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~~ 今回で最終回となります。 ~~
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっぱり、私の出る幕は無かったのですね…。」
いつもは見せる事のない隙を、これでもかと見せていて、隙だらけのグレン様が私の目の前にいらっしゃる。
熱気が満ちている夜会の会場に付いているテラスに私たちはいます。
月が明るく照らしているここは夜風が気持ちいいです。
「せっかく、ウエインターナーの別荘まで来てくださったのに。」
「いえ、それは、いいのですよ。私が行きたかったのだから。…アルからベルナルダン・ルゥグホンがあなたに会いに行ったと聞いた時、こうなると予感がしました。」
その言葉に疑問を感じました。
そんな予感って、なぜ?
「どうして、そう思われたのですか?」
「…アルへの手紙の中に何度も彼の名前が出てきてました。アルに聞けば”妹が自分より懐いている”と。始めはベルナルダン・ルゥグホンがあなたの婚約者だと思っていました。2人でいる姿をよく見かけましたし。」
「…そうでしたの。」
「…あなたを手に入れるために、もっといろいろ方法があったのに…できなかった。後悔はしてまいますが、気持ちはスッキリしているんですよ。ずーと心に貯めていた気持ちをあなたに伝えることができたから…ですかね。」
そう言ってグレン様は悲しそうな瞳で口元だけを笑って見せてくれました。
とても申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「…そろそろ、私の婚約者を返してくれませんか?」
いつもの聞きなれた優しい心地の良い声とは違う、まるでお仕事の時のベルナルダンお兄様の声が聞こえました。
鋭さが混じった男性らしい声にびっくりして、聞こえた後ろを振り返ります。
視線は私ではなくグレン様を見ていらっしゃいます。
「ベルナルダンお兄様。」
私の声に呼ばれるように私に視線を変え、近づいていらっしゃいます。
急に腰に手を回し、ベルナルダンお兄様の方へ寄せられます。
ちょっと驚きましたが、嬉しいので頬が熱くなりました。
「…あまり独占欲が強いと女性に嫌われますよ。ベルナルダン・ルゥグホン。」
呆れたようにグレン様が溜め息を吐きます。
「ご心配いただかなくても大丈夫ですよ。私の婚約者は、私の独占欲も含めて、私を好いてくれていますから。」
ニッコリと自信に溢れて様子で言葉を返すベルナルダンお兄様。
ですが、私の腰に回されて手に更に力が入ったように思えます。
「…婚約者、婚約者と何度も言ってますが、婚約と言うのは破棄される事もあるんですよ。あなたもよく知ってらっしゃいますよね。ベルナルダン・ルゥグホン。」
言葉はとても冷静に淡々とされていますが、先ほどとは違って隙がなく、瞳は鋭くて怖いです、グレン様…。
「それも、ご心配なく、私たちの婚約には政略的な意味などありません。なんといっても愛し合っているのですから。そんな、愛し合っている2人に横恋慕なんて無粋な真似はなさらないですよね?グレン次期宰相殿。」
ベルナルダンお兄様も負けず劣らず怖いです…。
「…ええ、そんなエミリエンヌ嬢を困らせるような事はしませんよ。」
2人の視線が私に向きます。
ですが、私はただオロオロするばかり。
「それは、よかった。…私もエミリを困らせるような事はしません。これから先はエミリを幸せにするだけですよ。」
そう言っていつも通りの優しい笑顔を向けてくれるベルナルダンお兄様にホッとします。
「…それを聞いて私も安心しました。…あなたの幸せを祈ってます、エミリ。…では、失礼。」
最後に少しだけ私に視線を合わせて、迷いの無い足取りでテラスを去っていかれました。
去っていく背中を見送れば、ピンと伸びた背筋がグレン様の筋の通った性格を現しているようで頼もしく見えました。
すぐ隣から、ベルナルダンお兄様が少しだけ不機嫌な声で私に話しかけます。
「エミリ、見とれないで。…武士の情け、特別に”エミリ”と呼ぶのをゆるしてやるか。」
グレン様から”エミリ”と愛称で呼ばれたのは2回目ですけど…。
きっとこれが最後です。
私もグレン様の幸せを祈っております。
でも、これからもこの2人が会わない事なんてないのに毎回こんな感じなのかしら。
そう思ったら夜会に出席するのも気が重くなります…。
~fin~
ーーーーーーーーーーーーー
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
たくさんの励まし、ご指導、感謝いたします。
完了マークを付けさせて頂きますが、この後、番外編を準備しております。
近いうちに投稿させていただくので、よろしければ、またいらしてくださいませ。
では、ありがとうございました。
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「やっぱり、私の出る幕は無かったのですね…。」
いつもは見せる事のない隙を、これでもかと見せていて、隙だらけのグレン様が私の目の前にいらっしゃる。
熱気が満ちている夜会の会場に付いているテラスに私たちはいます。
月が明るく照らしているここは夜風が気持ちいいです。
「せっかく、ウエインターナーの別荘まで来てくださったのに。」
「いえ、それは、いいのですよ。私が行きたかったのだから。…アルからベルナルダン・ルゥグホンがあなたに会いに行ったと聞いた時、こうなると予感がしました。」
その言葉に疑問を感じました。
そんな予感って、なぜ?
「どうして、そう思われたのですか?」
「…アルへの手紙の中に何度も彼の名前が出てきてました。アルに聞けば”妹が自分より懐いている”と。始めはベルナルダン・ルゥグホンがあなたの婚約者だと思っていました。2人でいる姿をよく見かけましたし。」
「…そうでしたの。」
「…あなたを手に入れるために、もっといろいろ方法があったのに…できなかった。後悔はしてまいますが、気持ちはスッキリしているんですよ。ずーと心に貯めていた気持ちをあなたに伝えることができたから…ですかね。」
そう言ってグレン様は悲しそうな瞳で口元だけを笑って見せてくれました。
とても申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「…そろそろ、私の婚約者を返してくれませんか?」
いつもの聞きなれた優しい心地の良い声とは違う、まるでお仕事の時のベルナルダンお兄様の声が聞こえました。
鋭さが混じった男性らしい声にびっくりして、聞こえた後ろを振り返ります。
視線は私ではなくグレン様を見ていらっしゃいます。
「ベルナルダンお兄様。」
私の声に呼ばれるように私に視線を変え、近づいていらっしゃいます。
急に腰に手を回し、ベルナルダンお兄様の方へ寄せられます。
ちょっと驚きましたが、嬉しいので頬が熱くなりました。
「…あまり独占欲が強いと女性に嫌われますよ。ベルナルダン・ルゥグホン。」
呆れたようにグレン様が溜め息を吐きます。
「ご心配いただかなくても大丈夫ですよ。私の婚約者は、私の独占欲も含めて、私を好いてくれていますから。」
ニッコリと自信に溢れて様子で言葉を返すベルナルダンお兄様。
ですが、私の腰に回されて手に更に力が入ったように思えます。
「…婚約者、婚約者と何度も言ってますが、婚約と言うのは破棄される事もあるんですよ。あなたもよく知ってらっしゃいますよね。ベルナルダン・ルゥグホン。」
言葉はとても冷静に淡々とされていますが、先ほどとは違って隙がなく、瞳は鋭くて怖いです、グレン様…。
「それも、ご心配なく、私たちの婚約には政略的な意味などありません。なんといっても愛し合っているのですから。そんな、愛し合っている2人に横恋慕なんて無粋な真似はなさらないですよね?グレン次期宰相殿。」
ベルナルダンお兄様も負けず劣らず怖いです…。
「…ええ、そんなエミリエンヌ嬢を困らせるような事はしませんよ。」
2人の視線が私に向きます。
ですが、私はただオロオロするばかり。
「それは、よかった。…私もエミリを困らせるような事はしません。これから先はエミリを幸せにするだけですよ。」
そう言っていつも通りの優しい笑顔を向けてくれるベルナルダンお兄様にホッとします。
「…それを聞いて私も安心しました。…あなたの幸せを祈ってます、エミリ。…では、失礼。」
最後に少しだけ私に視線を合わせて、迷いの無い足取りでテラスを去っていかれました。
去っていく背中を見送れば、ピンと伸びた背筋がグレン様の筋の通った性格を現しているようで頼もしく見えました。
すぐ隣から、ベルナルダンお兄様が少しだけ不機嫌な声で私に話しかけます。
「エミリ、見とれないで。…武士の情け、特別に”エミリ”と呼ぶのをゆるしてやるか。」
グレン様から”エミリ”と愛称で呼ばれたのは2回目ですけど…。
きっとこれが最後です。
私もグレン様の幸せを祈っております。
でも、これからもこの2人が会わない事なんてないのに毎回こんな感じなのかしら。
そう思ったら夜会に出席するのも気が重くなります…。
~fin~
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ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
たくさんの励まし、ご指導、感謝いたします。
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近いうちに投稿させていただくので、よろしければ、またいらしてくださいませ。
では、ありがとうございました。
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