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三話 前に進む者と迷う者
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その日の夜、俺は七瀬さんから言われた言葉を理解するのに必死だった。
彼女が俺の事を好き?いや言葉の意味は分かるんだけど。
帰りの時の観月さんとのこともあってあまり自信が持てないが、それでも…
「そんなこと言ってても仕方ないよなぁ…」
振られたことをいつまでもクヨクヨしても仕方ないけど…あれはなかなかショックだった。
まさか観月さんがわざわざ振った相手にあんなこと…とは思うけどやっぱり俺に好かれるのは嫌だったのだろうか?
七瀬さんと観月さんは違う…それは分かってるんだけど…どうしても吹っ切れることはできなかった。
布団の上でゴロゴロしながらウジウジとしていた俺は、どうしてか分からないけど咄嗟に七瀬さんに電話を掛けた。
「もしもし、七瀬さん?」
『もしもし、どうしたの?』
まだ深夜では無いとはいえ遅い時間だ、それなのに出てくれる彼女に感謝だ。
だからこそ、ここで踏みとどまってはならない。
「……俺さ、まだ七瀬さんの想いを受け取れない」
『あっ…そうだよね、ごめんね…』
彼女の声が沈む。
だが俺はこんなことを言いたかった訳じゃない。本当の想いは、この先にある。
「だから、これからはもっと七瀬さんと一緒にいたいんだ。早く七瀬さんの気持ちに応えるために」
『ほぇ?』
俺の言葉に彼女は気の抜けた返事をした。
それは過去を乗り越えるための小さな決意であり、成長の一歩目だ。
「思い返してみるとさ、嬉しかったんだよ…七瀬さんが好きって言ってくれてさ」
『うっうん…』
彼女の返事は困惑気味だ、そりゃあ中途半端な言葉では困るだろう…でも伝えたい気持ちがあるんだ。
「今はダメでも、必ず応えるからさ…だから少しだけ待っててくれるかな?七瀬さん…いや紗奈さん」
まずは第一歩だと、俺は彼女を名前で呼んだ。
こうやって一つ一つを変えていきたい。
『っ…うん、うん!分かった!待ってるよ、樹くん!』
そう返事をしてくれた彼女の声はとても明るい。喜んでくれていることがしっかりと伝わる声だったからか、自然と俺の口角も上がる。
「ごめん、こんな時間に。それじゃあおやすみ、紗奈さん」
『うん!また明日ね、樹くん!』
俺たちはそう言い合って電話を切った。
もう過去を引き摺るのは終わりだ。
────────────────
私は昨日、槍坂先輩から告白をされてそれを受け取った。
一昨日に樹くんの告白を断ったのは、結局彼もみんなと同じで私のことをそういう目で見ていたと思って落胆したからだ。
だから私は彼に諦めてもらうようにと思って、彼氏となった槍坂先輩と会わせたんだけれど…
「本当にあれで良かったのかな…」
私の胸中に渦巻くのは、なにか取り返しのつかない事をしてしまったという予感。
それに先輩の彼に対する言葉は、聞いていて嫌な思いをさせたであろう事が容易に想像できた。
どうして私が先輩の告白を受け入れたのかと言えば、彼が信頼するに値すると思ったから。
どうして信頼できるのかというと、先輩は誠実そうな雰囲気をしていたからで。
あれだけみんなに好かれていて、その上 顔も整っている人が、私のことを顔だけしか見ていないとも思わなかった。
きっと私のことをちゃんと見てくれるはずだと信じてる。
とはいえ実際のところ私はまだ先輩のことはそこまで好きという訳じゃない。
ただ彼なら…と思っただけだ。
信じられたはずの樹くんさえ、結局は私の顔や身体だけしか見ていなかった…ように思う。
…でも一つ思うのは、彼と関わっている時は凄く楽しかったし、自然と彼を呼ぶ時は苗字では無く名前で呼んでいた。
彼は自分のことを、名前で呼んだ方が楽だろ?と冗談っぽく言っていたから。
彼との思い出は確かに楽しいものだった。
私はちゃんと彼のことを見ていたのだろうか?
先輩は?樹くんは?二人とも私のことをどう見てるんだろう…
そもそも先輩は、どうして彼にあそこまで酷いことを言ったのだろう…
考えれば考えるほど自分が何かを見落としているという感じがする。
それに先輩は、樹くんに悪感情を抱いていたのかかなり辛辣な物言いをしていた。
あの人と付き合っていた手前 樹くんに対する言葉を否定できなかったけど、本当はやめて欲しかったというのが本音だ。
あんな場所で人のことをこき下ろすような人って、性格は良いのだろうか?
私はそこまで人間関係を築いてきた訳では無いから、そのあたりのことが分からない。
私は一体どちらを信じればいいのだろうか…
彼女が俺の事を好き?いや言葉の意味は分かるんだけど。
帰りの時の観月さんとのこともあってあまり自信が持てないが、それでも…
「そんなこと言ってても仕方ないよなぁ…」
振られたことをいつまでもクヨクヨしても仕方ないけど…あれはなかなかショックだった。
まさか観月さんがわざわざ振った相手にあんなこと…とは思うけどやっぱり俺に好かれるのは嫌だったのだろうか?
七瀬さんと観月さんは違う…それは分かってるんだけど…どうしても吹っ切れることはできなかった。
布団の上でゴロゴロしながらウジウジとしていた俺は、どうしてか分からないけど咄嗟に七瀬さんに電話を掛けた。
「もしもし、七瀬さん?」
『もしもし、どうしたの?』
まだ深夜では無いとはいえ遅い時間だ、それなのに出てくれる彼女に感謝だ。
だからこそ、ここで踏みとどまってはならない。
「……俺さ、まだ七瀬さんの想いを受け取れない」
『あっ…そうだよね、ごめんね…』
彼女の声が沈む。
だが俺はこんなことを言いたかった訳じゃない。本当の想いは、この先にある。
「だから、これからはもっと七瀬さんと一緒にいたいんだ。早く七瀬さんの気持ちに応えるために」
『ほぇ?』
俺の言葉に彼女は気の抜けた返事をした。
それは過去を乗り越えるための小さな決意であり、成長の一歩目だ。
「思い返してみるとさ、嬉しかったんだよ…七瀬さんが好きって言ってくれてさ」
『うっうん…』
彼女の返事は困惑気味だ、そりゃあ中途半端な言葉では困るだろう…でも伝えたい気持ちがあるんだ。
「今はダメでも、必ず応えるからさ…だから少しだけ待っててくれるかな?七瀬さん…いや紗奈さん」
まずは第一歩だと、俺は彼女を名前で呼んだ。
こうやって一つ一つを変えていきたい。
『っ…うん、うん!分かった!待ってるよ、樹くん!』
そう返事をしてくれた彼女の声はとても明るい。喜んでくれていることがしっかりと伝わる声だったからか、自然と俺の口角も上がる。
「ごめん、こんな時間に。それじゃあおやすみ、紗奈さん」
『うん!また明日ね、樹くん!』
俺たちはそう言い合って電話を切った。
もう過去を引き摺るのは終わりだ。
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私は昨日、槍坂先輩から告白をされてそれを受け取った。
一昨日に樹くんの告白を断ったのは、結局彼もみんなと同じで私のことをそういう目で見ていたと思って落胆したからだ。
だから私は彼に諦めてもらうようにと思って、彼氏となった槍坂先輩と会わせたんだけれど…
「本当にあれで良かったのかな…」
私の胸中に渦巻くのは、なにか取り返しのつかない事をしてしまったという予感。
それに先輩の彼に対する言葉は、聞いていて嫌な思いをさせたであろう事が容易に想像できた。
どうして私が先輩の告白を受け入れたのかと言えば、彼が信頼するに値すると思ったから。
どうして信頼できるのかというと、先輩は誠実そうな雰囲気をしていたからで。
あれだけみんなに好かれていて、その上 顔も整っている人が、私のことを顔だけしか見ていないとも思わなかった。
きっと私のことをちゃんと見てくれるはずだと信じてる。
とはいえ実際のところ私はまだ先輩のことはそこまで好きという訳じゃない。
ただ彼なら…と思っただけだ。
信じられたはずの樹くんさえ、結局は私の顔や身体だけしか見ていなかった…ように思う。
…でも一つ思うのは、彼と関わっている時は凄く楽しかったし、自然と彼を呼ぶ時は苗字では無く名前で呼んでいた。
彼は自分のことを、名前で呼んだ方が楽だろ?と冗談っぽく言っていたから。
彼との思い出は確かに楽しいものだった。
私はちゃんと彼のことを見ていたのだろうか?
先輩は?樹くんは?二人とも私のことをどう見てるんだろう…
そもそも先輩は、どうして彼にあそこまで酷いことを言ったのだろう…
考えれば考えるほど自分が何かを見落としているという感じがする。
それに先輩は、樹くんに悪感情を抱いていたのかかなり辛辣な物言いをしていた。
あの人と付き合っていた手前 樹くんに対する言葉を否定できなかったけど、本当はやめて欲しかったというのが本音だ。
あんな場所で人のことをこき下ろすような人って、性格は良いのだろうか?
私はそこまで人間関係を築いてきた訳では無いから、そのあたりのことが分からない。
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