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気のせい?
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「透……今日気をつけて行ってきてね?」
月曜の朝、不安げな顔で泉が抱きついてきた。
「うん、だいじょぶだよ。それより泉の方が……気をつけて仕事に行っておいで」
泉を抱きしめながらそっと背中を撫でた。
相変わらず細い身体だ。
別れがたかったが、何とか泉の身体を離す。
これが今生の別れってわけでもないはずなのに、どういうわけか無性に寂しい気がした。
「……やっぱり今日休んじゃおうかな……」
そんな事を言い出した泉……何か感じていたのだろうか?
「心配要らないよ。せっかく準備して綺麗にしたんだから行っておいで。何か旨いもの作って泉が帰ってくるの待ってるから」
そう言うと泉は苦笑した。
「分かった。じゃあ行ってきます」
鞄を背負った泉を玄関から送り出す。
……いつもの平日の光景だ。
洗い物を済ませ、そろそろ浅川さんを迎えに行こう。
そう思い上着を羽織る。
ああ、そういえば来月発売される本の見本が送られてきてたよね……
それを思い出し自室から本を持ち出した。
真実と、泉の両親、じいちゃんの分を鞄にしまった。
出かけるついでに渡してきちゃおう。
玄関に向かおうとするとすずしろが鳴きながら走り寄ってきた。
ニャーン!!
ニャー!!
何かを訴えかけるようにオレに擦り寄ってきたすずしろだったがそろそろでなければいけない。
「ん~、2時間ぐらいで帰ってくるから、帰ってきたら遊ぼうな」
そう言って宥めるが中々言う事を聞いてくれない。
……かわいいけど、参ったなあ……
いつも以上に引き留めの強いすずしろ……どうしたものかと辺りを見渡すと猫じゃらしが視界に入った。
「よし、じゃあすずしろこれ持ってこいしようか?」
そう言って猫じゃらしを振ると見事に食いついてくれた。
一生懸命目で追いかけて、頃合いを見計らって遠くに投げる。
一目散に追いかけ始めたすずしろを置いて玄関から素早く出て鍵を掛けた。
……すずしろごめん!!
少し後ろめたさを感じながら浅川さんを迎えに行く。
★
「透クンおはよう……今日はよろしくね」
どことなく元気のない浅川さん……やはり昨日のことが気にかかっているようだ。
「浅川さん大丈夫?ちゃんと寝れなかったの?」
そう聞くと浅川さんは困ったように笑う。
「まあ帰ってきたらいくらでも寝る時間あるし大丈夫よ」
浅川さんを後部座席に乗せ、車を走らせる。
泉のお義父さんの友達がやっている病院に浅川さんも通っているらしい。
もう何度も行っている行き慣れた場所だ。
適当に雑談をしながら、でも細心の注意を払いながら運転する。
20分程で無事に浅川さんと病院に着くことができた。
車を降りて産婦人科の受付まで一緒に行く。
受付を済ませた浅川さんはオレにここまでで、あとは大丈夫だと言った。
「待ち時間長くなりそうだし、ここじゃあ居づらいでしょ?本当のパパさんでもないのに……終わりそうになったら連絡するわよ」
そう言われてしまう。
……たしかに周りを見ると女の人ばかりで居づらい。
「ん、でも……付き添いなのにこれじゃあ」
そう言いかけたが浅川さんは苦笑した。
「大丈夫よ、ここ病院だし何かあったらそれこそすぐ診てもらえるし。透クン他にも用があるんでしょ?」
そう押し切られて、結局病院を後にした。
少なくとも2時間くらいは掛かると言われ、それならまあ……せっかくなので泉のお義母さんとじいちゃんのところにできたばかりの本を渡しに行った。
お義母さんもじいちゃんも凄く喜んでくれて、本の発売日にお祝いをしようとまで言ってくれてなんだか照れくさい気持ちになった。
……でも喜んでくれて良かったな。
そう思いながら近所の本屋で資料になる本探しを始める。
あっという間に2時間が経ち、そろそろ病院に浅川さんを迎えに行くことにした。
まだ連絡は無かったが、少しくらい待つのなんか平気だった。
むしろ浅川さんを待たせたくないし……
何冊か選んだ本を購入して駐車場に向かう。
途中で誰かの視線を感じた気がしたが、辺りを見回しても知り合いは居らず、気のせいかと思い車に乗り込んだ。
★
無事に浅川さんの病院を終え、帰りに買い物をして帰ってくる。
「浅川さん、晩めし作るの大変だろうし夕方ウチに食べにおいでよ。一人分だけ作るのもアレでしょ?」
そう言って誘うと浅川さんは喜んでくれた。
泉は今日19時位になったら帰ると言っていたし、3人で夕飯を食べることにした。
一度部屋に戻るという浅川さんと別れて家に帰る。
玄関の鍵を開けるとすずしろがウニャウニャと文句を言いながらも迎えに来てくれた。
「すずしろごめんね。もうきょうは出掛けないから遊ぼうな」
そう言いながらすずしろを抱き上げる。
その後しばらくすずしろと遊んで、おやつをあげると満足してくれたようで、キャットタワーに登ってくつろぎ始めた。
さて、今日は夕飯は少しだけ手を掛けて泉が喜んでくれそうなものにしよう。
朝不安そうな顔をしていた泉……
早く安心させてあげたいな……
そう思いながら夕飯の準備を始めた。
月曜の朝、不安げな顔で泉が抱きついてきた。
「うん、だいじょぶだよ。それより泉の方が……気をつけて仕事に行っておいで」
泉を抱きしめながらそっと背中を撫でた。
相変わらず細い身体だ。
別れがたかったが、何とか泉の身体を離す。
これが今生の別れってわけでもないはずなのに、どういうわけか無性に寂しい気がした。
「……やっぱり今日休んじゃおうかな……」
そんな事を言い出した泉……何か感じていたのだろうか?
「心配要らないよ。せっかく準備して綺麗にしたんだから行っておいで。何か旨いもの作って泉が帰ってくるの待ってるから」
そう言うと泉は苦笑した。
「分かった。じゃあ行ってきます」
鞄を背負った泉を玄関から送り出す。
……いつもの平日の光景だ。
洗い物を済ませ、そろそろ浅川さんを迎えに行こう。
そう思い上着を羽織る。
ああ、そういえば来月発売される本の見本が送られてきてたよね……
それを思い出し自室から本を持ち出した。
真実と、泉の両親、じいちゃんの分を鞄にしまった。
出かけるついでに渡してきちゃおう。
玄関に向かおうとするとすずしろが鳴きながら走り寄ってきた。
ニャーン!!
ニャー!!
何かを訴えかけるようにオレに擦り寄ってきたすずしろだったがそろそろでなければいけない。
「ん~、2時間ぐらいで帰ってくるから、帰ってきたら遊ぼうな」
そう言って宥めるが中々言う事を聞いてくれない。
……かわいいけど、参ったなあ……
いつも以上に引き留めの強いすずしろ……どうしたものかと辺りを見渡すと猫じゃらしが視界に入った。
「よし、じゃあすずしろこれ持ってこいしようか?」
そう言って猫じゃらしを振ると見事に食いついてくれた。
一生懸命目で追いかけて、頃合いを見計らって遠くに投げる。
一目散に追いかけ始めたすずしろを置いて玄関から素早く出て鍵を掛けた。
……すずしろごめん!!
少し後ろめたさを感じながら浅川さんを迎えに行く。
★
「透クンおはよう……今日はよろしくね」
どことなく元気のない浅川さん……やはり昨日のことが気にかかっているようだ。
「浅川さん大丈夫?ちゃんと寝れなかったの?」
そう聞くと浅川さんは困ったように笑う。
「まあ帰ってきたらいくらでも寝る時間あるし大丈夫よ」
浅川さんを後部座席に乗せ、車を走らせる。
泉のお義父さんの友達がやっている病院に浅川さんも通っているらしい。
もう何度も行っている行き慣れた場所だ。
適当に雑談をしながら、でも細心の注意を払いながら運転する。
20分程で無事に浅川さんと病院に着くことができた。
車を降りて産婦人科の受付まで一緒に行く。
受付を済ませた浅川さんはオレにここまでで、あとは大丈夫だと言った。
「待ち時間長くなりそうだし、ここじゃあ居づらいでしょ?本当のパパさんでもないのに……終わりそうになったら連絡するわよ」
そう言われてしまう。
……たしかに周りを見ると女の人ばかりで居づらい。
「ん、でも……付き添いなのにこれじゃあ」
そう言いかけたが浅川さんは苦笑した。
「大丈夫よ、ここ病院だし何かあったらそれこそすぐ診てもらえるし。透クン他にも用があるんでしょ?」
そう押し切られて、結局病院を後にした。
少なくとも2時間くらいは掛かると言われ、それならまあ……せっかくなので泉のお義母さんとじいちゃんのところにできたばかりの本を渡しに行った。
お義母さんもじいちゃんも凄く喜んでくれて、本の発売日にお祝いをしようとまで言ってくれてなんだか照れくさい気持ちになった。
……でも喜んでくれて良かったな。
そう思いながら近所の本屋で資料になる本探しを始める。
あっという間に2時間が経ち、そろそろ病院に浅川さんを迎えに行くことにした。
まだ連絡は無かったが、少しくらい待つのなんか平気だった。
むしろ浅川さんを待たせたくないし……
何冊か選んだ本を購入して駐車場に向かう。
途中で誰かの視線を感じた気がしたが、辺りを見回しても知り合いは居らず、気のせいかと思い車に乗り込んだ。
★
無事に浅川さんの病院を終え、帰りに買い物をして帰ってくる。
「浅川さん、晩めし作るの大変だろうし夕方ウチに食べにおいでよ。一人分だけ作るのもアレでしょ?」
そう言って誘うと浅川さんは喜んでくれた。
泉は今日19時位になったら帰ると言っていたし、3人で夕飯を食べることにした。
一度部屋に戻るという浅川さんと別れて家に帰る。
玄関の鍵を開けるとすずしろがウニャウニャと文句を言いながらも迎えに来てくれた。
「すずしろごめんね。もうきょうは出掛けないから遊ぼうな」
そう言いながらすずしろを抱き上げる。
その後しばらくすずしろと遊んで、おやつをあげると満足してくれたようで、キャットタワーに登ってくつろぎ始めた。
さて、今日は夕飯は少しだけ手を掛けて泉が喜んでくれそうなものにしよう。
朝不安そうな顔をしていた泉……
早く安心させてあげたいな……
そう思いながら夕飯の準備を始めた。
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