Talking Rain~4月の雨と君の魔法~

雪村穂高

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6時間目・国語(2年1組教室) 【39/45分】

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 阿部は自分のついた嘘について認めた。 

 やはり彼女は保健室に行く前に一度、2年1組教室に立ち寄っていた。 

 まさか教室に大津がいると思っていなかった阿部は、教室のドアを開けるまで大津に気が付かなかった。大津とそこで鉢合わせた直後、阿部は逃げるように保健室へ向かったと言う。 

「大津は変な格好をしていた」 

 さらにそう新しい証言をした。阿部から続けて送られてきた手紙によれば、大津の服装は上が半そでの体操着、下は長ズボンのジャージを履いていたという。彼はその格好で流しの近くに立ち、流し台の上に取り付けられた窓の外を眺めていたらしい。 

 サボっていて暇なため、教室の窓から外を覗くのは、まあ自然だ。席に座らずに立っているのも、自然とは言いづらいが、そこまで不自然であるとも言えない。やはり最も怪しいのはその格好であるが、これもジャージから制服に着替える途中であったと考えれば納得がいく。 

 ……いや、やっぱり変だ。なぜ体育の授業を受けていないの大津がジャージ姿になっていたのだ。 

 つい1時間前のことを思い出す。体育の授業に向かう前、昼休みの終わりに大津を見かけた時は、もちろん彼は学ラン姿だった。 

 妙に引っかかる。大津はいつ、なんのために制服からジャージに着替えたのだろう。そう言えば、彩は大津が体育の授業を欠席する旨を伝えに来た時に、武道場の玄関で彼を目にしている。その時の彼の服装を聞いてみることにする。 

 私はHBの鉛筆を使って彩に手紙を書く。 

 

「5時間目に大津と会ったとき、大津はどんな恰好をしていた?」 

 

 彩の席は私のすぐ後ろなので、10秒ほどで返事が届く。そこには整った字でこう書かれていた。 

 

「ジャージ姿だったよ。上は半そでだったけど」 

 

 ますます私は混乱することになった。 

 なぜ体育の授業を休む連絡をするのに、学ランからジャージに着替えなくてはならなかったのだ? 

 それに武道場の前まで来たのなら自分で先生に休む連絡をすればいいではないか。女子に言伝を頼むことを昼休みの大津は恥ずかしがっていたはずなのに。 

 体育の授業の途中、大津が教室から武道場に向かおうとするときには、授業に出る気があったと仮定すると一応の筋は合う。しかし教室から武道場まで向かう僅かな間に、彼の中でいったいどんな心変わりがあったというのだろうか。例えば廊下で転んで怪我をして体育に参加することが不可能になってしまった……。いや、彼に怪我をしているそぶりは見られなかった。 

 ひとりで悶々と考えこんでいると、また後ろから手紙が届いた。 

 

「5時間目、武道場の玄関で大津くんに会った時なんだけど、 

 上のジャージは手で持っているように見えた。 

 後ろ手に隠すように持っていたから確証はないんだけど。 

 

 ねえ、なにか大津くんの服装が上履きの件と関係があるの?」
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