クールで一途な白雪さん

SAKADO

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一話 俺と白雪

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 ウチの高校には何人か目立つ生徒はいるけれど、俺のクラスにもそんな人がいた。
 黒髪をストレートに胸辺りまで伸ばし蛇のような目付きをした、そんな彼女は白雪しらゆき 繭奈まゆなさんという。
 彼女の風貌から放たれる雰囲気もさることながら、特定の人間以外……つまり友人以外の人物に向けた態度はとても冷たく、どうにも近寄り難い雰囲気をしていた。
 昨日や一昨日も何人かの男子生徒からも遊びに誘われたり話しかけられたりしていたが、その返事はいつもにべもないものであった。

 もちろん俺にも冷たく、特に過去の一件から俺にとっても彼女は避けたい対象でもあった。
 お互いに忌避し合うような関係っていうと言い過ぎだけど、だからか俺は彼女にはあまり興味が無い。

 ただなんとなく手持ち無沙汰でキョロキョロと周囲を見ていたら偶然 彼女と目が合ってしまった。
 彼女は露骨に睨みつけてきて目を逸らす。相変わらず嫌われているが、今更そんなことはどうでも良かった。
 別に関わらなければいい話だからな。

「なぁに見てんだよ龍彦たつひこ

 視界の外からそう言って肩に手を回してきたのは友人の 蓮はす しげるだ。
 ちなみに龍彦とは俺の名前だ。
 フルネームは蔵真くらま 龍彦たつひこという。割とこの名前気に入ってんだよね。

「いや別に、ただキョロキョロしてただけ」

「そんなこと言ってよぉ、白雪のこと見てたんじゃねぇの?」

「ちげぇよバカ」

 確かに目は合ったが別に見ていたというわけではないので彼にはそう言っとく。実際バカだし。

「なんだよ、熱い視線を向け合ってたクセに」

「帰りに学校から出た直後に尖った石でも踏んでしまえ」

「具体的すぎね?」

 面倒臭い言いがかりでちょっとムカッときたので割とありそうな事を言ってやった。
 なにやら困惑しているが一生しててほしい。

 なにが熱い視線だ、お互いに好意は無いというのにそんなのはこちらから願い下げである。

「随分と楽しそうね」

「えっ…白雪、さん……」

 頬杖を付いてボーッと前を向いていると視界の外からそんな声が聞こえてきた。え?白雪?
 少し驚いて……もとい、怖くなってそちらを見ると彼女がそこに立っていた。茂がビビっているが、多分コイツのせいなので知ったことでは無い。

「人の名前を出して随分と楽しそうにバカみたいな話をしてるのね。迷惑だからやめてくれる?」

「分かってる、ごめんよ。もうしないから」

 別に俺から彼女の名前を出した訳では無いのだが、しかしさっさと関わりを終わらせたいので真偽のほどは置いといてとりあえずそう言っておく。

「っ……そう」

「……?」

 彼女は納得したようなふうなのだが、何故か表情を暗くしてそう言った。
 その理由がわからず首を傾げてしまう。

「それなら良いの、それじゃ」

「ゴクッ……ひぃー怖かったぜぇ…」

 彼女が立ち去って自分の席に座ったことを確認した茂が顔を青くしてそう小さな声で言った。全面的にコイツのせいなのでずっとそうしてて欲しい。

「しかし、お前よく平気だな」

「え……?あー、まぁもう慣れたから」

 実際何年もあんな態度をされれば誰でも慣れるさ。別に殺される訳でもなしに、それならば耐性もつくだろう。
 茂は何故か ほぇー… と感心しているが、お前は慣れなさすぎやっちゅーねん。
 といってもコイツは高校に進学してから彼女を知ったので仕方ないか。俺は中学の時から目の敵にされ続けているし、その違いもあるのだろう。

「そろそろ授業始まるし、いい加減戻ったらどう?」

「あっべ!」

 多分 あっやべ!と言ったのだろうが " や " の聞こえなかった言葉を発して茂が席に戻っていく。
 他の連中からも突っつかれているように、アイツは割とクラスメイトとの仲はいい。

 授業が終わり昼食の時間だ、茂がコンビニ袋を携えてやってきた。

「龍彦ー、飯食おうぜ」

「おす」

 ニコニコしながら俺の席の前の椅子にドカッと茂が座り、袋の中からサンドイッチやパンを取り出している。
 俺はといえば、今朝に作った弁当を取り出した。コイツは俺の弁当を見て驚いている。

「龍彦の弁当相変わらずしっかりしてんな」

「そう?まぁ料理は好きだから」

 今日の献立はハンバーグの余りで作った肉団子と、アスパラのベーコン巻きと卵焼きとポテトサラダ、そして白米である。
 全部手作りだ、まぁ肉団子もポテサラも事前に作っておいたものだけど。

 ウチの両親は仕事の時間が長く、大体家を空けていることが多い。
 朝にも顔を見ないことは多いし、夜もかなり遅いうえに帰ってこない事もある。
 だから自然と料理くらいは出来るようになったのだ。

「わぉおいしそー♪相変わらず手の込んでるねぇ、愛妻弁当かな?」

 女の子が三人ほどいる隣の席から、そんな可愛らしい声が聞こえてきた。
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