婚約破棄、ありがとうございます

奈井

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知るわけない…。

知っていたら…知っていたって、何もかわらないわ。

ティーシルはルミア嬢と。

ベルナルダンお兄様は縁談の方と。

私は…1人。

今とかわらない。

「気になるだろ?相手が。…シュバリィー公爵家の次女イングリッド様だよ。うちより格が上で皇太子からの打診だって聞いて慌てたよ。だって、断れないだろ?」

シュバリィー公爵家の次女という事はグレン様の妹。

確か皇太子妃の護衛をされている方。

この事はグレン様からは何も聞いていない…。

ご存じなかったのかしら?

両家の許可を取ってここへ来たとおっしゃっていたグレン様。

という事は、ベルナルダンお兄様との縁談もご存知でここへいらした。

まさか、私の気持ちも知ってる?

ううん、知らないはず。

頭の中がグルグルと出口の無い迷路を回っているようです。

そして、ティーシルがいろいろと動いてくださった事を聞いても、それよりもベルナルダンお兄様の事が気になってしまう。

「…その縁談は…。」

自分の声に、ハッとする。

なんて浅ましいのかしら…。

ベルナルダンお兄様の事が…縁談のお話の行方が気になるなんて。

自分には関係ないことなのに。

ティーシルを見ることができなくて、前で組んでいる自分の手に視線を落としてしまいます。

そんな私の気持ちをわかったように、優しい口調でティーシルが話します。

「もちろん、2人が会う前に話は無くなったよ。バカな次男が世間を騒がせたからね。俺としては目論見通りだけど、正直こんなに騒がれるなんて思わなかった…。甘かったね。お蔭で、ルミーと会えないしルミーの家にも迷惑掛けちゃったし、エミリにもこんな所まで逃げられちゃうし。あの夜会の主催は親戚筋の家だから、何とかあまり広がらずに配慮してくれるかと、すぐにお願いしたんだけど、こっちで手を打つ前に不自然なくらい早く広まってね…。もう、いいけどさあ。」

お手上げとでもいうかのように両手を挙げるティーシル。

「それに、まさか、シュバリィー公爵家の兄貴の方まで出て来て、こっちをぐちゃぐちゃにするなんて。誤算だよ!」

シュバリィー公爵家の兄貴とはグレン様のことよね。

こっちをぐちゃぐちゃ、てなんの事?



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