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3章・ヒロイン大暴走

24話

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「おかえり、ナヴィ、、、随分とボロボロだね?」
「え?どこか破けてますか?」
こちらに戻る前に怪我とか服の汚れとかしっかりチェックしましたけど、見逃しが、、、?

「見た目じゃなくて精神的な方の話だ。ゲッソリしてるぞ。さて、ナヴィリア。誰かもわからん老婆と男を何も言わずこちらへ寄こしたかと思えば、殿下にやめろと言われていたにも関わらず、際限なく魔法使いまくった言い訳はあるのか?」

対決が終わり、レオン様達が待機している場所に戻りました。
どこかホッとしたような顔のレオン様と、同じくホッとしていても照れくさいのかツンツンとしてるアイザック様が出迎えてくれました。素直じゃないですね。
後ろには捕らえられて喚くヒロインと男が。
それマスクリート嬢ですよ、と伝えると驚いて2度見してました。びっくりビフォーアフターですよね。

あ、魔王さんとの対決は勝てました。
やっぱり光魔法、聖魔法に弱いらしく、結界と極滅魔法で逃げられないように周囲を囲い聖魔法で結界内を聖域にしたらあっさり滅びました。
、、、恐らく、ですけど。
何だかあまりにもあっさり倒されすぎて、違和感が凄くて。何かしらの力を使って逃げたとしか考えられないんですよね。
魔力マークしておけば良かったな、と少し後悔しています。

「あ、殿下、隣国に“魔王が現れた為対応で国境を騒がしくしてしまって申し訳ない”みたいな事を言っていただけると。」
「、、、うん、わかったよナヴィ。父上に頼んでおくね」
魔王!?そんなまさか!?と後ろがざわつく中、さすがレオン様。少し間はありましたが何事も無いように返事をされ、すぐに連絡鳥で陛下に連絡を取っていました。

「ありがとうございます。あ、それと誰か本が1つ入る箱持ってませんか?魔王召喚した禁書を封印しておきたいので、割と頑丈なものが頂けたら有難いんですけど、、、」
「禁書?しかも魔王の?まだ取りこぼしがあったのか?」
「いえ、取りこぼしではなく新たに作られたものかと」
「新たに、、、そう、また魔族に魅入られた者がいたんだね」
「恐らく。そこに居る男も含め、要塞を根城にしていたもの達がそれにあたるかと。」
「もし全員が禁書を作っていたとしたら要塞のあちこちに散らばっているわけだ」
「そうですね、回収しますか?」
「お願いしてもいいかな?」
「承知しました。」

という事でピー〇城探検です。気分はキノ〇オ隊長です。
お邪魔しまーす、と入ってみれば中までピー〇城でした。この床、丸い柄の所が開いて下に行けるですよね。流石にそこまで一緒は無いですよねー

と思いながら若干の期待を込めて魔力流して踏んだら開きました。はい、ありがとうございます。オタク大歓喜です。五体投地していいですか?

中を覗いてみると、地下に繋がっており、随分と暗く何だかおどろおどろしい雰囲気が漂っています。

光魔法で照らしながら進みます。ドラ○もん歌っていいですかね、ちょっと雰囲気が暗すぎて。
という事で魔法で声にエフェクトつけながらドラ○もんを歌い、ルンルンと歩きながら少し開けた所にたどり着きました。
この地下までそっくりそのままのようでいくつかの道の奥にそれぞれに扉がありました。

うちのひとつに入ると眠りこけている魔族が。
、、、仮眠室?

サクッと浄化魔法で弱らせ拘束し、次の扉へ。
ここでも魔族が居ましたが、何故か私を見て大喜びしながら号泣し始めました。なぜ。
訳を聞くとずっとここに閉じ込められて禁書のもとを作らされていたとの事。魔族の寿命を考えるとざっと200年近くは地下にいたと言うことになります。
、、、このピー〇城が建てられたのはもう少し後です。この要塞を建てた彼女は人格者ですし、建てる際にここを見逃す訳がありません。

と、いうことは。
ひとつの可能性に気付き、若干の焦りを感じながら手当たり次第に扉を開けて行きますが中にいるのは魔族ばかり。人間が1人もいませんでした。

そして先程までは気づかなかった、息苦しさ。
これは魔の森で感じる瘴気による苦しさとよく似ていて。
やっぱり、信じたくはありませんが。
「、、、ここって、もしや魔族国?」

いつ、転移魔法を使われていたんでしょうか。

取りあえず戻る方法を考えなくては。と思いくるりと後ろを向くと、目の前には先程手当たり次第にドアを開けた際にいた魔族か列を成していました。なぜ。

「おい人間!我らを貴様の国に連れていけ!」
「え、嫌です」
「な!人間のくせに偉そうに!!今ここで殺してしまおうか!!」
「できるものなら。どうぞ」
「貴様、、、!!」

と、食ってかかってきた魔族さんを浄化で弱らせ拘束。いっちょあがり、です。
「あいつで無理ならもう無理だぞ。どうするんだよ、やっとここから抜け出せると思ったのに」
「どうもこうもない、諦めるしかないだろう」

コソコソと話しながら悲観してる魔族さん達がなんだか不憫に見えてしまったので訳を聞くと、やはり最初に会話した魔族さんと同じく随分長い間閉じ込められて禁書の素を作らされていたらしく。外に出たくとも封印が掛けられているがために外に出ることも叶わずずっとここで過ごしているんだそうで。

あれ、素の説明しましたっけ?してないですよね、すみません。
素というのは契約や召喚に使用する本に植え付ける、扉の鍵みたいなものですね。扉は魔法陣です。

それが作れるなら全部魔族が作ればいいのに、となるのですが。神の意思なのかは分かりませんが魔族は禁書、すなわち自分達を召喚させるための本を作る事が出来ないんです。

魔法陣が書けないだったか、人間の本が読めないだったか、、、何かしらの作用でどうしても出来ないらしく。なので、人間を捕まえては禁書の素を本に植え付け、魔法陣を書かせて禁書を作らせる。が常套手段でした。

私が生まれる少し前に、父である剣聖ガディアスが禁書を作らせていた根城を叩き潰してまわり、母である大賢者ファミアが禁書を回収したり、魔族を国に入れない魔法陣や結界を作り新たに作らせないようにしたり。色々と行っていた為今は禁書がこの国に存在しなくなったはずなんです。
まぁ、なぜあの男が持っていたのか等はユーリ様辺りが聞き出すと思うので報告待ちですね。
とりあえず私は帰る手段を見つけないとですね。
先程手当たり次第に扉を開けた際に探しましたが、転移魔法陣は見当たらず、私が来たはずの道も魔力を流しても開かなくなっていました。

なので、彼らが言う出入口の封印を解いてみようかと案内してもらいました。
扉の取っ手に鎖がぐるぐる巻きになっており、その鎖がなんだかとても禍々しく、近寄るだけで瘴気の影響で頭痛や吐き気、呼吸の苦しさが増します。これはさすがに、瘴気に耐性がある魔族でも辛いらしく、私が近寄っても無反応なのをドン引きしながら見守っていました。いや、顔に出てないだけでめちゃめちゃ苦しいですよ、これ。

この扉は瘴気で封印されているなら浄化すれば良くない?という事で脳筋で最上級の浄化を重ねがけしたら鎖がボロボロと崩れ扉が開きました。力こそパワーです。
、、、このネタわかる人います?

後ろでさらにドン引きされている気もしますが無視して扉を開きスタスタと先に進みます。
ここが地下なのは向こうピー○城と変わらないみたいですね。他の魔族の気配もなく、地上に出ました。
そのまま城の外へ出ると見た目がなんとクッ○城。こっちは敵城ですか。

ぞろぞろと後ろを着いてきた魔族達は外に出た瞬間に歓喜でその場に崩れ落ち大号泣してます。
騒がしくしているせいか魔獣がわらわらと寄ってきました。
、、、いや、先頭の私に見向きもせずに彼等の方ばかりを狙ってますね。声につられたのではなく、もとより彼らが抜け出したら魔獣で城に戻そうとしたか、はたまた討伐しようとしたか。

どの道、この程度の魔獣なら直ぐに討伐できるので、彼等の感動の時間を邪魔させないようにサクッと倒し、アイテムボックスに収納していきます。
これらはあとで解体して素材として売ります。オタ活に使う貴重な収入源ですね。

、、、瘴気に満ち溢れた魔族国にいる魔獣ならまた生態が違ったりするんでしょうか。
それならば売らずに研究に回した方が良いですね。アイザック様喜ぶかな。
あ、アイテムボックスは陛下に見て見ぬふりしてもらっている魔法の1つです。
バレないように使っていたのですが、あの人たちの反応的に恐らくバレてますね。はい。お説教無くて良かった。

そろそろ3桁に突入するんじゃないかという程の魔獣を倒した頃、号泣しながらも魔族の1人が私に礼を述べてきました。いえいえ。あ、そこ危ないですよ。ちょっとしゃがんでてくださいね。

魔族の人達を庇いながら、サクサクと最後の一体まで倒しきり、安全を確保した所でこれからどうするのかを尋ねたらこの国に居場所はないので、人としてどこかで村を作りひっそりと暮らすとのことでした。

「でしたら私の領地に来ますか?」
王の所へ・・・・か、受け入れてくれるのならば喜んで伺わせて頂こう」
後ろにいる魔族さん達も揃って頷きキラキラとした目でこちらを見てきています。
「了解しました。受け入れ態勢は整えておきます、、、それと、王は反逆だと思われてしまうので辞めてくださいね。」
「では主と呼ぼう。」
「、、、分かりました、それでいきましょう」
これ以上は譲らないという絶対的な意志を感じたのでこちらの負けです。
魔族は自身より強い者を主と定め崇め奉ると聞いていたので、あまり無理に対等にいようとしても彼らにとっては苦痛だと思うのでここが妥協案ですね。

「先程から話してくださっている貴方がリーダーで間違いないですか?」
「あぁ、魔族国の元王太子のリュードだ。」
よろしく頼む、と手を差し出し挨拶をされました。
リュード、って裏ルートのラスボスでは、、、?

「そうですか、ナヴィリア・アスタロンです。」
よろしくお願いします。と差し出された手を握り返しリュードさんの顔を見れば硬直して固まってました。
暫くして再稼働したと思ったら「その、、、ナヴィリア嬢の先祖にガヴァルというものはいないか?」
「おりますよ」

アスタロンの先祖であるガヴァル・アスタロンは武術も魔術も王国1の腕を持っており、余りの強さに当時の王子に嫉妬され、辺境に追いやられたものの寧ろ最高の土地ではないか!とウッキウキで魔の森を無双してた人です。はい。
1度魔族国が進行してきた際、最初に辺境に来ましたがガヴァル様が追いやって、なんなら追いかけて魔族国が今後セルペンス国に侵略目的で来ることを禁止する条約結んできたそうです。
国では勇者扱いをされ、当時は騎士爵でしたが叙爵するべきだという声しか聞こえず公爵にでもするか、という話が来たそうです。
ただ、ガヴァル様は「そんななんのうまみもない話を受けたくは無い」と一蹴したそうです。さすが勇者。
ですがアスタロンの血を1代限りの騎士爵位のままで終わらせる訳にはいかない、と奮闘した王城の人達の必死の説得の末、辺境伯で落ち着いたそうで。

魔物に嬉々としてかかっていくのはこういう事ですね、ガヴァル様の血が濃すぎるのかと思われます。はい。

「アスタロンの先祖が何か、、、?」
そんな歴史書でしか知らない先祖を思い返しながら返事をすると
「いや、我らが地下に閉じ込められただけで済んだのもガヴァル殿のお陰でな」
との事。
魔族国が進行をして、ガヴァル様に返り討ちにあった際にチャンスだと思い、反旗を翻したそうで。
魔王の圧倒的な力には適わずすぐに取り押さえられてしまったものの、そのタイミングでガヴァル様が乗り込んできた為にとりあえずで辺境の城の地下に押し込まれ、その際に禁書の素を作るという契約を一方的に結ばれ今に至るそうです。

とりあえずで、という事はそのまま魔王がガヴァル様に討伐されてしまったために罰も定まらず、許可も無いために外に出すわけにもいかず、ずっとここにいた、ということですか。

「ガヴァル殿の子孫ならば信頼ができる、領地に住まわせてもらうだけでなく、我々で辺境の守備を担おうではないか。」
「あ、それは大丈夫ですよ」
なんせ、人材育成以外でそういう人を迎えると自分の出番が減る、と不満がる人達の集まりなので。

「ふむ、ならば魔石はどうだ?」
「魔石、ですか?」
「魔族は魔獣と違い魔石を自在に作ることが出来る。」
と、ドヤ顔のリュードさん。
魔獣は体内に核として魔石を作りますが、魔族は核ではなく魔法の媒体として生成できるそうで。

これは、、、オタ活に使えますね。
「、、、交渉成立です。」にっこりと笑って手を差し出すと
「!!、、、そうか、よろしく頼む。」
と、驚いたように目を見開いたあと満面の笑みで手を握り返してくれました。
そんな驚かれるなんて、、、私の笑顔が気持ち悪かったんですかね、顔引きつってました?

さぁではあとは国に帰る為に魔法陣を見つけるか、魔王さんを倒すかをしなくては。

ということで、リュードさん達とは1度別れ、乗り込みましたクッ○城。流石に中にマグマはなかったです。
そしてやはり生きてました魔王さん。
進んで行って、いちばん奥の大きい扉開けたら居ました。どうやら治療中だったみたいで、医師と薬師と、オロオロしている執事らしき魔族が居ました。
しかめっ面して真ん中にいるのが魔王さんですね。あ、、、傷に染みたのか、よりしかめっ面に。

そんな光景を眺めていると、私が来たことに気づいたらしいオロオロ執事さんが「へっ、陛下!!勇者が!!」
えっ、私勇者認定です?と驚きながらもこんにちはーと挨拶をしてみると攻撃しないことに拍子抜けしたのか、執事がポカンと固まりました。

「戦う気はありませんよ、魔王さん負傷してますし」
「、、、何をしに来た」
「いえ、呼ばれたので来ただけですが。」

「確かに、我が呼びはした。したが、、、来るのが早すぎるのではないか?あの封印は歴代最強の魔王が施したものだぞ」
「いえ、確かに硬かったですけど浄化魔法使ったのでそんなに苦労はしませんでしたよ。」
苦労しなかった!?そんな馬鹿な!?と叫ぶ執事さんを後目に治療を続ける医師と薬師。そしてしかめっ面の魔王さん。少し痛いぞ、と医師に文句を言っています。
執事さんは扱い雑なんですね、どんまいです。

「では、強さが次に強いとされていた魔王が施した改造魔獣は?」
「百体ほどの魔獣でしょうか?個体自体はそんなに強くはなかったので、30人ほどを守りながらでも何とかなりましたよ」
「、、、魔族でも一体を10人がけでボロボロになりながら倒すという魔獣をそんなに強くない、か。」
我らよりも化け物だな。と呟かれた魔王さん。失礼な。
「30人、といったな。それは恐らく叔父上達のことだろう」
「リーダーさんがリュード、と名乗っていましたよ」
「あぁ、間違いない、叔父上だな」
「彼らになにか処罰すると言うならば私が出ますが。」
「いや、むしろ連れて行って貰えるとありがたい。そのためにお前を呼んだのだ」
「、、、理由を聞いても?」
「叔父上は父上の暴走をいつも止めていた。あの場所は父上から反旗を翻した叔父上たち優秀なものを守るための場所だ。父上が討伐され、やっと落ち着いたからと封印を解こうとしたのだが、あまりにも先代の力が強く外側からでも開けることが出来なかった」
衝撃事実がでてきました。
つまり、閉じ込められてた、と言うよりは殺されないように隠されていた、ということですか。
いえ、開けられなかったので、結果閉じ込められていたわけですけども。
リュードさんと魔王の意見が食い違っている、という事は何かしらすれ違いがあるんですかね?

「叔父上達にはもう心労をかけずに穏やかに暮らしていてもらいたいのだ。」
だから頼む、とお願いされました。

「もとより引き受けるつもりでしたよ、その交渉もここに来た一つの理由ですし。」
「他にも理由があると?」
「あ、家に帰してもらいたくて」
「、、、すまん」

気まずそうにそぉっと視線をそらされました。
「戻せない、と?」
無言で肯定をする魔王さん。
魔王さんは禁書で呼び出され、帰巣本能で帰ってきてるので、こちらへ呼び寄せることは出来ても禁書無しで向こうへ送り出すのは出来ないそうです。
「そうですか、では自分でなんとかしなければいけませんね。」

「、、、城にある召喚魔法の書架になら何か記載があるやもしれん。使ってみてくれ」
「ありがとうございます」

ということで、オロオロ執事さんに案内してもらいながら図書館に来ました。
取り敢えず、魔王さんの召喚に使う魔法陣を見せてもらうと、想像以上にシンプルだったので。
「、、、作れそうですね」
「え?つ、作れる、ですか?」
またもやきょとんとしてるオロオロ執事さん。

転移魔法の応用で、知らない場所でも座標を既に書き込んだ魔法陣ならば問題なく使えそうです。
ということで、50人くらいなら余裕で入れそうな紙と魔法陣を書く為のペンを執事さんにお願いし、リュードさんと別れた場所へ戻って、紙を広げてそこに魔法陣を書き込んでいきます。

リュードさん達と何故かいた魔王さんが不思議そうに眺めている視線を背中で受け止めながら完成しました。魔法陣。
「では、お邪魔しました。」
と、リュードさん達を引き連れ魔の森へ転移しました。はい、帰還です。ただいまー。
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