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しおりを挟むジェラールが薬を栽培し研究していた事、それをライラと貴族に売っていた事、ネーエルド国の歓楽街とつながりがある事、そしてライラとの関係・・・。
思い浮かぶままに、ジェラールを刺激しないように落ち着いた声を無理やり出して話した。
「ハハハッ。ほとんど知っているんだね。だったら、こんな手の込んだことしなければよかった。すぐにネーエルドに連れて行けばよかった。」
「手の込んだこと?」
「・・・わざわざ頼んで、君を攫ってもらったんだよ。」
「!・・・どうしてそんなこと?」
「君は覚えていないけど、前にも1度君が攫われたことがあってね。その時、1番最初に君を見つけたのは僕なんだ。そして、君は言ったんだ。僕が来るのを信じて待っていた、と・・・。」
『ジェラールはきっと来てくれると思って信じてた。・・・だって、ずーと一緒だったもの。おとうさまよりも、おかあさまよりも、おにいさまよりも。だから、絶対って、信じてたの。』
ふと浮かんだ、幼き日の自分の声に、頭の中の霧が晴れていく。
目が覚めて光を求めるように、失われている感覚さえなかった記憶を自分の何かが求めだす。
先ほど思った、『前にもみたことがある、ジェラールとその肩越しのこの景色』が『あの時』の事だと思う。
でも、『あの時』がわからない。
わかるのに、わからない。
とてももどかしい。
でも、少しずつ花が開くように、小さな泉に水が湧くように記憶がつながっていく・・・。
私の中の葛藤をジェラールは気付いていないようで、話を続ける。
「・・・あの頃、僕の家族の心はバラバラ、財産もなにもかも失いかけていた。毎日が苦しくて、息が詰まりそうで、未来なんて思い描けなかった。・・・そんな時に僕だけを信じるなんて言ってくれて、まっすぐな瞳で見つめてくれる君が・・・エルが僕のただ1人の光になった。エルと一緒になら、生きて行くのも悪くないってね。君を手に入れ、幸せにする事ができるなら、なんでもする、と心に誓った。」
「だからって、国で禁止されている事にまで・・・。」
「・・・他に無かったからね。子供だった僕ができる事なんて、父の補佐ぐらいで・・・。実はね、ネーエルドとの取引は、うちでは代々行われていた事なんだ。・・・ただ、取引をしたくなければ、もともと自然発生の植物だから、今年は不作と言えば、あっちだって強くは要求してこない。そんな感じで細々と続いていたんだ。・・・僕は両親が不在がちで、よく祖父と遊んでいただろ?その時、いろいろ、植物の事を教えてもらって、特に興味も無かったけど、勝手に知識が身に付いてしまって。それが、こんなに役に立つなんて思わなかったよ。僕たちの未来に役にたつなんて。」
「僕たちの未来?」
「そうだよ、エル。ネーエルドの歓楽街を取り仕切る組織がヌハニアを欲しがったから、僕の持てる知識で研究し株を増やし安定的に栽培できるようしたんだ。この国では、まだ認知されていない、媚薬としてとても有効な他にも植物がうちの別荘には自生しているから、それもこれから需要が見込めるそうだよ。それらを、持ってネーエルドへ2人で行こう!」
「ネーエルドへ?」
「そうさ。向こうには。僕たちの住む所も用意されている。それに、・・・父からはまだ爵位を譲ってもらえてなかったからね、ただの伯爵の息子に過ぎなかったけど、あちらに行けば、僕の爵位も準備してくれているんだ!あまり大きな声で言えないけど、この薬の利益はネーエルドの国益にも貢献しているそうなんだ。僕もその辺は、詳しくは教えられてないんだけど・・・。とにかく、安心して僕についてきて。」
声を高らかに、胸を張っていうジェラール。
ここでの居場所はそんなに居心地が悪いところだったの?
あなたの周りにいた、私を含む人たちはあなたの抱えている重石をどうして一緒に持ってあげられなかったのだろう。
悲しい後悔が胸を埋める。
「・・・どうして、そんな風になっちゃったの?」
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