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プロローグ
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令和4年2月27日午前6時頃、自宅アパートで寝ていたところ警察が訪ねてきた。穏やかな訪ね方ではない。玄関ドアを激しく叩きオレの名前を何度も連呼しながら、
「おはようごさいます、警察です!玄関ドアを開けてー!」
と、叫ぶように呼んでいる。
━━バカは汗水流して働くか、冷や汗をかいて稼ぐかの二通りしかない━━
この言葉はオレの兄貴分が昔教えてくれた言葉だった。兄貴分というのは、昔出入りしていたヤクザの事務所で出会い、そこから縁を持った人間だ。
オレはこの言葉通り、冷や汗をかいて銭を稼ぐ方を選んだ。これまで様々な裏稼業で生計を立ててきたが、この頃のオレは泥棒を主な生業《なりわい》としていた。まあ泥棒は正業ではないから生業という言葉が正しいかどうか分からないが、それだけでひと月100万円以上は平均して稼いでいたと思う。それよりも多い時もあれば少ない時もあったが、いちいち数えちゃいない。あればあるだけ遣い、無くなればまた盗みに行く。それが泥棒稼業というものだろう。
泥棒と一言で言っても、世の中には様々な泥棒がいる。万引き、空き巣、スリ、ノビ、ひったくり、自動車盗…etc. 泥棒によって盗むものや盗み方、スタイルは様々だ。
オレがどんな泥棒だったのかというと、仲間数人と、主に建築資材として使われる、銅線・銅管・真鍮《しんちゅう》・アルミ・ステンレスなどの非鉄金属専門の窃盗グループをやっていた。他にも、エアコン(内外機)・給湯器・カーバッテリー・アルミホイールなども狙うこともあった。これらは、スクラップ屋に持っていけば高値で買い取って貰うことができるのだ。
オレらは、それらを狙い昼間のうちに建設関係の会社や現場、置き場、また、車屋や解体屋、そして、一般住宅までにも目をつけて下見をし、夜中に盗み出していた。
この泥棒のことをオレらは通称「パパラッチ」と呼んでいた。多分この呼び方はオレらの間だけでしか通じない、いわば符丁のようなものだ。なぜパパラッチと呼ぶようになったのかというと、目をつけた建設現場などに張り込んでタイミングよく盗み取る姿が、よく有名人に張り込んでゴシップ写真を盗み撮るパパラッチに似ているというところからそう呼ぶようになった。
埼玉県にある自宅アパートを拠点に、主に埼玉県内全域で犯行を繰り返していたが、隣県の群馬県・栃木県・東京都などでも頻繁に犯行を重ねた。一度、青森県まで遠征したこともあった。そのため、はじめ警察が来た時、驚きや嘆きという感情よりも、
(どこの警察が来たんだ!?)
という思いが真っ先に頭に浮かんだ。実際は、埼玉県警察本部刑事部捜査三課、及び、同県警川越警察署・小川警察署合同の捜査員達だった。訪れたのはオレのところだけではない。他の共犯者二名達の所にも同時に捜査が入った。
オレは仕方なく玄関を開けると、捜索差押礼状《そうさくさしおさえれいじょう》を突き付けながら上がり込んでくる警官に家宅捜査を受け、一通り家の中を捜査するとそのまま捜査車両に乗せられ警察署に任意同行となった。この時すでにオレは覚悟を決め腹をくくっていた。
一応の捜査本部というのが小川警察署にあり、共犯者も含め全員バラバラに小川警察署へ連れていかれ、
建造物侵入 刑法130条前段
窃盗 同法235条、60条
と罪名が書かれた逮捕状、いわゆる、フダを突きつけられてそのまま逮捕となった。この時点で、もう言い逃れができないところまで証拠が固められていると分かっていたが、この時はまだ全員否認か黙秘を貫いていた。結局逮捕から拘留満期の20日間の間に全員が事件を認め供述することになるが、共犯者のほとんどが罪を擦り付け合う酷い内容のものだった。
その後、余罪捜索のため五度の再逮捕を食らい最終的にパパラッチの関係で捜査した余罪総数は145件、被害総額4,800万円であった。(オレの事件について書かれた実際の新聞記事 2022年9月1日読売新聞埼玉版朝刊発表)
これらの捜査のために約7ヶ月ほどの時間を要し、その中から最終的に10件の事件について起訴され捜査終結を迎えた。
これだけの件数の事件を起こしておいて起訴されるのはたったの10件だけ?と思う人も中にはいるかもしれない。しかし、窃盗事件に関しては件数が多い場合その全てを裁判で審理するのは事実上不可能で、また全てにおいて公判維持できる程の証拠も揃っている訳ではないため、大きな事件となるもの以外は、起訴事実とは別に余罪総数としてまとめられ、情状面での考慮となる。
しかし、これで終わりではなかった。
パパラッチ事件の捜査終結から一ヶ月ほど過ぎた頃、なんと今度は全く別件の
恐喝
逮捕監禁
詐欺
の罪名で埼玉県警西入間警察署刑事部捜査四課に2度も再逮捕されることとなった。この事件によりすでにパパラッチの件で逮捕されている共犯者一名とオレの兄貴分までもが逮捕となった。結局この事件での起訴は逮捕監禁だけとなり、他の恐喝・詐欺は不起訴処分となった。(まあ証拠がある訳でもないし)
だが、全ての事件の取り調べが終わる頃には逮捕されてから1年が経とうとしていた。その間はずっと留置場での生活である。
逮捕から約1年後の令和5年4月7日、さいたま地方裁判所川越支部において懲役3年の実刑判決を言い渡された。このときの起訴された全ての罪名・件数は、
建造物侵入3件
窃盗4件
窃盗未遂1件
器物損壊2件
逮捕監禁1件
であった。
これから書くことは、主にこれらの事件のあらましや手口、仲間との出会いから騙し合い、裏切り、最後は逮捕されるまでの話である。
執筆する上でとくに気を付けたことは、忠実に書き記すことであり、たとえ話を面白くするためであっても一切脚色はしないこと、話せることはなるべく隠さず事実通り書くということである。個人情報や被害者側の保護、その他権利や法令等を侵害しない限りありのままを書き記す。
これらの事件は、歴史的な大事件でもニュースで話題になった事件でもない。しかし、たがらこそ日常の誰もが遭遇しえる可能性のある非日常であり、なかなか一般人には知りえないリアルな話でもあると思う。つまりこれは、リアルノンフィクションなのである。
※犯罪の手口等は全て事実であり実際に行った事であるが、犯罪を助長する目的は一切ありません。決して真似をしないで下さい。
「おはようごさいます、警察です!玄関ドアを開けてー!」
と、叫ぶように呼んでいる。
━━バカは汗水流して働くか、冷や汗をかいて稼ぐかの二通りしかない━━
この言葉はオレの兄貴分が昔教えてくれた言葉だった。兄貴分というのは、昔出入りしていたヤクザの事務所で出会い、そこから縁を持った人間だ。
オレはこの言葉通り、冷や汗をかいて銭を稼ぐ方を選んだ。これまで様々な裏稼業で生計を立ててきたが、この頃のオレは泥棒を主な生業《なりわい》としていた。まあ泥棒は正業ではないから生業という言葉が正しいかどうか分からないが、それだけでひと月100万円以上は平均して稼いでいたと思う。それよりも多い時もあれば少ない時もあったが、いちいち数えちゃいない。あればあるだけ遣い、無くなればまた盗みに行く。それが泥棒稼業というものだろう。
泥棒と一言で言っても、世の中には様々な泥棒がいる。万引き、空き巣、スリ、ノビ、ひったくり、自動車盗…etc. 泥棒によって盗むものや盗み方、スタイルは様々だ。
オレがどんな泥棒だったのかというと、仲間数人と、主に建築資材として使われる、銅線・銅管・真鍮《しんちゅう》・アルミ・ステンレスなどの非鉄金属専門の窃盗グループをやっていた。他にも、エアコン(内外機)・給湯器・カーバッテリー・アルミホイールなども狙うこともあった。これらは、スクラップ屋に持っていけば高値で買い取って貰うことができるのだ。
オレらは、それらを狙い昼間のうちに建設関係の会社や現場、置き場、また、車屋や解体屋、そして、一般住宅までにも目をつけて下見をし、夜中に盗み出していた。
この泥棒のことをオレらは通称「パパラッチ」と呼んでいた。多分この呼び方はオレらの間だけでしか通じない、いわば符丁のようなものだ。なぜパパラッチと呼ぶようになったのかというと、目をつけた建設現場などに張り込んでタイミングよく盗み取る姿が、よく有名人に張り込んでゴシップ写真を盗み撮るパパラッチに似ているというところからそう呼ぶようになった。
埼玉県にある自宅アパートを拠点に、主に埼玉県内全域で犯行を繰り返していたが、隣県の群馬県・栃木県・東京都などでも頻繁に犯行を重ねた。一度、青森県まで遠征したこともあった。そのため、はじめ警察が来た時、驚きや嘆きという感情よりも、
(どこの警察が来たんだ!?)
という思いが真っ先に頭に浮かんだ。実際は、埼玉県警察本部刑事部捜査三課、及び、同県警川越警察署・小川警察署合同の捜査員達だった。訪れたのはオレのところだけではない。他の共犯者二名達の所にも同時に捜査が入った。
オレは仕方なく玄関を開けると、捜索差押礼状《そうさくさしおさえれいじょう》を突き付けながら上がり込んでくる警官に家宅捜査を受け、一通り家の中を捜査するとそのまま捜査車両に乗せられ警察署に任意同行となった。この時すでにオレは覚悟を決め腹をくくっていた。
一応の捜査本部というのが小川警察署にあり、共犯者も含め全員バラバラに小川警察署へ連れていかれ、
建造物侵入 刑法130条前段
窃盗 同法235条、60条
と罪名が書かれた逮捕状、いわゆる、フダを突きつけられてそのまま逮捕となった。この時点で、もう言い逃れができないところまで証拠が固められていると分かっていたが、この時はまだ全員否認か黙秘を貫いていた。結局逮捕から拘留満期の20日間の間に全員が事件を認め供述することになるが、共犯者のほとんどが罪を擦り付け合う酷い内容のものだった。
その後、余罪捜索のため五度の再逮捕を食らい最終的にパパラッチの関係で捜査した余罪総数は145件、被害総額4,800万円であった。(オレの事件について書かれた実際の新聞記事 2022年9月1日読売新聞埼玉版朝刊発表)
これらの捜査のために約7ヶ月ほどの時間を要し、その中から最終的に10件の事件について起訴され捜査終結を迎えた。
これだけの件数の事件を起こしておいて起訴されるのはたったの10件だけ?と思う人も中にはいるかもしれない。しかし、窃盗事件に関しては件数が多い場合その全てを裁判で審理するのは事実上不可能で、また全てにおいて公判維持できる程の証拠も揃っている訳ではないため、大きな事件となるもの以外は、起訴事実とは別に余罪総数としてまとめられ、情状面での考慮となる。
しかし、これで終わりではなかった。
パパラッチ事件の捜査終結から一ヶ月ほど過ぎた頃、なんと今度は全く別件の
恐喝
逮捕監禁
詐欺
の罪名で埼玉県警西入間警察署刑事部捜査四課に2度も再逮捕されることとなった。この事件によりすでにパパラッチの件で逮捕されている共犯者一名とオレの兄貴分までもが逮捕となった。結局この事件での起訴は逮捕監禁だけとなり、他の恐喝・詐欺は不起訴処分となった。(まあ証拠がある訳でもないし)
だが、全ての事件の取り調べが終わる頃には逮捕されてから1年が経とうとしていた。その間はずっと留置場での生活である。
逮捕から約1年後の令和5年4月7日、さいたま地方裁判所川越支部において懲役3年の実刑判決を言い渡された。このときの起訴された全ての罪名・件数は、
建造物侵入3件
窃盗4件
窃盗未遂1件
器物損壊2件
逮捕監禁1件
であった。
これから書くことは、主にこれらの事件のあらましや手口、仲間との出会いから騙し合い、裏切り、最後は逮捕されるまでの話である。
執筆する上でとくに気を付けたことは、忠実に書き記すことであり、たとえ話を面白くするためであっても一切脚色はしないこと、話せることはなるべく隠さず事実通り書くということである。個人情報や被害者側の保護、その他権利や法令等を侵害しない限りありのままを書き記す。
これらの事件は、歴史的な大事件でもニュースで話題になった事件でもない。しかし、たがらこそ日常の誰もが遭遇しえる可能性のある非日常であり、なかなか一般人には知りえないリアルな話でもあると思う。つまりこれは、リアルノンフィクションなのである。
※犯罪の手口等は全て事実であり実際に行った事であるが、犯罪を助長する目的は一切ありません。決して真似をしないで下さい。
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