魔導デイトレード戦記

高根 甲信

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12.再始動

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植木のフェイジョアが、風に葉を揺らしてあちこちで光る。
急に外に出たので、僕は眩しくて目を細めた。

僕と先生は、理事長室のある本館から出て、中庭の渡り廊下を歩いていた。
僕の心臓は、今も飛び跳ねている。
理事長相手に、あんな偉そうなことを言うつもりはなかったのに。

「言い過ぎでしたか…?」

隣を歩くクラウジーネ先生に聞く。

「いいえ。…でも、どこで聞いたの?シモン教授のこと」

少し逡巡したあと、僕は告白した。

「セルジオさんです」

「あー、あいつか。なるほどねえ」

そう言った後、慌ててえへんと咳払いして先生は言った。

「アレイシ君、君は凄いな。魔導トレード科は廃止が決まっていたのだ。なのに、それをひっくり返してしまった」

なんと言っていいか分からず、僕は前を向いて歩いた。先生も前を向いたまま、しばらく黙って歩いた。
唐突に先生が立ち止まったので、僕も立ち止まって振り返った。
先生は言った。

「アレイシ、これから大変だぞ。3カ月後には、退学が正式に決まったようなものだからな」

「はい」

「私は何もしてやれないが、応援している」

クラウジーネの精一杯の言葉だった。

「がんばれ」


魔導トレード科の教室は、カーテンも窓も明け放たれていた。
教室に飛び込んだ僕は、明るく爽やかな室内に目を丸くして固まった。

「…あ…か…るい」

マスクをしたイルダ先輩が、ほうきを持って振り返って言った。

「あ、アレイシじゃん。なんか用?」

「…何してるんですか?」

「え?見りゃ分かんじゃん、掃除」

奥から大きな紙箱を抱えて出てきたニッキー先輩が、僕を見て声をかける。

「アレイシか。悪かったな、色々教えてやりたかったが、ここ、廃止になっちまってな」

2人は『魔導トレード科』が廃止になったので、大掃除をしていたのだ。僕は慌てて言った。

「ちょっと待ってください!そのことなんですが…」

僕は理事長との約束を、なるべく当たり障りなく伝えた。
100日の間に全額返済できたら、魔導トレード科はこれまで通り存続。できなければ廃止および退学。借金もだめ。
セルジオさんから聞いた話なんかは、全部スキップさせていただいた。

「それ、本当か?!」

「じゃあ、退学もなしってこと?」

「3カ月程延びただけですけど」

「うわーい」

「お前が交渉したのか!?」

ニッキー先輩が珍しく感情を表すと、イルダ先輩はほうきを投げ捨てて跳ね回っていた。

「凄いな。俺も理事長には掛け合ったんだが、よくあの頑固な人が方針転換したもんだな。…お前、あの人の弱みとか握ってるのか?」

「…そんなことは」

僕は視線を泳がせた。
セルジオさんに迷惑がかからないよう、そのへんは黙っておきたい。
イルダ先輩は『良かったにゃん♪』と不思議なダンスをしていた。

「しかし、本当によくやった!」

先輩は僕の肩を両手で掴んで言った。

「そうと決まれば、あとは任せておけ」

先輩は中央の机の前で腕組みして、思考を加速させていく。

「とは言っても500万エネは大金だ。それを100日で稼がなければならん」 

あおったコーヒーの中身がないことに気づいて、コップを乱暴にテーブルに置くと言った。

「計画が必要だ…3か月と言っても、魔獣が動くのは月に22日しかない。22×3=66 日。70日弱か…毎日同じ利益が取れるわけないから……アレイシ、書くもんがいる」

「はい!」

先輩は歩いていくと、謎のシールを乱暴に引き剥がすと窓とカーテンを閉めた。
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