Mello Yello ~Do not draw the Sea~

雪村穂高

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7.二人は散歩を繰り返す

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 夏休み2日目も、初日と同じように澄み切った青空が広がっていた。

 私と彩は昨日と同じ時間に、同じ場所で待ち合わせると、昨日と同じ方角へ並んで歩き始めた。

 斎藤先生の怪しげな秘密を暴くことを目的として開始されたイベントのはずだが、私たちの緊張感はなお低く、この日もとりとめのない会話を繰り広げながらまだ誰の姿も見えない砂浜を歩き続けた。白波の向こうにはひとりのサーファーが、海面に立っては転んでいた。

「シャロって人の名前を覚えるのが苦手だよね」

 噂話に疎いだけではなく、小学校の同級生や現在のクラスメイトの名前を知らないことが露見した昨日の件を受けて、彩が私の短所を指摘した。

「どうせ彩も10年後には今のクラスメイトの名前を半分も覚えてないでしょ。だったら今覚えるだけ無駄じゃない」

「クラスメイトの名前は頑張って覚える物じゃなくて、気が付いたら覚えているものだよ」

 そういうものかな。いや、どこかで彼女らの名前を覚えようとする局面があったはずだ。なんだったっけ、と一寸考え、すぐにそれに思い至った。

「そういえば今年度の初めに一風変わった自己紹介をクラスでしたよ」

「へー、どんな?」

「自分の名前の由来について説明しながら、自己紹介をしたんだ。普通自己紹介って、趣味とか、出身の小学校とか、入ろうと思っている部活とか、そういうのを話すよね」

「たしかにそれは珍しいね。うちのクラスでも自己紹介はあったけど、普通のやり方だったな」

 ということは、あの自己紹介の方法はやっぱり川口先生のオリジナルだったのか。

「でね、そこで私も自分の名前の由来を話したんだけど、今ではその名前で私のことを呼ぶ人はいないの。せっかく本名の名前の由来まで説明したというのに、みんな『シャロ』ってあだ名で呼ぶの。ちょっと酷くない?」

「他人の名前をあだ名すら覚えないシャロにそんなことを言える資格なんてないでしょ」

 左隣からくつくつという笑い声が聞こえた

 事実その通りだったので何も言い返せなかった私は、むっつりと黙って足元のシフォンケーキ色の砂を眺めた。

「それにシャロの顔がシャロっぽいのが悪いんだよ」

「でも、元はと言えば彩の勘違いが原因でしょ?


 私は1年半前の出来事を思い返す。あれは小学6年生の4月のことだった。
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