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十話 助け舟
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春波たちと話をした翌日の朝、教室にやってきた茂が先に席に着いていた俺の肩に手を回してきた。
「おはよう龍彦、昨日はどうなったよ?」
「どうって、別に何ともないけど……」
「あぁそうかぃ……」
隣の席に例の二人はいるが、仲直りみたいなことはしているわけじゃないからある意味なんともなってはいない。
今日だって挨拶して以降喋ってないし。というか俺としてはそのままフェードアウトしてもいいんだけどね。
まぁ気が向いたらまた喋るくらいはしてもいいけどさ、さっきからチラチラ見てくるし。
しかし仲良くしたいという相手のことを掌返して嘘つきとか言った割に昨日のアレだ。
一体どういう情緒をしているのだろうか?よーわからんっ!
そんな今日この頃だが、いきなり茂と貝崎に呼び出されてしまった。なんですかー?
「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「別にいいけど、二人してどーしたの?」
両手を合わせてそう謝罪してくる貝崎にそう返す。まぁ多分あの二人とのことだろうけどさ、そういえば一昨日のことはもう聞いたのかな?
「いやね?二人から一昨日のこと聞いてさ。あーこりゃ気まずいわーって思って」
「あー……」
やっぱり聞いていたようで、貝崎は頭に手を当てながらそう言った。
関わらなければ気まずさも無いだろうに、どうしてそうしないのか理解できない。しかし目の前の彼女はどう思っているのだろうか?
「でもさ、私としては仲良くしてあげて欲しいわけ。見てられないもん、あの二人」
「そう言われてもね」
あれだけの嫌悪感を一瞬とはいえ剥き出しにされると、過去に色々と責められたことを思い出してしまったのだ。アレは割と心にくる。
一昨日の昼までは仲良くしていたのに、その後の一件から彼女らが内心ではどう思っているのか分からない と疑心暗鬼になってしまっているのだ。
貝崎には悪いが、そう簡単に片付けられる問題じゃない。
「まぁあの二人がどうして蔵真くんを信じてあげられなかったのかは私にも分からないけどさ、その事は後悔してるみたいだし……」
「それは分かるけど」
なおも食い下がってくる貝崎にどうすれば理解してもらえるのかが分からない。思わず茂の方を見て助けを求めてみるが、彼は困ったように首を振った。
「まだ、急には元に戻れないよ。それはお互い疲れることだと思うし、ゆっくり時間をかけた方がいいと思う」
「うーん、そっかぁ……」
やっと納得してくれただろうか?貝崎が腕を組んでそう言った。そうなんですよ貝崎さん。
未だに悩んだ様子の彼女に困っていると、後ろから声がかかる。
「そうやって無理に仲直りさせても余計にぎこちなくなるだけよ」
そう言ってスタスタと歩いてくるのは白雪だった、その表情はいつも通り冷たさを孕んでいた。
切れ長の鋭い眼でこちらを一瞥し、その後貝崎に向く。
「あの二人は他ならない蔵真くんの言葉を信じなかったどころか、こともあろうに忌避するような視線を向けていたわ。もし私があの場にいなければ蔵真くんはずっと悪者にされたままだっただろうし、アナタもあちら側だったと思うわよ?、それなのに彼の気持ちを無視するのは如何なものかしら?」
「でっでも、それとこれとは話が違うよ!蔵真くんはショックだったと思うけど、だからこそ次はそうならないようにって……」
「だったら尚更そっとしておくべきね、そうじゃないと関係が悪化する可能性は充分にある。それに、これ以上人の心に負担をかけさせるのは適切ではないわ」
貝崎の言い分を白雪は一蹴。その声はそこはかとなく怒気を孕んでいるようにも見える。
もし昨日の言葉通りだというのなら、きっと彼女なりに守ろうとしてくれているのだろう。
半身で庇うように俺の前に出てくれている事からもそれは分かる通りだ。
「だから、ちゃんと蔵真くんの意思を汲んであげて。詳しい話ならいくらでも私が代わりにしてあげる、それで手打ちにしましょう」
「うぅ……分かったよ」
どこか諦めきれない様子の貝崎の肩に茂がポンと手を置いた。
そんな様子を見た白雪が鼻を鳴らし、こちらに振り向いた。
「えっと、ありがとう白雪さん」
少なくとも助かったことは事実なので、彼女にお礼を言った。俺一人じゃ流されていたかもしれないことは否定できないからな。
「別にあなたのためじゃないわ、ただ見ていられなかっただけだから、勘違いはやめて」
しかし彼女はそんな俺の言葉を冷たく一蹴し立ち去っていった。
その上がった口角は俺にしか見えず、俺はそれを見逃すことはなかった。
「……なーんかヤな感じ。でも、白雪さんの言う通りかー」
「まぁそういうことだろ、頼むからここは龍彦のためにも引いてやってくれよ……悪かったな、龍彦」
渋い顔をした貝崎に茂は優しい声色で言った。
その後に俺を見て軽く頭を下げる。やっぱ良い奴なんだよなコイツは。
「いや、こっちこそ悪い……またほとぼりが冷めたらあの二人とは仲直りするさ」
「……うん、お願いね」
仲直りというのも変な話だが、それでもここは納得してもらおうと そう言うと貝崎は困り顔でそう返した。
彼女には申し訳ない気持ちもあるが、仕方ないんだ。
「おはよう龍彦、昨日はどうなったよ?」
「どうって、別に何ともないけど……」
「あぁそうかぃ……」
隣の席に例の二人はいるが、仲直りみたいなことはしているわけじゃないからある意味なんともなってはいない。
今日だって挨拶して以降喋ってないし。というか俺としてはそのままフェードアウトしてもいいんだけどね。
まぁ気が向いたらまた喋るくらいはしてもいいけどさ、さっきからチラチラ見てくるし。
しかし仲良くしたいという相手のことを掌返して嘘つきとか言った割に昨日のアレだ。
一体どういう情緒をしているのだろうか?よーわからんっ!
そんな今日この頃だが、いきなり茂と貝崎に呼び出されてしまった。なんですかー?
「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「別にいいけど、二人してどーしたの?」
両手を合わせてそう謝罪してくる貝崎にそう返す。まぁ多分あの二人とのことだろうけどさ、そういえば一昨日のことはもう聞いたのかな?
「いやね?二人から一昨日のこと聞いてさ。あーこりゃ気まずいわーって思って」
「あー……」
やっぱり聞いていたようで、貝崎は頭に手を当てながらそう言った。
関わらなければ気まずさも無いだろうに、どうしてそうしないのか理解できない。しかし目の前の彼女はどう思っているのだろうか?
「でもさ、私としては仲良くしてあげて欲しいわけ。見てられないもん、あの二人」
「そう言われてもね」
あれだけの嫌悪感を一瞬とはいえ剥き出しにされると、過去に色々と責められたことを思い出してしまったのだ。アレは割と心にくる。
一昨日の昼までは仲良くしていたのに、その後の一件から彼女らが内心ではどう思っているのか分からない と疑心暗鬼になってしまっているのだ。
貝崎には悪いが、そう簡単に片付けられる問題じゃない。
「まぁあの二人がどうして蔵真くんを信じてあげられなかったのかは私にも分からないけどさ、その事は後悔してるみたいだし……」
「それは分かるけど」
なおも食い下がってくる貝崎にどうすれば理解してもらえるのかが分からない。思わず茂の方を見て助けを求めてみるが、彼は困ったように首を振った。
「まだ、急には元に戻れないよ。それはお互い疲れることだと思うし、ゆっくり時間をかけた方がいいと思う」
「うーん、そっかぁ……」
やっと納得してくれただろうか?貝崎が腕を組んでそう言った。そうなんですよ貝崎さん。
未だに悩んだ様子の彼女に困っていると、後ろから声がかかる。
「そうやって無理に仲直りさせても余計にぎこちなくなるだけよ」
そう言ってスタスタと歩いてくるのは白雪だった、その表情はいつも通り冷たさを孕んでいた。
切れ長の鋭い眼でこちらを一瞥し、その後貝崎に向く。
「あの二人は他ならない蔵真くんの言葉を信じなかったどころか、こともあろうに忌避するような視線を向けていたわ。もし私があの場にいなければ蔵真くんはずっと悪者にされたままだっただろうし、アナタもあちら側だったと思うわよ?、それなのに彼の気持ちを無視するのは如何なものかしら?」
「でっでも、それとこれとは話が違うよ!蔵真くんはショックだったと思うけど、だからこそ次はそうならないようにって……」
「だったら尚更そっとしておくべきね、そうじゃないと関係が悪化する可能性は充分にある。それに、これ以上人の心に負担をかけさせるのは適切ではないわ」
貝崎の言い分を白雪は一蹴。その声はそこはかとなく怒気を孕んでいるようにも見える。
もし昨日の言葉通りだというのなら、きっと彼女なりに守ろうとしてくれているのだろう。
半身で庇うように俺の前に出てくれている事からもそれは分かる通りだ。
「だから、ちゃんと蔵真くんの意思を汲んであげて。詳しい話ならいくらでも私が代わりにしてあげる、それで手打ちにしましょう」
「うぅ……分かったよ」
どこか諦めきれない様子の貝崎の肩に茂がポンと手を置いた。
そんな様子を見た白雪が鼻を鳴らし、こちらに振り向いた。
「えっと、ありがとう白雪さん」
少なくとも助かったことは事実なので、彼女にお礼を言った。俺一人じゃ流されていたかもしれないことは否定できないからな。
「別にあなたのためじゃないわ、ただ見ていられなかっただけだから、勘違いはやめて」
しかし彼女はそんな俺の言葉を冷たく一蹴し立ち去っていった。
その上がった口角は俺にしか見えず、俺はそれを見逃すことはなかった。
「……なーんかヤな感じ。でも、白雪さんの言う通りかー」
「まぁそういうことだろ、頼むからここは龍彦のためにも引いてやってくれよ……悪かったな、龍彦」
渋い顔をした貝崎に茂は優しい声色で言った。
その後に俺を見て軽く頭を下げる。やっぱ良い奴なんだよなコイツは。
「いや、こっちこそ悪い……またほとぼりが冷めたらあの二人とは仲直りするさ」
「……うん、お願いね」
仲直りというのも変な話だが、それでもここは納得してもらおうと そう言うと貝崎は困り顔でそう返した。
彼女には申し訳ない気持ちもあるが、仕方ないんだ。
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