「死にたい」と叫んだのは私

彩景色

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白い部屋

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 明らかに致死量だった。

 吐き出されたそれは赤い化粧を施されて、流れていく。

「ああ、これが———」

 飛散していく無数の雫は、大気の中に酸化結合を起こしながら、ゆっくりと、ただゆっくりと時間の中に融けて黒めいていった。

 悲嘆と。
 憂愁と。
 憐憫と。

 凡てが入り混じって、私の中に落ちていった。
 飛散した一つ一つの結晶も、次第に溶け込んでいった。

「いつのまにか」

 さっきの雫は、地面に落ちる頃にはもうすっかり見えなくなっていた。
 きっとこういうのを「美しい」だとか、「綺麗」だとか、「やっぱり」だとか思ってはいけないんだろう。

 もっと、カラフルに、ビビットなものをイイって言わなきゃいけないんだろう。

「でも、思ってしまうの」

 この大量に吐き出される赤いものは、さっきまで「この中」にあったものなんだって。

 そう思うと———

 
 実感できる。
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