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しおりを挟む「エミリが認めないのはどうでもいいよ。真実だから。…だから、留学している間に2人で何とかしてくれたらよかったのに。こっちは覚悟は決まっているんだし。」
「…じゃあ、あの事は…婚約破棄は私の為にしたってこと?」
だとしたら申し訳ない…。
でも、ティーシルは小さく首を振った。
「別に、エミリのためじゃないさ。まあ、俺のためかな?結婚までいよいよ1年は切ったし、どうしたもんかなって思っていた頃…ルミーと会ったんだよ。」
ティーシルがルミーと呼ぶ、ルミア・ジュブワ男爵令嬢。
あの日の彼女のすまなそうな顔が思い浮かびました。
「俺だけを頼って、俺だけを見てくれている彼女が、なんかたまらないんだよね。もともと貴族じゃない彼女は社交界に居場所がなかった。俺みたな、貴族の次男なんて、エミリとの婚約が無ければ、居場所がないからね。なんとなく分かり合えちゃってさ。」
私にはできなかった、ティーシルに頼るという事。
嫁ぐならちゃんとしなきゃっていつも気が張っていた。
それが悪かったのかな…。
可愛らしさが欠けていましたものね…。
「留学先でできた友人たちも、貴族の次男、三男が多くてね。同じ立場同士で悩みなんて同じさ。俺たちみたいな跡継ぎでもない息子は、自分でいろいろ動かないと、どっかの一人娘の婿養子しか道が無いからね。だったら事業を起こさないかって誘われて。エミリと婚約を解消したら、父さんに睨まれて、どっちみちこの国には居られないからね。ルミーと一緒に国を出ようと思ってね。そのために準備もあってこっちにあまり帰ってこなかったんだ。」
ティーシルがいろいろ考えていた事を、初めて聞かされて、感心する半面、その気持ちに気付こうとしないで、自分のことばかり考えていた自分勝手な私が情けなくなります。
この国に存在する五つの爵位。
位の上から公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五つはあまり離れ過ぎた縁組を良しとはしない。
確かに私との婚約解消が綺麗に片付いても、ルミア嬢の家である男爵家は格下過ぎで侯爵家では選ばないわね。
きっと伯爵家以上の方との結婚をすすめられるでしょうね。
だとしたら、ルミア嬢との結婚を考えるなら、ティーシルの国外へ行く道は正解ね。
「エミリとの婚約を解消なんて、あの父さんたちを見ていたらできない事はわかっていたし、だからって兄さんが出てこないんじゃ手詰まりだったよ。そんなこんなで、今かなって思ってね。あんなことしたわけ。」
お芝居半分だったのですね。
道理で、安いお芝居みたいだったですものね。
少し納得。
もともと、あんなことする方ではなかったですもの。
ティーシルはまっすぐな性格の方。
仮に…あくまで仮に、私の気持ちに気付いていたのだとしたら、私に相談しても良かったのでは?
こんな大事にならなくて済んだかも…。
でも、そんなに頻繁に会っていたわけではないから、私の事は信頼できないでしょうね。
「もちろん、穏便に進めることも考えたけど…兄さんの縁談が持ち上がってね。知ってた?」
唐突のお話に、息ができなくなる。
ベルナルダンお兄様に縁談…?
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