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第2部 帝都ローグ篇
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食事を兼ねて夜になってからトルヴの街に出かけた。さすが帝都一の繁華街だった。メトロの運行時間が終わろうとしている時間だというのに、まったく帰宅する素振りを見せない人々。夜は眠るものだと信じて疑ったことのなかったリコは、どうなっているのだろうと不思議でならない。当のリコは、いつもの習慣で、もう眠くて眠くて仕方がない。
「もうちょっと頑張って」
朝まで開いているカフェのソファで、あくびをして目を擦っているリコを、バルクが笑いながら励ます。
リコは目をしょぼしょぼさせながらうなずく。うなずいたものの、目蓋が心地よく重い。目を開けている時間より閉じている時間の方が長くなってくる…。リコは隣のバルクの肩に頭をもたせかけた。
「よう」
ヒューゴがやってきた。
「お疲れさま」
ヒューゴは2人の向かいに腰を下ろすと、バルクにもたれて眠っているリコにちらりと目を向けた。
「あれから大丈夫だったか?」
ヒューゴは脚を組むとネクタイを緩める。
「大丈夫っていうのは?」
「あの手の女のコは手出し厳禁だぜ?」
ニヤニヤしながら言ってくる。そのことか、とバルクは力なく笑う。
「わかってるし、出してない」
「え? 出してねぇの?」
ヒューゴの意外そうな物言いに、なんなんだ、そっちが言ったのにと憮然とする。
「お前、ちゃんとしてんだな。俺なら『それはそれ、これはこれ』って流されちまうけどな」
「それは…僕がちゃんとしてるんじゃなく、きみがちゃんとしてなさすぎるだけじゃないかな」
バルクの指摘に、ヒューゴは声を出して笑った。
「それは間違いねぇな」
あー、酒が飲みたいけど一応勤務中だしな、と呟きながらヒューゴはコーヒーを注文した。
「今日はズタボロじゃないからリコなんだよな?」
「そうだよ」
バルクは苦笑する。
メトロの運行時間が終了するまで待って、バルクはリコを起こした。
「起きて、リコ」
揺さぶられて、リコは渋々薄目を開けた。バルクに抱きついて、いやいやをするように肩口に顔を擦りつける。
「ほら、頑張って」
隙あらば眠りの世界に戻ろうとするリコを揺さぶる。
〈もう…、やだぁ〉
目を瞑ったまま顔をしかめて、ぎゅっと抱きつく。
「起きて。もう行くよ。ネクロマンサーのところに」
〈あ…、そっか…、そうだった…〉
ようやく置かれた状況を思い出したリコは、仕方なく伸びをしたところで目の前にいるヒューゴに気づいて固まる。ヒューゴがニヤニヤしていて、今の一連のやり取りを全部見られていた恥ずかしさに、耳まで真っ赤になる。
「よう。目ぇ覚めたか?」
〈…いつからいたの?〉
「だいぶ前から」
なんなら寝顔も見られていた。
〈なんで起こしてくれなかったの〉
バルクに八つ当たりする。
「起こしたでしょ。今」
〈そうだけど…!〉
「仕事だ。行くぞ」
ヒューゴは笑いながら立ち上がった。
保安用の通路から線路に出ると、昨夜とは様子がすっかり変わっていることに気づく。
「昨日とは全然雰囲気が違うな」
ヒューゴはトンネルを見回す。
息苦しいほどの圧迫感はなくなっていた。
「さっき確認したら、トルヴも許容値になってた。こういうことか…」
昨夜白いワンピースの女が立っていたあたりを何事もなく通り過ぎる。
〈何か…〉
線路の上に、ふらふらと揺れている真っ黒な人影を認めてリコが呟く。
「お待ちしておりました。長らく生きて参りましたが、このような長い1日は初めてでございましたよ」
パーティーピープルを押しのけるようにして、ヴィラントが姿を現す。
「初めまして、守護者様」胸に手を当て、優雅に礼をする。「ネクロマンサーのヴィラントと申します」
〈リコだよ〉
「おお、リコ様、力に似合わずなんと可憐な。この度はわたくしをお連れくださるとか」
やっぱ、あの力は半端じゃないんだな、とヒューゴは納得する。
〈あなたの力を貸してほしいんだよね。いいかな〉
「もちろんですとも。喜んで」
〈ありがとう〉
リコは笑った。
〈あなたを連れ出すには、封印しなきゃいけないらしいんだけど、いい? あなたになら簡単に破れるくらいの強度にしかならないんだけど、封印は封印だから…〉
「何をおっしゃいます。封印とは精霊使いの守護者の魂と同義。それに包まれるのはこの上ない悦楽でございますので」
〈え? あ、うん、それならいいんだけど…〉
リコは戸惑う。
「ささ、お願いいたします」
ヴィラントは軽く腕を広げる。
そのモーニングの裾を、いつの間に近寄ってきていたのか、1体の魔物がそっと引く。
ヴィラントは魔物の顔を見て、それからリコの方に顔を戻した。
「リコ様、この者も一緒に行きたいらしいのですが…。構いませんでしょうか」
〈いいよ。でも塔には、ここほどの暗闇はないんだけど、いいかな。あの辺は腐った魂もそんなにいないし〉
「そうですよ。それに、1人になってしまったらパーティーピープルじゃなくなってしまうじゃありませんか」
真面目に心配するヴィラントの言葉にヒューゴは思わず吹き出す。
「…まあ、どこにでもはみ出し者はいるものでございますけれども」
魔物は微かに発光する口をニイッと笑みの形にする。
〈わかった。じゃあ、いくよ〉
封印。
ヴィラントと魔物は、クリスタルのブロックに閉じ込められる。
「はあ。ああ、なんとお優しい封印でしょうか。最高でございますね」
〈そ、そう? なら良かった〉
リコは戸惑いながら答える。
「なあ、あいつ大丈夫か?」
ヒューゴはバルクに小声で言う。
「多分大丈夫じゃないね…」
塔にまた一癖あるメンバーが増えたな、とバルクは思う。
「よし、じゃあ、一気にルブラに飛ぶぞ」
ヒューゴが封印に触れる。そうすることで、一緒に「離脱」することができる。
「1回で大丈夫なの?」
バルクがヒューゴに訊く。
「これは警察用のコールリングだからな。民間用よりは容量がデカいんだよ。…うん、大丈夫だな」
コールリングと言えど、大容量、大質量の物体は運べない。官憲が持つコールリングは1度に運べる容量も、離脱できる距離も長かった。チェック機能を走らせると許容値内であることが確認できた。通常モードで呼び出すが、すぐに許可が出る。
目の前の風景がぶれ、ルブラの、田舎っぽい役所に切り替わる。「離脱」が完了したと同時にバルクが自身の力で「離脱」を発動させる。行き先は守護者の塔だ。
「もうちょっと頑張って」
朝まで開いているカフェのソファで、あくびをして目を擦っているリコを、バルクが笑いながら励ます。
リコは目をしょぼしょぼさせながらうなずく。うなずいたものの、目蓋が心地よく重い。目を開けている時間より閉じている時間の方が長くなってくる…。リコは隣のバルクの肩に頭をもたせかけた。
「よう」
ヒューゴがやってきた。
「お疲れさま」
ヒューゴは2人の向かいに腰を下ろすと、バルクにもたれて眠っているリコにちらりと目を向けた。
「あれから大丈夫だったか?」
ヒューゴは脚を組むとネクタイを緩める。
「大丈夫っていうのは?」
「あの手の女のコは手出し厳禁だぜ?」
ニヤニヤしながら言ってくる。そのことか、とバルクは力なく笑う。
「わかってるし、出してない」
「え? 出してねぇの?」
ヒューゴの意外そうな物言いに、なんなんだ、そっちが言ったのにと憮然とする。
「お前、ちゃんとしてんだな。俺なら『それはそれ、これはこれ』って流されちまうけどな」
「それは…僕がちゃんとしてるんじゃなく、きみがちゃんとしてなさすぎるだけじゃないかな」
バルクの指摘に、ヒューゴは声を出して笑った。
「それは間違いねぇな」
あー、酒が飲みたいけど一応勤務中だしな、と呟きながらヒューゴはコーヒーを注文した。
「今日はズタボロじゃないからリコなんだよな?」
「そうだよ」
バルクは苦笑する。
メトロの運行時間が終了するまで待って、バルクはリコを起こした。
「起きて、リコ」
揺さぶられて、リコは渋々薄目を開けた。バルクに抱きついて、いやいやをするように肩口に顔を擦りつける。
「ほら、頑張って」
隙あらば眠りの世界に戻ろうとするリコを揺さぶる。
〈もう…、やだぁ〉
目を瞑ったまま顔をしかめて、ぎゅっと抱きつく。
「起きて。もう行くよ。ネクロマンサーのところに」
〈あ…、そっか…、そうだった…〉
ようやく置かれた状況を思い出したリコは、仕方なく伸びをしたところで目の前にいるヒューゴに気づいて固まる。ヒューゴがニヤニヤしていて、今の一連のやり取りを全部見られていた恥ずかしさに、耳まで真っ赤になる。
「よう。目ぇ覚めたか?」
〈…いつからいたの?〉
「だいぶ前から」
なんなら寝顔も見られていた。
〈なんで起こしてくれなかったの〉
バルクに八つ当たりする。
「起こしたでしょ。今」
〈そうだけど…!〉
「仕事だ。行くぞ」
ヒューゴは笑いながら立ち上がった。
保安用の通路から線路に出ると、昨夜とは様子がすっかり変わっていることに気づく。
「昨日とは全然雰囲気が違うな」
ヒューゴはトンネルを見回す。
息苦しいほどの圧迫感はなくなっていた。
「さっき確認したら、トルヴも許容値になってた。こういうことか…」
昨夜白いワンピースの女が立っていたあたりを何事もなく通り過ぎる。
〈何か…〉
線路の上に、ふらふらと揺れている真っ黒な人影を認めてリコが呟く。
「お待ちしておりました。長らく生きて参りましたが、このような長い1日は初めてでございましたよ」
パーティーピープルを押しのけるようにして、ヴィラントが姿を現す。
「初めまして、守護者様」胸に手を当て、優雅に礼をする。「ネクロマンサーのヴィラントと申します」
〈リコだよ〉
「おお、リコ様、力に似合わずなんと可憐な。この度はわたくしをお連れくださるとか」
やっぱ、あの力は半端じゃないんだな、とヒューゴは納得する。
〈あなたの力を貸してほしいんだよね。いいかな〉
「もちろんですとも。喜んで」
〈ありがとう〉
リコは笑った。
〈あなたを連れ出すには、封印しなきゃいけないらしいんだけど、いい? あなたになら簡単に破れるくらいの強度にしかならないんだけど、封印は封印だから…〉
「何をおっしゃいます。封印とは精霊使いの守護者の魂と同義。それに包まれるのはこの上ない悦楽でございますので」
〈え? あ、うん、それならいいんだけど…〉
リコは戸惑う。
「ささ、お願いいたします」
ヴィラントは軽く腕を広げる。
そのモーニングの裾を、いつの間に近寄ってきていたのか、1体の魔物がそっと引く。
ヴィラントは魔物の顔を見て、それからリコの方に顔を戻した。
「リコ様、この者も一緒に行きたいらしいのですが…。構いませんでしょうか」
〈いいよ。でも塔には、ここほどの暗闇はないんだけど、いいかな。あの辺は腐った魂もそんなにいないし〉
「そうですよ。それに、1人になってしまったらパーティーピープルじゃなくなってしまうじゃありませんか」
真面目に心配するヴィラントの言葉にヒューゴは思わず吹き出す。
「…まあ、どこにでもはみ出し者はいるものでございますけれども」
魔物は微かに発光する口をニイッと笑みの形にする。
〈わかった。じゃあ、いくよ〉
封印。
ヴィラントと魔物は、クリスタルのブロックに閉じ込められる。
「はあ。ああ、なんとお優しい封印でしょうか。最高でございますね」
〈そ、そう? なら良かった〉
リコは戸惑いながら答える。
「なあ、あいつ大丈夫か?」
ヒューゴはバルクに小声で言う。
「多分大丈夫じゃないね…」
塔にまた一癖あるメンバーが増えたな、とバルクは思う。
「よし、じゃあ、一気にルブラに飛ぶぞ」
ヒューゴが封印に触れる。そうすることで、一緒に「離脱」することができる。
「1回で大丈夫なの?」
バルクがヒューゴに訊く。
「これは警察用のコールリングだからな。民間用よりは容量がデカいんだよ。…うん、大丈夫だな」
コールリングと言えど、大容量、大質量の物体は運べない。官憲が持つコールリングは1度に運べる容量も、離脱できる距離も長かった。チェック機能を走らせると許容値内であることが確認できた。通常モードで呼び出すが、すぐに許可が出る。
目の前の風景がぶれ、ルブラの、田舎っぽい役所に切り替わる。「離脱」が完了したと同時にバルクが自身の力で「離脱」を発動させる。行き先は守護者の塔だ。
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