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緊急事態No.2
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本日も満員御礼のCLUB・Aries。店内奥のメイン・カウンターと対になるように設置された入り口側のNo3バーテンダー・スオウ担当のカウンター。お客様ご来店の気配に何時ものように顔を上げ声を出そうとした瞬間、固まるスオウ。
「・・・・・・・あ、い、いら・・・・・・・」
来店したカクテルドレスの銀髪の女性はそんなスオウに口元に人差し指をあて、静かに、の合図を送りかって知ったる店という感じでメイン・カウンターへと進んでいった。
「スオウさん、大丈夫ですか?」
「ああ。」
「相変わらずの迫力ですね、あの方は。」
「“女帝”だからな。」
((((((“女帝”?!))))))
スオウと彼の補佐を担当している秋庭の会話になにやら動揺する新人スタッフたち。Ariesでは新人バーテンダーたちはスオウと秋庭の2人によって教育される。後に唯一の女性スタッフとして“女帝”に押し付けられる芳のように入店直後からNo1であり司令塔のシンがいるメイン・カウンターに配属になるなど異例であり、滅多にないことである。
お客様の来店、VIPの来店を告げるのはスオウの役目。いくら“女帝”に必要ないといわれたとはいえ、シンを伺えば・・・・・・・。
“何故来店を告げない”と、視線で怒られた。
「いくら貴方がお怒りになろうとも彼女には逆らえません。」
スオウに咎めの視線を送っても彼は申し訳なさそうに肩をすくめるだけ。シンの目の前には超特級のVIP“女帝”が座っている。
「・・・・・申し訳ありません。スオウには私から良く・・・・・・・」
「あら、スオウは悪くないわよ。だって、私が必要ないって合図したんだもの。」
(全く、この女(ひと)は本当にもぅ~~~)
怒鳴りつけたくなる衝動を必死に抑え耐えるシン。黄道十二星座の名を持つ系列店の頂点たる本店、BAR・Libraの店長にして系列店所属全バーテンダーNo1に君臨するまさに“女帝”。しかし、シンの実の母親でもある。実の母親を怒鳴りつけるわけにはいかない。営業スマイルを心がけ彼女に一点もの、“紫翠”を差し出す。
「今日は一体どのような御用で来店されたんです?“女帝”」
こめかみのひくつきを精神総動員で押さえ込みつつ訊ねるシン。
「つれないわね。今日は普通のお客として来店したのよ。
な~んて言ってもどうせ信じないわよねぇ。」
シンを始めとするスタッフ全員の頭の上に(当たり前です!!)というモノローグが浮かぶ。
「ま、当然よね。」
バッグから一枚の写真を取り出し、ニヤリ、と艶麗に笑う。美しいが故にぞっとする微笑。
「やってくれるじゃないのぉ?聖ちゃん。」
その言葉と同時に目の前でひらつかせたのは・・・・・・・・・・・・・
「「「「「「ゲッ」」」」」」
今度こそ完全に機能停止状態で固まってしまうシン。もちろん、他のミナトを始めとするバーテンたちも絶句している。“女帝”が彼の目の前でひらひらさせた写真。それはAries“華のトップ3”まさかの全員欠勤のときに姿を現した幻のホスト・聖の写真。『聖=シン』であることは今ではAries全スタッフの公然の秘密として暗黙の了解となっている。(トップ3にとってはトラウマ)
「この日はトップ3が全員まさかの欠勤。にも係わらず、上がってきた売り上げ報告は目標売り上げを上回って達成率おおよそ130%。どういうことかと調べさせたら・・・・・あら、面白いことにこーんな写真が。」
「私の知り合いですよ・・・・・・・・・」
シンの苦しい言い訳に“女帝”の紫翠眼が鋭く光る。口元は微笑みのままだが、眼光は剣呑そのもの。ついでに心なしか室内体感温度も下がっているような・・・・・・・・・
「あら、そうなの?この瞳の色はカラーコンタクトかしら。だとしたら、とんでもない念の入れようだわねぇ。・・・・・なんて、見逃してあげるわけないでしょう?言い訳は聞かなくてよ。
今度、系列ホストクラブの中でも黄道十二星座の名を持つ四店舗の写真集を出す事が決まってるの。Ariesのホストとして“聖”も加えるから。」
「な・・・・・・・・・・・・・“女帝”、“聖”はAriesの正式な所属ホストじゃありません。」
「聞く耳は持たないわ。
これは“女帝(わたし)”1人の決定事項ではなく、“オーナー命令”よ。シン、貴方に拒否権は・・・・・・・・」
「ありませんね」
大概のことにはある程度の権利の行使を許されている(黙認されている)シンではあるが、“オーナー命令”だけは絶対、拒否権はない。
「近々正式な企画書を持ってくるから、苦情は一切受け付けないわよ。」
紫翠のグラスをゆったりと一度揺らし、その輝きに満足げに目を細め一息で飲み干し立ち上がる。
「・・・・・・・あ、ありがとうございました。又のお越しをお待ちしております。」
“女帝”によってもたらされた“オーナー命令”に固まってしまったシンの代わりにミナトが挨拶をする。
来店時同様、颯爽と退店していく“女帝”。彼女が店から出ると漸く緊張感が解けたかのようにスタッフ達の動きは何時もの滑らかさを取り戻していた。ただ1人、シンを除いて。
“女帝”の宣言どおり、正式な企画書が届いたのは彼女の来店から一週間が過ぎた頃だった。企画説明の為店内に集められているスタッフ達。
「写真集・・・・・・・・ね。この企画書の予定でいくとウチは最後、か。」
「まぁ、他の三店に比べてスタッフの数も多いですしね。」
「当然っちゃ当然か。」
正式な企画書を手にしたシンは不気味なほど落ち着いて見えた。普段なら一番に文句をいう彼がである。
「・・・・・・・俺、すっごい怖いんですけど。」
「それは全員一緒です。」
なんとも言いようのない雰囲気に満ちた店内。幸い店が休みのため外部への影響はない。
「撮影は他の三店とは違って一日では到底無理ですから順次という形になります。そうですね、全員集合だけは先に、というか、早めに撮影に入りましょう。」
写真集製作スタッフが淡々と説明していく。そして最後の質疑応答になっても、シンが動きを見せる事は無かった。それがかえってAriesのスタッフの不安をあおった事は言うまでもない。
スタイリストとしては今や押しも押されぬ人気デザイナーとして“ブランド・彩香”“アトリエ・妖”を立ち上げた七瀬綾香、メイク担当にはショウの弟であり系列美容院でトップ美容師として活躍中の神無月京が起用された。
「・・・・・・・・・ショウ、1つ聞いてもいい?」
「ぁ、兄さん、アタシも聞きたいことあるの。」
「「“聖”って誰?」」
「二人揃って俺に振るんじゃねぇよ。」
綾香と京、2人の質問にどう説明したものか頭をかかえるショウ。
「俺だよ。」
綾香と京にお茶を出しながら種明かしをするシン。ついでに“聖”の時の写真も見せる。開き直っているのか何か目論見があるのか、今のシンからはショウですらうかがい知る事が出来ず(シン兄・・・な~に考えてるのかね)戸惑っている。
「シン兄さん、これ、市販の染髪料使ったの?」
「ああ、なにぶんにも急を要するときだったからな。」
「もちろん、自分で染めたのよねぇ?」
「自分でやる以外、いったい誰がやってくれる?」
シンの薄茶の髪を一房手にとって、
「もともと色素が薄いから染まりやすいんでしょうけど、あんまり感心しないわね。」
ほら、今も傷んだところから傷みが広がってる。とプロの目で批評する京。
「スーツは緊急用に置いてあるの?」
「ああ、何かあったときの為に無難なものを一着置いてある。」
「即興にしては全てあってる。黒髪に黒のストライプのスーツ。元のこの薄茶の髪なら浮いたでしょうけど、黒髪にしたことによって落ち着いてるわ。スーツも、リオウさん着用の真っ黒じゃなくてストライプ入りってところで少し軽くなってるし。ねぇ、京ちゃん、このコーディネートどう思う?」
「シン兄さんの肌の白さが良く映えてるわね。普段から艶をもつ人だけにこういう格好をした事によって、その艶がさらに増してるし。」
無意識でしょうにここまで自分を引き立てるなんて凄いとしかいえないわ。と感嘆のため息をもらす京。
Ariesでは“妖艶”という意味でリオウの右に出るものはいない。ただし、普段ならばである。本気になったショウはリオウを上回るが、こいつが本気になる事は滅多にない。だが、本気になったショウを上回り、リオウの“妖艶”さを完全にかき消してしまうのが“聖”バージョンのシンである。この男に関しては普段はバーテンダーであるため、例えリオウ以上の“妖艶”さを振りまいていたとしても誰も気にしないだけ、もしくは慣れてしまっているのである。本人も自分が“妖艶”であるなど全く自覚はない。シンとしてホストになっていたなら確実に不動のNo1であろう。
本日の撮影はAries所属ホスト全員集合。その彼らの中央に立つのは当然、ショウ。では無く・・・・・・・・・なんと“聖”である。この集合シーンは2パターンが撮られた。1つは全員立った状態。もう1つは、真ん中に置かれた椅子に“聖”が座り、左右をトップ5が堅め、その後にはNo6から順次ならんでいるパターンである。
「元の色素が薄いから短時間で染まるし、発色もいいけど、アフターケアもちゃんとしないとね。あんまりきっちり束ねるよりも少し緩め。背中の中くらいで束ねて、髪留めは普段使ってるこのシルバーのでいいわね。見えないのがちょっと残念だけど、今のシーンでは別にいいわよね。シン兄さんはもともと色白だからほんの少しのメイクで充分ね。でも、口紅は少し濃い色を使いましょうか。」
京の選択は間違っていなかった。彼のメイクにより、“聖”の妖艶さはより一層引き立つ事となった。
「スーツは・・・・・・・そうねぇ、黒のストライプよりは、濃紺のストライプにして、ネクタイも濃紺。ピンはシルバー。シャツはオフ・ホワイトでいいわね。それから、黒の手袋をつけてみて。」
綾香の見立てで黒い手袋をはめた“聖”。ただ妖艶なだけではなくほんの少し、危険な感じもプラスされた。(ちょっとマフィアチック。)
全員集合のシーンを撮り終えた後はホスト・バーテンダーそれぞれのトップ3によるツー・ショットシーンの撮影となった。しかし、ここで、なんと初版予約得点用カットとして“ショウ”と“聖”のツーショットも撮影された。ショウを光とするなら聖は影、背中合わせの2人は独特の世界観を作り出している。
そして通常版のトップ3によるツーショット。
No1コンビはやはり2人並べると貫禄充分、華やかさもある。ショウが動ならシンは静だろう。ちょうど対を成している。No2、リオウとミナトのツーショット。大人の妖艶な魅力を持つNo2ホストと少年のような爽やかさを持つNo2バーテンダー。No3、リンとスオウのツーショットはリオウとミナトの反対の感じをだしている。落ち着いた大人の雰囲気を持つNo3バーテンダーと母性本能をくすぐるNo3ホスト。おまけのツーショットで、スポーツ系で爽やかな感じのNo4ホスト・ツカサと優等生系物静かな感じのNo5ホスト・コウキ、となった。
撮影は思いのほか順調に進み、予定通り、むしろ時間的には予定よりも若干早く終了する事になった。Ariesスタッフによると、
「こうゆう企画を一番嫌がるシンさんが一番大人しくて怖いので早く終わらせたかったんです。」
という全員一致の想いがあったとのこと。シン曰く、
「オーナー命令では俺に拒否権などあるまい。“女帝”にわざわざ言われるまでもない。」
とのこと。
しかし、この後、家庭では“女帝”の食事の品数が一品少なかったとか。そしてオーナーも巻き添えで晩酌禁止令がでたとかでないとか。真相を唯一知るであろうショウは、
「俺は何も知らない。(まだ死にたくないしね)」
と、絶対白状しなかったとか。
「・・・・・・・あ、い、いら・・・・・・・」
来店したカクテルドレスの銀髪の女性はそんなスオウに口元に人差し指をあて、静かに、の合図を送りかって知ったる店という感じでメイン・カウンターへと進んでいった。
「スオウさん、大丈夫ですか?」
「ああ。」
「相変わらずの迫力ですね、あの方は。」
「“女帝”だからな。」
((((((“女帝”?!))))))
スオウと彼の補佐を担当している秋庭の会話になにやら動揺する新人スタッフたち。Ariesでは新人バーテンダーたちはスオウと秋庭の2人によって教育される。後に唯一の女性スタッフとして“女帝”に押し付けられる芳のように入店直後からNo1であり司令塔のシンがいるメイン・カウンターに配属になるなど異例であり、滅多にないことである。
お客様の来店、VIPの来店を告げるのはスオウの役目。いくら“女帝”に必要ないといわれたとはいえ、シンを伺えば・・・・・・・。
“何故来店を告げない”と、視線で怒られた。
「いくら貴方がお怒りになろうとも彼女には逆らえません。」
スオウに咎めの視線を送っても彼は申し訳なさそうに肩をすくめるだけ。シンの目の前には超特級のVIP“女帝”が座っている。
「・・・・・申し訳ありません。スオウには私から良く・・・・・・・」
「あら、スオウは悪くないわよ。だって、私が必要ないって合図したんだもの。」
(全く、この女(ひと)は本当にもぅ~~~)
怒鳴りつけたくなる衝動を必死に抑え耐えるシン。黄道十二星座の名を持つ系列店の頂点たる本店、BAR・Libraの店長にして系列店所属全バーテンダーNo1に君臨するまさに“女帝”。しかし、シンの実の母親でもある。実の母親を怒鳴りつけるわけにはいかない。営業スマイルを心がけ彼女に一点もの、“紫翠”を差し出す。
「今日は一体どのような御用で来店されたんです?“女帝”」
こめかみのひくつきを精神総動員で押さえ込みつつ訊ねるシン。
「つれないわね。今日は普通のお客として来店したのよ。
な~んて言ってもどうせ信じないわよねぇ。」
シンを始めとするスタッフ全員の頭の上に(当たり前です!!)というモノローグが浮かぶ。
「ま、当然よね。」
バッグから一枚の写真を取り出し、ニヤリ、と艶麗に笑う。美しいが故にぞっとする微笑。
「やってくれるじゃないのぉ?聖ちゃん。」
その言葉と同時に目の前でひらつかせたのは・・・・・・・・・・・・・
「「「「「「ゲッ」」」」」」
今度こそ完全に機能停止状態で固まってしまうシン。もちろん、他のミナトを始めとするバーテンたちも絶句している。“女帝”が彼の目の前でひらひらさせた写真。それはAries“華のトップ3”まさかの全員欠勤のときに姿を現した幻のホスト・聖の写真。『聖=シン』であることは今ではAries全スタッフの公然の秘密として暗黙の了解となっている。(トップ3にとってはトラウマ)
「この日はトップ3が全員まさかの欠勤。にも係わらず、上がってきた売り上げ報告は目標売り上げを上回って達成率おおよそ130%。どういうことかと調べさせたら・・・・・あら、面白いことにこーんな写真が。」
「私の知り合いですよ・・・・・・・・・」
シンの苦しい言い訳に“女帝”の紫翠眼が鋭く光る。口元は微笑みのままだが、眼光は剣呑そのもの。ついでに心なしか室内体感温度も下がっているような・・・・・・・・・
「あら、そうなの?この瞳の色はカラーコンタクトかしら。だとしたら、とんでもない念の入れようだわねぇ。・・・・・なんて、見逃してあげるわけないでしょう?言い訳は聞かなくてよ。
今度、系列ホストクラブの中でも黄道十二星座の名を持つ四店舗の写真集を出す事が決まってるの。Ariesのホストとして“聖”も加えるから。」
「な・・・・・・・・・・・・・“女帝”、“聖”はAriesの正式な所属ホストじゃありません。」
「聞く耳は持たないわ。
これは“女帝(わたし)”1人の決定事項ではなく、“オーナー命令”よ。シン、貴方に拒否権は・・・・・・・・」
「ありませんね」
大概のことにはある程度の権利の行使を許されている(黙認されている)シンではあるが、“オーナー命令”だけは絶対、拒否権はない。
「近々正式な企画書を持ってくるから、苦情は一切受け付けないわよ。」
紫翠のグラスをゆったりと一度揺らし、その輝きに満足げに目を細め一息で飲み干し立ち上がる。
「・・・・・・・あ、ありがとうございました。又のお越しをお待ちしております。」
“女帝”によってもたらされた“オーナー命令”に固まってしまったシンの代わりにミナトが挨拶をする。
来店時同様、颯爽と退店していく“女帝”。彼女が店から出ると漸く緊張感が解けたかのようにスタッフ達の動きは何時もの滑らかさを取り戻していた。ただ1人、シンを除いて。
“女帝”の宣言どおり、正式な企画書が届いたのは彼女の来店から一週間が過ぎた頃だった。企画説明の為店内に集められているスタッフ達。
「写真集・・・・・・・・ね。この企画書の予定でいくとウチは最後、か。」
「まぁ、他の三店に比べてスタッフの数も多いですしね。」
「当然っちゃ当然か。」
正式な企画書を手にしたシンは不気味なほど落ち着いて見えた。普段なら一番に文句をいう彼がである。
「・・・・・・・俺、すっごい怖いんですけど。」
「それは全員一緒です。」
なんとも言いようのない雰囲気に満ちた店内。幸い店が休みのため外部への影響はない。
「撮影は他の三店とは違って一日では到底無理ですから順次という形になります。そうですね、全員集合だけは先に、というか、早めに撮影に入りましょう。」
写真集製作スタッフが淡々と説明していく。そして最後の質疑応答になっても、シンが動きを見せる事は無かった。それがかえってAriesのスタッフの不安をあおった事は言うまでもない。
スタイリストとしては今や押しも押されぬ人気デザイナーとして“ブランド・彩香”“アトリエ・妖”を立ち上げた七瀬綾香、メイク担当にはショウの弟であり系列美容院でトップ美容師として活躍中の神無月京が起用された。
「・・・・・・・・・ショウ、1つ聞いてもいい?」
「ぁ、兄さん、アタシも聞きたいことあるの。」
「「“聖”って誰?」」
「二人揃って俺に振るんじゃねぇよ。」
綾香と京、2人の質問にどう説明したものか頭をかかえるショウ。
「俺だよ。」
綾香と京にお茶を出しながら種明かしをするシン。ついでに“聖”の時の写真も見せる。開き直っているのか何か目論見があるのか、今のシンからはショウですらうかがい知る事が出来ず(シン兄・・・な~に考えてるのかね)戸惑っている。
「シン兄さん、これ、市販の染髪料使ったの?」
「ああ、なにぶんにも急を要するときだったからな。」
「もちろん、自分で染めたのよねぇ?」
「自分でやる以外、いったい誰がやってくれる?」
シンの薄茶の髪を一房手にとって、
「もともと色素が薄いから染まりやすいんでしょうけど、あんまり感心しないわね。」
ほら、今も傷んだところから傷みが広がってる。とプロの目で批評する京。
「スーツは緊急用に置いてあるの?」
「ああ、何かあったときの為に無難なものを一着置いてある。」
「即興にしては全てあってる。黒髪に黒のストライプのスーツ。元のこの薄茶の髪なら浮いたでしょうけど、黒髪にしたことによって落ち着いてるわ。スーツも、リオウさん着用の真っ黒じゃなくてストライプ入りってところで少し軽くなってるし。ねぇ、京ちゃん、このコーディネートどう思う?」
「シン兄さんの肌の白さが良く映えてるわね。普段から艶をもつ人だけにこういう格好をした事によって、その艶がさらに増してるし。」
無意識でしょうにここまで自分を引き立てるなんて凄いとしかいえないわ。と感嘆のため息をもらす京。
Ariesでは“妖艶”という意味でリオウの右に出るものはいない。ただし、普段ならばである。本気になったショウはリオウを上回るが、こいつが本気になる事は滅多にない。だが、本気になったショウを上回り、リオウの“妖艶”さを完全にかき消してしまうのが“聖”バージョンのシンである。この男に関しては普段はバーテンダーであるため、例えリオウ以上の“妖艶”さを振りまいていたとしても誰も気にしないだけ、もしくは慣れてしまっているのである。本人も自分が“妖艶”であるなど全く自覚はない。シンとしてホストになっていたなら確実に不動のNo1であろう。
本日の撮影はAries所属ホスト全員集合。その彼らの中央に立つのは当然、ショウ。では無く・・・・・・・・・なんと“聖”である。この集合シーンは2パターンが撮られた。1つは全員立った状態。もう1つは、真ん中に置かれた椅子に“聖”が座り、左右をトップ5が堅め、その後にはNo6から順次ならんでいるパターンである。
「元の色素が薄いから短時間で染まるし、発色もいいけど、アフターケアもちゃんとしないとね。あんまりきっちり束ねるよりも少し緩め。背中の中くらいで束ねて、髪留めは普段使ってるこのシルバーのでいいわね。見えないのがちょっと残念だけど、今のシーンでは別にいいわよね。シン兄さんはもともと色白だからほんの少しのメイクで充分ね。でも、口紅は少し濃い色を使いましょうか。」
京の選択は間違っていなかった。彼のメイクにより、“聖”の妖艶さはより一層引き立つ事となった。
「スーツは・・・・・・・そうねぇ、黒のストライプよりは、濃紺のストライプにして、ネクタイも濃紺。ピンはシルバー。シャツはオフ・ホワイトでいいわね。それから、黒の手袋をつけてみて。」
綾香の見立てで黒い手袋をはめた“聖”。ただ妖艶なだけではなくほんの少し、危険な感じもプラスされた。(ちょっとマフィアチック。)
全員集合のシーンを撮り終えた後はホスト・バーテンダーそれぞれのトップ3によるツー・ショットシーンの撮影となった。しかし、ここで、なんと初版予約得点用カットとして“ショウ”と“聖”のツーショットも撮影された。ショウを光とするなら聖は影、背中合わせの2人は独特の世界観を作り出している。
そして通常版のトップ3によるツーショット。
No1コンビはやはり2人並べると貫禄充分、華やかさもある。ショウが動ならシンは静だろう。ちょうど対を成している。No2、リオウとミナトのツーショット。大人の妖艶な魅力を持つNo2ホストと少年のような爽やかさを持つNo2バーテンダー。No3、リンとスオウのツーショットはリオウとミナトの反対の感じをだしている。落ち着いた大人の雰囲気を持つNo3バーテンダーと母性本能をくすぐるNo3ホスト。おまけのツーショットで、スポーツ系で爽やかな感じのNo4ホスト・ツカサと優等生系物静かな感じのNo5ホスト・コウキ、となった。
撮影は思いのほか順調に進み、予定通り、むしろ時間的には予定よりも若干早く終了する事になった。Ariesスタッフによると、
「こうゆう企画を一番嫌がるシンさんが一番大人しくて怖いので早く終わらせたかったんです。」
という全員一致の想いがあったとのこと。シン曰く、
「オーナー命令では俺に拒否権などあるまい。“女帝”にわざわざ言われるまでもない。」
とのこと。
しかし、この後、家庭では“女帝”の食事の品数が一品少なかったとか。そしてオーナーも巻き添えで晩酌禁止令がでたとかでないとか。真相を唯一知るであろうショウは、
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