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幸せすぎてどうしよう--7--
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こんな毎日が続いて良いんだろうか。
アラームを鳴らすスマホを手にして覗きこむと、アプリの通知がある。おはようから始まり、体調を心配する内容。あの夜の日から一週間。欠かさずに結大君からのメッセージが入っている。朝だけじゃない。一息つける昼休憩や、仕事から帰宅した夜には電話までかかってくる。頬が緩むのを止められない。しばらく画面を眺めてからアプリを落とすと、ホーム画面にはまだ見慣れないアプリがひとつ。
恋人が何をしているのか気になってしまう、とは何度か聞いてはいたけど、まさか位置情報アプリを入れて欲しいとお願いされるとは思わなかった。驚きはしたけど、いつでも真幸を感じていたい、と真剣な眼差しで言われてしまえば頷くしかない。今も、もしかしたらアプリを開いて俺のことを確認しているかも。そう思うと胸の奥が何だかむずむずする。
今日は仕事が終わったら結大君のマンションに寄ってそのまま泊まる予定だ。早朝だというのに、夜が待ち遠しくてたまらなかった。
「これ全部作ったの?」
「うん、口に合うと良いけど」
テーブルの上に並べられた料理を見て、思わず声が出る。綺麗に巻かれたトマトパスタにこんがり焼きめのついたローストチキン。綺麗なガラスのボウルに鮮やかなサラダと華奢なグラスにシャンパン。なにこれ、記念日か?
「大変だっただろ……」
「今日は早く帰って来れたから」
俺だって料理の腕にはそれなりに自信があったけど、これには負ける。高級レストランにきているような緊張感の中、パスタを一口。想像通り、店で食べるような複雑な味がする。
「うまっ!」
「良かった」
結大君はにこにこと俺が一通り手をつけるまで眺めていた。
食後の皿洗いくらいはやろうとするも立派な食洗機が置いてあったので、お役御免な俺はゆったりしたソファーに座りながら出された甘い苺を摘むだけ。なるほど、これだけ一方的にもてなされるのは確かに落ち着かない。と思う気持ち半分、めちゃくちゃ愛されてる……と喜ぶ気持ち半分。しかし、困った。俺から出来ることが全然ない。
内心頭を抱えている俺のところに、何やら紙束を持った結大君がやってくる。
「ちょっと真幸に見てもらいたくて」
渡された書類に目を通すと、どうやら物件情報を印刷したものだった。今と同じような間取りの高級マンションだけでなく、広さはそこそこあるのに値段が抑えられているお得な物件まで様々だ。
「え、結大君引っ越すの?」
このマンションにはまだ数回しか訪れてないが、もったいない気がする。俺の問いに、はにかむように結大君が答える。
「うん。真幸はどれが気に入った?」
「どれ……どれもいい感じだと思うけど……」
「俺はこの、駅に近いやつが良いかなって」
「ああ、ほんと……あれ? この駅だと逆に遠くない?」
「そうなんだよね。でも一緒に住むなら、ここがお互いの職場とちょうど中間でしょ?」
なんだって!? 思わず書類を落としそうになる。
「一緒に?」
「うん。さすがに今すぐとは言えないけど追々。あ、内見はいつでも出来るから」
バクバクと心臓が悲鳴を上げてるようだ。付き合って一週間で同棲の提案?
「その……早すぎない?」
「俺、毎日真幸の顔が見たい」
突然、結大君がこちらに寄りかかってくる。
「やっぱり重い?」
俺の肩に頭を預け、こちらを見つめてくる、いつかと同じ子犬のような眼差し。
甘く満たされた一週間。それよりもっと濃密な二人の暮らしを想像する。同じベッドで寝起きして、どちらかが用意した朝食を食べる。家を出る時は名残惜しげにキスをして、夜は当然……。それが毎日。
そんなの……。
「う、嬉しい」
思わずこぼれた俺の言葉に反応するよう、力強く抱きしめられる。勢い余ってソファーに倒れ込んだ。
「真幸ならそう言ってくれると思った!」
太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべる恋人につられて俺も笑っていた。あの時、告白を受け入れたのは間違ってなかった。
「指輪も買いたい」
きっと俺達にはちょうどいい重さだ。
アラームを鳴らすスマホを手にして覗きこむと、アプリの通知がある。おはようから始まり、体調を心配する内容。あの夜の日から一週間。欠かさずに結大君からのメッセージが入っている。朝だけじゃない。一息つける昼休憩や、仕事から帰宅した夜には電話までかかってくる。頬が緩むのを止められない。しばらく画面を眺めてからアプリを落とすと、ホーム画面にはまだ見慣れないアプリがひとつ。
恋人が何をしているのか気になってしまう、とは何度か聞いてはいたけど、まさか位置情報アプリを入れて欲しいとお願いされるとは思わなかった。驚きはしたけど、いつでも真幸を感じていたい、と真剣な眼差しで言われてしまえば頷くしかない。今も、もしかしたらアプリを開いて俺のことを確認しているかも。そう思うと胸の奥が何だかむずむずする。
今日は仕事が終わったら結大君のマンションに寄ってそのまま泊まる予定だ。早朝だというのに、夜が待ち遠しくてたまらなかった。
「これ全部作ったの?」
「うん、口に合うと良いけど」
テーブルの上に並べられた料理を見て、思わず声が出る。綺麗に巻かれたトマトパスタにこんがり焼きめのついたローストチキン。綺麗なガラスのボウルに鮮やかなサラダと華奢なグラスにシャンパン。なにこれ、記念日か?
「大変だっただろ……」
「今日は早く帰って来れたから」
俺だって料理の腕にはそれなりに自信があったけど、これには負ける。高級レストランにきているような緊張感の中、パスタを一口。想像通り、店で食べるような複雑な味がする。
「うまっ!」
「良かった」
結大君はにこにこと俺が一通り手をつけるまで眺めていた。
食後の皿洗いくらいはやろうとするも立派な食洗機が置いてあったので、お役御免な俺はゆったりしたソファーに座りながら出された甘い苺を摘むだけ。なるほど、これだけ一方的にもてなされるのは確かに落ち着かない。と思う気持ち半分、めちゃくちゃ愛されてる……と喜ぶ気持ち半分。しかし、困った。俺から出来ることが全然ない。
内心頭を抱えている俺のところに、何やら紙束を持った結大君がやってくる。
「ちょっと真幸に見てもらいたくて」
渡された書類に目を通すと、どうやら物件情報を印刷したものだった。今と同じような間取りの高級マンションだけでなく、広さはそこそこあるのに値段が抑えられているお得な物件まで様々だ。
「え、結大君引っ越すの?」
このマンションにはまだ数回しか訪れてないが、もったいない気がする。俺の問いに、はにかむように結大君が答える。
「うん。真幸はどれが気に入った?」
「どれ……どれもいい感じだと思うけど……」
「俺はこの、駅に近いやつが良いかなって」
「ああ、ほんと……あれ? この駅だと逆に遠くない?」
「そうなんだよね。でも一緒に住むなら、ここがお互いの職場とちょうど中間でしょ?」
なんだって!? 思わず書類を落としそうになる。
「一緒に?」
「うん。さすがに今すぐとは言えないけど追々。あ、内見はいつでも出来るから」
バクバクと心臓が悲鳴を上げてるようだ。付き合って一週間で同棲の提案?
「その……早すぎない?」
「俺、毎日真幸の顔が見たい」
突然、結大君がこちらに寄りかかってくる。
「やっぱり重い?」
俺の肩に頭を預け、こちらを見つめてくる、いつかと同じ子犬のような眼差し。
甘く満たされた一週間。それよりもっと濃密な二人の暮らしを想像する。同じベッドで寝起きして、どちらかが用意した朝食を食べる。家を出る時は名残惜しげにキスをして、夜は当然……。それが毎日。
そんなの……。
「う、嬉しい」
思わずこぼれた俺の言葉に反応するよう、力強く抱きしめられる。勢い余ってソファーに倒れ込んだ。
「真幸ならそう言ってくれると思った!」
太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべる恋人につられて俺も笑っていた。あの時、告白を受け入れたのは間違ってなかった。
「指輪も買いたい」
きっと俺達にはちょうどいい重さだ。
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