愛でられ囲われ堕ちるのか

ほたる

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閑話②

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突如、冷たいものが勢いよくかかりむせ込んだ。


「起きたようです」


「ご苦労様」


俺の目に飛び込んできたのは天井だった。ここがどこなのか見渡そうとして気づく。
手足がベルトで固定され張り付けにされている。

(は…?え…??)

戸惑ってる男を無視して話しが続く。


「そろそろ投与された薬が効き始めてくるかと、どう致しますか」


「エルと過ごす時間を割いているし起きたならさっさと始めようか。
まず手癖の悪い手足はいらないね」


「ではそれらを頂戴してもよろしいでしょうか?」


「欲しいならあげるよ」


「ありがとうございます。では…」


物騒な会話だが男は何も聞こえていない。手足が縛られて動けない事実に焦りを感じていたのだ。

引きちぎろうと必死にもがいたがびくともしない。
やばいやばいやばい!!!

ーゴキッ


「いギャぁあああぁああああっ!!!うでっううでがっ!!ゴガッ?!!!」


突如右腕に衝撃が走り男は悲鳴をあげた。
振り下ろされる手には魔物の解体に使うような大型の鉄槌が握られ、何度もガンガン殴られる。
当たった箇所から骨が剥き出しになり、あらぬ方向へ折れては血飛沫に混じって飛び散っていった。
凄まじい激痛が容赦なく続き、その度に悶絶し狂ったように暴れ何度もやめてくれと叫んだ。だが男は淡々と繰り返すだけ。
終わった時には涙と血と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。


「いぃ…っいでぇぇ…、やべで…」


両腕と両足の感覚がない。
熱い寒い痛い。
それしか頭になかった。


「準備が整いました」


「ありがとう、協力者への報酬も忘れずよろしく頼んだよ」


「かしこまりました」


俺には目もくれずどこかへ引きずっていく。軽々と俺を鉄格子の中へ荒っぽく放り捨て初めて目線を合わせた。
見覚えのある姿に気づく。
アイツだ…、あの夜に会った銀髪の。


「さあ、今日からここが君の住まいだ、後ろを見てごらん」


住まい…うしろ…?
銀髪の男が指差す方へ視線を向けた。 
薄暗い檻の奥でポイズンスライムが散らばって這いずっていた。血の匂いに誘われじわりじわりと俺に近づいてくる。


「あ…あ…っ」


こいつらに殺されるのか…?
脆弱なこいつらに…、俺が…ーっ!


「おねがいだっ、だじでくっ、く、くくるなっ!!ああぁああいだいいいだぃいっぎぃいいい!!!」


剥き出しになった体にスライムがジュクジュク音を立てて中に入っていく。
四肢を失った男はスライムが中に侵入していく感覚と痛みに震え狂った叫びを上げ続けた。


「ぃいいでぇ…っいでぇ、おで、おでじにだぐっないぃいい!
だずげでぇ…!おでがっ、おでがわるがっだ!!」


「はぁ…、聞くに堪えない。
エルを恐喝し心に深い傷を与えておきながら助けろ?死にたくない?俺が悪かった?
随分と身勝手で都合のいい謝罪だ。身の程を弁えた行動をするべきだったね?」


なんでこんな事になってんだ?
俺がなにしたっていうんだ?
なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ?


「でも、死にたくないという願いは叶えて上げよう。このまま呆気なく死なれたら罰にも懺悔にもならないからね」


た、たすけてくれるのか……!
ならはやく、はやくおれをー


「ねぇ、知ってるかい?
擬態という特性は相手を欺く他に、別の使い方があるんだよ。

ー繁殖だよ、彼らは身を守り子孫を残すために体を乗っ取り操るんだ」


そんな。じゃあおれはー…


「君が底辺だと馬鹿にしていた彼らは殺さず、半永久的に有効活用してくれるんだ。
良かったね、君の願い通りになって」


……く…狂ってやがる。
いっそ…、殺してくれよ……ー

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