40 / 99
第2部 帝都ローグ篇
30
しおりを挟む
帰りはヒューゴの同僚が自動車で送ってくれた。闇は得体の知れない閉鎖空間に入るのを嫌がり、バルクがずっと抱きしめている羽目になった。
「ありがとう、ヒューゴ。明日はトルヴの駅で待ち合わせしよう」
「おう。じゃあな、お疲れ」
「お疲れさま」
走り出した自動車の中、ヒューゴは2人を振り返る。バルクが闇に抱きつかれるような格好で歩いていく。
(大丈夫かな)
まあ、大丈夫じゃなかったとしても自分でなんとかするしかないわけだが。
それより自分の心配をした方がいい。今日あったこと全てを報告書に書いたとして、どれだけ信じてもらえるのだろうか。
ため息をついたヒューゴを同僚がちらりと見た。
「珍しいな、ため息なんて」
「まあな。理解を超えたことばっかで、疲れたぜ…」
ヒューゴは目を閉じた。
部屋に帰ると、真っ先にリコの様子を見に行く。眠っているとわかっていても、そうせずにはいられなかった。
リコはぐっすり眠っていて、ほっとする。闇のボロボロ対策で厚着させたままだったことに気づいて、コートを脱がせてやる。中に着たプルオーバーはそのままでいいだろう。
リビングに戻ると、闇はソファに座っていた。
バルクはダイニングチェアに腰掛ける。
「バルク、隣に座ってよ」
「…」
どうしようかと迷うが、仕方なく闇の言葉に従い、ソファに移る。
「そんなにリコのことが好きなの?」
闇は顔を前に向けたまま言う。
「そうだよ」
「あたしのことも、好きになってほしい。リコと同じだけなんて言わない。リコが眠ってる間だけでいいから。…リコの、代わりでいいから」
闇は顔をバルクの方に向け、声を震わせて言う。
愛する人とそっくりな顔で、愛する人の声で言われて、胸が苦しい。誰と話しているのか自信がなくなって、頭が混乱する。突き放した方がいいと理性ではわかっているのに、心を納得させるのが難しい。それでもなんとか言葉を紡ぐ。
「それはできない。前にも言ったけど、きみはきみであって、リコじゃない」
「…」
闇は俯いて下唇を噛む。
「わかった。…もう言わない」絞り出すように言う。「だから、ちょっとだけ、ぎゅってしてほしい…」
バルクの肩にそっと頭を載せる。
バルクは諦めて、闇の背中にそっと腕を回した。闇が氷のような冷たい身体を寄せてきて、思わず身震いする。
闇は深いため息をつく。
「あたしは好きなの、バルク…」
「うん、わかってる。知ってる」
闇はバルクの背中に回した腕にぎゅっと力をこめると、かき消えた。
「…」
あれはどうなっておるのですか。魂がある。
ヴィラントはそう言っていた。
腐った魂と融合したことで、闇の精霊は魂を持つことになった。おそらく。バルクに恋愛感情のようなものを向けてくるのがそのせいだとしたら。本来味わう必要のなかった苦しみを味わっている。拒絶される苦しみを。
可哀想に。
シャワーを浴びても、なんとなく眠れる気分ではなくなってしまい、リビングで酒を飲む。辛い気分を紛らわせるために飲むのはあまりいい飲み方とは言えないな、と思いつつ、飲まずにいられなかった。この前の残りを空けてしまい、気がつけばカーテンの向こうの空が明るくなり始めている。
ようやく眠気を覚えて、リコの隣に潜り込む。
リコはぐっすり眠っている。いつもどおり、温かくて柔らかくていい匂いで。
翌朝、リコが目を覚ましても、珍しくバルクはそれに気づかず眠っていた。昨夜はいつ帰ってきたのだろう。闇が戻ってくれば目を覚ますかと思っていたが、結局朝まで眠ってしまった。最近前のようにいつも眠くて眠くて仕方ない、ということはなくなっていたから、ちょっとショックだった。
バルクを観察する。怪我をしているような様子はないが、疲れたのかもしれない。身体の疲れだけでなく、気苦労もかけている。
眠っているバルクの唇にそっとくちづけてベッドを抜け出す。
リコ、あたし辛い。どうすればいい? 助けて。
(闇が泣いてた…)
闇の精霊には、色々なものを背負わせすぎている、とリコも思う。他の精霊使いの精霊のように、自分に隷属させるか? 人格を閉ざしてリコに隷属すれば、もう苦しむことはない。でも、それがいいことなのかは判断できない。闇はどう思っているのだろう。あるいは…。腐った魂を闇の精霊から切り離し、封印する。ドラゴンの言うように。
(そして、あとひとつ選択肢がある…)
リコはソファの上で膝を抱え、自分の膝に額をつける。苦しい。涙が、あとからあとから溢れてくる。
(誰かを愛するって、嬉しくて、苦しい)
みんな傷つけてしまう。どうして。
(選べないよ…)
でも、選ばなければ、全てを失ってしまう。わかっているのに。
選ぶんだな。
そうドラゴンは言っていた。本当にそれしか方法はない? どこかに道があるはずだ、あってほしい、と祈る。全ての点を繋ぐ、隠された道が。
(闇の精霊、闇。あなたの苦しみをどうやったら癒せるんだろう…。あなたを救おうとすれば、バルクを傷つける。多分きっと、今も傷ついてる…。2人の苦しみを癒すために、わたしは何をすればいい? 何ができる?)
涙がまた溢れてくるが、溢れるに任せる。自分の膝頭に顔をうずめて、肩を震わせて泣く。多分、闇の代わりに泣いてる。泣いて苦しみが軽くなるなら、いくらでもわたしの身体を使って泣くといい。あなたは限りなくわたしであって、わたしは限りなくあなただ。あなたの代わりに泣く。
バルクは珍しく、昼近くになってようやく目を覚ました。目覚めはいい方なのに、今日は珍しくぼんやりしている。
〈ゆうべ、大変だった? ごめんなさい、わたし、いつ帰ってきたのかも知らなくて…〉
ソファに座ったバルクの隣に腰掛けると、無言で抱き寄せられた。
「泣いてたの?」
バルクが耳元で低く囁く。泣きすぎて目が腫れぼったくなったので、濡れタオルで冷やしていたが、あまり効果がなかったようだ。
〈うん…ちょっとだけ〉
「そう」
ただ抱きしめられる。バルクは理由をわかっているのかもしれない、と思う。力を抜いて、身体を預ける。
バルクの腕の中までは、苦しみも追ってこられない。無条件に安らげる場所。目を閉じる。
「そうだ。ネクロマンサーを見つけたよ」
〈ほんとに?〉
身体を離して顔を見上げる。
「封印されてたんだって。誰に封印されたと思う?」
〈封印…?〉
ということは、精霊使いの守護者が絡んでいるのか。
〈わからない〉
「レイフだよ」
〈レイフ!?〉
狭義の守護者の名前にリコは驚いて目を見開く。
「今日の夜、迎えに行くことになってる。まず、きみの封印で閉じ込めた体裁を作って連れ出して、ルブラ経由で塔に運ぼうと思うんだ」
〈封印しなきゃいけないの?〉
「魔物を動かす必要がある時は、拘束しなきゃならないって法律があるんだよ。ヒューゴの立場も守ってあげなきゃいけないしね」
公共の場に魔物が現れた時、その場で戦闘になると市民を巻き込む恐れがある場合に、魔物を別の場所に移す際の決め事だった。魔物の力が強大すぎて手に負えない場合などの例外もあるが、ここは正攻法でいくべきだ。
〈それで、わたしの出番なのね?〉
「そういうこと」
バルクはリコの背中に回した腕の径を縮めて、引き寄せる。リコは目を閉じて、瞼や頬に落とされるくちづけを受けた。
「ありがとう、ヒューゴ。明日はトルヴの駅で待ち合わせしよう」
「おう。じゃあな、お疲れ」
「お疲れさま」
走り出した自動車の中、ヒューゴは2人を振り返る。バルクが闇に抱きつかれるような格好で歩いていく。
(大丈夫かな)
まあ、大丈夫じゃなかったとしても自分でなんとかするしかないわけだが。
それより自分の心配をした方がいい。今日あったこと全てを報告書に書いたとして、どれだけ信じてもらえるのだろうか。
ため息をついたヒューゴを同僚がちらりと見た。
「珍しいな、ため息なんて」
「まあな。理解を超えたことばっかで、疲れたぜ…」
ヒューゴは目を閉じた。
部屋に帰ると、真っ先にリコの様子を見に行く。眠っているとわかっていても、そうせずにはいられなかった。
リコはぐっすり眠っていて、ほっとする。闇のボロボロ対策で厚着させたままだったことに気づいて、コートを脱がせてやる。中に着たプルオーバーはそのままでいいだろう。
リビングに戻ると、闇はソファに座っていた。
バルクはダイニングチェアに腰掛ける。
「バルク、隣に座ってよ」
「…」
どうしようかと迷うが、仕方なく闇の言葉に従い、ソファに移る。
「そんなにリコのことが好きなの?」
闇は顔を前に向けたまま言う。
「そうだよ」
「あたしのことも、好きになってほしい。リコと同じだけなんて言わない。リコが眠ってる間だけでいいから。…リコの、代わりでいいから」
闇は顔をバルクの方に向け、声を震わせて言う。
愛する人とそっくりな顔で、愛する人の声で言われて、胸が苦しい。誰と話しているのか自信がなくなって、頭が混乱する。突き放した方がいいと理性ではわかっているのに、心を納得させるのが難しい。それでもなんとか言葉を紡ぐ。
「それはできない。前にも言ったけど、きみはきみであって、リコじゃない」
「…」
闇は俯いて下唇を噛む。
「わかった。…もう言わない」絞り出すように言う。「だから、ちょっとだけ、ぎゅってしてほしい…」
バルクの肩にそっと頭を載せる。
バルクは諦めて、闇の背中にそっと腕を回した。闇が氷のような冷たい身体を寄せてきて、思わず身震いする。
闇は深いため息をつく。
「あたしは好きなの、バルク…」
「うん、わかってる。知ってる」
闇はバルクの背中に回した腕にぎゅっと力をこめると、かき消えた。
「…」
あれはどうなっておるのですか。魂がある。
ヴィラントはそう言っていた。
腐った魂と融合したことで、闇の精霊は魂を持つことになった。おそらく。バルクに恋愛感情のようなものを向けてくるのがそのせいだとしたら。本来味わう必要のなかった苦しみを味わっている。拒絶される苦しみを。
可哀想に。
シャワーを浴びても、なんとなく眠れる気分ではなくなってしまい、リビングで酒を飲む。辛い気分を紛らわせるために飲むのはあまりいい飲み方とは言えないな、と思いつつ、飲まずにいられなかった。この前の残りを空けてしまい、気がつけばカーテンの向こうの空が明るくなり始めている。
ようやく眠気を覚えて、リコの隣に潜り込む。
リコはぐっすり眠っている。いつもどおり、温かくて柔らかくていい匂いで。
翌朝、リコが目を覚ましても、珍しくバルクはそれに気づかず眠っていた。昨夜はいつ帰ってきたのだろう。闇が戻ってくれば目を覚ますかと思っていたが、結局朝まで眠ってしまった。最近前のようにいつも眠くて眠くて仕方ない、ということはなくなっていたから、ちょっとショックだった。
バルクを観察する。怪我をしているような様子はないが、疲れたのかもしれない。身体の疲れだけでなく、気苦労もかけている。
眠っているバルクの唇にそっとくちづけてベッドを抜け出す。
リコ、あたし辛い。どうすればいい? 助けて。
(闇が泣いてた…)
闇の精霊には、色々なものを背負わせすぎている、とリコも思う。他の精霊使いの精霊のように、自分に隷属させるか? 人格を閉ざしてリコに隷属すれば、もう苦しむことはない。でも、それがいいことなのかは判断できない。闇はどう思っているのだろう。あるいは…。腐った魂を闇の精霊から切り離し、封印する。ドラゴンの言うように。
(そして、あとひとつ選択肢がある…)
リコはソファの上で膝を抱え、自分の膝に額をつける。苦しい。涙が、あとからあとから溢れてくる。
(誰かを愛するって、嬉しくて、苦しい)
みんな傷つけてしまう。どうして。
(選べないよ…)
でも、選ばなければ、全てを失ってしまう。わかっているのに。
選ぶんだな。
そうドラゴンは言っていた。本当にそれしか方法はない? どこかに道があるはずだ、あってほしい、と祈る。全ての点を繋ぐ、隠された道が。
(闇の精霊、闇。あなたの苦しみをどうやったら癒せるんだろう…。あなたを救おうとすれば、バルクを傷つける。多分きっと、今も傷ついてる…。2人の苦しみを癒すために、わたしは何をすればいい? 何ができる?)
涙がまた溢れてくるが、溢れるに任せる。自分の膝頭に顔をうずめて、肩を震わせて泣く。多分、闇の代わりに泣いてる。泣いて苦しみが軽くなるなら、いくらでもわたしの身体を使って泣くといい。あなたは限りなくわたしであって、わたしは限りなくあなただ。あなたの代わりに泣く。
バルクは珍しく、昼近くになってようやく目を覚ました。目覚めはいい方なのに、今日は珍しくぼんやりしている。
〈ゆうべ、大変だった? ごめんなさい、わたし、いつ帰ってきたのかも知らなくて…〉
ソファに座ったバルクの隣に腰掛けると、無言で抱き寄せられた。
「泣いてたの?」
バルクが耳元で低く囁く。泣きすぎて目が腫れぼったくなったので、濡れタオルで冷やしていたが、あまり効果がなかったようだ。
〈うん…ちょっとだけ〉
「そう」
ただ抱きしめられる。バルクは理由をわかっているのかもしれない、と思う。力を抜いて、身体を預ける。
バルクの腕の中までは、苦しみも追ってこられない。無条件に安らげる場所。目を閉じる。
「そうだ。ネクロマンサーを見つけたよ」
〈ほんとに?〉
身体を離して顔を見上げる。
「封印されてたんだって。誰に封印されたと思う?」
〈封印…?〉
ということは、精霊使いの守護者が絡んでいるのか。
〈わからない〉
「レイフだよ」
〈レイフ!?〉
狭義の守護者の名前にリコは驚いて目を見開く。
「今日の夜、迎えに行くことになってる。まず、きみの封印で閉じ込めた体裁を作って連れ出して、ルブラ経由で塔に運ぼうと思うんだ」
〈封印しなきゃいけないの?〉
「魔物を動かす必要がある時は、拘束しなきゃならないって法律があるんだよ。ヒューゴの立場も守ってあげなきゃいけないしね」
公共の場に魔物が現れた時、その場で戦闘になると市民を巻き込む恐れがある場合に、魔物を別の場所に移す際の決め事だった。魔物の力が強大すぎて手に負えない場合などの例外もあるが、ここは正攻法でいくべきだ。
〈それで、わたしの出番なのね?〉
「そういうこと」
バルクはリコの背中に回した腕の径を縮めて、引き寄せる。リコは目を閉じて、瞼や頬に落とされるくちづけを受けた。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる