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窓辺で眠るキミ

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 「浅川…花火大会…悪かったな。せっかく綺麗にしてきたのに構ってやれなくて。お詫びに何か願い事でもあったら叶えるけど…。」

 そんな事を言い出した真実。

 「なら真実、私と付き合って」
 
 「…?どっか行きたい場所でもあるのか?」

 …いや…そうじゃなくて…。

 真実はふっと笑って首を振る。

 「ああ、違うか…。浅川悪いな。俺親の稼いだ金で食ってる間はそういうことする気無いんだ。自分で責任取れないことはしたくない。」

 「そっか…。さすがね。」

 

 こればかりは真実の言うことももっともかと思った。

 まあ、少なくとも学生の間は真実を誰かに取られる心配はないわけだ。

 
 
 「う~ん…じゃあどうしよっかな…。デートもダメ?」

 「浅川俺なんかといて楽しいのか?つまんないだろ?」

 困った様に笑う真実。

 「そんな事ないよ。確かに勉強会の時はつまんなかったけど。…でも近くでイケメンを見れたのは良かったかな。」

 「…お前なあ…。マジメに勉強してたのかと思ったらそんな事…」

 呆れ顔の真実。








 
 図書館で時々勉強教えてっとお願いしたらあっさりokしてくれた。

 日曜日は真実とデートだ。

 …あ、まあ表向きは勉強会なんだけど。

 
 日曜日は流石に部活は無い。

 日曜くらい身体を休ませなさいって事なんだろうけど…真実に会えないのもつまらないと思っていたので好都合だ。
 


 
 その週の日曜日、真実と図書館で待ち合わせる。

 「真実っ!おはようっ!」

 真実は声をかけると微笑む。

 「おはよう。ちゃんと来たな。」

 「そりゃあ来るわよ。私から約束したのに。」

 真実は私を眺める。

 「んんっ?何?」
 
 「あ、いやお前げんきだよな。月曜から土曜まで学校行って部活して挙句に日曜は勉強だろ?」

 「真実もでしょ?」
 
 真実は背伸びをする。

 「そうだけどさ、お前日曜くらいゆっくり寝たいとか思わないのか?」

 「何それジジくさい。」

 「…そうか?」



 ★


 真実と窓辺の席に座った。

 今日は数学をやる。

 丁寧な真実の説明に少しづつ理解が進む。

 「じゃあこのやり方で解いてみて?」

 真実はそう言い私の手元を見ている。

 「…。」
 
 やりづらい…。

 ただでさえ真実の側にいるだけで少し緊張してるのに…。

 今日も相変わらずイケメンなメガネだ。

 …。

 「ちょっと問題解いてる間何かしてて?見られてると緊張するから…。」

 思わず声をかけると

 「はいよ。じゃあ終わったら呼べよ?」

 真実は隣で本を読み始めた。

 
 
 …ん、だからここはこうなってこうか?

 …でもさっき真実が…。



 真実に解けたと言おうと顔を上げる。
 
 「!!」

 やけに静かだと思ったら…。

 …。

 窓枠に寄りかかって真実が寝ている…。

 …今日は天気も良くてしかも図書館内はエアコンが効いていて過ごしやすかった…。

 …疲れてるのかな…。

 サラサラの髪に長い睫毛…。

 整った顔に綺麗な肌…。

 
 思わず見惚れてしまう…。

 ああ…キスしたいな…。

 そう思ってしまう。

 周りを見渡す。

 今日は殆ど人がいない…。

 

 そっと席を立ち真実の側に立つ。

 …本当綺麗な男だ…。

 形のいい唇…。

 私は思い切って真実に手を伸ばす。




 「シンジっ!出来たよ!」

 そう言いながら真実の肩を揺する。

 「あ…悪い…寝てた…。」

 真実はあくびをして立ち上がる。

 「ここ…過ごしやすいな…。」

 そう言いながら解いたばかりの問題を確認してくれた。

 「うん、ちゃんと出来たな。偉いエライ!」

 

 
 オヤツどきまで勉強を教えてもらい図書館を出る。

 「なんかお腹空いた…。」

 「何か食うか?それくらいなら出すぞ?」

 真実はそう言うが、勉強を教えてもらったあげくに奢られるなんて…私のプライドが許さなかった。

 「何言ってるの、勉強教えて貰ったお礼に何か奢るわよ。って言っても今月あんまりバイトしてなかったから手持ち少ないのよね…私の行きつけの所に行こう?」

 

 ファーストフードのチェーン店に真実を連れていく。

 「ここって…ごめん俺初めてで注文の仕方分からないんだけど、どうするの?」

 「!?」

 何!?

 これだけ有名で若者御用達の店に来たこと無いの!?

 …正直驚いた…。

 とりあえずメニューを見ながら適当に真実の分も注文して支払いを済ませる。


 「真実、はいこれ。」

 「浅川、ありがとう。」
 
 真実と席に着く。

 「ああ、これ良くTVでやってるやつだな」

 真実はハンバーガーに齧り付いた。

 「んん…これはジャンクな…でもうまい…。」

 真実がハンバーガーを食べるのを眺める。

 一体どんな育ち方したら…。

 ついそう思ってしまう。




 「浅川もバイトとかしてるんだな。」

 ふと真実がそう言う。

 「ん…まあね。うち母子家庭だしあんまりお金がないし、母だけに負担かけれないしね…。まあ1番の理由はお小遣い欲しさなんだけど。」

 恥ずかしくなり笑った。

 「透も浅川も…偉いな…。」

 「?偉くなんて無いわよ。真実みたいに勉強できるわけでも無いし。」

 そう返すと真実は微笑んだ。

 「俺も…やるべきことをしないとな…。

 

 
 「浅川、ご馳走様。本当ありがとな。」

 「ううん、私こそ休みの日なのに…ありがとね。」

 真実が家の前まで送ってくれた。

 「来週図書館休みだけど、浅川が良けりゃ家に来いよ。泉達居てウザいかもしれないけど。」

 「!?良いの?」

 「ああ。構わないぞ?」

 「じゃあ行くっ!!」

 真実はふっと笑って帰って行く。

 「シンジ、またね!」

 そういうと手を振ってくれた。

 …本当イケメンだよな…。

 真実の背中を見送って家に入った。


 
 

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