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いつものように寝室のソファに座って好きな本を読んでアンドレア様を待つなんて事はできなかった。
大きな窓により、月を見上げる。
2人で踊り場で見た少し黄色っぽい月より、今日は幾分白っぽい気がする。
この国の夜空は月が良く見える。
迷信だけど、この国を守っている魔女たちが夜になるといくつもの溜め息をつくから、雲はその溜め息でどこかに行ってしまう、と。
だから、夜は外にでると、魔女の溜め息に影響されて気持ちが沈むから出ないほうがいい、そんなふうに言い伝えられている。
まあ、危ないから夜は外出しないほうがいいという事なんだろうなあ。
私は心が静まる気がして月を見るのが好きだった。
カチャ
いつもよりドアの開く音が大きく部屋に響く。
緊張して肩をビクリと揺らしてしまった・・・。
近づく足音に身体が硬くなる。
後ろから腰辺りに腕をまわされ、腕の中に取り込まれ捕まる。
「・・・そんなに緊張されると・・・」
耳元に静かにアンドレア様の声が響く。
「ごめんなさい・・・。仰るとおり緊張はしています。でも、覚悟してここにいますし・・・嬉しくも思っています。」
「嬉しくとは・・・私に愛されるということ?」
「・・・はい。」
素直に答えてしまってから、はしたない返事だったのではないかと唇を小さく噛む。
「よかった。・・・早急すぎたと少し後悔していたから。嫌だと言われたら、落ち込むが、それはそれで仕方が無いのでおとなしく引き下がろうと・・・この部屋に入る前に考えていた。」
腕を解きくるりと反転させられ迎え合わせる。
正面から見つめるアンドレア様の眼の奥は、いつもと違う光を宿していた。
その強い光に引き寄せられるように2人の唇がそっと重なる。
もう何度と無くアンドレア様としている口づけは、いつも恥ずかしさが前面にある。
その後ろに少しだけの心地よさを感じていたが、アンドレア様は気付いておいでかしら。
ゆっくりとお互いの形を確かめるように合わせ動く唇は、まるでお互いの気持ちを確かめるような、そんななぞり合いを繰返す。
次第に体温が上がるのは私だけ?
少しの息苦しさを感じた頃、僅かに身体を離しアンドレア様が力のこもった抱擁をくれた。
肩に額を押し当て自分からもアンドレア様の背中に腕をまわす。
溜め息のような、何かを逃がすような大きく息を1つつく音が耳から入ってくると急に抱き上げられた。
不安定な体勢に首に縋りつくと、いつものアンドレア様の香りに包まれ、心が落ち着いてくる。
背中に当たるひんやりと柔らかい感触に寝台に横になった事を頭の隅で理解した。
でも、視界いっぱいにアンドレア様の心配したお顔を認めた時、どうしてそんな顔をするのか、再び不安が頭を擡げた。
大きな窓により、月を見上げる。
2人で踊り場で見た少し黄色っぽい月より、今日は幾分白っぽい気がする。
この国の夜空は月が良く見える。
迷信だけど、この国を守っている魔女たちが夜になるといくつもの溜め息をつくから、雲はその溜め息でどこかに行ってしまう、と。
だから、夜は外にでると、魔女の溜め息に影響されて気持ちが沈むから出ないほうがいい、そんなふうに言い伝えられている。
まあ、危ないから夜は外出しないほうがいいという事なんだろうなあ。
私は心が静まる気がして月を見るのが好きだった。
カチャ
いつもよりドアの開く音が大きく部屋に響く。
緊張して肩をビクリと揺らしてしまった・・・。
近づく足音に身体が硬くなる。
後ろから腰辺りに腕をまわされ、腕の中に取り込まれ捕まる。
「・・・そんなに緊張されると・・・」
耳元に静かにアンドレア様の声が響く。
「ごめんなさい・・・。仰るとおり緊張はしています。でも、覚悟してここにいますし・・・嬉しくも思っています。」
「嬉しくとは・・・私に愛されるということ?」
「・・・はい。」
素直に答えてしまってから、はしたない返事だったのではないかと唇を小さく噛む。
「よかった。・・・早急すぎたと少し後悔していたから。嫌だと言われたら、落ち込むが、それはそれで仕方が無いのでおとなしく引き下がろうと・・・この部屋に入る前に考えていた。」
腕を解きくるりと反転させられ迎え合わせる。
正面から見つめるアンドレア様の眼の奥は、いつもと違う光を宿していた。
その強い光に引き寄せられるように2人の唇がそっと重なる。
もう何度と無くアンドレア様としている口づけは、いつも恥ずかしさが前面にある。
その後ろに少しだけの心地よさを感じていたが、アンドレア様は気付いておいでかしら。
ゆっくりとお互いの形を確かめるように合わせ動く唇は、まるでお互いの気持ちを確かめるような、そんななぞり合いを繰返す。
次第に体温が上がるのは私だけ?
少しの息苦しさを感じた頃、僅かに身体を離しアンドレア様が力のこもった抱擁をくれた。
肩に額を押し当て自分からもアンドレア様の背中に腕をまわす。
溜め息のような、何かを逃がすような大きく息を1つつく音が耳から入ってくると急に抱き上げられた。
不安定な体勢に首に縋りつくと、いつものアンドレア様の香りに包まれ、心が落ち着いてくる。
背中に当たるひんやりと柔らかい感触に寝台に横になった事を頭の隅で理解した。
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