公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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「痛っ!」

ジェラールに引かれていない手を思わず痛い右足に添える。
本当は、両足が痛い。
急に立ち止まった私に、急ぎ足を止めジェラールが振り向く。

「どうしたの?・・・足?」

さっきまでの恐ろしい鋭い目つきが嘘のように、心配の表情を向けてくれるジェラールは、私の記憶に残る温和な彼だった。
無言で頷く私の前に屈みこんで、そっと右足から靴を外す。
本来なら、淑女に対し足を触るなど、あってはならない事だが、幼馴染のきやすさからか、お互いに戸惑いはない。

「!・・・これは酷い・・・。」

長距離の移動を想定していない、ドレス選びの為にだけ選んだ先の尖ったヒールのある靴は、私の足を苦しめていた。
靴に当たる親指や小指はスレて赤くなっていて、更に皮が剥けたところからは出血もある。

「・・・実は、左も痛いの・・・。」

「・・・そうか・・・。」

ジェラールは溜め息混じりに、傷ついた私の足を見た。

きっと彼は受け入れないだろうと思いながらも、その言葉を口にしてみた。

「・・・本当は罪を認めて償って、あなたの持てる知識をこの国のために役立てて欲しいと思う。・・・でも、掴まりたくないのでしょ?目的が私を手に入れるだけではないのでは?何か他に目的があって、掴まりたくないのなら・・・私が一緒だと足手まといになるから、ここに置き去りにしていいのよ。」

確かにジェラールは私に固執しているように思えた。
でも、途中からそれだけではなく、何か他の目的あって、ネーエルド国で爵位を得たいのではないかと私は1つの仮説を思いついていた。
今はそれが何なのか、全く想像もついていない。
本当はそんな目的なんて無いのかもしれないけど。

私を見上げ、私の言葉に反応するジェラールの瞳は1度大きく開かれたがすぐに元に戻り、視線を湖の方へと逃がす。
湖の水の音が小さく、大きく、不規則なリズムで耳に届く。
答えを待つ私にジェラールは、靴を元通りに履かせる。




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