僕は二番目

２結果

(いいの？)と言おうとして口を開きかければ、先を越された。

「でも、覚悟して来てね」

いつもよりちょっとだけ鋭い声色に変化したようなきがする。
覚悟？
「…なんの？」
「僕とずっと離れない覚悟。ぜんぜん先輩と会ってないでしょ？僕といることの方が多いよね。じゃあ、そろそろ僕を一番にしてもらおうかな？」

文章は疑問形だけど、言い方は有無を言わせない感じがする。
さすが、未来の社長。

「本当は草食なんてキャラじゃない。あえて否定しないけど。いい後輩も先輩を慕っている振りも飽きた。そろそろ、君には本当の僕を見せたいし、見てほしい。」

時折見せるドキッとする鋭い眼差しは気のせいではなかったんだね。
将来、大勢の社員を束ねる立場に立つ彼は、小さいころからいろいろな処世術を身に付けたはず。
他の人に、紳士的に見せるのもその一つ。
そして鋭い眼差しも。

本当の彼？
私だけ？
弱った心は勘違いの方向にやすやすと進む。

この誘いに乗るのは彼氏への裏切り？
悩む。
迷う。


なんかぐるぐるしてる今の自分がすごくイヤだ…。
ウジウジしてたら明日の笑顔は無い！
それにわたしらしくない！



アームポーチからスマホを取り出しメッセージアプリを開く。

『同期の彼女さんとお幸せに。元彼女より』

そして、ブロック！

ちょっと嫌味っぽくなっちゃったかな。
でもいいよね？
先に振ったのは先輩の方だよ。
私が気付いてないと思っていたりして。
だったら、おめでたいよ。
偶然、デートの時に出くわして紹介された同期入社のお化粧が上手な巻き髪女子。
刺さる視線が不安を大きくした。
そして、わざと私にわかるように置かれた、彼の部屋のお風呂場にあったクレンジングの瓶。
量が結構減っていた、ということは何度もここを訪れているってこと？
そんな事実は日にちが経てば、悲しさより悔しさを増幅させた。
とっくに私の中の好きが無くなっていたのかな。



この彼は感が鋭い。
もしかして、先輩に新しい彼女ができたこと、気づいていたのかな？








「…着替え貸してくれる？」

「ああ、そうだね。明日の朝ね。」
明日の朝まで着替えは必要ないってこと？
完璧肉食的発言だ。





一つ深呼吸して彼と手を繋ぎ
クールダウンの代わりに
ゆっくりと彼の部屋へ歩き始める。