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第2部 帝都ローグ篇
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木々が色づき、塔の菜園にも収穫の季節がやってきた。
「それはこっち! 荷車に積んで」
風がカボチャがぎっしり詰まった木箱を抱えたジャイアントに指示する。
魔物たちは総出で収穫作業に当たっていた。
「ええっと、これで注文は揃ったわね。ちょっと、火!」
「なんだよ、今手ぇ離せないんだよ!」
火が怒鳴り返す。
「しょうがないわねー」
風は腕を組んだ。
「仕方ない、1人だけど、納品に行ってくるわ」
風はいつもの農家のおかみさんに姿を変えた。
「ああ、ありがと。でも、町の人が騒ぐといけないから。人間て、見た目でしか判断しないでしょ? だから。ごめんね」
風はジャイアントの肩をポンポンと叩いて、荷車を出発させた。
「っし、終わったぞ。あれ? 風は?」
ジャイアントが荷車を指差す。
「なんだよ」
火は荷車を走って追いかけると、座席に飛び乗った。座った時には、農家の主人風の中年男性になっている。
「危ないでしょ! 荷崩れしたらどうすんのよ!」
「積荷の心配かよ!」
「なんであなたの心配しなきゃなんないのよ。甘えないでよ」
夫婦喧嘩がゆっくりと遠ざかっていく。
リコは小麦の束を抱えたまま、笑ってその後ろ姿を見送った。魔物たちに比べると全く戦力にはならないが、それでも何かをしたかった。それに、単に、農作業は好きだ。
もうすぐラシルラの町で収穫祭がある。町一番のイベントで、「歌姫」と呼ばれる巫女が、土地の神々に感謝の歌と舞を捧げる。アイナが5年続けて務めたという、歌姫。それがどんなものか、リコは見たことがなかった。きっと素敵なのだろう。見てみたい。けれど、祭りには村の精霊使いたちもやってくる。姿を見られたら?
歩き出した足元を、茶色の小さなネズミが走っていった。
ルーが作ってくれた、つばの広い帽子をかぶっているのに、もう頬がひりひりする。手袋をはめた手の甲を頬に押し当てる。
「疲れた?」
同じく収穫作業を手伝っていたバルクが声をかける。
リコは笑って首を振る。
「2人はもう、休んでもらって結構ですよ」
水がやってきて言う。
「納品さえ済ませてしまえば、あとは塔に備蓄する分だけですからね。しばらくは晴れが続くみたいですし、今日は進められるところまで進めればいいでしょう」
「じゃあ、お言葉に甘えて、少し休もうか」
バルクはリコに言う。
〈汗、かいちゃった。シャワー浴びてくる〉
部屋に戻ると、リコは帽子を取って、顔を両手でぱたぱたあおぎながらバスルームに向かう。閉めようとしたその扉を、バルクが押さえる。
〈…どうしたの?〉
「一緒に」
そう言って、内側に身体を滑り込ませると、後ろ手に扉を閉めた。
「…何ですか?」
水は無言で近寄ってきた土を振り向く。
「…いや」
「だって、あんな目でリコを見てるバルクを見てしまったら、ああ言うしかないでしょうが」
肩をすくめる。
「…バルクを連れて行かれると、俺の仕事が増える」
「あなたもたまには働きなさいよ」
水は土の背中を軽く叩く。金属同士がぶつかり合ってゴツゴツと音を立てた。
バルクは浴槽の縁に腰掛けると、服を着たままのリコの腰を抱き寄せて、胸に顔をうずめる。
〈やだ。汗かいてるから。恥ずかしい…〉
腕の中で身をよじり、抜け出そうとする。逃さないように、腕に力をこめる。
「うん、リコの匂いがする。甘くて優しくて、たまらない…」
バルクはそう言うと、狼に姿を変える。
目を細めて、鼻先をリコの胸や首筋に寄せる。
「ああ、なんて甘いんだろう。いい匂いだ。頭がくらくらする…」
リコは気恥ずかしげに身体をよじりながら、そっと狼の鼻筋を撫でた。狼はうっとりした目で言う。
「きみの匂い、大好きだ…。甘くて…、優しくて…」
狼は、大きな舌でそっとリコの首筋を舐める。
リコはハッと息を飲む。
「ねえリコ、服を脱いで」
甘えるように、懇願するように言う。
リコは戸惑いながら、作業用のシャツのボタンをひとつずつ外していく。シャツの前をはだけると、袖から腕を抜こうとするそばから、狼の冷たく湿った鼻が肌に押しつけられる。背骨の一番下がぞくりとする。ズボンのベルトを緩めると、そのまま下に滑り落ちたので、足を抜く。下腹部に鼻を押しつけられたまま、背中に手を回してブラのホックを外し、肩紐から腕を引き抜く。露わになった胸に鼻先が移動する。ぺろりと胸の谷間の汗を舐められて、背徳感で肌がぞくぞくする。ショーツに手をかけたままためらっていると、狼が耳元で囁く。
「それも、脱いで」
熱い息が耳にかかる。頭がぼうっとなって、言われるままにショーツを取る。それは、汗とは別の、とろりとした新しい液体で汚れている。すかさず舌が太腿の隙間に差し込まれ、舐めあげられる。熱い息が漏れる。腰が砕けそうになって、浴槽の縁に手をつくと、狼に向かって腰を差し出す形になってしまう。逃げようとしても、舌が執拗に追いかけてくる。
〈だめ、本当にだめ…っ! こんなの、こんなの、だめ…! やだ、やだやだ、やめてバルク本当にお願いっ…!〉
しかし言葉と裏腹に、リコは身体を震わせて達した。震えがおさまると、膝が抜けて浴室の床に座りこむ。バルクは人間に戻った。
〈酷いよ、バルク。やめてって言ったのに。だめって言ったのに〉
リコは潤んだ瞳でバルクを睨めあげた。
「ごめん、きみがあんまりかわいくて、止められなくて」
バルクも床に膝をついて、抱きしめる。
〈もう、バルクの前で汗かくようなこと、2度としない〉
リコは頬を膨らませる。
「ごめんよ。許して」
〈だめ。許さない〉
「どうすればいい?」
〈髪、洗って〉
あまりに簡単な罰に、思わず笑ってしまう。
「そんなのでいいの?」
リコは怒った顔のままうなずいた。作られた表情とは別に、潤んだ瞳がきらきら光る。服を脱ぎ、リコを抱え上げて浴槽に入れる。
立ったまま、シャワーで丁寧に髪をすすぐ。リコはバルクの背中に軽く腕を回して、目を閉じて上を向いている。くちづけを待っているようにも見える。屈んで軽く唇を触れ合わせると、リコが目を開けた。
〈だめ。仕事して〉
おあずけをくって、もどかしい気持ちになる。
そんなバルクの気持ちをよそに、リコは身体を密着させる。柔らかな胸が押しつけられ、硬くなったペニスをリコの腹部に押しつける。リコは僅かに唇を開いてため息をついた。その表情にぞくぞくする。
シャンプーをしっかり泡だてて、優しく、包むように、髪を梳くように丁寧に洗う。
リコは目を閉じて、バルクに身体を預ける。
〈バルクの手、気持ちいい…〉
細い指で、二の腕をそっとなぞられる。もどかしくて、焦れったくててたまらない。確かに、これは罰だ。泡を流す。
「もう、いい?」
〈まだだめ。今度は、わたしが洗ってあげるの〉
リコはバルクを浴槽の中に座らせると、後ろに回った。丁寧に髪を洗う。細い指で頭皮をまさぐられて、ため息が漏れる。
髪を洗い終わると、お互いの身体を洗いあう。隅々まで。
脇腹から胸に手を滑らせると、リコは甘く吐息を漏らした。浴槽の縁に寄り掛かり、顎を上げる。泡に手を乗せて、全身を滑らせると、リコは早く浅く息をする。
「どうすればいい?」
〈だって、こんなふうに、触れられたら…っ〉顔を戻して、潤んだ瞳でバルクを睨む。〈バルクのいじわる〉
シャワーでお互いを包んでいる泡を流す。
「どうすればいい?」
バルクは再び訊く。
〈いじわる。いじわる〉リコはバルクにぎゅっと抱きつく。〈こんなふうに触ったくせに。やめてって言っても、だめって言っても、やめてくれなかったくせに。なのになんで訊くの。いじわる。酷いよ、バルク〉
潤んだ、熱を持った瞳でバルクを見上げる。身体の奥がジリジリする。脚の間から、お腹の奥から、蜜が溢れているのがわかる。こんなふうにしたくせに。それを、わかっているくせに。
バルクはリコにくちづける。リコの柔らかな舌が、バルクの唇を割って入ってくる。夢中でそれを吸う。リコが首に腕を回してくる。
バルクはバスルームに置いてあるタオルを取って、リコの身体を包む。抱き上げて、ベッドに運び、宝物のように、そっと下ろす。覆いかぶさって抱きしめる。
「きみの甘くて優しい匂いがして、もう、きみが欲しくて欲しくて、たまらなくて。僕ひとり焦れったいのが、ちょっと寂しかったんだ。ごめん。嫌な思いさせて。きみの言葉が聞きたかったんだ」
子どものような告白に、リコは笑った。ちょっと腹立たしかった気持ちも、どこかに消えてしまった。
〈じゃあ、優しくして? いっぱい、いっぱい触って、キスしてね〉
「もちろん」
唇を重ね、舌を絡めあわせる。
リコを包んでいた布をそっと開く。神聖な贈り物みたいだ、とバルクは思う。
光が差し込む寝室で見るリコの裸体は、本当に美しかった。
首筋にくちづけると、身体をのけ反らせて喘ぐ。
「リコ、好きだ。リコ。リコ…」
右手でリコの胸を緩く弄びながら、鎖骨に、肩に、唇を移していく。
胸の先端にくちづけ、転がす。リコが身をよじる。軽く歯を触れさせると、びくんとリコの身体が跳ねた。腰とベッドの隙間に手を差し入れ、優しく撫でる。快感の痺れが溜まっているところに触れられて、腰を浮かせてしまう。もし、声を失ってしなかったら? きっと、とんでもない嬌声を上げてしまっていただろう。けれど、どれだけ感じているか、声で伝えられたらどんなにいいだろう。どうしようもないけれど、切ない。悲しい。
バルクは、指と唇でリコの全身に触れる。最後に、唇はリコの脚の間にたどり着く。膝の裏に手を入れて、脚を大きく開かせる。
〈だめ…っ〉
膝を広げるバルクの手を押し留めようとする。
「どうして? すごくかわいいのに。もっとよく見せて」
脚の間に顔をうずめる。音を立ててキスして、リコの形を確かめるように、舌でなぞっていく。湿った柔らかいものが敏感なところを這い回る感覚に、悶える。こんな明るいところで、全部見えてしまうところで、こんな。だめ、頭がおかしくなる。気持ちいい。快感の波が一気に押し寄せてくる。
〈だめ、気持ちいい…、バルク、バルク…!〉
名前を呼びながら何度も身体を強張らせる。
顔を上げたバルクはリコを抱きしめた。
〈バルク、好き。バルクが欲しい。早く。わたしの中に入ってきてほしい〉
「僕もだ。愛してる。きみが欲しい。きみの中に入らせて…」
キスしながら、片手で避妊具をつけて、リコの中に沈む。愛しい。愛しい愛しい。
この素晴らしい時間が永遠に続いてほしい。バルクは動かずにリコにくちづけ、抱きしめる。
「時々、たまらなくなるんだ。きみは魔物たちの特別な人で、きみも魔物たちを愛してる。僕のことは?」
リコが心底悲しそうな顔をして、バルクの胸はズキリと痛む。
〈なんでそんな悲しいこと訊くの? わたしがこうしたいって思うのは、欲しいって思うのは、世界でバルクひとりなのに。こんなに、愛してるのに〉
「ああ、リコ、ごめん。本当にごめん。ただの嫉妬なんだ。だけど、魔物たちと横並びじゃ、嫌だ。僕だけ見てほしい。僕だけのものでいてほしい。僕だけ、特別に愛していてほしい」
バルクの言葉を聞いて、リコはくすくす笑った。知らなかった。こんなふうに思っていたなんて。
〈もう、わたしはバルクだけのものだよ。これからも、ずっと。じゃあ、今度から、「あなたを特別に愛してる」って、言うね〉
バルクの髪を柔らかく撫でる。バルクはうっとりと目を瞑った。
「ありがとう、リコ。僕の特別な人。心優しくて、勇敢な、唯一無二の人」
バルクはゆっくりと腰を動かし、熱いため息を吐く。
「ああ…、リコ、ザラザラして、吸いついてくる…。ゆっくり、優しくしようと思ってたのに。できない…、リコ、リコ…」
頭が真っ白になって、思うに任せて動く。制御できない。
〈バルク、好き。愛してる。あなただけ、特別に〉
バルクが昇り詰めようとするのに合わせて、リコも一気に昇り詰める。背骨の1番下から、甘い痺れが駆け上ってくる。抵抗できない。
固く抱き合って、身体を震わせる。
荒い息を吐きながら、くちづける。せっかくシャワーを浴びたのに、2人とももう汗だくだった。
まだリコの中にいたかったけれど、名残惜しい気持ちで、リコの中からペニスを引き抜く。リコは僅かにみじろぎした。
「それはこっち! 荷車に積んで」
風がカボチャがぎっしり詰まった木箱を抱えたジャイアントに指示する。
魔物たちは総出で収穫作業に当たっていた。
「ええっと、これで注文は揃ったわね。ちょっと、火!」
「なんだよ、今手ぇ離せないんだよ!」
火が怒鳴り返す。
「しょうがないわねー」
風は腕を組んだ。
「仕方ない、1人だけど、納品に行ってくるわ」
風はいつもの農家のおかみさんに姿を変えた。
「ああ、ありがと。でも、町の人が騒ぐといけないから。人間て、見た目でしか判断しないでしょ? だから。ごめんね」
風はジャイアントの肩をポンポンと叩いて、荷車を出発させた。
「っし、終わったぞ。あれ? 風は?」
ジャイアントが荷車を指差す。
「なんだよ」
火は荷車を走って追いかけると、座席に飛び乗った。座った時には、農家の主人風の中年男性になっている。
「危ないでしょ! 荷崩れしたらどうすんのよ!」
「積荷の心配かよ!」
「なんであなたの心配しなきゃなんないのよ。甘えないでよ」
夫婦喧嘩がゆっくりと遠ざかっていく。
リコは小麦の束を抱えたまま、笑ってその後ろ姿を見送った。魔物たちに比べると全く戦力にはならないが、それでも何かをしたかった。それに、単に、農作業は好きだ。
もうすぐラシルラの町で収穫祭がある。町一番のイベントで、「歌姫」と呼ばれる巫女が、土地の神々に感謝の歌と舞を捧げる。アイナが5年続けて務めたという、歌姫。それがどんなものか、リコは見たことがなかった。きっと素敵なのだろう。見てみたい。けれど、祭りには村の精霊使いたちもやってくる。姿を見られたら?
歩き出した足元を、茶色の小さなネズミが走っていった。
ルーが作ってくれた、つばの広い帽子をかぶっているのに、もう頬がひりひりする。手袋をはめた手の甲を頬に押し当てる。
「疲れた?」
同じく収穫作業を手伝っていたバルクが声をかける。
リコは笑って首を振る。
「2人はもう、休んでもらって結構ですよ」
水がやってきて言う。
「納品さえ済ませてしまえば、あとは塔に備蓄する分だけですからね。しばらくは晴れが続くみたいですし、今日は進められるところまで進めればいいでしょう」
「じゃあ、お言葉に甘えて、少し休もうか」
バルクはリコに言う。
〈汗、かいちゃった。シャワー浴びてくる〉
部屋に戻ると、リコは帽子を取って、顔を両手でぱたぱたあおぎながらバスルームに向かう。閉めようとしたその扉を、バルクが押さえる。
〈…どうしたの?〉
「一緒に」
そう言って、内側に身体を滑り込ませると、後ろ手に扉を閉めた。
「…何ですか?」
水は無言で近寄ってきた土を振り向く。
「…いや」
「だって、あんな目でリコを見てるバルクを見てしまったら、ああ言うしかないでしょうが」
肩をすくめる。
「…バルクを連れて行かれると、俺の仕事が増える」
「あなたもたまには働きなさいよ」
水は土の背中を軽く叩く。金属同士がぶつかり合ってゴツゴツと音を立てた。
バルクは浴槽の縁に腰掛けると、服を着たままのリコの腰を抱き寄せて、胸に顔をうずめる。
〈やだ。汗かいてるから。恥ずかしい…〉
腕の中で身をよじり、抜け出そうとする。逃さないように、腕に力をこめる。
「うん、リコの匂いがする。甘くて優しくて、たまらない…」
バルクはそう言うと、狼に姿を変える。
目を細めて、鼻先をリコの胸や首筋に寄せる。
「ああ、なんて甘いんだろう。いい匂いだ。頭がくらくらする…」
リコは気恥ずかしげに身体をよじりながら、そっと狼の鼻筋を撫でた。狼はうっとりした目で言う。
「きみの匂い、大好きだ…。甘くて…、優しくて…」
狼は、大きな舌でそっとリコの首筋を舐める。
リコはハッと息を飲む。
「ねえリコ、服を脱いで」
甘えるように、懇願するように言う。
リコは戸惑いながら、作業用のシャツのボタンをひとつずつ外していく。シャツの前をはだけると、袖から腕を抜こうとするそばから、狼の冷たく湿った鼻が肌に押しつけられる。背骨の一番下がぞくりとする。ズボンのベルトを緩めると、そのまま下に滑り落ちたので、足を抜く。下腹部に鼻を押しつけられたまま、背中に手を回してブラのホックを外し、肩紐から腕を引き抜く。露わになった胸に鼻先が移動する。ぺろりと胸の谷間の汗を舐められて、背徳感で肌がぞくぞくする。ショーツに手をかけたままためらっていると、狼が耳元で囁く。
「それも、脱いで」
熱い息が耳にかかる。頭がぼうっとなって、言われるままにショーツを取る。それは、汗とは別の、とろりとした新しい液体で汚れている。すかさず舌が太腿の隙間に差し込まれ、舐めあげられる。熱い息が漏れる。腰が砕けそうになって、浴槽の縁に手をつくと、狼に向かって腰を差し出す形になってしまう。逃げようとしても、舌が執拗に追いかけてくる。
〈だめ、本当にだめ…っ! こんなの、こんなの、だめ…! やだ、やだやだ、やめてバルク本当にお願いっ…!〉
しかし言葉と裏腹に、リコは身体を震わせて達した。震えがおさまると、膝が抜けて浴室の床に座りこむ。バルクは人間に戻った。
〈酷いよ、バルク。やめてって言ったのに。だめって言ったのに〉
リコは潤んだ瞳でバルクを睨めあげた。
「ごめん、きみがあんまりかわいくて、止められなくて」
バルクも床に膝をついて、抱きしめる。
〈もう、バルクの前で汗かくようなこと、2度としない〉
リコは頬を膨らませる。
「ごめんよ。許して」
〈だめ。許さない〉
「どうすればいい?」
〈髪、洗って〉
あまりに簡単な罰に、思わず笑ってしまう。
「そんなのでいいの?」
リコは怒った顔のままうなずいた。作られた表情とは別に、潤んだ瞳がきらきら光る。服を脱ぎ、リコを抱え上げて浴槽に入れる。
立ったまま、シャワーで丁寧に髪をすすぐ。リコはバルクの背中に軽く腕を回して、目を閉じて上を向いている。くちづけを待っているようにも見える。屈んで軽く唇を触れ合わせると、リコが目を開けた。
〈だめ。仕事して〉
おあずけをくって、もどかしい気持ちになる。
そんなバルクの気持ちをよそに、リコは身体を密着させる。柔らかな胸が押しつけられ、硬くなったペニスをリコの腹部に押しつける。リコは僅かに唇を開いてため息をついた。その表情にぞくぞくする。
シャンプーをしっかり泡だてて、優しく、包むように、髪を梳くように丁寧に洗う。
リコは目を閉じて、バルクに身体を預ける。
〈バルクの手、気持ちいい…〉
細い指で、二の腕をそっとなぞられる。もどかしくて、焦れったくててたまらない。確かに、これは罰だ。泡を流す。
「もう、いい?」
〈まだだめ。今度は、わたしが洗ってあげるの〉
リコはバルクを浴槽の中に座らせると、後ろに回った。丁寧に髪を洗う。細い指で頭皮をまさぐられて、ため息が漏れる。
髪を洗い終わると、お互いの身体を洗いあう。隅々まで。
脇腹から胸に手を滑らせると、リコは甘く吐息を漏らした。浴槽の縁に寄り掛かり、顎を上げる。泡に手を乗せて、全身を滑らせると、リコは早く浅く息をする。
「どうすればいい?」
〈だって、こんなふうに、触れられたら…っ〉顔を戻して、潤んだ瞳でバルクを睨む。〈バルクのいじわる〉
シャワーでお互いを包んでいる泡を流す。
「どうすればいい?」
バルクは再び訊く。
〈いじわる。いじわる〉リコはバルクにぎゅっと抱きつく。〈こんなふうに触ったくせに。やめてって言っても、だめって言っても、やめてくれなかったくせに。なのになんで訊くの。いじわる。酷いよ、バルク〉
潤んだ、熱を持った瞳でバルクを見上げる。身体の奥がジリジリする。脚の間から、お腹の奥から、蜜が溢れているのがわかる。こんなふうにしたくせに。それを、わかっているくせに。
バルクはリコにくちづける。リコの柔らかな舌が、バルクの唇を割って入ってくる。夢中でそれを吸う。リコが首に腕を回してくる。
バルクはバスルームに置いてあるタオルを取って、リコの身体を包む。抱き上げて、ベッドに運び、宝物のように、そっと下ろす。覆いかぶさって抱きしめる。
「きみの甘くて優しい匂いがして、もう、きみが欲しくて欲しくて、たまらなくて。僕ひとり焦れったいのが、ちょっと寂しかったんだ。ごめん。嫌な思いさせて。きみの言葉が聞きたかったんだ」
子どものような告白に、リコは笑った。ちょっと腹立たしかった気持ちも、どこかに消えてしまった。
〈じゃあ、優しくして? いっぱい、いっぱい触って、キスしてね〉
「もちろん」
唇を重ね、舌を絡めあわせる。
リコを包んでいた布をそっと開く。神聖な贈り物みたいだ、とバルクは思う。
光が差し込む寝室で見るリコの裸体は、本当に美しかった。
首筋にくちづけると、身体をのけ反らせて喘ぐ。
「リコ、好きだ。リコ。リコ…」
右手でリコの胸を緩く弄びながら、鎖骨に、肩に、唇を移していく。
胸の先端にくちづけ、転がす。リコが身をよじる。軽く歯を触れさせると、びくんとリコの身体が跳ねた。腰とベッドの隙間に手を差し入れ、優しく撫でる。快感の痺れが溜まっているところに触れられて、腰を浮かせてしまう。もし、声を失ってしなかったら? きっと、とんでもない嬌声を上げてしまっていただろう。けれど、どれだけ感じているか、声で伝えられたらどんなにいいだろう。どうしようもないけれど、切ない。悲しい。
バルクは、指と唇でリコの全身に触れる。最後に、唇はリコの脚の間にたどり着く。膝の裏に手を入れて、脚を大きく開かせる。
〈だめ…っ〉
膝を広げるバルクの手を押し留めようとする。
「どうして? すごくかわいいのに。もっとよく見せて」
脚の間に顔をうずめる。音を立ててキスして、リコの形を確かめるように、舌でなぞっていく。湿った柔らかいものが敏感なところを這い回る感覚に、悶える。こんな明るいところで、全部見えてしまうところで、こんな。だめ、頭がおかしくなる。気持ちいい。快感の波が一気に押し寄せてくる。
〈だめ、気持ちいい…、バルク、バルク…!〉
名前を呼びながら何度も身体を強張らせる。
顔を上げたバルクはリコを抱きしめた。
〈バルク、好き。バルクが欲しい。早く。わたしの中に入ってきてほしい〉
「僕もだ。愛してる。きみが欲しい。きみの中に入らせて…」
キスしながら、片手で避妊具をつけて、リコの中に沈む。愛しい。愛しい愛しい。
この素晴らしい時間が永遠に続いてほしい。バルクは動かずにリコにくちづけ、抱きしめる。
「時々、たまらなくなるんだ。きみは魔物たちの特別な人で、きみも魔物たちを愛してる。僕のことは?」
リコが心底悲しそうな顔をして、バルクの胸はズキリと痛む。
〈なんでそんな悲しいこと訊くの? わたしがこうしたいって思うのは、欲しいって思うのは、世界でバルクひとりなのに。こんなに、愛してるのに〉
「ああ、リコ、ごめん。本当にごめん。ただの嫉妬なんだ。だけど、魔物たちと横並びじゃ、嫌だ。僕だけ見てほしい。僕だけのものでいてほしい。僕だけ、特別に愛していてほしい」
バルクの言葉を聞いて、リコはくすくす笑った。知らなかった。こんなふうに思っていたなんて。
〈もう、わたしはバルクだけのものだよ。これからも、ずっと。じゃあ、今度から、「あなたを特別に愛してる」って、言うね〉
バルクの髪を柔らかく撫でる。バルクはうっとりと目を瞑った。
「ありがとう、リコ。僕の特別な人。心優しくて、勇敢な、唯一無二の人」
バルクはゆっくりと腰を動かし、熱いため息を吐く。
「ああ…、リコ、ザラザラして、吸いついてくる…。ゆっくり、優しくしようと思ってたのに。できない…、リコ、リコ…」
頭が真っ白になって、思うに任せて動く。制御できない。
〈バルク、好き。愛してる。あなただけ、特別に〉
バルクが昇り詰めようとするのに合わせて、リコも一気に昇り詰める。背骨の1番下から、甘い痺れが駆け上ってくる。抵抗できない。
固く抱き合って、身体を震わせる。
荒い息を吐きながら、くちづける。せっかくシャワーを浴びたのに、2人とももう汗だくだった。
まだリコの中にいたかったけれど、名残惜しい気持ちで、リコの中からペニスを引き抜く。リコは僅かにみじろぎした。
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ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
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