失われた歌

有馬 礼

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 バルクが1人で起き上がれるようになったのは、それから3日ほど後のことだった。ファミリアと呼ばれている、直立2足歩行するウサギのような魔物が身の回りの世話をしてくれた。
 あの老人もだ。彼は自分を魔物だと言った。しかし、人間としての意識を保ち続けている。
(ここは、何なんだろう…)
 特殊なフィールドで魔物たちを守っている? しかしそのような力は感じない。バルクは魔術師だ。魔術的な力を感じ取る力を、幼いころから訓練で養ってきた。
(そうだ、精霊使い…)
 あの時、火の精霊が「ここは守護者の森だ」と言っていた。思い出した。精霊使いの守護者だ。精霊使いの一族では、ごくまれに生まれる、とびぬけて力の強い者を精霊使いの守護者と呼び、生ける神のように扱うのだと。
(精霊使いの守護者。その精霊が、あれか)
 バルクは身震いした。
 あの時は深手を負って逃げている状況だったし、冷静に考えている余裕がなかったために軽く流していたが、あれが同じ人間の力なのか。恐ろしい。

 人間の魂は風火水土の4つの要素からなる。精霊使いや魔法使いが操ることのできる精霊や術は、そのうちの、強く表れている自身の魂の要素に従う。魔術師として稼ぎたいのならば、他の3つの要素の訓練は必須だが、それでも得手不得手は残る。複数の要素がお互いに拮抗しあう場合には、要素同士が打ち消しあう力が強く作用するので、魔術的な力は持たないケースがほとんどだ。つまり、圧倒的多数の人だ。世の中を構成するほとんどの人はバランス型であり、特殊な力は持たない。だからと言って問題は全くない。人は社会の中で生きるものだからだ。魔術師や精霊使いは、魂の不均衡と引き換えに力を得ている、社会のはみ出し者なのだ。

 別の種類の精霊を2体同時に。通常ではありえない。ありえないが。
(それがあるとすれば、答えは1つしかない。光か闇の要素を持つ者だ)
 すべての要素を同時に持ち、しかもそれぞれが打ち消しあわない場合としては、魂の要素が光である場合と闇である場合だ。4つの要素が正のエネルギーに遷移すれば光に、負のエネルギーに遷移すれば闇になる。
 4つの要素を別個独立に使うくらいのことであれば、バルクにもできる。同時に、というところが問題だ。魔術に限って言えば、同時に別の要素の力を使おうとすると、有効な出力は得られない。これまでに見たことがある精霊使いたちも、その事情は同じだった。
(精霊使いの守護者。生ける神)
 バルクはベッドに身を起こした。ベッドサイドテーブルのベルを鳴らす。
 いつものファミリアがドアを開けてやってきた。戦闘の際の負傷なのか、右耳の先が失われて、少し短くなっているのが特徴だ。
「やあ。実は、君たちのご主人に会わせてもらいたいんだ。精霊使いの守護者に。命を助けてもらったお礼も言わなくちゃならないし」
「…」
 ファミリアはネズミのような甲高い声で何事か言った。彼はバルクの言葉を理解するが、バルクは彼の言葉を理解できなかった。
 ファミリアはしきりに首をひねっている。そのしぐさの意図するところが人間と同じだと仮定すると、相当困っているようだ。無理難題を吹っ掛けられて困っている人そのものに見える。
「あ、ごめんよ。無理ならいいんだ。困らせるつもりはなかったんだけど…」
「…」
 ファミリアはまた何事か言って、振り返りながら部屋を出ていった。「少し待ってくれ」と言っている様子だ。
 
 しばらくして、ファミリアがあの老人、ジュイユを伴って戻ってきた。
「ここの主人に会いたいそうだな。精霊使いの守護者に」
「ええ。命を救ってもらったお礼もまだ言えてませんでしたし…」
「フフ、わかるよ。魔術師ならば、あの力の正体を確かめたいと思うのは当然のことだ。リコが会うと言ってる。ついてきな」
 ジュイユの言葉にバルクは勢いよく立ち上がったが、目眩を起こしてベッドサイドテーブルに手をついた。
「気をつけろ。相当血がなくなったからな。完全に回復するには、思うより時間がかかる」
 ジュイユが肩越しにバルクに言った。

 ほかの部屋へ行くのは初めてだった。内廊下は緩やかな螺旋階段となっていて、多くの魔物たちが自由に行き来していた。鎧をまとった骸骨騎士、亡霊、動物や昆虫に似た魔物たち。また、渡り廊下が空中で複雑に交差していて、迷路のようになっている。
「ここは、何か特殊な力で守られているのですか?」
「特殊…。まあ、そうだな。ここに暮らす魔物たちは皆、代々の守護者に仕える者だ。リコの力に惹かれてやってきた者も多い。ここにいれば、我々魔物を突き動かす、闇の力から逃れていられる。魔物でないほかの生き物のように、心穏やかに過ごせるんだよ」
「…」
「闇の力の影響を受け、常に憎悪をたぎらせているのも、結構辛いものなのさ」
 バルクは何と言っていいかわからず、沈黙した。
「しかし、それが気に食わない連中もいる」
「魔物狩りを生業とする者にとっては、そうでしょうね」
「いや、そんなのは数のうちには入らん。お前さんを追いかけていた連中さ」
「え? しかし彼らは、同じ精霊使いでは?」
「そこが、この問題の根深いところなのさ」
 目的地にはなかなか着かなかった。バルクは息が上がってきて、壁にもたれて休んだ。目が回る。
「傷口はエセ治癒法で塞いだが、血を増やすまでやると寿命を縮めかねなかったのでな。血は自力で増やしてくれ」
「治癒法を使えるのですか。あなたは、僧侶だったのですか?」
「いやいや。エセだと言ったろ。仲間の僧侶に教えてもらったんだよ。いい奴だった。死んじまったがな。世の中、いい奴から死んで、私のような者が残るのさ」
「…」
「元気そうに見えるが、まだ動ける状態じゃなかったか。おい」老人は通りかかった幼虫型の魔物を呼び止めた。「ちょっと、リコの部屋まで乗せていってやってくれ」
(うわぁ…)
 バルクは、案外すべすべして触り心地がいい巨大な幼虫の背にまたがった。幼虫はバルクを乗せたまま、蠕動運動で階段を登った。

 2人と1匹は螺旋階段を2周半登った。
「ここだ」
「ありがとう、助かったよ」
 バルクは幼虫の背を撫でた。幼虫は器用に方向転換して去っていった。
 気味が悪いという感覚は消えていた。
 老人は扉をノックする。
「リコ、客だ」
 そこにいたのは、若い女性だった。
 フードがついた革のローブを着ている。典型的な精霊使いの衣装だ。
「はじめまして。バルク・フロウと言います。あなたが僕を助けてくれたと聞いてます。ありがとうございました」
 リコはゆっくりとうなずいた。年齢は18歳くらいか。ローブの襟元からは、薄茶色の、毛先だけがくるりとカールした髪がこぼれている。瞳は緑色で、あまり日に当たらないのか、ハッとするほど肌が白かった。彼女は神が特別に手をかけて造ったように美しかったが、その顔は奇妙に表情を欠いていた。
 リコは、椅子に掛けるよう手で示した。
 バルクがテーブルに着くと、リコはテーブルを2度ノックした。
 次の間のドアが開き、ティーセットを持ったファミリアが2体入ってくる。バルクの身の回りの世話をしてくれるファミリアとは別だ。
 ファミリアは慣れた手つきでお茶を淹れる。
「ありがとう」
 バルクはサーブしてくれたファミリアに礼を言う。リコはちらりと彼の顔を見た。
 どうぞ、と手で示す。ぎこちない動きだった。
「いただきます」
 バルクはカップを持ち上げる。いい香りだ。
「こんなにいいお茶をいただいたのは、いつ以来だろう」
 リコはうなずいた。
 バルクはリコの反応を、ちょっと奇妙に感じた。疎ましがられているというわけではなさそうだが…。
 バルクの考えを感じ取ったのか、彼女は指で自分の喉を指した。
「喉? そうか。声」
 リコはうなずく。声を失っているのだ。
 リコは軽く手を挙げた。微かに風が吹く。緑色の鎧が現れた。風の精霊だ。
「どしたの? あ、代わりに話せばいいのね? うん。えーっとまず、身体の具合はどう?」
「みんなに良くしてもらったお陰で、すっかりいいよ」
 リコはうなずいて、傍の風の精霊を見た。
「そっか。なら良かった。お客様なんてほとんどないから、ここのみんなも張り切っちゃってて。あなたがここにいようと思う限り、いてもらって構わないわ。どうぞ、ゆっくり休んでいってね」
「ありがとう」
 バルクはリコと風の精霊に言った。
「僕のせいで君には大変な迷惑をかけてしまったみたいだ。本当に申し訳ない…」
「あなたが半殺しにしたフレイマたちは、神獣のしもべだったの。彼らは自分の主人が攻撃されたと感じて、あなたを攻撃してきたのね。今、火が話つけに行ってるから、表に出てるフレイマたちはまあいいとして。問題は人間の方ね。あなたたち、ちょっとばかしやりすぎちゃったのよね。あの洞窟は、精霊使いの聖域だったのよ。聖域を荒らされたとあっちゃ、メンツが立たない。あなたを引き渡せと言ってくる可能性が高いわ。そんなわけでこちらとしても、ほとぼりが冷めるまではここにいてほしいのよ。ここにいる限りは精霊使いの守護者の権限であなたを守ることができる」
「迷惑をかけてしまって…。必死だったとは言え、狼になったのも悪かった。フレイマたちを刺激してしまったんだろう」
 バルクはため息をついた。
「そう思うなら、しばらくここで大人しくしてて。守護者の森の外で場外乱闘されたら、いくら守護者でも手が出せない。あなた、勢い余ってあの人たち皆殺しにするでしょ」
「…」
 バルクは何も反論できなかった。
 そのやり取りをただ見守っていたリコが、窓の外に顔を向けた。
「噂をすれば」
 1羽の大きな鳥が、風を切って真っ直ぐこちらに飛んでくる。
 鳥の姿を取っているが、精霊だ。
 鳥は窓枠に止まると、黄色い鋭い目でぐるりと部屋の中を見回し、最後にバルクを見た。
「その者を渡してもらおう、リコよ」
 鳥は人間の声で言った。年配の男性の声だ。
「断る」
 代わりに風の精霊が即答した。
「その者は聖域を侵し、神獣を傷つけた。我々の法に基づき罰しなければならない」
「彼は守護者により、この塔に拘束されているの。引き渡す理由はないわ」
「相変わらず、精霊に喋らせる体裁を採っているのか、リコ」
「だったら、おじーちゃんこそ、こんな操り人形寄越さずに自分で来るべきでしょ!? 私が話すことは、100パーセント私の意思よ」
「何だと?」
 リコは立ち上がって、自分の風の精霊に向かって首を振った。それから、鳥に向き直る。
「渡す気はないというわけか」
 はっきりとうなずく。
「…ふん」
 鳥は窓枠の上で向きを変えると、ひらりと風に乗って飛び去っていった。
 それと入れ違いに、火の精霊が現れた。
「なあ、さっきそこで族長のじいさんとすれ違ったけど?」
 火の精霊は、親指で窓の外を指した。
「バルクを引き渡せって言いにきたの。一応」
「ふーん。ご苦労なこって」
「ま、族長も辛い立場よね。リコに横から獲物かっさらわれて、黙ってちゃ示しがつかないし」
 リコは火の精霊を見た。
「ああ、フレイマたちは大丈夫。ガタガタ騒いでっと燃やすからな、つっといたから。しばらくは大人しくしてんだろ」
「フレイマが燃やされてなんか不都合あんの? 逆に喜んじゃうじゃん」
「いやそこはホラ、何というかニュアンス? 火属性同士でしか伝わらない微妙なアレがあるから」
「火属性ってさ、仕事雑だよね」
「まーたそうやって属性でレッテル貼りする」
 そこに、青と金色の鎧が現れた。新たな精霊だ。バルクは驚きに目を見開く。
「どうも。なかなか呼んでくれないから、出てきちゃいましたよ」
 青い鎧が言う。ヘルメットには、ミルククラウンを模した意匠が付けられていて、水の精霊とわかる。金色の鎧は、ヘルメットと肩に、立方体や六角柱をした結晶の意匠が乗っている。土の精霊だ。この2体も男性のように見える。
 これで、4要素全てが揃ったことになる。
「あ、バルク、この2体のことは、相手しなくて結構ですよ」
「ちょっ、何よ!」
 即座に風の精霊が水の精霊に抗議する。
「いやもう、完全に引かせちゃってるでしょう」
「…うむ」
「土まで!」
 あっという間にけたたましい空間が出現する。何だこれは。何なのだ。4体の精霊が同時に同じ空間に存在して、なおかつそれぞれてんでんばらばらに喋っているとは。
(凄い。凄くて酷い)
 パン!パン!
 リコが手を打って、精霊たちのお喋りをやめさせた。手を振って解散させる。
 部屋に沈黙が戻った。
「4つの精霊を操るなんて」
 バルクは精霊たちがいた辺りを見たまま言った。
「だからこそ村の連中は、守護者と口では言いながら、その実、リコを恐れ、煙たがってるというわけさ」
 それまで黙っていたジュイユが口を開いた。
「そろそろ部屋に戻るよ。お茶をご馳走さま」
 バルクは立ち上がった。リコはうなずいた。
「族長には私と土が謝っておくよ。ま、族長はわかってるさ。リコが何を守ったのか。あっちのメンツを潰すと後が面倒だ。ここはこちらが下手に出た方が得策だろう」
 出ていきかけたジュイユは、リコの方を振り返った。
「さっきの話だが、族長に伝えておく」

 バルクとジュイユが部屋を出ていくと、先ほどのファミリアがティーセットを下げにやってきた。
「リコ、あの人、変わってるよね」
〈バルク。狼族の、おそらく最後の生き残り〉
 リコは口を動かさなかった。それは、空気を振動させる「声」ではなかった。
「あの人、僕らを見ても驚かなかったし、食事や着替えを持っていくと、ありがとう、って言うんだよ」
 それを聞いてリコは笑った。
「あの人、ちょっと変わってるけど、でも、僕らは好きだよ。あんな人、リコの他にはいないもの」
 リコはファミリアの額のあたりを撫でた。ファミリアは目を細めた。
〈しばらく面倒を見てあげて〉
「僕らはあの人がずっとここにいても構わないよ。帰る場所もないみたいだし」
〈そうなの? でも、どうするかは彼自身が決めることだから〉
「うん、わかってる。けど、あの人、ひとりぼっちなんだよ。リコには僕らがいるけど」
〈そうね〉
 リコはもう一度ファミリアを撫でた。ファミリアはうっとりと目を瞑りながら、誇らしげに言った。
「僕らはリコを愛してるし、リコが愛するものは、僕らも愛してる」
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