お父さんがゆく異世界旅物語

はなまる

文字の大きさ
126 / 166
第六章 茜岩谷に吹く風が

第七話 忌み地の謎

しおりを挟む
 砂漠から戻って一週間くらい経った日の事だ。

 俺はどうしても行かなければならない、と思う場所があった。

 俺たちがこの世界に飛ばされた日、アホみたいに呆けて、どうしたら良いかわからず立ち尽くした場所。大岩の家から真っ直ぐ西の方向にある『忌み地』と呼ばれる場所だ。

 鳥も動物も近寄らない、呪われた土地だと言われている。大きな怪物が出るとか、怖ろしい事が起きると言われているらしく、旅人も避けて通る。

 耳なしに関わりのある土地だという説もあり、時折り教会の人間が巡礼に行き、みんな帰って来ない、そんな噂もあるらしい。サラサスーン地方の『忌み地』に対する認識は『ヤバイから近寄るな』だ。

 怪しい事この上ない。

『たぶん、何かある』。俺はそう思っていた。俺たちの住んでいた地球とつながる何かがある。歪んだ空間の入り口とか、次元の狭間とか。俺の想像はB級SF映画並みに幼稚なものだったけれど、俺たちだけでなくさゆりさんも同じように、飛ばされて、立ち尽くした場所だ。

 あの場所に何かある可能性は高いと思う。

 今まで近寄らなかったのは『今は帰るわけには行かない』から。そこに行きさえすれば、すぐさま地球に帰れると思っているわけではないが、ナナミを迎えに行くまでは、家族が全員揃うまでは、近寄りたい場所ではなかった。

 今はクルミがいる。ご両親の事を考えると、なんとか無事に帰してやりたいと思う。忌み地にそのヒントみたいなものがあるなら、探しに行かなければならない。

 俺は自分で言うのもなんだが、とても臆病だ。良く言えば用心深い。石橋は何度も叩く。落ちた時の事を何通りも想像して、それに備えるような人間だ。今回の調査は『危険には近づかない』をモットーで行こうと思っている。とりあえずの様子見だ。

 ちなみに、ナナミは『石橋が壊れたら、落ちる前に渡り切る。落ちたら泳げばいい』みたいな、勢いを大切にするタイプだ。俺はハラハラしながら、浮き輪やロープや着替えを持って、こっそり後を着いて行く。ナナミも良い年なんだから、そろそろ落ち着いて欲しいな、とか思いながら、そんなナナミが羨ましくて、面白くて仕方ない。ナナミに振り回される事こそ、俺の本望なのだ。

 この世界に飛ばされる直前にも『辺境医療にたずさわりたい。沖縄の離島に行きたい』と言っていた。俺は会社勤めではないし、絵はどこにいても描けると思っていたので、具体的に話し合っていた矢先の転移だった。ナナミが海辺の教会で、医療師カラ・マヌーサをやっているとしたら、ある意味夢が叶ったようなものかも知れない。



『忌み地の謎をさぐりに行く』と言ったら、リュートとロレンが着いて行くと言い出した。危険には近づかないつもりだが、やはりリスクはあるだろう。危険が目に見えるとは限らない。

「猫族の危険察知能力は大したものですよ」と、ロレンが言った。

 なんでも、尻尾の毛が逆立つ感じがするのだと言う。

「ああ、わかるな。静電気みたいな感じだ」と、リュートが言い、ふたりでうんうんと頷き合ったりしてる。

 尾てい骨しか持ってない俺には、全然わからない。ロレンのうねうねと自由に動く尻尾は、ハルではないがさすがに少し羨ましい。そういえばユキヒョウは、びっくりすると尻尾を噛んで落ち着こうとするらしい。一体どういう事か、さっぱりわからない。

 危険があるのに、なぜ着いてくるのか聞いてみた。二人は声を揃えて「面白そうだから」と言った。『好奇心は猫も殺す』ってことわざ知ってるか? 


 念のためラングリット完全武装して、子供たちに見つからないように出かける事にした。見つかったら二人と同じ理由で、着いて来たがるに違いないからだ。


 俺はあくびに乗り、ふたりは馬で行く。俺たちがあの日辿った、途切れ途切れの細い道を行く。

 二時間程走ると、ロレンが「ヒロト! 止まって!」と叫んだ。

 見ると、ふたりの尻尾が見事にぶわっと逆立っている。

「どうした? なにかあるか?」

「動物も鳥も見当たらない。忌み地に入ったのかも知れない」

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...