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九話 春波と白雪
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嫌われちゃったかな、もしかしたら無理やりすぎて嫌がられたかもしれない。そもそもそれ以前の問題か。
昨日聞いてしまった 蔵真くんが冤罪をかけられたソレを、私は鵜呑みにしてしまった。
少なくとも彼はやってないと言ったわけなのだから、まずそちらに耳を傾けるべきだったのに私はそれをしなかった。
隣の席にいる男の子、蔵真 龍彦くんのことは前々から気になっていて、いつか話しかけられないかとそのタイミングを窺っていた。
だから私は、彼のお弁当について話しかけてみたんだ。彼が料理上手なのは隣になったその日から知ってたけど、先日はあえて今知りましたというふうを装って声をかけた。
その放課後には遊びに誘ったりなんかもして、彼の人となりにほんの少しだけ触れてみると存外ドキドキしてしまい、蔵真くんが素敵だということを身をもって知った。
グイグイとこない落ち着いた雰囲気は安心するし、それでもちゃんと男の子のようで、意識することはするしそれを変に隠すことも強がることもない。
接していて楽しくなる男の子なんだ。
友達の貝崎は、彼の友達である蓮くんと思ったより気が合ってお付き合いを始めたみたいなんだけど、もう一人の友達である山襞も私と同じく蔵真くんが気になったみたい。
だからと思って積極的にアプローチをしてみようと、一緒に帰ろうと誘ったら快く頷いてくれた。その後の騒動でダメになったけどね。
彼を疑ってしまった自分の浅はかさが嫌になる。
蔵真くんが白雪さんを好きで、ソレを抑えきれずにペンを盗んだと聞いてすごく驚いた。
どうか嘘であって欲しいと思い彼に問いかけると、帰ってきたのは " やってない " という否認の言葉だった。
彼が嘘だと言ったのならまだ信じられたかもしれないけど、よりにもよって否認をしただけなのは、まるで苦し紛れの言い訳にしか聞こえなかった。
極めつけはその後に白雪さん本人が言った、蔵真くんの机からペンが出てきたという言葉に私は彼を睨んでしまった。やっぱり危ない人だったんだと。
それはレナも同じだったみたいで、私と同じく彼から一歩ほど距離をとって睨んでいた。
そして私たちは二人して彼を悪く言った。呟くような小さな声だったけれど、彼に聞かせるにはそれでも充分だった様子。
ただ事はそう単純じゃなかったようで、他ならぬ白雪さんが蔵真くんの罪を否定した。
どうやら犯人は彼じゃなくて、彼を犯人にしようとしていた男の子らしく蔵真くんは巻き込まれたどころか、都合よく利用された形になるみたい。
完全にウソではないけど彼は犯人じゃない。そういう意味で やってないと言ったということを後になって気付いた。
それを決めつけで言い訳だと断じたのはとても酷いことで、それなら彼に嫌われるのも納得だ。
おかしいよね。好きな人のことなのに、それを信じてあげられないなんて。
だから私は、少しでも早く仲良くできるように彼を待つ。これ以上無理に近付けばきっと嫌がられるから、それはレナも同じ意見だった。
また仲良くなることができたら、今度こそ信じよう。大切な人だと思って貰えるように、私がまずそういうつもりで接するんだ。
彼の良さを知っているのは私とレナだけ、きっと他の人は知らないだろう。
だからいつか彼の恋人になれるように頑張らないと。
一緒にカラオケに行って遊んだり、お弁当を分け合ったり食べさせたりだなんて、まるで恋人同士みたいなことしてドキドキしてみたり。
それが出来たのは私たちだけ、きっと彼だって時間はかかるけどきっと私を好きになってくれるはず。
だから焦ることはない、ゆっくりと蔵真くんの心を解いていこう。
私、春波 告美は蔵真くんのことが好きだ。
─────────
誰も彼もが蔵真くんを敵視していたあの時、私は辟易していた。
彼は私が体育館に着いた時にはすでに友人たちと一緒にソコにいた。そして体操服へと着替える前にシャーペンがあったことは確認済み。
つまり彼がソレを盗めるタイミングは無かったはずだ。
そうであるにもかかわらず、彼の机から私のペンが見つかったというのは明らかに作為めいたものを感じた。
そもそも彼と私には大した接点なんて無かったし、多少話したことがある程度の私にとって彼はいい人くらいの印象だった。
性格も顔も多少好みではあるけどそれくらいで、わざわざ彼と私の間に亀裂を入れるような真似をする必要があるわけでも、そんな性格でも無いハズなんだ。
ちなみに彼の机から私のペンが見つかったと騒いでいた男は体育館に一番遅く来たし、誰かと来たわけじゃなかった。
どう考えても普通にその男が怪しいのだけれど、たまに考えることをしないのか何度も蔵真くんに悪口を言ったり、酷い時は罵倒までしている人たちがいた。
当然彼自身はやっていないとハッキリ言っているのに、そういう人たちは聞く耳を持たないから彼を嘘つき呼ばわりして自分たちを正当化していてほとほと呆れる。
そういう人たちには私が直接 蔵真くんは犯人じゃないと いうことと、あの男が一番怪しいということも話すとその時からパッタリと蔵真くんに口撃しなくなった。
じゃあ私はどうだったのかというと、彼の机から私のペンが出てきた時に、もしかしたら私に気があるのかと一瞬浮かれそうになった。
しかしあの男がウキウキとした様子でこちらに来たことで、さきほど体育館に来た順番を思い出し、蔵真くんは巻き込まれただけだと知った私は落胆し正気に戻った。
それからはどうしても蔵真くんの顔をまっすぐ見ることができなくて、またついつい冷たい言い方をしてしまう。
悪い事だとは分かってるけど、それでも態度を軟化させることができなくて落ち込む日々が続いた。
最初の時こそ彼も私の言葉に困ったりしょんぼりしたりと反応をしてくれたけど、いつの間にかそんな反応もなくなり素っ気なくなった。
私は自分で嫌われるようなことをしてしまったのかと、後悔するようになった。
昨日聞いてしまった 蔵真くんが冤罪をかけられたソレを、私は鵜呑みにしてしまった。
少なくとも彼はやってないと言ったわけなのだから、まずそちらに耳を傾けるべきだったのに私はそれをしなかった。
隣の席にいる男の子、蔵真 龍彦くんのことは前々から気になっていて、いつか話しかけられないかとそのタイミングを窺っていた。
だから私は、彼のお弁当について話しかけてみたんだ。彼が料理上手なのは隣になったその日から知ってたけど、先日はあえて今知りましたというふうを装って声をかけた。
その放課後には遊びに誘ったりなんかもして、彼の人となりにほんの少しだけ触れてみると存外ドキドキしてしまい、蔵真くんが素敵だということを身をもって知った。
グイグイとこない落ち着いた雰囲気は安心するし、それでもちゃんと男の子のようで、意識することはするしそれを変に隠すことも強がることもない。
接していて楽しくなる男の子なんだ。
友達の貝崎は、彼の友達である蓮くんと思ったより気が合ってお付き合いを始めたみたいなんだけど、もう一人の友達である山襞も私と同じく蔵真くんが気になったみたい。
だからと思って積極的にアプローチをしてみようと、一緒に帰ろうと誘ったら快く頷いてくれた。その後の騒動でダメになったけどね。
彼を疑ってしまった自分の浅はかさが嫌になる。
蔵真くんが白雪さんを好きで、ソレを抑えきれずにペンを盗んだと聞いてすごく驚いた。
どうか嘘であって欲しいと思い彼に問いかけると、帰ってきたのは " やってない " という否認の言葉だった。
彼が嘘だと言ったのならまだ信じられたかもしれないけど、よりにもよって否認をしただけなのは、まるで苦し紛れの言い訳にしか聞こえなかった。
極めつけはその後に白雪さん本人が言った、蔵真くんの机からペンが出てきたという言葉に私は彼を睨んでしまった。やっぱり危ない人だったんだと。
それはレナも同じだったみたいで、私と同じく彼から一歩ほど距離をとって睨んでいた。
そして私たちは二人して彼を悪く言った。呟くような小さな声だったけれど、彼に聞かせるにはそれでも充分だった様子。
ただ事はそう単純じゃなかったようで、他ならぬ白雪さんが蔵真くんの罪を否定した。
どうやら犯人は彼じゃなくて、彼を犯人にしようとしていた男の子らしく蔵真くんは巻き込まれたどころか、都合よく利用された形になるみたい。
完全にウソではないけど彼は犯人じゃない。そういう意味で やってないと言ったということを後になって気付いた。
それを決めつけで言い訳だと断じたのはとても酷いことで、それなら彼に嫌われるのも納得だ。
おかしいよね。好きな人のことなのに、それを信じてあげられないなんて。
だから私は、少しでも早く仲良くできるように彼を待つ。これ以上無理に近付けばきっと嫌がられるから、それはレナも同じ意見だった。
また仲良くなることができたら、今度こそ信じよう。大切な人だと思って貰えるように、私がまずそういうつもりで接するんだ。
彼の良さを知っているのは私とレナだけ、きっと他の人は知らないだろう。
だからいつか彼の恋人になれるように頑張らないと。
一緒にカラオケに行って遊んだり、お弁当を分け合ったり食べさせたりだなんて、まるで恋人同士みたいなことしてドキドキしてみたり。
それが出来たのは私たちだけ、きっと彼だって時間はかかるけどきっと私を好きになってくれるはず。
だから焦ることはない、ゆっくりと蔵真くんの心を解いていこう。
私、春波 告美は蔵真くんのことが好きだ。
─────────
誰も彼もが蔵真くんを敵視していたあの時、私は辟易していた。
彼は私が体育館に着いた時にはすでに友人たちと一緒にソコにいた。そして体操服へと着替える前にシャーペンがあったことは確認済み。
つまり彼がソレを盗めるタイミングは無かったはずだ。
そうであるにもかかわらず、彼の机から私のペンが見つかったというのは明らかに作為めいたものを感じた。
そもそも彼と私には大した接点なんて無かったし、多少話したことがある程度の私にとって彼はいい人くらいの印象だった。
性格も顔も多少好みではあるけどそれくらいで、わざわざ彼と私の間に亀裂を入れるような真似をする必要があるわけでも、そんな性格でも無いハズなんだ。
ちなみに彼の机から私のペンが見つかったと騒いでいた男は体育館に一番遅く来たし、誰かと来たわけじゃなかった。
どう考えても普通にその男が怪しいのだけれど、たまに考えることをしないのか何度も蔵真くんに悪口を言ったり、酷い時は罵倒までしている人たちがいた。
当然彼自身はやっていないとハッキリ言っているのに、そういう人たちは聞く耳を持たないから彼を嘘つき呼ばわりして自分たちを正当化していてほとほと呆れる。
そういう人たちには私が直接 蔵真くんは犯人じゃないと いうことと、あの男が一番怪しいということも話すとその時からパッタリと蔵真くんに口撃しなくなった。
じゃあ私はどうだったのかというと、彼の机から私のペンが出てきた時に、もしかしたら私に気があるのかと一瞬浮かれそうになった。
しかしあの男がウキウキとした様子でこちらに来たことで、さきほど体育館に来た順番を思い出し、蔵真くんは巻き込まれただけだと知った私は落胆し正気に戻った。
それからはどうしても蔵真くんの顔をまっすぐ見ることができなくて、またついつい冷たい言い方をしてしまう。
悪い事だとは分かってるけど、それでも態度を軟化させることができなくて落ち込む日々が続いた。
最初の時こそ彼も私の言葉に困ったりしょんぼりしたりと反応をしてくれたけど、いつの間にかそんな反応もなくなり素っ気なくなった。
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