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しおりを挟むそれから、ジェラールの馬に乗せられたのは、僅かな時間。
「万が一ということがあります。屋敷の側に馬がいれば、そこに滞在している事がわかられてしまいますし、馬を押さえられてしまったら逃げるのに苦労します。屋敷から少し距離がありますが、この辺りに馬を隠しておきましょう。ジェラール様。」
そうだな、と言って頷くジェラール。
馬を降り、さっきと同じように黒い仮面の黒い服の者の肩に担がれる。
逆さまな視界に映るのは緑の木々ばかり。
下げられた頭に血が集まり、意識が少しずつ遠ざかる気がしてきた頃、水の臭いを感じた。
そっと頭をずらすと、水面がキラキラと眩しく見えた。
これが、あんなに来たかったルルラ湖・・・。
向こう側の岸が見えないくらい大きいのね。
日の光から見て、担がれて運ばれてから、そんなに時間は経っていないと思う。
でも、お腹に当たる黒い仮面の黒い服の肩が痛い。
また、縛られている手も痺れている。
この状態では、例え地面に下ろされても、走って逃げる事なんてできない。
「エルを下ろして。・・・その服もどうせ公爵の趣味なんだろ?僕は前の方が君に似合っていたと思うよ。もっと女の子らしいドレスの方がね。もちろん用意してあるから、着替えて。侍女達もいるから、湯浴みをしてからだね。」
公爵家に来る前は、リボンやレースがたくさん使われていて、暖色系が多かったエルヴィナのドレス。
確かにこの服は、アンドレア様が用意して下さっていた物。
アンドレア様と並んでもおかしくないような、以前着ていたものより、落ち着きのある形と色だ。
私自身は、今はこっちの方がしっくりと馴染んでいる。
貴族の別荘という風情の屋敷の表玄関を通り過ぎ、庭の方へ歩みを進めている。
湖を一望できるようになのか、いくつもの大きな窓に大きなテラスがついている。
そのテラスに上がる3段ほどの階段の前で降ろされる。
地に足はついたものの、ふらつく。
そんな私を抱きしめるように、ジェラールが支えてくれた。
「おっと!ゴメンネ。キツイ体勢だったね。・・・でも、着替えて食事をしたら、すぐに出かけるよ。ネーエルドへ。・・・邪魔者にいつ見つかるかわからないだろ?」
目を細め、口の端を持上げて私を見下ろす。
恐ろしさを感じ、身体が震えた・・・。
「・・・邪魔者とは私のことか?」
がさがさと何人もの人が草を踏む音がする。
ゆるゆると重い頭を持上げる。
音のした方向に顔を向ければ、会いたいと願った姿が目に写った。
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