時間の失い方

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時間の失い方

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人は気づかぬうちに時間を失っているものだ。



近々テストがある学生は、「まぁ前日にやればいいや」といって、せっかくあったテスト勉強の時間を失っている。


社会人は、仕事に一日の大半を使い、本来あるべきはずだった自分の時間を失っている。



私にはかけがえのない人がいた。



彼女はいつも笑っていて、何か良いことがあったときも、悪いことがあったときも、私に話をして聞かせた。
その姿が実に愛らしかった。


彼女とは、十二年前に友人の計らいで知り合い、会っているうちに私は段々、彼女に惹かれていった。


それからまもなく、私は勇気を出して彼女に思いを打ち明けた。


彼女は、笑顔で答えてくれた。


それからはずっと二人、共に時間を過ごした。


朝起きて、「おはよう」と言い合った時間。

仕事から帰ってきて、「ただいま」「おかえり」と言い合った時間。

そして寝る前に、「おやすみ」と言い合った時間。


全て何気ないことだが、今の私にとってはそれをないがしろにすることはできない。



彼女は……他に男をつくって家を出ていってしまった。
本当に急だった。


残される息子たちと私に、彼女はもっと刺激がほしかったと言い残していった。


私は彼女を幸せにしてやれなかった。



あれから何度目の冬だろう。


残された息子たちも自立し、私はひとり同じような毎日を送っている。


ぽっかりあいた心の穴はいつまで経っても塞がりそうにない。



私はあといくつの冬を越せるだろう。

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