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第2部 帝都ローグ篇
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刑事たちが何か騒いでいる。地面に倒れている人物を認めて、ヒューゴは駆け出した。
「オリヴェル!」
オリヴェルは血塗れで、顔面蒼白になって地面に倒れている。致命傷ではないが、腹部を負傷している。血溜まりが広がり、意識がなくぐったりしている。危険な状態だ。
バルクとリコも追いついてきた。
「どいて!」
バルクの鋭い声にオリヴェルを囲んでいた刑事たちがさっと道を空ける。
バルクがオリヴェルに駆け寄る。オリヴェルの横に膝をつく。
「成功してくれ」
柄にもなく祈る。
腹部の傷に手を当てる。その手が、傷口が、白く光った。光はオリヴェルの全身に広がる。
「う…っ、げほっ、ごほっ」
オリヴェルが苦しげに咳こみ、痛みに顔をしかめた。顔面蒼白なのは変わらないが、出血は止まった。
「治癒法…」
ヒューゴが呟く。
「エセ治癒法の、そのまた劣化コピーだから、根本的な解決にはなってない。でも当座は凌げる」
オリヴェルは救命キットに繋がれ、駆けつけた救急隊によって運ばれていった。
「…ありがとうな」
素直に言う。
バルクは少し目を見開いた。
「礼なんかいらない。その場凌ぎにしかならなくても、役に立って良かった」
言葉を交わす2人をよそに、リコはじっと暗闇のその先を見つめていたが、突然駆け出した。
「リコ!」
バルクも慌てて後を追う。
レールの脇の保守点検用の通路を駆ける。
〈待って!〉
暗闇の先の何かに呼びかける。
一瞬、闇の中にさらに濃い闇が翻った気がした。
リコはスピードを落とし、止まった。
〈行っちゃった…〉
「何がいたの?」
〈ネクロマンサー。だと思う。スカウトしてきてって頼まれたのに…〉
リコは心底がっかりしていた。
「この前闇が言ってた、腐った魂にエサをやってるっていうのは、ネクロマンサーのことかな」
〈かもしれない。でも、とにかく、ネクロマンサーだと思った。絶対接触する。何がなんでも〉
リコは力強く拳を握りしめる。バルクは苦笑した。
〈そうだ、ヒューゴに協力しよう!〉
頭の上に「いいこと考えた!」という文字が浮かんでいそうな、キラキラした顔でバルクを見上げる。その「いいこと」がロクでもないことなのもお決まりだ。
「メトロのトンネルにちょくちょく入るために?」
〈そう! こういうの、知ってる。「ウィン-ウィンの関係」でしょ?〉
「まあ…きみとヒューゴにとってはそうかもね」
バルクは密かにため息をつく。なんだか最近気苦労が多い。
〈嫌?〉
リコはバルクの手を取る。
「うーん。嫌、まではいかないけど、気が進まないというか…」
〈そっかぁ…。じゃあ、わたし1人でやろうかな。あ、でも、ちょっとだけ力を貸してくれると嬉しいかな。まあ、ヒューゴから借りても…〉
「それははっきりと嫌だ」
リコの言葉を遮る。声音に少しの不機嫌が混ざってしまう。
ヒューゴからどう見られていたか、自覚していないのか。困る。気づいてほしい。リコが、リコの方からヒューゴに触れているところを想像しただけで落ち着かない気分になるが、努めて表情に出さないようにする。
バルクはため息をついた。
「…わかったよ」
〈ありがとう!〉
リコは無邪気に抱きついてくるが、全く嬉しくない。
違和感に、リコは身体を離して、バルクを見上げた。
「おい! 引きあげるぞ!」
ヒューゴが呼びにくる。
(なんでいきなりギクシャクしてるんだ?)
2人の微妙な空気を感じるが、構っている暇はない。微妙な空気は自分たちで解決してくれ。
「なんかいたのか?」
リコに訊く。
〈多分だけど、ネクロマンサー〉
「そいつがフリートの過集中の原因なのか?」
〈可能性はあると思う。けどわかんない。本人に訊いてみないと〉
「本人…。ネクロマンサーって、人語しゃべれんのかよ。いや、そんなのはいいんだ。ちょっと事務所に寄ってくれねえ? 今日は緊急で協力要請を先にしちまったから、後付けで悪りぃんだけど、書類にサインがほしいんだよ」
特殊治安部の会議室に通され、しばらく待ってくれと言われて取り残される。会議用の長机に座り心地の悪い折り畳みの椅子。壁には大型のモニタが取りつけられている。殺風景な部屋だった。
〈あの…バルク?〉
リコはぎこちなく切り出す。
「なに?」
椅子に斜めに座って脚を組んでいたバルクは、リコの方に顔を向ける。
〈あの、ごめんなさい…〉
「それは、何に対して?」
柔らかい追及にたじろぐ。
〈あの、えっと…〉
ここに来るまでに自分なりに考えて結論を出した。でもそれが正しいかどうか、全く自信がない。つい伏目になる。
〈わたしが、1人でヒューゴに協力するって言ったことと、ヒューゴから力を借りようとしてたこと。わたし、ネクロマンサーを見つけたかもしれないと思ったら嬉しくて舞い上がっちゃって、何も考えてなくて…〉目を上げてバルクの目を見る。〈ごめんない、無神経で…〉
バルクはため息をついた。
「ほんとにね」
その言葉にじわりと涙が滲んでくる。しかしまだ泣く資格はない。
「でも」バルクは手を伸ばして親指でリコの頬を撫でた。「その顔されると、もう僕には許す以外の選択肢がない」
バルクは諦めたように笑って、リコの頭を撫でる。
「最近、『惚れた弱み』って言葉の意味がよくわかるよ。実感として」
頬杖をつく。
〈ごめんなさい、わたし、本当に…〉
「仕方ないよ。だって、ジーとルーの頼みなんだから。絶対に叶えてあげたいんだよね?」
リコはうなずく。
「いいよ。僕も手伝うよ」
リコの顔がぱっと輝く。
その心底嬉しそうな顔を見て、しょうがないな、と思う。惚れた弱みで。
会議室のドアがノックされて、ヒューゴが入ってくる。
「待たせて悪りぃ。これにサイン頼む」
ヒューゴが形ばかり重要事項を口頭で説明する。行動中は官憲の指揮下に入ること、謝礼は帝都警察規定の金額を支払うこと、負傷した際は帝都警察の負担で治療を行い、死亡した際は規定の弔慰金を支払うこと。
〈お金出るんだ〉
リコが驚いたように言う。
「お気持ち程度だけどな」
期待するな、というニュアンスを込めてヒューゴが言う。
〈わたし、初めてお金稼いだかも。わあ、どうしよう。嬉しい〉
リコは眩しいほどの笑顔でバルクを見る。
「良かったね」
長らく忘れていた瑞々しい気持ちを思い出して、バルクも笑う。
「これっぽっちでそんなに喜んでもらって、却って申し訳ないな」
リコはうきうきしながらペンを取って、署名する。
リコ・ティナ=レイフ・オルトアルヴィル=フロウ
艶々した黒のインクで書かれた自分の名前を見て、にまにましてしまう。
契約書を受け取ったヒューゴはしげしげとその署名を見た。
「すげーな。こんな真っ黒に色が出る奴、初めてだ」
〈なんのこと?〉
「バルクと見比べてみろ」
言われてバルクの手元にある契約書を見る。バルク・フロウ=オルトアルヴィルの名前が、シアンのインクで書かれている。見慣れた色だ。思わず別の意味でにっこりしながら、ヒューゴを振り返る。
〈わかった。魂に反応するインクなのね?〉
「魂? 精霊使いはそう言うのか? まあ、魔力だな。お前のしてる指輪と同じだよ。大抵はオリーブ色くらいかな。いずれにせよ、もっと濁った色になることが多い」
ヒューゴは唸りながら契約書を見比べる。これを見ただけで、どれほどの力の持ち主かが知れるというものだ。
「それで、今後のことだけど…できれば、引き続き協力してもらえないか。お前らにあんまりメリットのない話で悪りぃけど」
ヒューゴの言葉を聞いて、リコはちらりとバルクに視線を送る。
「いいよ。今、リコとそのことを話してた。引き続き協力する。ただ、僕らにも目的がある。協力するのは、こちらも利益を得られると踏んだからだ。メトロのトンネル内で、多少の自由行動を認めてもらいたい。それがこちらの条件」
「…わかった。俺と組むときは、俺の裁量でその辺はどうにでもなるんで、好きにやってくれ。あ、でも、あんまりメトロの設備壊さないでくれな。とんでもない額の請求書が回ってきちまうから」
ヒューゴは白い歯を見せて笑った。バルクもつられて笑う。
「あとひとつ。これは頼みなんだけどね。今回は緊急だったから扱いはそちらに任せるんだけど、この後の契約は、ハンター協会を通してもらいたいんだよ。一応ハンターの規約では、公共の場では活動しないってことになってるから、協会のお墨付きがないと規約違反で除名されかねない。そうなると色々不便だからね」
「わかった。リコもジェムハンターでいいのか?」
ハンター協会に問い合わせた結果は「該当者なし」だったが。
〈わたしは違う、けど…〉バルクを見る。〈ジェムハンターって登録すれば誰でもなれるの?〉
「ハンター協会に利益をもたらす者なら、誰でも」
〈じゃあ、わたしもジェムハンターに登録したいな〉
「ああ…そうだね。今後のことを考えると、ジェムハンターとして活動するかは別として、登録するのはありだね」
「じゃあ、リコの名前もハンター協会に言っとけばいいんだな」
「明日ハンター協会に登録に行ってくるよ」
「おう。ま、こっちは役所だからよ。決裁取ってハンター協会に書類回すのに3、4日かかるんで、急がなくていいぜ。…でも、ハンター協会通すとピンハネされんじゃねえの?」
ヒューゴの言葉にバルクは苦笑する。
「まあ、されるだろうね。手数料という名目で。どれくらい差っ引いてくるかはわからないけど。協会は、『稼ぎにならない仕事はしない』の筆頭だからね」
「エグいがめつさだな」
ヒューゴは眉間に皺を寄せる。
「お気持ち程度の謝礼で人をこき使おうとするきみらにそう言われちゃ、協会も形無しだね」
「確かに」
ヒューゴは屈託なく笑った。見る者を魅了せずにおかない、明るい爽やかな笑顔だった。
「オリヴェル!」
オリヴェルは血塗れで、顔面蒼白になって地面に倒れている。致命傷ではないが、腹部を負傷している。血溜まりが広がり、意識がなくぐったりしている。危険な状態だ。
バルクとリコも追いついてきた。
「どいて!」
バルクの鋭い声にオリヴェルを囲んでいた刑事たちがさっと道を空ける。
バルクがオリヴェルに駆け寄る。オリヴェルの横に膝をつく。
「成功してくれ」
柄にもなく祈る。
腹部の傷に手を当てる。その手が、傷口が、白く光った。光はオリヴェルの全身に広がる。
「う…っ、げほっ、ごほっ」
オリヴェルが苦しげに咳こみ、痛みに顔をしかめた。顔面蒼白なのは変わらないが、出血は止まった。
「治癒法…」
ヒューゴが呟く。
「エセ治癒法の、そのまた劣化コピーだから、根本的な解決にはなってない。でも当座は凌げる」
オリヴェルは救命キットに繋がれ、駆けつけた救急隊によって運ばれていった。
「…ありがとうな」
素直に言う。
バルクは少し目を見開いた。
「礼なんかいらない。その場凌ぎにしかならなくても、役に立って良かった」
言葉を交わす2人をよそに、リコはじっと暗闇のその先を見つめていたが、突然駆け出した。
「リコ!」
バルクも慌てて後を追う。
レールの脇の保守点検用の通路を駆ける。
〈待って!〉
暗闇の先の何かに呼びかける。
一瞬、闇の中にさらに濃い闇が翻った気がした。
リコはスピードを落とし、止まった。
〈行っちゃった…〉
「何がいたの?」
〈ネクロマンサー。だと思う。スカウトしてきてって頼まれたのに…〉
リコは心底がっかりしていた。
「この前闇が言ってた、腐った魂にエサをやってるっていうのは、ネクロマンサーのことかな」
〈かもしれない。でも、とにかく、ネクロマンサーだと思った。絶対接触する。何がなんでも〉
リコは力強く拳を握りしめる。バルクは苦笑した。
〈そうだ、ヒューゴに協力しよう!〉
頭の上に「いいこと考えた!」という文字が浮かんでいそうな、キラキラした顔でバルクを見上げる。その「いいこと」がロクでもないことなのもお決まりだ。
「メトロのトンネルにちょくちょく入るために?」
〈そう! こういうの、知ってる。「ウィン-ウィンの関係」でしょ?〉
「まあ…きみとヒューゴにとってはそうかもね」
バルクは密かにため息をつく。なんだか最近気苦労が多い。
〈嫌?〉
リコはバルクの手を取る。
「うーん。嫌、まではいかないけど、気が進まないというか…」
〈そっかぁ…。じゃあ、わたし1人でやろうかな。あ、でも、ちょっとだけ力を貸してくれると嬉しいかな。まあ、ヒューゴから借りても…〉
「それははっきりと嫌だ」
リコの言葉を遮る。声音に少しの不機嫌が混ざってしまう。
ヒューゴからどう見られていたか、自覚していないのか。困る。気づいてほしい。リコが、リコの方からヒューゴに触れているところを想像しただけで落ち着かない気分になるが、努めて表情に出さないようにする。
バルクはため息をついた。
「…わかったよ」
〈ありがとう!〉
リコは無邪気に抱きついてくるが、全く嬉しくない。
違和感に、リコは身体を離して、バルクを見上げた。
「おい! 引きあげるぞ!」
ヒューゴが呼びにくる。
(なんでいきなりギクシャクしてるんだ?)
2人の微妙な空気を感じるが、構っている暇はない。微妙な空気は自分たちで解決してくれ。
「なんかいたのか?」
リコに訊く。
〈多分だけど、ネクロマンサー〉
「そいつがフリートの過集中の原因なのか?」
〈可能性はあると思う。けどわかんない。本人に訊いてみないと〉
「本人…。ネクロマンサーって、人語しゃべれんのかよ。いや、そんなのはいいんだ。ちょっと事務所に寄ってくれねえ? 今日は緊急で協力要請を先にしちまったから、後付けで悪りぃんだけど、書類にサインがほしいんだよ」
特殊治安部の会議室に通され、しばらく待ってくれと言われて取り残される。会議用の長机に座り心地の悪い折り畳みの椅子。壁には大型のモニタが取りつけられている。殺風景な部屋だった。
〈あの…バルク?〉
リコはぎこちなく切り出す。
「なに?」
椅子に斜めに座って脚を組んでいたバルクは、リコの方に顔を向ける。
〈あの、ごめんなさい…〉
「それは、何に対して?」
柔らかい追及にたじろぐ。
〈あの、えっと…〉
ここに来るまでに自分なりに考えて結論を出した。でもそれが正しいかどうか、全く自信がない。つい伏目になる。
〈わたしが、1人でヒューゴに協力するって言ったことと、ヒューゴから力を借りようとしてたこと。わたし、ネクロマンサーを見つけたかもしれないと思ったら嬉しくて舞い上がっちゃって、何も考えてなくて…〉目を上げてバルクの目を見る。〈ごめんない、無神経で…〉
バルクはため息をついた。
「ほんとにね」
その言葉にじわりと涙が滲んでくる。しかしまだ泣く資格はない。
「でも」バルクは手を伸ばして親指でリコの頬を撫でた。「その顔されると、もう僕には許す以外の選択肢がない」
バルクは諦めたように笑って、リコの頭を撫でる。
「最近、『惚れた弱み』って言葉の意味がよくわかるよ。実感として」
頬杖をつく。
〈ごめんなさい、わたし、本当に…〉
「仕方ないよ。だって、ジーとルーの頼みなんだから。絶対に叶えてあげたいんだよね?」
リコはうなずく。
「いいよ。僕も手伝うよ」
リコの顔がぱっと輝く。
その心底嬉しそうな顔を見て、しょうがないな、と思う。惚れた弱みで。
会議室のドアがノックされて、ヒューゴが入ってくる。
「待たせて悪りぃ。これにサイン頼む」
ヒューゴが形ばかり重要事項を口頭で説明する。行動中は官憲の指揮下に入ること、謝礼は帝都警察規定の金額を支払うこと、負傷した際は帝都警察の負担で治療を行い、死亡した際は規定の弔慰金を支払うこと。
〈お金出るんだ〉
リコが驚いたように言う。
「お気持ち程度だけどな」
期待するな、というニュアンスを込めてヒューゴが言う。
〈わたし、初めてお金稼いだかも。わあ、どうしよう。嬉しい〉
リコは眩しいほどの笑顔でバルクを見る。
「良かったね」
長らく忘れていた瑞々しい気持ちを思い出して、バルクも笑う。
「これっぽっちでそんなに喜んでもらって、却って申し訳ないな」
リコはうきうきしながらペンを取って、署名する。
リコ・ティナ=レイフ・オルトアルヴィル=フロウ
艶々した黒のインクで書かれた自分の名前を見て、にまにましてしまう。
契約書を受け取ったヒューゴはしげしげとその署名を見た。
「すげーな。こんな真っ黒に色が出る奴、初めてだ」
〈なんのこと?〉
「バルクと見比べてみろ」
言われてバルクの手元にある契約書を見る。バルク・フロウ=オルトアルヴィルの名前が、シアンのインクで書かれている。見慣れた色だ。思わず別の意味でにっこりしながら、ヒューゴを振り返る。
〈わかった。魂に反応するインクなのね?〉
「魂? 精霊使いはそう言うのか? まあ、魔力だな。お前のしてる指輪と同じだよ。大抵はオリーブ色くらいかな。いずれにせよ、もっと濁った色になることが多い」
ヒューゴは唸りながら契約書を見比べる。これを見ただけで、どれほどの力の持ち主かが知れるというものだ。
「それで、今後のことだけど…できれば、引き続き協力してもらえないか。お前らにあんまりメリットのない話で悪りぃけど」
ヒューゴの言葉を聞いて、リコはちらりとバルクに視線を送る。
「いいよ。今、リコとそのことを話してた。引き続き協力する。ただ、僕らにも目的がある。協力するのは、こちらも利益を得られると踏んだからだ。メトロのトンネル内で、多少の自由行動を認めてもらいたい。それがこちらの条件」
「…わかった。俺と組むときは、俺の裁量でその辺はどうにでもなるんで、好きにやってくれ。あ、でも、あんまりメトロの設備壊さないでくれな。とんでもない額の請求書が回ってきちまうから」
ヒューゴは白い歯を見せて笑った。バルクもつられて笑う。
「あとひとつ。これは頼みなんだけどね。今回は緊急だったから扱いはそちらに任せるんだけど、この後の契約は、ハンター協会を通してもらいたいんだよ。一応ハンターの規約では、公共の場では活動しないってことになってるから、協会のお墨付きがないと規約違反で除名されかねない。そうなると色々不便だからね」
「わかった。リコもジェムハンターでいいのか?」
ハンター協会に問い合わせた結果は「該当者なし」だったが。
〈わたしは違う、けど…〉バルクを見る。〈ジェムハンターって登録すれば誰でもなれるの?〉
「ハンター協会に利益をもたらす者なら、誰でも」
〈じゃあ、わたしもジェムハンターに登録したいな〉
「ああ…そうだね。今後のことを考えると、ジェムハンターとして活動するかは別として、登録するのはありだね」
「じゃあ、リコの名前もハンター協会に言っとけばいいんだな」
「明日ハンター協会に登録に行ってくるよ」
「おう。ま、こっちは役所だからよ。決裁取ってハンター協会に書類回すのに3、4日かかるんで、急がなくていいぜ。…でも、ハンター協会通すとピンハネされんじゃねえの?」
ヒューゴの言葉にバルクは苦笑する。
「まあ、されるだろうね。手数料という名目で。どれくらい差っ引いてくるかはわからないけど。協会は、『稼ぎにならない仕事はしない』の筆頭だからね」
「エグいがめつさだな」
ヒューゴは眉間に皺を寄せる。
「お気持ち程度の謝礼で人をこき使おうとするきみらにそう言われちゃ、協会も形無しだね」
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