四度の告白《おもい》は砕かれるー今更好きだと言われても

SAKADO

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七十三話 どうしよう

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 結局今年の文化祭もロクに楽しめずに終わってしまった。まぁ命に別状はなかったからいいけどね。

 ちなみに昨日は母さんが学校に行って色々と話をしてくれた。
 ヤツの処分はまだ分からないが、事がことだけに被害届を出したらしい。弁護士も立てたみたいだ。
 近々色々と話をすることになると言われた。
 
 あれ、これ結構面倒なことにならないか?


 とはいえ大事なことだ、俺も楽観的になっていたがこうしてみると、実際の事はとても深刻なのかもしれない。

 そんなことを考えていると、文化祭が終わって学校から帰ってきた紗奈さんが家にやってきた。

「樹くん、大丈夫?」

「まぁね」

 彼女に上がってもらうと、先にリビングに行こうとしたところで後ろから抱きつかれた。
 フワリと優しく包み込むように、腹ほどの高さで腕を回してきた。

「樹くん……大好き」

「うん、大好きだよ」

 唐突なように感じる紗奈さんのソレに少しだけ ドキリとしてしてしまったが、俺も負けじと彼女に返す。何度聴いても嬉しい言葉だ。

 彼女の手を引いて俺の部屋に入れて、冷蔵庫に入っていたベットボトルのオレンジジュースを渡して隣に座る。サイズは500mlだ、丁度いいサイズだよねコレ。

「えへへ、樹くん……♪」

 にへら と笑った紗奈さんが俺に抱きついてくる。とっても可愛くてこちらも頬が緩んでしまう。
 既に惚れているというのに更に惚れてしまいそうだ。

「ん~♪もっとこうしていたいけど、ちょっとそうもいかない話があってさ……」

 胸に顔を埋めていた彼女が離れ、真面目な表情になった。その声色はとても真剣である。
 どことなく、暗いような雰囲気も感じられた。

「あの日、文化祭のときにお母さんが来るって言ったでしょ?結局会えなかった時の」

「あぁうん、閉じ込められたせいで会えなかったときだね」

 あの野郎の処罰はどうなるか分からないが、多分母さんのことだから徹底的にやると思う。
 そういうとこあるし。

「それでね、その時からお母さんずっと怒っててその……別れろって、ずっと言ってくるの」

「えっ……」

 伏し目がちに紗奈さんが告げたソレは、強い衝撃を感じた。やはりずっと空けていたから怒ってしまったのだろうか。

「樹くんが観月さんをナンパから助けた後に、ナンパしてた人が逆恨みというか、八つ当たりして樹くんを襲ったことも、そうされた樹くんが悪いって……だから樹くんとは関わっちゃダメっていってた」

 言葉がでない。まさかそこまで極端なことを言われてしまうということにも驚きだが、なにより俺が油断していたせいで紗奈さんに不快な思いをさせてしまった事も、申し訳ない気持ちになった。

「しかも、もし私が樹くんと別れないのなら、そのうちお母さんが決めた人だけと付き合わせるって、そんなこと言ってきてさ。だから、どうすればいいのかなって……」

 なんて言えばいいのだろうか、俺にはかける言葉が見つからない。膝を抱えて涙を流す紗奈さんに、俺はただ背中を撫でることしかできなかった。

 大人はとても頼りになる。実際、あのナンパ野郎に与える処罰に関しては母さんや教員、弁護士など様々な大人の力が必要になるし、必要にもなる。
 だけど、それが敵に回った時は恐ろしく厄介な相手でもある。

 俺たちのような子供には大人ほど稼ぐ力などないし、知識から何から何まで足りていない。
 権利もなにもかも、大人の力を借りなきゃいけない俺たちにとって、分が悪すぎるんだ。

 つまるところ、紗奈さんのお母さんが実力行使にでもでてしまえば、俺たちはできることがない。何とか説得するしかないのだ。

「今回のことについては、異例中の異例で相手が悪いって理解してもらうしかないんじゃないかな。俺だって悪いことをしたなんて思ってないし、それで悪者扱いされるのもムカつくよ……たしかに俺も呼び出されるがままにしちゃったから悪いのかもしれないけどさ」

「そんなことない……暴力を使う方がよっぽど悪いよ。まさかそんな悪いことするなんて普通なら思わないもん」

 紗奈さんは俺の手を握る。彼女の流す涙が痛々しく見えて、そっと指で拭った。
 好きな人の涙は、嬉し涙だけにしてほしい。

「今の問題あれこれが終わったら、紗奈さんのお母さんに会わせて欲しい。俺も話をしてみるよ」

「いいの?お母さんもしかしたら、樹くんに酷いこと言うかもしれないけど……」

「全然気にしないよ。紗奈さんが傷付いたんだから、そっちの方が問題だよ」

 傷付いたというより、かなり困っているという方が正しいだろうが、今はそんなことを気にする時じゃない。
 できることをやってみよう、まずは対話からだ。

 紗奈さんとの別れを甘んじて受けるだなんて、そんなつもりはない。

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