姉妹揃って婚約破棄するきっかけは私が寝違えたことから始まったのは事実ですが、上手くいかない原因は私のせいではありません

珠宮さくら

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(姉のビンタで、ベッドに逆戻りするなんて思わなかったわ。あんな力いっぱいに叩くことないのに)


アリーチェは自室のベッドで、ぼんやりと天井を眺めていた。

姉は、父と色々話していたが、婚約パーティーうんねんよりも、そもそもステルヴィオの家から婚約の話が来ていないのをなぜか、アリーチェのせいにしたのだ。

それに頭にきた姉に渾身のビンタをお見舞いされてしまった。


(本当に何で私のせいにできるんだか。しかも、ほっぺたが凄い腫れてるし、物凄く痛い)


ぷっくりと片方の頬が腫れていた。

その後、マッダレーナはアリーチェ以外の家族に責め立てられることになったが、それでも姉は……。


「アリーチェが嫌がらせをしているからよ! そんなことなら教えてくれればいいのよ!」


そう言っていたらしい。それを聞いてアリーチェは……。


(妹に教えてもらわないとわからないレベルだってことよね。……情けない姉がいたものだわ。しかも、嫌がらせで何をすべきか教えないなんて、おかしなことを言っているってところに気づかないところが終わっているわよね)


姉は部屋で謹慎させられているようだが、時折、部屋からものが割れる音がしているから、元気なようだ。


「アリーチェ」
「……お兄様」


強烈なビンタをお見舞いされたアリーチェは、次の日も頭がぼーっとしていた。強烈すぎたようだ。

それこそ、ビンタをくらった後に医者が診察に来てくれたようだが、気を失っていてアリーチェは全く覚えていない。

朝になって診察された時は目が覚めていて、薬うんねんの時に本音が飛び出した。


「気持ち悪いんですけど」
「吐き気がするんですね?」
「それと頭痛が酷いです」
「これは、寝違えた時よりもっと安静にしてないと駄目ですね」
「それは、大丈夫です。起きてるのも辛いので」


医者は、それに何とも言えない顔をした。多分、お見舞いの返礼に手紙を書いていたのが、安静とは言えないと言いたかったのだろう。


(お姉様がビンタする相手は、ステルヴィオだと思うんだけどな。何なら、私、これまでの色々もあるからボコボコにしてもいいレベルだと思うんだけど)


そんなことを思っていたら、兄がやって来た。もう、帰って来たようだ。


「少し寄り道していたから、遅くなってしまった。気分は?」
「……あんまりよくないです」


兄は珍しく寄り道して帰って来たようだ。


(時間の感覚がわからなくなっているみたいね)


これは、しばらく安静にしていないと回復は難しそうだ。


「そうか。何か食べられたか?」
「食欲なくて」
「だが、それでは……」
「気持ち、悪くて」
「……そうか」


兄は、母親の欲しがっていたぬいぐるみを買って来たらしく、母は大喜びしていたが父は……。


(お兄様にお父様の出番がないことを話してなかったわ)


そんなことを思ったが、人の世話をしている余裕はなかった。

数日、アリーチェの食欲は戻らなかった。頭痛だけでなく、色々とショックだったようだ。

しばらくして、兄があるものを持ってやって来た。


「これは?」
「エルネストからだ」
「え?」


どうやら、エルネストに兄は何があったかを話したようだ。他には何があったかを話してはいないようで、怒涛の見舞い攻撃はなかった。

流石にマッダレーナを謹慎させ続けても問題が解決しないこともあり、学園に行ったようだ。ステルヴィオと話し合いができているのかはわからないが、壊れる音が定期的にしないのは、アリーチェにはよかった。


「エルネスト様から……?」
「……」


じーっとアリーチェは兄の持つそれを見ていた。見ていた理由は、美味しそうに見えたからではない。


「あの、お兄様?」
「……食べれそうなのか?」
「えっと、食べれるかチャレンジしようかと」
「無理することないぞ」


兄が中々プリンを渡してくれなかった。それにアリーチェは苦笑した。


(これは、何が正解なんだろう)


エルネストからと聞いて食べようかと思ったのは確かだが、兄の前でそれをしたら不機嫌になりそうなのもわかって、アリーチェは頭痛が和らいだはずなのにまた痛み出しそうで苦笑したかったが、それも隠した。

この兄も、複雑なところがあるようだ。


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