クールで一途な白雪さん

SAKADO

文字の大きさ
9 / 103

八話 白雪の気持ち

しおりを挟む
 元々春波はるばのことも山襞やまひだのことも嫌いではなかったし、しかして特別好きというわけでもなかった。
 ただ好意的な態度で接してくれていたから俺もそう返したというだけ。楽しかったのは事実だけどね。

 しかし昨日のような態度をとられれば不愉快なのは当たり前だ。だから関わりたくないんだよ。

 少なくとも 俺はやっていないとハッキリ言ったわけだが、それを嘘だと断じて睨んできたわけだからそれだけ関係値は低いということだろう。
 白雪が言った、俺の机からペンが出てきた という言葉を信じるのならまだしも、どうしてその前から怪訝そうな顔をしていたのか?
 そんなふうな態度をとられたことで、彼女らの情緒が分からなくなった。
 だからせめて百歩、いや千歩譲ってほとぼりが冷めるまではそっとしておいて欲しいと伝えた。

「あんなことがあった直後だし、すぐに仲良くだなんて無理だよ」

「そっか……そうだよね、ごめんね」

 俺の言葉に沈んだ表情をしている春波だが、俺も十分気が重いっての。
 流石にあんな態度を見せられて、昨日までのように心置き無く関われるだなんてことはないだろう。
 あの表情は俺の心にずっと刻まれるわけだから、時間をかけてようやく友人関係になれたらいいねといったところか。俺としては無関係でいいんだけどね。

 こういう独り善がりなタイプは、取り敢えず応える体を装っておけば一度飲み込んでくれる。
 今はそれでいいだろう。心を落ち着かせるためには時間を置きたい。


 とりあえず彼女らには時間が欲しいと、また今日は一人で帰ると伝え、二人には先に教室に戻ってもらい俺はしばらく一人で残って頭を冷やす。
 自分の心に向き合いながら、少し大きなため息をしてすぐそこの窓のフチに手をかけて、そこから空を見つめる。そしてもう一度、さきほどより小さめのため息をした。

「なにを 黄昏たそがれているのかしら?」

 後ろから声が聞こえ、首だけでそちらに振り向く。声の主は白雪で 彼女はゆっくりとこちらに近付いてきた。

「まぁ、ちょっとね」

「……春波さんたちのことかしら?」

「あー……見てた?」

 もしや見ていたのだろうかと思い、彼女にそう問いかけるとコクリと頷いた。
 知ってるのならほっといて欲しいんだが……

「覗いてしまってごめんなさい、どうしても気になってしまったの……あなたと少しでも一緒にいたいから、隣にいさせてくれる?」

 いや普通に有り得ないだろ。心を落ち着けたいと言うのに彼女がソコにいたらその通りにならない。帰ってもらおう。

「……好きにして」

 僅かに逡巡した後に結局 俺はそう言った。もうなんか疲れたのでほっといてくれればそれでいいや。

「ありがとう」

 そう微笑んだ白雪は一人分の距離を開けて隣に立つ。なんとなく見た目以上に距離が近い気がした。
 時間にして十分弱は経っただろうか?しばらくしてササクレ立った心を落ち着かせた俺は、何も言わずに立ち去ろうと歩き出す。

「蔵真くん」

 三歩ほど歩いた俺の後ろから聞こえてきたのは白雪の声、ソレに足を止めて振り向く。
 俺を見る彼女の瞳は、とても優しく感じた。

「これからも春波さんたちとの関係を続けるつもりかしら?」

「……なんとも。ただ少なくともああでも言わないとずっと食い下がってきそうだからさ。もしある程度関係が戻ったとしてもギリギリ友達でいられるかって所じゃない?」

 本当ならあれくらいのことは流せるのが器というものなのだろうが、生憎そこまで大人になったつもりはないからな。
 やっていないと言ったわけだから、もしあちらを信じるとしても少しくらいは悩んで欲しかった。もう過ぎたことだが。

「いいじゃない、無理しなくたって。あの二人が嫌なら私があなたの隣にいるわ。いえ、それは不適切ちがうわね……あなたの隣にいさせて?」

 白雪はそう言いながらゆっくりと俺に近づく。
 俺の腰に手を回し、ふわりと優しく包み込む。
 思いの外彼女の体は華奢で、こうしてくっついていると細身な身体の感覚が伝わってくる。
 それに反してドコかが大きいみたいだが、すぐにそのことは意識の外へと弾かれる。

「辛いならそばにいるわ。嫌なことがあれば愚痴でも恨み言でも聞くし、なんでも吐き出してくれても構わない。もし昨日みたいなことがあったなら、私が守るわ」

 普段から向けてくる敵意にも似た態度は今の彼女に無く、あるのは大きな優しさだった。
 俺を包み込む腕をゆっくりと離す。
 
「せめて辛い時は、一人で抱え込んだりしないで。あなたは、そういう所があるから」

 その胸から俺を解放した彼女は、俺の両頬に手を添えて真正面から見つめてそう言った。
 今までに知らないほどに母性のようなものを感じるが、果たしてそれは俺が好きだからだろうか? 

「……色々とごめんなさい。でも、あの時のあなたを知っているから、どうしても伝えたかったの……それじゃ」

 アレコレと言い終えた彼女は、ばつの悪そうに帰ってしまった。
 ただ一人残された俺は、どうすればいいのかと呆然と立ち尽くしていた。
 白雪との距離感が分からない今日この頃であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...