Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

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区域清掃 side

区域清掃 side:オットー

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 今日はそうじの日だ。
 兄ちゃんには留守番してろって言われたけど、おれはお菓子をもらえるという情報を聞いていたからリタと一緒に留守番を拒否した。
 兄ちゃんといつもの公園に向かうと、シェルアさんがいた。
 シェルアさんにあいさつした後はブラッドにあいさつして、俺とリタはそうじ道具をもらいにいった。
 列に並んでいる間、エッシちゃんがいないか探してみたけど、見当たらなかった。
 どうやらエッシちゃんは今日はいないらしい。
 おれはちょっとガッカリした。
 
 係の人にゴミ袋と手袋、ゴミ拾い用のトングも貸してもらった。
 おれはリタの横に並ぶと、兄ちゃんがいる方を指差した。

「きょーそーしようぜ! リタ!」
「あっ! ちょっと待ってよ!」
「待たないよーだ!」

 人を避けながら走っていくと、兄ちゃんが見えた。
 おれは兄ちゃんを呼んで勢いよく抱きついた。
もう片方の足にリタが抱きつく。
 兄ちゃんは道具をもらったか聞いてきたから、ちゃんともらったと答えた。
 兄ちゃんはおれとリタの頭をなでると、しゃがんではじめましてのあいさつをしろと言ってきた。
 目の前には知らないやつがいる。
 おれはそいつを見上げると、そいつは兄ちゃんと同じようにしゃがんだ。
 
——赤い目なんて、吸血鬼みたいだ。

 おれは胸を張ってはじめましてのあいさつをしたけど、リタは自分がお姉ちゃんだと嘘をついていた。
 おまけにおれが弟だと言い張っている。
 おれは違うと言い返すと、おれが兄ちゃんでリタが妹だと言った。
 リタと言い合っていると、兄ちゃんに人の話は最後まで聞けって怒られた。
 
 知らないやつの名前はサンっていうらしい。
 兄ちゃんよりずっと小さくて、ナヨナヨしてて弱そうだった。
 おれが弱そうだなってハッキリそいつに言ったら、また兄ちゃんに怒られた。

……本当の事言っただけなのに。 

 おれは兄ちゃんが弱そうなやつにあやまらせようとする意味がわからなかった。大人はあやまってばっかだ。
自分が悪くないのにあやまるのは変だとおれは思う。
それなのに兄ちゃんはおれの顔をつかむと、ゲンコツをして弱そうなやつにあやまった。
 痛くて頭を押さえていると、シェルアさんにエッシちゃんは優しい人の方が好きって言ってたよってこっそり言われた。

 ブラッドはおれのことをバカにしてきたから、バカと言い返してやった。
でも思い切りなぐっても、ブラッドにはたいしたこうげきにならなかった。
それどころかブラッドはニヤニヤ笑っている。
 おれは弱いと言われて言い返せなかった。

——これもブラッドが大人だからか……!! 今に見てろ!!!

 ブラッドをにらんでいると、ルイスが戻ってきた。
 リタがそわそわしている。
 トイレなら早く行けばいいのによくわかんねーやつだ。

 その後はふたてに分かれてゴミ拾いすることになった。
 シェルアさんは心配してたけど、おれは兄ちゃんだから大丈夫に決まってると言った。
 兄ちゃんがいなくても一人でも大丈夫なのだ。
 おれは兄ちゃんに手を振って別れた。
 ブラッドが本当に大丈夫か聞いてきたけど、おれはビビって泣くなと言ってやった。
 シェルアさんに道具を振り回すなと注意されて、仕方なく振り回していたトングを収める。
 
 歩いていると、シェルアさんからブラッドの小さい頃に似てると言われた。
 似るなら兄ちゃんがいいと言うと、ブラッドに泣かすぞとおどされた。
 おれはゆうかんだからおどしには屈しなかった。
 

 この辺のゴミはビンが多くて、運ぶにはけっこう重たい。
 バレないようにちょっとだけ引きずって歩こうとすると、ブラッドにゴミを横取りされた。
そして代わりにブラッドの持っているゴミを押し付けられた。
 軽い方を持ってろって言われたけど、重くてもおれなら楽勝だ。
だけどブラッドは引きずって手間を増やされる方が困ると嫌味を言ってきた。嫌なやつだ。

「おれだってそんくらい持てるっつーの!」
「へー」
「聞けよバーカ!」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ」
「ウルトラスペシャル百倍バカ!」

 おれはブラッドの足を蹴ったけど、ブラッドはなんともないみたいで余計ムカついた。
 追いかけるとブラッドは逃げるように走る。

「なんで逃げんだよ! 仕事しろよ!」
「してんだろ。俺が速すぎてお前の目が追い付けてないだけ~」
「うがー! ムカつくー!」
 
 ブラッドは俺のこうげきを避けながら、ひょいひょいゴミを拾っていった。
 しばらく追いかけていたけど、とちゅうで疲れたからブラッドを追いかけるのはやめにした。
 遊んでいる場合ではないのだ。
 おれはゴミ拾いに集中した。


 ゴミ拾いを続けていると、わりと中身がいっぱいになった。
 ブラッドは重たい袋を三つも持っている。
 兄ちゃんより小さいのにどこにそんな力があるんだと手を見ていると、ブラッドに変な顔をされた。

「なんかあったか?」
「べつにー? おれだって大きくなったらそれくらい持てるようになるし」
「はーん? ま、精々頑張ってデカくなれや」
「見てろよ! 兄ちゃんよりデカくなるからな!!」
 
 ブラッドはおれの本気が伝わっていないのかヘラヘラ笑っていた。しつれーなやつだ。
 そうじが終わると、おれたちは最初の公園に戻った。
 おれはゴミを持っていって、借りていた道具を返すと、係の人にぶどうジュースをもらった。
 ミッションインコンプリート。おれはお菓子を手に入れた。
 シェルアさんの所に行くと、ブラッドと飲み物を交換していた。
 兄ちゃん達はまだ戻ってきていないみたいで、ただ待っているのはヒマだから、お菓子を食べていいかシェルアさんに聞いた。
 
——兄ちゃんはケチだけど、シェルアさんは優しいからいいよって言ってくれるだろう。

 そう思っていたのに、シェルアさんにお菓子は一つだけと言われてしまった。
どうやら兄ちゃんに手回しされたらしい。
 ブラッドまで兄ちゃんに怒られるぞと言ってきた。
 怒られるのは嫌だけど、お菓子を食べられないのはもっと嫌だったから、仕方なく言うことを聞くことにした。
 大きなチョコチップクッキーの袋を開けて食べる。
 お腹がへっていたからよけいにうまく感じた。
 食べながら待っていると、兄ちゃん達が帰ってきた。
 おれはおつかれと手を振った。
 ルイスとサンもお菓子をもらっていて、ブラッドが文句を言った。
 お菓子がほしいならちゃんと言えばいいのに、ブラッドはしょーがないやつだ。
 子供だなって言うと、お前の方が子供だと頭をつかまれて意地悪された。
 おれはすぐブラッドの悪行をシェルアさんに言い付けた。
 ブラッドはシェルアさんに弱いのだ。
 注意されたブラッドに舌を出すと、ブラッドは悔しそうな顔をしていた。
 からかってやろうとしたら、いきなりげんこつが頭の上に落ちてきた。
 犯人は兄ちゃんだった。
 気配がないから全然気付かなかった。
 おれはほんのちょっと反省した。

 リタは知らない間にルイスとサンとお菓子を交換したみたいで、なんだかごきげんだった。
 帰りはみんなに手を振って、ブラッドには次は勝つとせんせんふこくした。

 目的のお菓子ももらえたし、今日はわりと楽しい一日だった。
 エッシちゃんに会えなかったのはざんねんだったけど、また会った時にちゃんと話そう。

……でもその前に、もっと大きくなりたいな。

「兄ちゃん、おれ今日夜も牛乳飲む!」
「そうか」

 兄ちゃんはおれの頭を撫でると、ニッとうれしそうに笑った。
 兄ちゃんが笑うとおれもうれしくなった。

「わたしも牛乳飲む!」
「なんだよ真似っこかー?」
「真似っこじゃないし! 前から飲もうと思ってたけどエンリョして言わなかったの!」

 リタはよくわからないことを言って、兄ちゃんは困っていた。
 女の子はフクザツだ。
 あとで兄ちゃんにどういうことか聞かれたけど、おれもわからなかったから一緒に首を傾げることになった。
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