれは…

「《フリューリング様》から、夢の中で《白い手》を賜りました」と彼女は答えて自分の手のひらを見つめていた。

自分でも驚いているのだろう。

「ワルター様、この人を見逃してください。

この方は私を守ってくださいました」

「分かったから…とりあえずその格好何とかしろ」

目のやり場に困る…出てった時より酷くなってんじゃねぇか…

黒い布で剥き出しの肩を覆った。

白い柔らかそうな胸元が強調された華美なドレスは、艶めかしく16になったばかりの乙女を飾っていた。

テレーゼは恥ずかしそうに黒い布で身体を隠した。

はぁあ…なんだよこれ…これはこれでエロい…

彼女を見ていられなくなって背を向けた。

「…帰るか」と呟いた俺の背中に軽い衝撃があって、続いて暖かく柔らかい感触が背中に触れた。

細い腕が後ろから俺を抱いた。

散々妻だの愛してるだの言ってたくせに、いざこうなるとどうしていいのか分からなくなる。

本っ当に俺ってダセェな!

「ワルター様」と呼ばれて振り返ると、彼女は疲れた顔で笑っていた。泣き顔でないことに安堵した。

「帰りましょう」とテレーゼは笑顔で俺に言った。

その時になってようやく彼女が裸足で傷だらけなのに気が付いた。

「逃げたのか?」と訊ねると彼女は足元を見て恥ずかしそうにはにかんだ。

随分無茶をする。彼女は俺が思っていたよりお転婆だったようだ。

「子供たちとの鬼ごっこも無駄じゃなかったですね」と笑う彼女に呆れた。

時間を稼ぐにしても、もっと他の方法があったろうに…

彼女を抱き上げて、少し重くなった事に気付く。

「重いですよ」

「へぇ、そうかい」

いい女になった分重くなったんだろう?ならいいさ…

二人で幸せを噛み締めて笑った。

お前が無事に戻ったんだ…嬉しいさ…

皆喜んでるよ…

船を後にして氷の上に降り立った。

早く渡らなければ溶けてしまう。流されたらシャレにならん。

「あ…」と後ろを振り返ったテレーゼが声を上げた。

振り返ると船の上には生き延びた黒い騎士の姿があった。

彼は何も言わずに俺たちを見送った。

桟橋にたどり着くと、スーたちの姿があった。

スーも多少なりにボロボロになっていたが元気そうだ。返り血に染まった服を見て、強くなったな、と彼の成長を感じた。

「二人ともおかえり」とスーは腕を組んで俺たちを迎えた。

「もう帰るよ、長い一日だったから疲れたよ」と彼はボヤいた。

確かにな…テレーゼと二人で顔を見合せた。

彼女の15歳の最後の日は長かったな…

誕生日の準備をするつもりだったのに、何も用意できてない…

彼女に内緒で覚えた沢山の花言葉も無駄になったら困る。

女の読むような本に手が出せず、コソコソと隠れて一本ずつ覚えたんだ。

誕生日に送る花束はもう決まってる。

《愛してる》を詰め込んだ花束はもう予約済みなんだ。受け取りに行かなきゃ無駄になる。花屋だって困るだろう?

「どうぞ」と差し出された黒い馬に、彼女と一緒に乗った。

オークランド勢が連れていたものだそうだが、立派で賢そうな馬だ。ありがたく頂戴した。

「抵抗の意思のない者は逃がしてやれ…」と指示を出した。

「…ワルター、それでいいのか?」スーは不満そうだが目的は達した。これ以上は無駄だ…

「もう終わったことだ」と言ってこれ以上の殺生を禁じた。

「ワルター様、《フリューリング様》との約束を果たしてもよろしいでしょうか?」とテレーゼが訊ねた。

「『《冬の王》の通り道を癒しながら帰りなさい』と言われました」と彼女は言った。

なるほど…嫁さんは俺の尻拭いの仕事が残ってんのか…

なら俺も付き合わなきゃならんな…

そういえばと思い出して彼女の左手を取った。

シュミットを通して返却された指輪を彼女の指に戻した。

「今日は誕生日だ。我儘くらいいくらでも聞くさ」

彼女の願いを安請け合いして、馬に合図を出した。

黒い馬は小さく嘶いて、二人を乗せて帰路に着いた。
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