クールで一途な白雪さん

SAKADO

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八十話 本命になれない二人

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 俺たちが付き合っていることを周りに知らしめたのは良いとしても、さすがに教室でベタベタできるとは限らない。さすがに人前でキスなんてのは、ちょっとマズいだろう。
 恥じらいとかもそうだが、教員に見られたりすれば面倒なことになりかねんし。

 なので、学校でのイチャイチャは解禁したものの、本格的にやるのは隠れてからだ。そうじゃなければ触れ合う程度が限度だ。

 ちなみに、繭奈と冬夏に対する男子からの声掛けはガクッと減ったみたいだ。そのおかげか二人とも機嫌が良い。すばらしいね。
 そんなご機嫌な二人だからこそ、なにも知らない連中が声をかけたりすることはあるが、その時は俺が出れば良いだけだ。

 なんというか、順風満帆である。


 そんなこんなで迎えた土曜日。今日は繭奈と冬夏が我が家に遊びに来るのだ。午前中からやってくるので、頑張ってお昼の用意をしようと思います。
 大好きな二人には喜んで欲しいからね。



「お邪魔します」

「おーじゃまっしまーっす♪」

「いらっしゃい」

 落ち着いた挨拶をする繭奈と、元気に挨拶をする冬夏。二人とも可愛すぎである。
 既に食事の用意は終えているので、二人にはそのまま食卓についてもらう。

「わぁすごっ!龍彦ってば料理できるなんて、できた婿さんすぎるでしょ!」

「ふふ、だって龍彦くんだものね♪」

 テーブルに並べられた料理を見て、冬夏が些か大袈裟に喜び、繭奈が得意気にしている、
 そんな二人を見ると、料理が楽しいと思えてくる。

「せっかく可愛いお嫁さんたちが食べてくれるんだし、張り切っちゃたよ」

 調子にのってお嫁さんとか言ってみる。変に気取ってしまい滑っただろうかと思ったが、二人を見るとそんなことはなさそうだ。

「おっお嫁さんってアンタ、気が早いっつーの!」

「うふふ、うふふふふ♪そう言ってもらえると嬉しいわ。お婿さん♪」

 満更でもなさそうな冬夏と、嬉しそうな繭奈である。言っといてなんだが、恥ずかしくなってくるなこれ。




「ごちそうさま!美味しかった!」

「ごちそうさまでした」

「お粗末さま」

 皿の上にある料理をきれいさっぱり食べ終えた二人が手を合わせる。良い食べっぷりで、作ってる側としてはとても嬉しい。
 腕をふるった甲斐があるというものだ。

「いやホントに美味しかった!繭奈から聞いてはいたけど、いざ食べるともう最高だった」

「そこまで喜んでくれると本当に嬉しいな。ありがとう」

「こっちこそ!」

 照れてしまうほどに褒めちぎってくれる冬夏。嬉しいのだが、そこまでくるとちょっと困る。贅沢な悩みだ。

「ふふ、美味しい料理の後はデザートよね」

「そーじゃん!」

 繭奈はそう言って、冷蔵庫にしまってあるケーキの入っている白い箱を取り出した。こっちに来る途中に買ってくれたらしい。感謝。

 空になった皿を水に浸けておき、三本のフォークとケーキ用の小皿を用意して、テーブルに戻る。

 箱から出されたのは、町にあるスイーツの店に売っているショートケーキだ。シンプルで人気の一品。
 上に乗っている赤いイチゴが相変わらず大ぶりだ。

 それぞれの皿にケーキを置いて、飲み物を用意し椅子に腰かける。それではと、三人でケーキを一口食べると、生クリームの甘さとスポンジのふわふわとした食感。おいしい。
 素敵な女の子たちと過ごす、最高のお昼だった。


 ──────────


「いやー、やっぱり龍彦は最高だなぁ……」

『アハハ!冬夏ってばほんとに気に入ったんだね』

 心の底から出た言葉に笑って返したのは、従姉妹の小春お姉ちゃんだ。アタシのお母さんの、その兄、つまり母方の叔父の奥さんが欧米の人らしく、その人の髪と目を遺伝したらしい。
 トレードマークである綺麗なブロンドヘアと、水色の瞳だ。

 お姉ちゃんは所謂ハーフというヤツで、だからなのかすごい美人さんなのだ。ただ、その見た目で浮いたり、変なことを言われた経験があるらしい。
 それに対して怒ったのが、お姉ちゃんの大好きなコウスケさん。その好意おもいは全然受け入れてもらえないみたいだけど。

「コウスケさんは相変わらずなんだ」

『そーなんだよねぇ。まっ、あんな可愛い彼女が二人いて、ほぼ毎日ヤッてりゃあね。最近のコウスケくん、ゴムがサイズ合わないからって、生らしいよ』

「えっ、大丈夫なのそれ。シオリさんとかイオリさんとか、子供できちゃわない?」

『アハハ、さすがにピル飲んでるに決まってんじゃん!まぁあの子たちならそのうち、本気で作りそうだけどね』

 なんというか、私の知るあの人たちって感じだ。繭奈と龍彦も甘ったるいけど、それ以上に甘々とした空間を作るのはあの三人だ。ちょっとくどいくらい。

『それで、冬夏はどうなの?ライバル、いるんでしょ?』

「いやいや、ライバルにもならないんじゃないかな。だって、アタシ付き合ってないんだし」

 そう言ってみるものの、とはいえ彼以外の男は考えられないし、本命になりたい気持ちもある。
 まったく繭奈がうらやましいね。

『お互いに、叶わない恋ってわけね』

「アタシの方が愛されてはいるけどね」

『あらそーですか』

 そんな会話をしながら、二人で笑い合う。そんな小春お姉ちゃんとアタシであった。
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