Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

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お留守番 side

お留守番 side:マリアンネ

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 サンくんは最下層での生活に慣れたようで、今ではもうすっかりうちに馴染まれました。
 ブラッドくんも最初こそサンくんに敵対心を抱いていましたが、あの一件以来そういった言動や行動は見られなくなりました。
 サンくんは皆さんと良好な関係を築かれています。特にルイスとはすごく仲が良くて、夜遅くまでゲームをしているのを度々目にします。
 友達らしい友達がいないルイスと仲良くしてくれて、その上ルイスを兄のように慕ってくれるサンくんはいい子でしかありません。
ルイスもルイスでサンくんを弟のように可愛がっています。
でも最近は、ほんのちょっとそれが寂しくもありました。
以前なら外に出かける時は私に何か買ってくる物はないかと聞いてきたのですが、最近では買い物もサンくんと一緒に行くと言うし、休みの日もサンくんとゲームすると言って出ていきます。
シェルアさんにこれを話すと、ルイスは年頃だからと苦笑を浮かべて、これを機に私も友人をつくってみたらと言われてしまいました。
 

 今日のルイスはお仕事で、シェルアさん達と一緒に出かけていきました。お留守番は私とよもぎちゃんです。
 よもぎちゃんは大福くんがいなくても寂しくはないみたいで、むしろ大福くんがいる時よりもリラックスしていました。
いつも凛々しい顔をしているよもぎちゃんも可愛いですが、こうやってぼーっと遠くを見ているよもぎちゃんも可愛いです。
 こっちに来ませんかと膝を指して誘うと、よもぎちゃんはすぐに返事をしてソファへ飛び乗りました。
 よもぎちゃんのふわふわした毛並みが寄せられて、思わず手が伸びます。
そのまま頭から背中を撫でて可愛いと言うと、よもぎちゃんは嬉しそうに歯を見せて笑いました。
 喜ぶよもぎちゃんが可愛くて、頬のマッサージをします。
頬のお肉が寄っているよもぎちゃんも可愛くて、私はとても癒されました。
 大福くんと仲良しで羨ましいと話すと、よもぎちゃんは耳をピクピク動かして首を傾げました。
 寂しいと本音を溢すと、よもぎちゃんはそれきり静かになって、最後に溜息を吐き出しました。
 きっとよもぎちゃんにそんなつもりはないのでしょうが、あまりにタイミングが合いすぎて私は呆れているのかとつい聞いてしまいました。
 よもぎちゃんの返事はありません。
 私は苦笑すると、シェルアさんに過保護と言われた事と、姉として弟のルイスを心配している事を話しました。
 相槌を打つように控えめに鳴くよもぎちゃんに、私はハッとしました。

——もしかしたらルイスは、動物であるよもぎちゃんには自分の秘密を話しているかもしれません。

 ルイスの恋愛関係の話を聞いた事があるか聞くと、今度はよもぎちゃんは力強く吠えました。
まるで違うと言われているようで残念でした。
まあいつかそういう日が来るのを楽しみに今は気長に待とうと考えていると、よもぎちゃんが私の膝に顎を乗せてきました。
そして何かを問いかけるように鳴くと、よもぎちゃんは私を見上げました。
 私は人間なので犬のよもぎちゃんが何を言っているかはわかりませんが、よもぎちゃんが言いそうな言葉を選んで尋ねてみると、よもぎちゃんは肯定するように短く鳴いて返事をしました。

 自分に恋人なんて、私は一度も考えた事がありませんでした。
 私が考えているのはだいたいルイスの事です。
 親は最低な生き物でしたが、ルイスは天使でした。
 大事な大事な私の家族です。
そんなルイスもいつかは恋人が出来て、お婿さんになる未来があるのでしょう。
そう考えるとやっぱりちょっと寂しくなってしまいました。

 眠そうに欠伸をするよもぎちゃんに、眠っていいですよと優しく声をかけます。
するとよもぎちゃんは慰めるように私の指先をペロペロと舐め始めました。
 思わぬ優しさに笑ってよもぎちゃんをじっと見つめていると、舐めるのをやめてまた欠伸をしました。
 やっぱりよもぎちゃんは可愛いです。
 お日様の匂いがしそうな身体を撫でると、次第に眠くなってきて欠伸が溢れました。
 両腕を挙げて背筋を伸ばしても、眠気は取れません。
 もう一度欠伸をすると、私はよもぎちゃんと一緒にソファに横になりました。

「おやすみなさい」
「アン」

 朧げな意識でよもぎちゃんの返事を聞くと、温かさを感じながら眠りについた。
 少し眠るつもりが、がっつり寝てしまって慌てたのは私とよもぎちゃんだけの秘密です。

「あら? ブランケットが……シェルアさんかしら?」
「……アンッ」

 床に落ちたブランケットを拾い上げると、よもぎちゃんはドアの向こうを見ながらひと鳴きしました。
 あとでシェルアさんに聞いてみると知らないそうで、サンくんに聞いてみても自分ではないと言われました。
そうなると必然的にルイスが私にブランケットをかけた事になります。
でもルイスは素知らぬ顔でシェルアさんかサンくんじゃないのかと言いました。
何故嘘をつくのかわかりませんが、私は騙されたふりをしてルイスに御礼を言っておきました。

 



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