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3章・ヒロイン大暴走

16話

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私、名前はメイリ・マスクリートといいますの。
前世は大学生で、俗に言う陽キャな人生を送ってましたの。
ですけど、元彼に刺されてあっけなく死んじゃいましたわ。あの人があんなにも想っていたなんて、私ってば罪な女ですわね?顔もそんなにかっこよくありませんでしたし、相性も悪かったのでポイってしましたけども。
え?私がなぜこの世界を知っているのか?
それは地味で冴えない私の姉が作った小説の世界だからですわ。ゲーム内容も知らなかったですし、テンプレ?も意味がわからなくて、本当につまらない本でしたけど。
でも私、優しいからちゃぁんと読んであげましたの。その後あの本をどこに置いたか忘れてしまいましたけど。多分今頃は埋め立て地にでもあるのではなくて?
そんな事より、神様は私の善行・・をちゃんと見ててくださったのですわ!だからこそこの世界に転生して貰えたのですから。

ふふ、さぁ待っていなさい!攻略対象者達!私が貴方たちの闇を取り除き、心の穴を埋めて差し上げますわ!


「まずは攻略対象者達に存在を認識して貰わなくてはいけないわね」
でも、誰も私をいじめてきませんの。私が可愛いあまりに自然と嫉妬されて虐められるかと思いましたのに、、、いえ、むしろ可愛すぎて嫉妬さえ起きないということですの!?
あら、、、そういうことなら仕方がありませんわね。
面倒ではありますが、自分で細工を作りましょう。


「マスクリート嬢!また君か!!」
「誤解ですわ先生!私は被害者で、これは私に嫉妬したどなたかの犯行ですの!!」
「自作自演だという証拠と情報は集まっているのだよ!!言い逃れはできんぞ!まったく!教科書も制服もタダではないんだ!なぜ破いたり汚したり、挙句の果てには池や噴水に捨てるなど、、、私には君が何をしたいのかがさっぱりだ!」

小細工は失敗してしまいましたわ。
朝早くに登校するか、放課後の遅い時間まで残り、作成したり仕掛けたりしていますのに必ず誰かが見ていらっしゃるんですもの。

私のようにあまりにも見目が良いと目立ってしまうのですわね。私ってば本当に罪な女ですわ。

でも小細工が通用しないのですから別の手を考えなくては行けませんわね。
、、、そうですわ!悪役令嬢がいるではありませんか!ゲームの主人公の、、、ナヴィリア・アスタロンだったかしら。
彼女が全く出てきませんわね、バグかしら?彼女のせいで私が先生に怒られなくてはいけなくなりましたのよ!きっちり罰を与えなくてはいけませんわね!
でもその前にちゃんとシナリオ通りに動いてもらわなくてはダメね。えぇと、対面するのは廊下で転ばされる事と階段から突き落とされること、、、学園ではこれくらいしかありませんわね。
まずは廊下で転ばされる方をやってしまいましょう。順序なんて知りませんわ。思いついたらやるだけですの。


「なんで!なんで!なんでですの!!!」
失敗しましたわ!!あの悪役令嬢!!何様ですの!?人通りの多い廊下でタイミングよく・・・・・・・目の前で転びましたのに!誰も心配して駆け寄らない所かあの女が駆け寄ってきましたの!!貴方が転ばせたのだから寄って来ても無駄でしょう!?
でも私は天才ですから、近寄ってきたのを利用してさらに糾弾しましたの。その後ろにレオンがいたのは予想外でしたけれど。
認識していただくチャンスですもの、あの女が小説の中でいかに醜い女なのかをしっかり語って差し上げましたの。
でも殿下は褒める所か「それは間違いだね、まず最初に言っていた、、、」と私の話を訂正し始めましたの!!
そうしたらあの女が私のことを庇い始めましたわ!私を利用して好感度をあげようということですの!?そうはさせまいと声を出そうとしたらアイザックとユーリまで駆けつけましたの。
チャンスだと思いましたのに、あの女を連れて直ぐに居なくなってしまって、私は置いてけぼりですわ。
誰も私を心配せず、見ないふりをして立ち去っていきますし、ちらりと連れてかれてるあの女を見れば無表情でこちらを見ていましたの。きっと心の中では私が失敗して喜んでいるのでしょう。腹が立ちますわ!!

こうなったら階段から突き落とされる方もさっさとやってしまいましょう!
攻略対象者達に近づくには私が虐められている可哀想な令嬢である必要がありますもの!


またしても失敗しましたの!!
どうしてあの女の傍には人が集まるのかしら!!
あの女はそんなに爵位が高い訳でも・・・・・・・・・ないくせに、取り巻きが沢山居ますのね!脅されているのかもしれませんわ!きっとそうに違いありません!
今回もあの女が庇ったせいで失敗しましたの!
あの女の目の前で階段から転がり落ちましたのに、床に落ちる寸前にあの女の魔法で普通に着地させられましたわ。無傷でしたの!でも諦めませんでしたわ!
「ナヴィリア様!どうして私を突き落としましたの!?私は貴方に何かしましたか、、、?」と泣いてみましたが、反応がありませんでしたの。
顔を上げたらそこにはあの女はおらず、いつも私を叱る教師が真っ赤な顔で立っていらしたのよ!
「またお前か!!何度騒ぎを起こせば気が済むんだ!!」
「まぁ先生!酷いですわ!私、今階段からナヴィリア様に突き落とされましたのよ!」
「何を言うか!アスタロン嬢はお前を助けたと皆が言っているではないか!!あの方がお前を助けるのにわざわざ突き落とす必要などないだろう!いいか、マスクリート嬢、お前はアスタロン嬢の温情で未だにここに通えているんだぞ!彼女を敵に回すんじゃない!わかったか!?」
あの教師が何を言っているのかさっぱりですわ。
あの女は敵、攻略対象者達の毒にしかなりませんのよ。辺境伯の令嬢でありながらこの学園を牛耳っていらっしゃるのが良い証拠ではなくて?

もう、こんなに失敗するのなら小細工などまどろっこしいことはやめますわ!
私の美貌があれば小細工などなくても、皆私に落ちますものね。
さぁ片っ端から声をかけますわよ!
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