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八十一話 麗凪の告白
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繭奈と冬夏が昼食を食べに来た日の翌々日。つまり直近の月曜日の学校で、二人というか、主に冬夏が友人たちに土曜日のことを話していた。
もっと言えば、こんな昼食を食べたんだよ!という内容を、意気揚々と話していた。
写真を撮っていないことを嘆いている冬夏だが、食べるものであって見せるものではない。それに、喜んでくれるのは嬉しいが褒められすぎるのも照れる。
繭奈と付き合い始めたあの頃に比べ、周囲からの視線も良くなり、加えて冬夏までもがああやって褒めてくれるので、だいぶ過ごしやすい環境になった。
やはり特に酷かったのは、あのペンがどうとかの騒動があった後。告美たちとの関係が悪くなった、あの出来事の後だろう。
しかし繭奈と俺が付き合っている以上、それを周囲がとやかく言うのは無意味だ。なので、誰もその話を掘り返すことなどなかった。
なんなら、繭奈が俺に対する好意を隠さなくなったため、余計なことを言って彼女に嫌われることを皆避けているのだ。
余計なトラブルがなくなったため、快適なことこの上ないが、繭奈の威を借るようで複雑な気分ではある。まぁ、俺の影響力なんぞないに等しいので、仕方ないことだけど。
そんなこんなで楽しそうな冬夏を遠巻きに見守っていると、麗凪が俺の名前を呼んだ。
「邪魔してごめんなさい。放課後でいいんだけど、少しだけ時間をくれるかしら?話があるの」
「えっいいけど、なにかあった?」
妙に畏まった麗凪にそう尋ねるが、彼女は申し訳なさそうに首を振った。内緒ということだろう。ちなみに、告美はトイレに行っているのか席を外している。
そういうことなら仕方ないと、これ以上の追及はやめて頷いておいた。きっと大事な話なのだろう。
繭奈と冬夏には一言断りを入れておき、放課後に話が終わるまで待ってもらうことにした。
時間が飛んで約束の放課後を迎えた。告美は先に帰ったようで、麗凪は待ち合わせ場所で待っていた。
「おまたせ」
「ううん、やっぱりすぐ来てくれた。さすが龍彦くんね」
待ち合わせは学校の敷地外。そこは夏祭りがあった大きな公園であり、まだ灯らない街灯の下で麗凪と顔を合わせる。
「それで、来てもらったワケなんだけど……」
そこまで言った麗凪が口をキュッと結び、真剣な表情でこちらを見る。
普段は見せない真面目な姿に、思わずごくりと喉を鳴らす。
「私、龍彦くんのことが好きなの。あなたと、恋人になりたい」
なんとなく、あの夏祭りの時から予想はしていた。できれば外れて欲しかった、そんな予想。
でも、それが勘違いというにはあまりに距離が近すぎて。たぶん、これが麗凪と一線を引くための良いきっかけになるだろう。
いくら俺が繭奈や冬夏と付き合っていると言ったところで、俺と麗凪のお互いの気持ちを理解しなければその好意だって燻ったままになっていたはず。
そう思えば、遅かれ早かれ告白される日は来ていた。ただそれが今だったというだけなんだ。
俺は、その想いに応えることはできない。
「ごめん、麗凪。その気持ちは嬉しいけど、俺には繭奈と冬夏がいるから、応えることはできない」
嫌われていた方がずっと楽だっただろう。でも残念ながら、麗凪から向けられているのは好意だった。
あの日、俺の言葉を信じなかったあの時から、付き合うという選択肢はあり得ないのだ。
俺の答えに、麗凪は寂しそうな表情をするも、少しばかり目を伏せてからゆっくりとこちらを見た。
「……それはやっぱり、私たちが龍彦くんの言葉を信じなかったから?」
「それは、少なからず関係してると思う。別にあの事を今でも引き摺ってるわけじゃないし、二人のことを嫌いってわけでもないけど……あの日から、二人にそういう気持ちを持てなくなったのは、間違ってない」
人間とは複雑なもので、気にしていないはずなのにどこか意識してしまう。二人とは恋人になろうとは思わないけど、友達として遊ぶくらいの情はある。
自分でもめんどくせぇと思う。
「そう、なのね……あの時、私だけでも龍彦くんを信じてたら、もしかしたら私が、彼女になっていたかも知れないのよね」
「それは、わからない……けどもしかしたら、可能性はあったのかも」
どちらにせよ、それは たらればに他ならず、不毛な会話であることは自明の理だ。麗凪たちには、これを教訓に自分の新たな恋を見つけてほしいものだ。
「そうよね、後悔してもしきれないわ……でも、諦めるしかないわね。迷惑かけてごめんなさい、龍彦くん」
「謝らないでよ、別にそんなこと求めてないんだからさ。俺としてはこれからも友達でいてほしいくらいだよ」
何て言えば良いかは分からないものの、正直な気持ちを麗凪に告げる。
あれはあくまでも過去の一件でしかない。夏休みの時に、お祭りを回ったことや、泊まりがけで海に行ったことは大切な思い出だ。
友達だと思えるくらいには、良い関係を築けていると思う。
だから、悲しい表情はしてほしくない。
「……ふふ、龍彦くんって意外と女たらしなのね」
「えっ……?」
俺の言葉に目をぱちくりとさせた麗凪が、微笑みながらとんでもないことを呟いた。女たらしって、別に俺はたらせるような男ではないというのに、いったい彼女は何を言っているのだろうか?
「あの二人が堕ちたのも納得ね」
「堕ちた言うな」
笑顔で人聞きの悪いことを言う麗凪にツッコミつつ、内心俺はホッとしていた。こういうことは初めてなので、どうすれば良いのか分からなかったから。
「そうね。それなら、これからも友達としてよろしくね。龍彦くん」
「うん、よろしく。麗凪」
麗凪とそう言葉を交わし、どちらともなく笑いだした。
話しはこれで終わりだからと、彼女がそれじゃあとすれ違って、公園の外に向かう。このまま帰宅するのだろう。
そんな彼女が あっと振り返って、パチリとウィンクをして言った。
「私はいつでもOKだから、エッチしたくなったら呼んでね♪」
「呼ばねーよ!」
麗凪は俺をなんだと思っているのだろうか。アホな発言に声を荒げると彼女はふふっと笑い、小走りで帰っていった。
気にしすぎたかもしれないと、大きなため息を吐いて繭奈たちの元に向かった。
もっと言えば、こんな昼食を食べたんだよ!という内容を、意気揚々と話していた。
写真を撮っていないことを嘆いている冬夏だが、食べるものであって見せるものではない。それに、喜んでくれるのは嬉しいが褒められすぎるのも照れる。
繭奈と付き合い始めたあの頃に比べ、周囲からの視線も良くなり、加えて冬夏までもがああやって褒めてくれるので、だいぶ過ごしやすい環境になった。
やはり特に酷かったのは、あのペンがどうとかの騒動があった後。告美たちとの関係が悪くなった、あの出来事の後だろう。
しかし繭奈と俺が付き合っている以上、それを周囲がとやかく言うのは無意味だ。なので、誰もその話を掘り返すことなどなかった。
なんなら、繭奈が俺に対する好意を隠さなくなったため、余計なことを言って彼女に嫌われることを皆避けているのだ。
余計なトラブルがなくなったため、快適なことこの上ないが、繭奈の威を借るようで複雑な気分ではある。まぁ、俺の影響力なんぞないに等しいので、仕方ないことだけど。
そんなこんなで楽しそうな冬夏を遠巻きに見守っていると、麗凪が俺の名前を呼んだ。
「邪魔してごめんなさい。放課後でいいんだけど、少しだけ時間をくれるかしら?話があるの」
「えっいいけど、なにかあった?」
妙に畏まった麗凪にそう尋ねるが、彼女は申し訳なさそうに首を振った。内緒ということだろう。ちなみに、告美はトイレに行っているのか席を外している。
そういうことなら仕方ないと、これ以上の追及はやめて頷いておいた。きっと大事な話なのだろう。
繭奈と冬夏には一言断りを入れておき、放課後に話が終わるまで待ってもらうことにした。
時間が飛んで約束の放課後を迎えた。告美は先に帰ったようで、麗凪は待ち合わせ場所で待っていた。
「おまたせ」
「ううん、やっぱりすぐ来てくれた。さすが龍彦くんね」
待ち合わせは学校の敷地外。そこは夏祭りがあった大きな公園であり、まだ灯らない街灯の下で麗凪と顔を合わせる。
「それで、来てもらったワケなんだけど……」
そこまで言った麗凪が口をキュッと結び、真剣な表情でこちらを見る。
普段は見せない真面目な姿に、思わずごくりと喉を鳴らす。
「私、龍彦くんのことが好きなの。あなたと、恋人になりたい」
なんとなく、あの夏祭りの時から予想はしていた。できれば外れて欲しかった、そんな予想。
でも、それが勘違いというにはあまりに距離が近すぎて。たぶん、これが麗凪と一線を引くための良いきっかけになるだろう。
いくら俺が繭奈や冬夏と付き合っていると言ったところで、俺と麗凪のお互いの気持ちを理解しなければその好意だって燻ったままになっていたはず。
そう思えば、遅かれ早かれ告白される日は来ていた。ただそれが今だったというだけなんだ。
俺は、その想いに応えることはできない。
「ごめん、麗凪。その気持ちは嬉しいけど、俺には繭奈と冬夏がいるから、応えることはできない」
嫌われていた方がずっと楽だっただろう。でも残念ながら、麗凪から向けられているのは好意だった。
あの日、俺の言葉を信じなかったあの時から、付き合うという選択肢はあり得ないのだ。
俺の答えに、麗凪は寂しそうな表情をするも、少しばかり目を伏せてからゆっくりとこちらを見た。
「……それはやっぱり、私たちが龍彦くんの言葉を信じなかったから?」
「それは、少なからず関係してると思う。別にあの事を今でも引き摺ってるわけじゃないし、二人のことを嫌いってわけでもないけど……あの日から、二人にそういう気持ちを持てなくなったのは、間違ってない」
人間とは複雑なもので、気にしていないはずなのにどこか意識してしまう。二人とは恋人になろうとは思わないけど、友達として遊ぶくらいの情はある。
自分でもめんどくせぇと思う。
「そう、なのね……あの時、私だけでも龍彦くんを信じてたら、もしかしたら私が、彼女になっていたかも知れないのよね」
「それは、わからない……けどもしかしたら、可能性はあったのかも」
どちらにせよ、それは たらればに他ならず、不毛な会話であることは自明の理だ。麗凪たちには、これを教訓に自分の新たな恋を見つけてほしいものだ。
「そうよね、後悔してもしきれないわ……でも、諦めるしかないわね。迷惑かけてごめんなさい、龍彦くん」
「謝らないでよ、別にそんなこと求めてないんだからさ。俺としてはこれからも友達でいてほしいくらいだよ」
何て言えば良いかは分からないものの、正直な気持ちを麗凪に告げる。
あれはあくまでも過去の一件でしかない。夏休みの時に、お祭りを回ったことや、泊まりがけで海に行ったことは大切な思い出だ。
友達だと思えるくらいには、良い関係を築けていると思う。
だから、悲しい表情はしてほしくない。
「……ふふ、龍彦くんって意外と女たらしなのね」
「えっ……?」
俺の言葉に目をぱちくりとさせた麗凪が、微笑みながらとんでもないことを呟いた。女たらしって、別に俺はたらせるような男ではないというのに、いったい彼女は何を言っているのだろうか?
「あの二人が堕ちたのも納得ね」
「堕ちた言うな」
笑顔で人聞きの悪いことを言う麗凪にツッコミつつ、内心俺はホッとしていた。こういうことは初めてなので、どうすれば良いのか分からなかったから。
「そうね。それなら、これからも友達としてよろしくね。龍彦くん」
「うん、よろしく。麗凪」
麗凪とそう言葉を交わし、どちらともなく笑いだした。
話しはこれで終わりだからと、彼女がそれじゃあとすれ違って、公園の外に向かう。このまま帰宅するのだろう。
そんな彼女が あっと振り返って、パチリとウィンクをして言った。
「私はいつでもOKだから、エッチしたくなったら呼んでね♪」
「呼ばねーよ!」
麗凪は俺をなんだと思っているのだろうか。アホな発言に声を荒げると彼女はふふっと笑い、小走りで帰っていった。
気にしすぎたかもしれないと、大きなため息を吐いて繭奈たちの元に向かった。
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