ハバナクラブ・モヒートは、あの日のまま

Nuit et Verre

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第4章 あの日のまま、今日のきみに

第18話 君と飲むなら、甘くてもいい

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グラスの底に残った氷が、カランと小さく鳴った。
 その音を聞きながら、私はぽつりとこぼす。

 「ねえ、モヒートって、甘さは好みで変えられるんだよね?」

 律希が軽くうなずく。

 「うん。ラムの量とか、ガムシロップの加減で。
 人によって、さっぱり系が好きだったり、ちょっと甘めが好きだったり。」

 私はグラスを見つめながら、そっと言う。

 「高校のときに飲んだモヒート、ちょっと甘かった。」

 「……そうだったっけ?」

 「うん。たぶん、律希の“こうあってほしい”っていう味だったのかもね。」

 律希が少しだけ恥ずかしそうに笑う。

 「そうかも。……奏には、ちょっと甘いのが似合う気がしてた。」

 その言葉に、胸がきゅっとなった。

 今なら、わかる。
 あのときの彼が、何を思ってその味を選んだのか。
 自分の“好き”を押しつけるんじゃなくて、相手のことを思って、未来を見据えていたこと。

 「もし、また一緒に飲めるなら――」

 私は言った。

 「次は、もう少し甘くしてもいいかも。」

 律希は驚いた顔をして、それからふっと微笑んだ。

 「意外。苦いの、好きだったよね?」

 「そうだね。でも……君と一緒なら、少しぐらい甘くてもいい。」

 彼が返す言葉の代わりに、そっと指先を重ねてきた。

 手の温度が、グラス越しではない距離で伝わってくる。

 あの夏、口にできなかった気持ちが、今ようやく一滴ずつ溶け出している。

 君と飲むなら、甘くてもいい。
 それが、私の“今の気持ち”だ。

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