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三十話 明日から夏休み
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昼食の用意を終えた俺は、もうすぐ到着するという繭奈を外で待つ。早く会いたくて仕方がない。
待つこと約三分、彼女の姿が見えた。あちらも俺に気付いたようで、パタパタと駆け寄ってくる。
「ごめんなさい龍彦くん、待たせちゃった?」
「いや全然」
三分など待った内には入らない。むしろスパイスのようなものだ。
すぐに扉を開けて彼女を迎える。
「おじゃまします」
「いらっしゃい」
恒例の挨拶と共に繭奈をリビングへと通し、椅子を引く……が、彼女は何故か固まっていた。
目を見開いて、何やら驚いているようだ。
「こっこれはまさか、龍彦くんが作ったのよね?」
「そうだよ、どうかな?嫌いなものとかあっ─」
「無いわ!全部とっても美味しそう!」
こちらが言い終えるより先に彼女は嬉しそうに言った。どうやらかなり興奮しているようで、心の底から喜んでいることが見て取れる。
こちらとしてもその反応は凄く嬉しい。
彼女は椅子に座って、俺もその向かいに座る。
「そっそれじゃあ……」
「うん、食べようか。いただきます」
「いただきます!」
もはや待ちきれないとばかりの繭奈はそう言って、まずは目の前にあるスパゲッティを上手にクルクルとフォークを回し、美味しそうに頬張った。
「っ~~!美味しい!」
「あはは、ありがとう」
ひと口食べて咀嚼したあと、しっかり飲み込んだ彼女は嬉しそうに言った。食べ方もそうだがかなり綺麗だな。
俺と比べてマナーもちゃんとしているようで、その姿は興奮しながらもかなり様になっている。
それでも彼女は全てペロリと平らげて、とても満足そうにしていた。
少し作りすぎたかなとは思ったが、どうやらそんな事は無かったようだ。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末さまでした」
最後のひと口もしっかり嚥下し、最後にお茶を飲んだ繭奈はゆっくり手を合わせた。
そして彼女はこちらを見て、真面目な表情で言った。
「龍彦くん、結婚したら主夫になってくれるかしら。もちろん私が仕事に出るからこれからご飯はお願いね」
「気が早くない?それと今日は調子に乗っただけでいつもはここまでじゃないよ?それと俺も働くからね?」
「毎日龍彦くんのご飯が食べられるだけで値千金よ、それなのに働かせるだなんていけないわ。その他の家事も全部やるからアナタには朝昼晩と用意して欲しいのお願い」
「いやいやそれじゃ俺クズ男じゃん。繭奈ばっかり働いちゃこっちも申し訳ないし」
なぜか諭してくる繭奈であるが、色々とツッコミ所しかない。そもそも俺の料理なぞ長年やっている主婦の皆様の足元にも及ばない若輩者のソレであり、彼女にそこまでの対価を払わせるものではない。
「もちろん龍彦くんにはそれだけじゃなくて、添い寝から夜の相手までしてもらうわ。三大欲求担当ね」
「ほぇー」
何が三大欲求担当なのだろうか。それでは俺ばかりが得してしまっている。
それでは夫婦とは言えまい。いやまぁ結婚だなんてのも気が早すぎるが。
「それじゃあ俺ばっかり得しすぎじゃない?やることってご飯だけでしょ?添い寝も夜の相手も、俺にとってはご褒美でしかないし」
「ッグハ!」
「えっ、大丈夫?」
どうやら俺は変なことを言ってしまったらしい、彼女がダメージを負っている。
ご褒美と言ったのはまずかったか?
「あなたからそんな言葉を聞くなんて……幸せすぎて卒倒してしまうわね。もちろん私にとっては大事なエネルギー補給の一つよ。リフレッシュとも言うかしら。それがご褒美ならお互いにとって幸せ、つまりwin-winということね。まぁ私の方が百倍は得してるけど」
「そうなの?」
真面目なのかボケなのか分からないせいでツッコミができない。というかガチで言ってる?
随分と興奮してしまっているようなので、多分自分が何言っているのか分かってないと思うわこの子。
「そうよ!朝は大好きな龍彦くんに起こしてもらって、龍彦くんの料理で元気になって、お昼は龍彦くんのお弁当で更に元気を貰って、仕事が終われば裸エプロンの龍彦くんが出迎えてご飯かお風呂か私?って聞いてくるの!」
「???」
着いていけない俺をヨソに、彼女はまだまだ妄想が止まらないようだ。
「そして夕食前にスッキリしてゆっくりご飯を食べて、一緒にお風呂に入ったらイチャイチャして!そして一緒の布団で寝るの!そして寝る前に龍彦くんとブヒァー!」
「落ち着け落ち着け、はいお茶」
「あ"、あ"りがどぅ……」
ありえない程に興奮している繭奈の手元にあるコップにお茶を入れて渡すと、彼女はそれを両手で優しく受け取りそっと口を添えて、コクコクと飲んで ふぅ……とひと息 吐いた。
興奮していてもその所作は落ち着いていて、そこはとても感心する。
「そういう訳で、私は幸せすぎてそのお礼が出来ないの。だから私に全てやらせても良いくらいよ。想像しただけでこれなのよ?それ以上を望むなんてバチが当たるわ」
「結婚するのは当たり前として、その辺りはゆっくり考えようよ」
「ひぅっ!」
「えっ大丈夫?」
完全に興奮しきっている繭奈には今のでもダメらしい。顔を赤くしてキュッと胸を抑えた彼女はニッコリと嬉しそうに苦しんだ。
待つこと約三分、彼女の姿が見えた。あちらも俺に気付いたようで、パタパタと駆け寄ってくる。
「ごめんなさい龍彦くん、待たせちゃった?」
「いや全然」
三分など待った内には入らない。むしろスパイスのようなものだ。
すぐに扉を開けて彼女を迎える。
「おじゃまします」
「いらっしゃい」
恒例の挨拶と共に繭奈をリビングへと通し、椅子を引く……が、彼女は何故か固まっていた。
目を見開いて、何やら驚いているようだ。
「こっこれはまさか、龍彦くんが作ったのよね?」
「そうだよ、どうかな?嫌いなものとかあっ─」
「無いわ!全部とっても美味しそう!」
こちらが言い終えるより先に彼女は嬉しそうに言った。どうやらかなり興奮しているようで、心の底から喜んでいることが見て取れる。
こちらとしてもその反応は凄く嬉しい。
彼女は椅子に座って、俺もその向かいに座る。
「そっそれじゃあ……」
「うん、食べようか。いただきます」
「いただきます!」
もはや待ちきれないとばかりの繭奈はそう言って、まずは目の前にあるスパゲッティを上手にクルクルとフォークを回し、美味しそうに頬張った。
「っ~~!美味しい!」
「あはは、ありがとう」
ひと口食べて咀嚼したあと、しっかり飲み込んだ彼女は嬉しそうに言った。食べ方もそうだがかなり綺麗だな。
俺と比べてマナーもちゃんとしているようで、その姿は興奮しながらもかなり様になっている。
それでも彼女は全てペロリと平らげて、とても満足そうにしていた。
少し作りすぎたかなとは思ったが、どうやらそんな事は無かったようだ。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末さまでした」
最後のひと口もしっかり嚥下し、最後にお茶を飲んだ繭奈はゆっくり手を合わせた。
そして彼女はこちらを見て、真面目な表情で言った。
「龍彦くん、結婚したら主夫になってくれるかしら。もちろん私が仕事に出るからこれからご飯はお願いね」
「気が早くない?それと今日は調子に乗っただけでいつもはここまでじゃないよ?それと俺も働くからね?」
「毎日龍彦くんのご飯が食べられるだけで値千金よ、それなのに働かせるだなんていけないわ。その他の家事も全部やるからアナタには朝昼晩と用意して欲しいのお願い」
「いやいやそれじゃ俺クズ男じゃん。繭奈ばっかり働いちゃこっちも申し訳ないし」
なぜか諭してくる繭奈であるが、色々とツッコミ所しかない。そもそも俺の料理なぞ長年やっている主婦の皆様の足元にも及ばない若輩者のソレであり、彼女にそこまでの対価を払わせるものではない。
「もちろん龍彦くんにはそれだけじゃなくて、添い寝から夜の相手までしてもらうわ。三大欲求担当ね」
「ほぇー」
何が三大欲求担当なのだろうか。それでは俺ばかりが得してしまっている。
それでは夫婦とは言えまい。いやまぁ結婚だなんてのも気が早すぎるが。
「それじゃあ俺ばっかり得しすぎじゃない?やることってご飯だけでしょ?添い寝も夜の相手も、俺にとってはご褒美でしかないし」
「ッグハ!」
「えっ、大丈夫?」
どうやら俺は変なことを言ってしまったらしい、彼女がダメージを負っている。
ご褒美と言ったのはまずかったか?
「あなたからそんな言葉を聞くなんて……幸せすぎて卒倒してしまうわね。もちろん私にとっては大事なエネルギー補給の一つよ。リフレッシュとも言うかしら。それがご褒美ならお互いにとって幸せ、つまりwin-winということね。まぁ私の方が百倍は得してるけど」
「そうなの?」
真面目なのかボケなのか分からないせいでツッコミができない。というかガチで言ってる?
随分と興奮してしまっているようなので、多分自分が何言っているのか分かってないと思うわこの子。
「そうよ!朝は大好きな龍彦くんに起こしてもらって、龍彦くんの料理で元気になって、お昼は龍彦くんのお弁当で更に元気を貰って、仕事が終われば裸エプロンの龍彦くんが出迎えてご飯かお風呂か私?って聞いてくるの!」
「???」
着いていけない俺をヨソに、彼女はまだまだ妄想が止まらないようだ。
「そして夕食前にスッキリしてゆっくりご飯を食べて、一緒にお風呂に入ったらイチャイチャして!そして一緒の布団で寝るの!そして寝る前に龍彦くんとブヒァー!」
「落ち着け落ち着け、はいお茶」
「あ"、あ"りがどぅ……」
ありえない程に興奮している繭奈の手元にあるコップにお茶を入れて渡すと、彼女はそれを両手で優しく受け取りそっと口を添えて、コクコクと飲んで ふぅ……とひと息 吐いた。
興奮していてもその所作は落ち着いていて、そこはとても感心する。
「そういう訳で、私は幸せすぎてそのお礼が出来ないの。だから私に全てやらせても良いくらいよ。想像しただけでこれなのよ?それ以上を望むなんてバチが当たるわ」
「結婚するのは当たり前として、その辺りはゆっくり考えようよ」
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